ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

130 / 141
130.

 

 暗闇に潜む幾つもの影。それは碇ゲンドウ自身も初めて目にする光景。

 

『デミ・・・・・・デミ・・・・・・』

 

 かつて加持に寄生し、ジョルノを追い詰めたスタンド『パニック・アット・ザ・ディスコ』。その卵型のスタンドが、暗闇から徐々にゲンドウに迫ってくる。

 

 だが。

 

『オー・ファーザー』

 

 ゲンドウが右手を掲げる。途端、ゲンドウの右手に移植されたアダムを中心として、空間の光が捻じ曲がった。

 

 次の瞬間、『パニック・アット・ザ・ディスコ』はこの世界から姿を消していた。

 

「ち・・・・・・キリが無いな」

 

 ゲンドウは、生と死の狭間を行き来したことによって、今や真っ白に染まってしまった自身の髪をかき上げる。その姿は老人のソレを彷彿とさせたが、その態度からは余裕が窺えた。ゲンドウの言葉の通り、暗がりからはいくつもの卵型のスタンドがゆっくりと迫ってくる。

 

 ゲンドウの背中から生える、機械の翼。いや、そう見えるというだけであるが、それこそが『オー・ファーザー』のスタンドのヴィジョン。それが一瞬翻ったかと思えた瞬間。

 

 今度は、ゲンドウの姿がこの場からかき消えていた。

 

 

 

 

 第三新東京市。そこで暴れ回る初号機に対し、戦自はなす術を持たなかった。紫の鬼神の進撃は、まさしく人類最大の敵であった使徒の侵攻と同義である。エヴァを持たない戦自に、エヴァを止める手段はない。

 

『いぃ〜わよ!シンちゃん!レイ!その調子で、戦自を殲滅しちゃって!』

 

 通信からミサトの浮かれた声が聞こえてくるが、シンジは歯を食いしばりながら戦自を蹂躙していたのだ。決して人殺しをしたいわけではない。退いてくれるなら、できれば無用な殺生はしたくないというのがシンジの本音だった。

 

『皆さん!これ以上は無意味です!お願いだから、ここから退いて・・・・・・』

 

 シンジが鬼神を操りながら、戦自隊員達に降伏を勧告した時だった。

 

『ッ!?第三新東京市上空よりN²兵器投下!!』

 

『!?マズい!シンジ君!レイ!ATフィールドぉ!!』

 

 第三新東京市の上空を覆っていた夏の入道雲が、丸い円を描いた様に拡散した。空を割って降ってくるのは、人類最強の火力を誇るN²兵器。

 

「ッ!?フィールド、全開!!」

 

 シンジが初号機の両手を空に掲げる!そこから天を覆う様に展開される赤光の八角形!初号機のATフィールドはN²兵器の投下を確かに堰き止めたが・・・、

 

「うおおおおおおお!?」

 

「きゃあああッ!!」

 

 N²兵器のあまりの威力!それを止め切ることができず、初号機は周りの大地共々、地獄の業火に包まれた!!

 

「うああああああああああああ!!?」

 

 地面が、陥没する。ネルフ本部の直上に建設されていた第三新東京市。半ば湖と化していたかつての防衛都市はこの瞬間、人類の手にした破滅の炎によって消滅した。ネルフ本部を守っていた防壁も纏めて、人類最大の火力が根こそぎ吹き飛ばしてしまったのだ。

 

『あーあ。言わんこっちゃない』

『奴ら、加減てものを知らないのかよ!』

『無茶をしおる・・・・・・』

 

『シンちゃん!レイ!無事!!?』

 

 ネルフのオペレーター陣と冬月の嘆きに近い言葉を聞きながら、シンジは自分に問い掛けるミサトの言葉を捉えた。その瞬間、初号機の背中に受けた強い衝撃。ジオフロントの天井を焼き尽くして溶かしたN²爆雷を耐えた初号機が、ジオフロントの地面に墜落した瞬間だった。

 

 ジオフロントの天井に、巨大な円状の穴が開いていた。

 

『シンジ!』

 

「だ、大丈夫だよ!アスカ!」

「私たちなら、平気・・・」

 

 だが次の瞬間、

 

『まだよ!みんなATフィールドを張って!!』

 

 ミサトの声に反応した初号機と弐号機が、ジオフロントに開いた大きな穴を見上げる。そこからまさしく雨のように降り注ぐのは!

 

「弾道ミサイル!?」

『ふざっけんな!こんちくしょーーーッ!!』

 

 ミサイルの雨!!

