ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 ネルフ本部にてMAGIの争奪戦が行われている頃、加持リョウジは、ネルフ本部を見渡せる小高い丘の上から、戦略自衛隊が夜明けを前に部隊を展開する様を飄々と眺めていた。

 

 いつものヨレヨレのワイシャツ姿。その手には分厚い資料の束が握られている。

 

「戦自はともかく、ゼーレの投入戦力は未知数。だがリッちゃんのおかげで、少しは目がありそうだ。既にF型装備、マゴロク・E・ソードと全領域兵器マステマは初号機と弐号機に配備されているはずだ」

 

 資料に記されているのは、エヴァンゲリオン『F型装備』の詳細。それまでの汎用型兵器としてのエヴァンゲリオンのコンセプトとは別に、強力なATフィールドを使用する事を軸とした『火力の向上と重装化』、および『ATフィールドを利用した機動力の上昇』をコンセプトに置く、決戦用追加武装である。

 

 これはエヴァ開発の初期段階から練られていた構想で、碇ゲンドウが来たるゼーレとの決裂に備えて密かに赤木リツコに命じて作らせていたものだ。『F型装備』という名称も、既存の空挺降下戦用装備と名称を重複させることでゼーレの目を欺くために付けられた名だ。

 

 その兵装はすでに完成した状態で破棄されていた。若干のオーバーホールは必要だろうが、問題はないだろうと加持は確信している。

 

「やっぱリッちゃんは最高だな」

 

 加持は懐からタバコを出すと、口に咥えて火を付けた。

 

「やれる事はやってきた。ここからは──、」

 

 煙を大きく吸い込み、ふぅーっと吐き出す。

 

「神のみぞ知る、ってね」

 

 加持は一吸いしたタバコをもみ消すと、戦自が展開している部隊とは別の方向に足を向けた。ここから先は単独行動。一つのミスが、即、死に直結する。

 

 だがそんな緊張感など、どこ吹く風。加持は軽い足取りで、ネルフ本部へと向かっていった。

 

 

 

 

 ネルフ第二発令所に、作業の音が木霊する。

 

外部からのMAGIへのハッキングの騒動は一旦の落ち着きを見せ、先程までの大騒ぎが嘘のような静けさだ。ミサトは、もうだいぶ前に湯気の出なくなったコーヒーのマグカップを手にしながら、事の成り行きを見守っている。

 

「あと、どれくらい?」

 

 赤木リツコがMAGIへのプロテクト作業に入ってからどれほどの時間が経っただろうか。この事態を収束する事のできる唯一の女性は、MAGIの要となる巨大な3つのシステムのうち、まだハッキングによる侵食を完全に受けずに済んでいた『カスパー』の内部に入っていったまま、もうずっと出てきていない。

 

「間に合いそうです。120ページ後半まであと1分半。一次防壁展開まで2分半ほどで終了しそうです」

 

「さすがは赤木博士ですね!」

 

 日向とマヤが安堵の声を上げる。しかし事態はまだ収まったわけではない。

 

「安心してる場合じゃないわよ」

 

 二人には申し訳ないと思いつつも、ミサトは厳しい口調で二人に釘を刺した。

 

「MAGIへの侵入だけですむような、生易しい相手じゃないわ・・・」

 

「MAGIは前哨戦にすぎん。奴らの目的は本部施設、および、残るエヴァ2体の直接占拠だな」

 

 冬月副司令の重い言葉に、作業をしていた各所員の面々の手が一瞬止まる。それはこれから起きるであろう事は、人と人での醜い争いでしかない、という事。

 

 ミサト達の間に走る緊張感。それを紛らわすように、赤木リツコからの連絡がオペレーター陣に届く。対応したのは伊吹マヤだった。

 

「はい・・・はいっ!」

 

 マヤはリツコからかかってきた通信を切ると、急いで、しかし満面の笑みで報告をあげた。

 

「MAGIへのハッキング、停止しました!Bダナン防壁を展開!以後62時間は外部侵入不可能です!!」

 

発令所に走る歓声。それを吹き飛ばしたのは

──、

 

「総員、第一種戦闘配置。ただちにエヴァンゲリオン初号機並びに弐号機を出撃」

 

 碇ゲンドウの、重みを持った言葉であった。

 

「聞こえなかったのか。総員、第一種戦闘配置。ただちにエヴァンゲリオン初号機並びに弐号機を出撃させろ」

 

「そんな・・・」

 

 ゲンドウの重みを持った言葉に、マヤが反論しようとするのを、葛城ミサトが手でもって制した。

 

「了解。総員、戦闘配置。シンジ君、アスカ、聞こえる?」

 

『はい!』

 

『バッチシよ!』

 

「聞いてたわね?エヴァ初号機と弐号機は直ちに出撃。いいわね?」

 

『『了解!!』』

 

 通信を通して、シンジとアスカが応える。その声には緊張感と、確固たる決意が込められていた。

 

「待ってください!葛城三佐!出撃って、一体敵は誰なんですか?使徒はもう全部倒したのに!」

 

「今や平和になったって事なんじゃなかったんですか!?」

 

 マヤと青葉が、言葉だけでミサトに詰め寄る。しかしミサトは、その言葉を首を振る事で否定した。

 

「目を覚ましなさい、あんた達。MAGI侵攻を仕掛けてきたのは誰?おんなじ人間でしょうが。・・・・・・そうですよね?碇司令」

 

 ミサトは上階のゲンドウと冬月を見上げた。それを見たゲンドウと冬月は頷き返した。

 

「無論だ、葛城三佐」

 

「敵はゼーレ、それと日本政府と推測できるな。実行部隊は戦略自衛隊だろう」

 

