ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 真っ白な、まるで天使のような翼を持ったエヴァンゲリオン量産機。それらが陽光を背に、弧を描いてジオフロントに降りてくる様は、まるで荘厳な宗教画のようであった。

 

 そこへ──、

 

『開幕一発!撃つわよ!ミサトッ!』

 

 全領域兵器マステマに装備されていた二つのN²兵器のうち、一発を撃ち込むアスカ!

 

 その一発がジオフロント上空で爆炎を上げる!飛んでいた量産機共は爆炎に巻き込まれて、あるいは爆風に煽られて、次々とジオフロントに墜落していった。

 

『シンジ!!』

 

「おおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 落ちた量産機目掛けて初号機が駆ける!ヨロヨロと立ち上がった量産機の首を──、

 

「ハァァアアアアアアアアッ!!」

 

 手にしたマゴロク・E・ソードで、叩き斬った。切られた傷口から大量に血を噴出させながら、最初のエヴァ量産機が地面に倒れる!

 

『二匹目、もーらいッ!!』

 

 初号機の背後では、アスカがマステマに付随していたガトリングを乱射し、量産機の一体を蜂の巣に変えている所だった。

 

 残りの量産機がヨロヨロと立ち上がる。そのそれぞれが手にした諸刃の剣を構えると、量産機はニヤリと笑った。それは目の退化した深海魚のような不気味な顔をしていたが、

 

『その顔!全部アタシらが叩き潰したるわ!』

「碇くん」

「うん!行くよ、綾波、アスカ!」

 

 少年たちが怯む様子はまるで無い。初号機が先陣を切り、諸刃の剣を構えた量産機共に突っ込んでいく。量産機が振り上げた諸刃の剣を振り下ろそうとした瞬間、それよりも早く初号機の大太刀の刃が煌めいた。振り下ろされるはずであった量産機の両腕は切断され、あらぬ方向へと吹き飛んでいった。

 

 初号機はそのまま量産機の脇を通り抜ける。トドメは後続の弐号機。それが手にしたマステマに付属した刃で以て量産機を串刺しにした。

 

「これで三体!」

『はん!楽勝ね!』

「!アスカ、後ろ・・・!」

 

 弐号機は咄嗟に背後に振り返る!その目に映ったのは、諸刃の剣を振りかぶる二体の量産機の姿。

 

『うあ、こんの!』

「させるかッ!!」

 

振り下ろされた諸刃の剣を、弐号機の後ろから駆け寄ってきた初号機が大太刀でもって割って入り、止める!ガギィンッと重い衝突音がジオフロントに響いた。刃の重量、という意味では諸刃の剣2本の方が大太刀を遥かに上回るが──、

 

「ATフィールド、全開!!」

 

 手にしたマゴロク・E・ソードの刃が、ATフィールドを纏った。それが意味するところは、絶対領域の刃。

 

 その刃に、断ち切れぬ物無し!

 

「うおおおおおおおッ!!」

 

 初号機が大太刀を無理やりに振り抜く。大太刀が受け止めていた諸刃の剣は、まるで熱したバターでも切るようにするりと両断された。それだけに止まらず、ATフィールドの刃は二体の量産機ごと両断していた。

 

『これで残りは四つね!シンジ!』

 

「ああ!勝てる!僕らならやれるよ!」

 

『アスカ!シンちゃん!一旦距離を取って!ゼーレの最終戦力よ!なにも無いはずがないわ!』

 

「『了解ッ!!』」

 

 ミサトの命令に従い、初号機と弐号機は量産機どもから距離を取った。残った四体のエヴァ量産機は、あっという間に仕留められた量産機の残骸を見遣る。

 

 しかし、その口はニタリと、さらに笑みを深くした。

 

『なんなのよ、こいつら。薄っ気味悪いわね』

 

 そんなアスカの言葉を肯定するような、不気味な光景がパイロット達の前で起きた。

 

 仕留めたはずの量産機共が、うめき声を上げながら立ち上がってくる。その傷を、ゆっくりと再生させながら。

 

「な、なんだよ。これ・・・・・・」

 

 シンジの呟きに答えたのは、第二発令所の冬月だった。

 

