ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 暗闇を進む僕の前に現れたのは、僕も見知った『スタンド』の姿だった。それは黒いローブに身を包んだ、『ゼーレ』のスタンド。

 

「『ピルグリム』。お前がここで出てくるのか」

 

 僕の取った構えに対して、しかし『ピルグリム』は首を横に振り、それを否定した。

 

【我らのスタンドは『運命』。『ピルグリム』はお前の案内役として遣わした。もとよりそのつもりであったが、ジョルノ・ジョバァーナ。合格だ。貴様を我らの元へ招こう】

 

「どーゆー風の吹き回しだ?国連の調査団を皆殺しにしておいて、今更そんな態度が通用するとでも思っているのか?お前は今この場で殺る。それに変わりはないんだからな・・・!」

 

【無駄なのだ、ジョルノ・ジョバァーナ。我らの『運命』は未だ、我らの死を予見してはいない。貴様がここで『ピルグリム』と戦おうと、ここで決着は付かないのだ。それは我らと拳を交えた、貴様自身が一番理解している事だな?】

 

 ちっ。コイツ、既にか。いや、『常に』か。自分の未来を『ピルグリム』で占っていた、というわけだな。

 

「死を怖がっているのか?あれだけの『死』を撒き散らしておいて、お前ら自身は『死ぬ事が怖い』と・・・覚悟はできていないと!そういう事かッ!」

 

【我らは死を『恐れる』。それゆえに『人類補完計画』を画策したのだ。貴様の言葉は正しい。だが貴様が思う以上に、我らの『死』は重いのだ】

 

 その言葉を聞いた途端、僕は『レクイエム』の拳を『ピルグリム』に叩きつけていた。当然、『運命の強制力』の加護を受けた奴らのスタンドに防がれてしまったが。

 

「お前らは、一体どれだけの魂を侮辱すれば気が済むんだ・・・!お前らの『人類補完計画』は全ての魂の侮辱でしかないッ!お前らは高みの見物で済ますつもりか!!」

 

【これは我らがスタンドの示した『事実』なのだ。貴様がどの様に捉えようと、我らが『この場で死ぬ事はない』。それとも、ここで永遠に決着の付かない戦いを繰り広げるか?終末の日が訪れるまで、戦い続けるのも悪くはないが・・・】

 

「そーゆーのはプッチとの戦いだけで十分だな。お前は今日、確実に始末する!」

 

【活きが良い・・・それでこそ、我らの儀式の贄に相応しい】

 

 『ピルグリム』が僕に背を向ける。黙ってついて来い、という事か。

 

 いいだろう。その誘いに乗ってやろう。お前らが何を考えて僕に遣いを寄越したのかは知らないが・・・・・・。

 

【そうそう。忘れるところであった】

 

 僕が胸の内で決意を新たにしていた時、『ピルグリム』は忘れ物でもしたかのようにこちらに振り返ってきた。

 

【すでにネルフには戦力を送り込んである。お前がどの様に我らに抗おうと、すでに戦局は動き始めているのだ】

 

 ・・・!?なんだと!

 

【数にして9体。エヴァンゲリオン量産型を投入した。もう間も無くネルフに到着するだろう。人類補完計画の要。もはやソレを止める事は叶わない】

 

「僕がお前達を倒したとしても、か?」

 

【仮に我らが死んだとしても、戦局は変わりはしない。どうだ?良ければ補完計画の完遂を、その目で見てみたいとは思わんか?】

 

「興味がない。今の僕は、お前らを仕留めるのに全思考を集中させている」

 

【ほぉ。仲間の安否は気にならないと。随分と薄情ではないか、ジョルノ・ジョバァーナ】

 

「僕には頼れる仲間たちがいるからな。彼らはきっと、お前らの想像の斜め上を行くだろう。そこに僕は必要ない」

 

 そう、僕は彼らを信じている。だからこそ僕は、一人でここまで来たんだ。

 

 シンジ君たちなら、きっと乗り越えられる。そう。きっと──。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 シンジとレイは初号機の中からジオフロントの天井を見上げていた。長い間培ってきた戦闘経験が、シンジの脳を刺激する。

 

「アスカ」

 

『うん』

 

「来るよ」

 

 初号機と弐号機の周りには、ありったけの武装が無造作に林の中に立ち並んでいる。その中でも虎の子、F型装備であるマゴロク・E・ソードを、初号機は手にしていたのだが・・・。

 

『まだそれは早いわよ、シンジ。まずは威力偵察。基本でしょ?』

 

「初めてアスカが戦った時は、一直線に使徒に向かっていったよね」

 

『昔の話よ。それより、今は目の前のことに集中!』

 

「ごめんごめん。そうだよね」

 

 初号機と弐号機の間にあった緊張感が少しだけ和らぐ。初号機は手にした大太刀を腰に佩くと、そばに置いておいた440mmガトリング砲を手に取った。横の弐号機はパレットライフルにバズーカ砲を両手に携える。

 

『シンジ君、アスカ、レイ。そろそろお出ましよ。準備はいい?』

 

『バッチシ!』

 

「大丈夫、行けます」

 

『そいつぁ結構。あんた達2機へのオーダーはたった一つよ』

 

 そこまでミサトは口にすると、大きく息を吸って命令を発した。

 

『蹴散らして』

 

「「『了解ッ!!』」」

 

 その三人のチルドレンの声が発せられると同時。

 

 朝日が、第三新東京市を照らした。

 