 冬月の言葉を聞いたオペレーター陣に、驚きと恐怖が伝播する。頭の片隅で考えていた最悪の可能性、『人による侵略』。その現実性を、冬月副司令が具体的な言葉で以て肯定したのだ。

 

「黙っていれば殺されるだけよ、覚悟決めなさい!!」

 

 そこにミサトの叱責が覆い被さる。オペレーター陣は恐怖に弾かれた様に、自分の仕事に向き直った。

 

 加持のもたらした情報により、ミサトはもちろんのこと、ネルフ全体は戦自侵略に対して構えを取る事ができた。後はこの場で、迎え撃つのみ。

 

 戦自侵攻まで、あと一時間・・・。

 

 

 

 

「アスカ、怖くない?」

 

『怖い?誰に物言ってんのよ、バカシンジ』

 

 エヴァ初号機と弐号機に乗り込んだシンジとアスカは、ケージの中で待機していた。出撃準備が急ピッチで進められていく中、二人の会話が誰かに聞かれる事はない。

 

「これから、僕たちが戦うのは人間だ。使徒じゃない。人を殺すなんて、僕たちにできるのかな・・・・・・」

 

『バカシンジ、あんたわざと言ってるでしょ。わざわざそんな言葉を口に出して、意地悪』

 

 シンジの口に、僅かに笑みが浮かんだ。そう、そうなのだ。今のシンジに恐怖は無い。シンジは既に『覚悟』を決めている。それはもちろん、この場に居合わせたチルドレンも同様だ。

 

 だから、シンジは半ばわかっていながら、アスカに問うたのだ。『覚悟はできているか』と。それは確かに、アスカからしてみればただの意地悪であった。

 

『シンジ、覚えてるでしょ?アタシ達が初めて出会った時・・・・・・』

 

「うん」

 

『28人。今でも忘れてはいないわ。そして、これからもアタシの中では刻まれていく・・・』

 

「一緒に背負うよ。アスカ。ずっと、一生」

 

『・・・・・・あんた、何よそれ?プロポーズ?』

 

「ふぁッ!?」

 

 アスカの切り返しに、思わずシンジの声が上擦った。その返しは流石に予想外だった。だが確かに、改めて考え直せばプロポーズに聞こえなくもない。ゴボボッとシンジの口から空気が漏れてLCLを揺らした。

 

『してやったり〜』

 

「ずるいよ、アスカ。そんな事を言うなんて」

 

『じゃあ、もっとマシなセリフを考えときなさい!この戦いが終わるまでにね!』

 

「そ、そんなの・・・」

 

「碇くん。結婚できるのは、18歳になってからよ?」

 

 シンジの横で、プラグスーツに身を包んだ『綾波レイが小声でつぶやいた』。

 

『エヴァンゲリオン初号機、弐号機!発進準備よろし!』

 

『いよっし!シンちゃん!アスカ!行けるわね!?ついでにレイも!!』

 

「「『はい!!』」」

 

 ミサトの言葉に、通信の向こうでゲンドウと冬月が息を呑んだのが伝わってくる。それを聞いたチルドレン達は、皆イタズラが成功した子供の様に意地悪く笑った。

 

『待て!レイ!!!』

 

『発進ッ!!』

 

 ゲンドウの静止の言葉を無視して、ミサトがGOを出す。初号機と弐号機に強烈なGがかかり、二機をジオフロントへと運んだ。

 

『してやったり!!準備はいいわね!?シンジ!レイ!』

 

「大丈夫、わたしはジョルノの『妹』だから。ジョルノの代わりにがんばるわ」

 

「はは。頼りにしてるよ!綾波!」

 

 

 

 

「どういうことだ!!葛城三佐!!」

 

 突然のレイを伴った初号機の出撃。それにゲンドウは激怒した。当然だ。綾波レイはゲンドウの『人類補完計画』の要だったのだ。

 

 それが、自分の発した命令とともに、手の届かない場所まで出撃してしまった。そんな事実を、どうして受け入れられようか。

 

 ゲンドウは懐から拳銃を抜くと、上階からミサトに向けて銃を構えた。

 

 だが──、

 

「お久しぶりです。碇司令。しかしまた、随分と物騒ですな」

 

 そのゲンドウの背後から、色気を帯びた男の声が投げ掛けられる。ゲンドウは拳銃を構えたまま、後ろを振り返った。

 

「貴様、生きていたのか!?」

 

 そこに居た男を見た冬月が驚きに声を上げる。

 

「加持、リョウジ・・・・・・」

 

「『アンチェイン・マイハート』」

 

 加持は右手から不可視の鎖を繰り出すと、ゲンドウの身体に一瞬で巻き付けていた。

 

「動かないでください。碇司令。俺の『スタンド』なら、即座に貴方の命を断つ事も出来ます。できれば穏便に済ませたい」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

「どいつもコイツも・・・・・・」

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 ゲンドウに巻き付いていた鎖が、『何か』の力によって突然弾かれた!

 

 その事実を加持が認識した瞬間、ゲンドウは加持の懐に潜り込み、加持の腹、顎と順に殴り飛ばす!体勢が崩れた加持の腹に、ゲンドウの回し蹴りが深く突き刺さった!

 

「ぐっ!?ごほッ!!」

 

「あまり私を舐めるな。私は気が短いんだ」

 

 ゲンドウが首を鳴らしながら、スーツの裾を正す。

 

「加持君!!」

 

「動くな!葛城三佐!!」

 

 ミサトと冬月が互いに銃を向け合う。第二発令所の上階では、ゆっくりと起き上がった加持とゲンドウが、互いに拳銃を構えた。

 

 夜明けを目前にして。

 

 ネルフ本部は戦略自衛隊の侵攻を前に、早くも混沌を極めていた。

 

 

 

つづく

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