『まさかS²機関搭載型を9体全機投入とは、大げさすぎるな』

 

「S²機関!?それって初号機と同じ・・・・・・」

 

『シンちゃん、レイ、アスカ!コイツらアンビリカルケーブルが無くても無限に動けるわ!ついでに言うと強力な再生能力も持ってる!どうにか敵の弱点を見つけて!たぶん、エヴァのコアを破壊すれば、なんとかなると思うけど・・・』

 

「僕たちで、探すしか無いってわけですね」

 

『上等!いつも通りよ!しらみ潰しに叩き潰したげるわ!!』

 

 復活した機体も含めて、計9体のエヴァンゲリオン量産機。それを前に、初号機と弐号機は武器を構え直して、一気に突っ込んでいった!

 

 

 

 

 ネルフ本部の地下深く。セントラルドグマの最深部、ターミナルドグマ。その奥にあるリリスを封印していた巨大な扉、ヘブンズドアーの前に、碇ゲンドウは辿り着いていた。

 

 カシャンと軽い音を立てて、ヘブンズドアーのロックが解除される。扉が開き、中から光が溢れてくる。白髪となったゲンドウは、両の手をポケットに入れたまま、悠然と光の回廊を歩み始めた。

 

 何度も足を運んだ場所。自身の悲願を叶える場所。それを待ち望んでいたゲンドウの心は、しかし穏やかではなかった。手元にあるべき人類補完計画の最大の要であった綾波レイの不在。欠けたリリスの心が無ければ、きっと補完は不完全な形で終わってしまうだろう。

 

 その事実がどうしようもなく自身を苛立たせる一方で、ゲンドウの頭は冷静に働いていた。ゼーレの『矢』によって手にした力。そして、アダムのATフィールド。この二つを手にした自分の体は、もはや人間のそれとは根本から異なっているという実感がある。

 

 神に近しい体。アダム、リリスと並ぶ、第三の神。この身を滅ぼせる者はいないだろう。少なくとも、ただの人間にはかすり傷一つ付けられないだろうという確信がゲンドウにはあった。

 

 あとは、アダムを取り込んだこの身と、リリスとの禁断の融合のみ。

 

 回廊を進み、ゲンドウの目に十字架に磔にされたリリスの姿が映る。

 

 ゲンドウの顔に、歓喜が刻まれる。

 

 しかし、

 

「ハエがいるな。それも、三匹も」

 

 ゲンドウの呟きと共に、鎖の『スタンド』がゲンドウに襲い掛かった!

 

「無駄な事を・・・」

 

 ゲンドウのATフィールドが陰に潜んでいた加持の『アンチェイン・マイハート』を弾き飛ばす!だがそれと入れ替わるように飛び出してきたのは!

 

「隙だらけ、だよ!」

 

 渚カヲルが、自身のATフィールドでゲンドウのATフィールドを中和した!

 

「いまだ!リッちゃん!!」

 

 加持の合図と共に、物陰に潜んでいた赤木リツコが飛び出した!手には拳銃!その照準は、ゲンドウの額へとピタリと定まっていた!

 

「さようなら!ゲンドウさんッ!!」

 

 別れの言葉と共に、リツコの瞳に涙が浮かぶ。だが、放たれた銃弾は寸分違わずゲンドウの額へと導かれ、

 

「『オー・ファーザー』」

 

 ゲンドウの目の前で、銃弾は消えた!

 

「「「なッ!!?」」」

 

「これは返そう」

 

 その銃弾が、ゲンドウの眼前の空間から飛び出す!狙いは一番近くにいた、渚カヲル!

 

「うぐッ!」

 

 銃弾をなんとか躱した渚カヲルが地面に伏せる。

 

「まるで虫ケラだな。ハエめ」

 

 そうゲンドウが罵った瞬間、渚カヲルの視界が歪んだ。

 

「!?」

 

 違う。視界が歪んだのではない。これは──!