 

「アスカ!!合わせて!!」

『わかってるっちゅーの!!』

 

 弐号機に抱き挙げられた初号機が、弐号機とともに両手を空へ掲げる!

 

「『ATフィールドォォオオオ!!全開!!』」

 

 眩い赤光が、降り注ぐミサイルを防ぐ!!それでも全てのミサイルを止められるわけではない。ATフィールドの範囲内に収まらないミサイルの雨が、ジオフロント内の自然を蹂躙した!

 

『・・・・・・いや!もうイヤ!!』

 

 通信を通して、伊吹マヤの悲鳴が聞こえる!

 

『ねぇ!?どうしてそんなにエヴァが欲しいのぉぉ!?』

 

 その問いに答えたのは──、

 

『エヴァが、人類補完計画の最後の要だからよ!!』

 

 ミサトだった。

 

『人類補完計画の提唱者、人類補完委員会、それにゼーレ!奴らは、エヴァを使って全人類を、いや、全ての生物を!!滅ぼすつもりなのよ!!』

 

「そんな事は!させないッ!!」

 

 ミサトの声に応えるのは、この長き旅を通じて成長した碇シンジと綾波レイ!そして、弐号機を駆るアスカだった!

 

『アタシ達が!人類補完計画をぶっ潰す!!』

 

 爆炎の嵐を吹き飛ばして、立ち上がるエヴァンゲリオン初号機と弐号機!!

 

「まだだ!まだまだ!僕達の心は折れていない!」

 

『何が来ようと!アタシ達は負けない!』

 

「わたしたち、生きてるから・・・!」

 

 

 

 

 

『「「来るなら来いッ!ゼーレッ!!」」』

 

 

 

 

 

 エヴァに導かれし、三人の少年少女。

 

 その眼差しが空を射抜く。

 

 そして、その視線の先には!!

 

『ジオフロント上空に複数の未確認飛行物体が出現!!』

 

『遂に来たわね!!』

 

 ネルフユーロ軍によって搬送された、九つの機影!!

 

『エヴァシリーズ!!』

 

「完成していたのね・・・」

 

「アスカッ!!」

 

 シンジはアスカに呼びかける!それを受けた弐号機は側に置いてあったF型装備、全領域兵器マステマを手に取った!

 

『シンジ!』

 

「ああ!」

 

 そしてシンジは、腰に携えていたマゴロク・E・ソードを手にして──!

 

『「かかってこい!!」』

 

 輸送機から解き放たれた、九つの天使の如きエヴァンゲリオン量産機。それらが描く輪舞に対して、武器を構えた!!

 

 

 

 

 第三新東京市。その攻防を映像を通して目にしたゼーレの長、キール・ローレンツは、「ふむ」と一言をこぼした。

 

「我らの攻撃、それを防ぐか」

 

「N²爆雷。それすらも防ぐとは・・・・・・」

 

「なに。使徒であれば容易に防いだもの。アダムより生まれしエヴァに、防げぬ道理無し」

 

「左様。それゆえに、厄介だ」

 

「まぁ、良い。毒は同じ毒を以て制すれば良いだけのこと」

 

 ゼーレの他の面々の言葉を宥めながら、キール・ローレンツはその口に笑みを浮かべていた。

 

「ジョルノ・ジョバァーナも、じきにここへと現れるだろう。依代は誰でもよい。絶望したジョルノ・ジョバァーナ。もしくはゲンドウの息子。あるいはリリスの半身。または弐号機の娘」

 

「死を望むものこそが、依代に相応しい」

 

「絶望を。この世の全てを呪う絶望を」

 

「植え付ければ良いだけの事。我らの儀式の贄に相応しければ」

 

「だが、碇ゲンドウ。奴の補完計画はどうする?」

 

「奴の補完計画は、我らの妨げになるものではない。泳がせておけばよい。下らぬ愛を求めるならば、一人くらいの例外は認めよう」

 

「左様。我らの願いは全人類の魂の昇華と救済にあれば」

 

「あの愚か者の願いなど、叶えたところで変わりはない。むしろ奴自身が補完計画の完遂を望むのであれば」

 

「或いは」

 

 暗闇に、キール・ローレンツと12枚のモノリスが浮かび上がる。

 

「奴が我らの救いとなり得るか。楽しみだ」

 

 そう言って、キール・ローレンツは静かに笑った。

 

 その眼下に、儀式の場である、LCLのプールを見据えたまま。

 

 

 

つづく

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。