 

 

 

 水没した第三新東京市に戦自の一個師団が続々と進軍していく。多数の戦車やVTOL機が無線を通してお互いの行動を確認しながら、半ば湖と化した第三新東京市に攻撃を開始した。

 

 ネルフ第二発令所内は、鳴り止まない警告音で満たされていた。

 

『大観山第8から17までのレーダーサイト沈黙!!』

『特科大隊、強羅防衛線より進行してきます!』

『御殿場方面からも二個大隊が接近中!』

 

 ネルフ側も黙ってやられているわけではない。第三新東京市に残った兵装ビルからミサイルを発射して応戦している。しかし、多勢に無勢。ネルフ周辺は瞬く間に戦場と化していった。

 

 また、戦自の歩兵の侵攻も進んでいた。ネルフ本部への出入り口ゲート前では、見張りの戦闘員が不安な面持ちで銃を構えていたが、背後より忍び寄った戦自隊員によってナイフで奇襲され、「うっ」という軽い言葉を遺して絶命した。戦自隊員が慣れた手つきでゲートの端末を操作する。ゲートのシャッターが開くと大量の戦自隊員が雪崩れ込んできた。

 

 ネルフ内部に侵入した戦自隊員達は、一切の容赦なく、非戦闘員であろうとお構いなしに虐殺していく。ネルフ本部内を爆炎と死が満たしていく。

 

 ネルフ本部内で次々と血が流される。第二発令所の空気がどんどんと張り詰めてゆく。

 

『台ヶ丘トンネル使用不能』

『西5番搬入路にて火災発生』

『侵入部隊は第1層に突入しました』

『南ハブステーションは閉鎖』

「西館の部隊は陽動よ!非戦闘員は下がらせて!」

 

 ミサトは全体の指揮を取りながらも軽く舌打ちをした。戦自の一斉攻撃は事前の情報で知っていたにも関わらず、ネルフの受けているダメージはミサトの予想を超えていた。これは戦自の作戦と侵攻速度が上だったか。

 

 だが、やられっぱなしも性に合わない。

 

 ミサトは初号機に通信を繋いだ。

 

「シンちゃん、レイ!聞こえる!?」

 

『聞こえてるよ!ミサトさん!』

 

「ごめん、初号機は今から地上に移動させる。上に上がったら、戦自を蹂躙して!S²機関のある初号機なら無制限に暴れられるわ!奴らの侵入を元から断つの!いい!?」

 

『了解!』

 

『ミサト!アタシは!?』

 

「アスカはそのままジオフロント内にて待機。ただし、敵戦闘機なんかの侵入を目にしたら全部撃ち落として!」

 

『わかったわ!リニアはどうする!?ぶっ壊しとく!?』

 

「あなたの判断に任せるわ!とにかく地上では初号機、地下では弐号機を暴れさせたいの!なんならシンちゃん、地上部隊は殲滅してくれると助かるわ!!」

 

『わかりました・・・!』

 

 そう返答した初号機がリフトに乗りなおす光景が、発令所のメインモニターに映し出される。ガトリング砲とパレットライフルを背に担ぎ、初号機はリフトから地上へと搬送された。

 

『おおっし!じゃあ悪いけどまずはリニアを破壊するわ!敵の侵入、これで防げるかな!?』

 

「一部はね!任せた!」

 

『任されたわ!!』

 

「あ、アスカの弐号機はアンビリカルケーブルに気を付けて!ケーブル設備は全部出しておくから、切断されたらすぐに切り替えて!」

 

『ラジャー!』

 

「さってと・・・」

 

 ミサトの顔に、獣の様な笑みが刻まれる。

 

「やっちゃってちょうだい、シンちゃん、レイ。戦自如きが、動き出したエヴァを止めることができるのか、高みの見物といこうじゃないの・・・!」

 

 

 

 

 初号機が地上に出現した瞬間だった。第三新東京市のいくつかの射出口にはすでに戦自が待ち構えており、エヴァの出撃に合わせて一斉砲火が浴びせられる。

 

 しかし、悲しき哉。

 

「ATフィールド全開!」

 

 シンジの裂帛の気合いとともに、全ての砲弾やミサイルは初号機に届かず、赤い光の障壁によって阻まれてしまう。

 

「相手は人間・・・・・・だけど!!」

 

 シンジは背中に背負っていたガトリング砲を構えると、戦自の陸上部隊に向けて弾丸を掃射した。次々と上がっていく爆炎!

 

「碇くん、上空にも!」

 

「ありがとう綾波!上の奴らは・・・」

 

 シンジは素早くガトリング砲を手放すと、空を飛び交う戦闘機群に向けてパレットライフルの連射をお見舞いした。被弾した戦闘機が次々と墜落していく。

 

「ごめんなさい。本当は殺したくない。けど、あなた達が止まってくれないならッ!」

 

 シンジは『覚悟』を決めて、人を殺めていく。これが『人類補完計画』を止めるための最良の手段だと信じて。

 

 その獅子奮迅の活躍を見せる初号機を、戦自隊員たちはどの様に捉えるだろう?

 

「エヴァンゲリオン初号機・・・・・・」

 

「まさに、悪魔か・・・ッ!!」

 

 紫色の鬼神が吠える。

 

 エヴァンゲリオン初号機は戦自隊員達にとって、まさに恐怖の対象として、その瞳に恐怖を植えつけていった。

 

 

 

つづく

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