 

「離れろ!渚くん!」

 

「離れるがいい。タブリス」

 

 空間が、『圧縮』されている!圧縮された空間が反動を付けて元に戻ろうとした時、

 

「ぐあああああああああああ!?」

 

 弾かれた空間は、そのまま強大な衝撃波を生み出した!弾き飛ばされた渚カヲルが地面に投げ出され、ゴロゴロと転がる。

 

「大丈夫か!渚くん!」

「な、なんとか、ね。全身を思い切り打たれたから、しばらくは動けないけど・・・」

 

「リョーちゃん!渚くん!避けて!」

 

 リツコの声に反応した加持は咄嗟にカヲルのシャツを引っ張ると、そのまま地面を転がった。パンッ!パンッ!と軽い発砲音が、加持の耳のすぐ横を通り抜けていく!

 

「いやはや、参りましたな碇司令。拳銃にATフィールド、さらには『スタンド』まで身につけるとは」

 

「苦渋の選択だったがな。だが、私の得た力は素晴らしいものだった」

 

 そう宣ったゲンドウの姿が掻き消える。いや、消えたのでは無い!これは!

 

「『空間圧縮の反動』!それを利用した、超高速移動か!?」

 

「ほお、よく見ている。観察眼は大したものだな。加持君」

 

 一瞬で加持の背後に移動したゲンドウが右手をかざす。その途端、加持の周りの空間が歪み始めた。

 

「『空間の圧縮』は捕えた者を逃がさない。もし圧縮をし続けたら、どうなると思う?」

 

 加持の視線が、咄嗟に周囲に配られる。その目が捉えたのは──、

 

「限界まで圧縮された空間は、消え去るのだ。この世から」

 

「リョーちゃん!」

 

 必死に伸ばされた、リツコの右腕!そこに加持は自身の『スタンド』を伸ばし、リツコの右腕に絡ませた!

 

「うぐ!ああッ!」

 

 右手に見えない『鎖』が絡みついたのを感じ取った瞬間、リツコはその『鎖』を思い切り引っ張った。しかし、それを上回る勢いで空間が圧縮されていく!

 

「無駄な事だ。私の『オー・ファーザー』は逃がさない。私という存在から、逃れられると思うな」

 

「ああ、そうだな。俺は逃れられない・・・・・・逃げるつもりもないがな!渚くん」

 

 加持は足元にいたカヲルに向かって、手にした拳銃をパスした。それを宙で受け取ったカヲルは、すぐさま銃を構えると、

 

「やっぱり隙だらけだね?」

 

「ちっ・・・」

 

 至近距離で発砲した。途端、加持が捕えられていた圧縮空間が元に戻る。その反動を利用して、ゲンドウはその銃弾を躱した。逆に加持はその反動で吹き飛ばされ、地面に投げ出される。

 

「本人は、空間圧縮のダメージを受けないみたいだね」

 

「ごほ・・・だな。君たちには見えないだろうが、碇司令の背中にある翼。あれが碇司令自身のダメージを軽減しているんだろう・・・!」

 

「加持くん、いや、めんどくさいからリョーちゃんでいいや。何か策はあるのかい?」

 

「今はまだ思い付かない、が、手数が欲しいな。その拳銃はそのまま渚くんが持っていてくれ」

 

 加持とカヲルが地面から立ち上がる。その背後で、リツコもまた拳銃を構え直した。

 

「うっとおしいハエ共が・・・・・・」

 

「碇司令。あなたが圧縮できる空間だが、恐らく一箇所だけだな?射程距離も、そこまで遠くまで届くもんじゃあない。せいぜい、5メートル前後ってところか」

 

「・・・・・・」

 

「もし複数、しかも射程距離が長いのであれば、俺たちが現れた途端に全員圧縮されて消されていただろうし、それができないからこそ、俺たちはまだ生きている」

 

「だからどうした?お前たちに私を止めることはできない。すでにヒトの身を捨てた私を、お前たちが殺せるとでも?」

 

「さあな。ここから先は『神のみぞ知る』ってね」

 

 加持は鎖をギャリンッと地面に打ちつける。その横に、リツコとカヲルが並んだ。加持は懐からタバコを取り出すと、口に咥えて火をつける。

 

 ネルフ最深部のこの地で、人外となったゲンドウと三人の人間との戦いが、始まろうとしていた。

 

 

 

つづく

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