ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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   【ルール・ザ・ワールド】

 

 その言葉を『ピルグリム』が口にした瞬間だった。ゼーレの動きが、一瞬止まる。

 

 何が起きるかはわからない!だがとにかく、今は一度離れなくては!

 

 僕は襲い掛かってくる『ピルグリム』の集団から距離を取る。LCLのプールの上で戦っていた『ピルグリム』の数は、すでに13体にまで増えていた。

 

 その全ての『ピルグリム』が、動きをピタリと止めている。

 

 僕はプールサイドに立っているキール・ローレンツに目を向けた。なんだ?奴はまだ、『矢』を使用していないようだ。

 

 そのキールはというと、苦虫でも噛んだかのように苦い顔をしている。

 

 何かが起きたようだな。それも、奴らにとって都合の良くない事態が。それがシンジ君達によるものであれば僕としては万々歳なんだが。

 

 ちッ、と小さな舌打ちが聞こえる。キールの発したものだ。

 

「碇ゲンドウめ・・・不完全な状態で儀式を始めたか・・・・・・我らも急がねばならんようだな」

 

 その言葉が耳に届いた瞬間、今度は僕が舌打ちをしたくなった。どうやら碇ゲンドウが、不完全ながらも人類補完計画を発動させたようだ。

 

 僕にネルフの状況をどうこうする術はない。ここから先は、シンジ君達を信じるしかない。だから、僕はこれ以上ややこしい事態にならないように、せめて『ゼーレ』だけでもこの場で叩きのめさなくては・・・!

 

 そう思い、僕は一歩を踏み出した。今の『ピルグリム』は隙だらけだ!コイツらの壁を越えて、『ゼーレ』に拳を叩き込むには今しかない!

 

 そう思った瞬間だった。

 

「すまんな、ジョルノ・ジョバァーナ。遊びはここまでだ。我らとしても儀式の準備があるのでな」

 

 そうキールは宣うと、手にした『矢』を自分の胸に突き立てた。それと同時に、周囲にいた『ピルグリム』たちが一斉に光を放ち始める。

 

 マズい!今のうちに、キールを叩きのめさなくては!!

 

 僕は発光する『ピルグリム』たちを無視して、キールに詰め寄る!だがそれを塞ぐようにして『ピルグリム』たちが僕の進路に押し寄せてきた!

 

 良いだろう!邪魔をしようというのなら、先にお前達『スタンド』から始末してやる!

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄・・・・・・・・・ッ!!?」

 

 僕の『レクイエム』の拳のラッシュ!しかし、叩き込んだはずの拳にまるで感触がない!なんだ?まさか、既に奴の『レクイエム』は発動しているというのか!?

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・と空気が唸りを上げていく。僕はとっさに『ピルグリム』たちから離れると、両の手を後ろで組んで奴らの隙を探った。

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・?

 

 

 

 

 

 なんだ?何かが、おかしい。

 

 僕の手の感触がない。何が起きている?僕はまだ奴らに何もされていない、というのに。

 

 僕は後ろ手に組んでいた両手を解いて前に持ってくる。なんだろう。やけに水っぽい音がする。ぽちゃんぽちゃんと、何かが『LCL』のプールに垂れて音を立てている。

 

 僕の心臓がドクン、ドクンと大きく波を打つ。『マズい』。この感覚、すでに何か致命的な事が起きている気がする。

 

 果たして、僕の両手は──、

 

「な、なにィィイイイイイイイイイイッ!?」

 

 ──肘から先が、無くなっていた!

 

 バカな、いつの間に!?痛みも感じずに、だと!?

 

 僕は咄嗟に『レクイエム』を発動させる!すぐに僕の両手は『何も起きてない』という事実に上書きされるが、

 

「な、バカな!何が起こっているんだぁあああッ!?」

 

 復活した両手が、『オレンジ色の液体』となってパシャンと弾ける!

 

「うおおおおおおおおおおおおおお・・・!?」

 

 僕は何度も何度も、『レクイエム』を発動させる!しかし、何度腕を復活させようとも、その度に僕の腕が『オレンジ色の液体』となって溶けて無くなってしまう。

 

「はっ!?」

 

 僕は自身に起こっている異常に目を奪われていたが、僕の瞳がさっきまでプールの上に浮かんでいた『ピルグリム』達を探す!

 

 いない・・・いつの間に!?

 

 しかも、なんだ、これは!『LCL』のプールが光っている?しかも、幾つもの『光の十字架』が、プールの水面に浮かび上がってきている!

 

「な!なんだ、これは・・・!この『現象』は、いったい・・・・・・」

 

「『ルール・ザ・ワールド』は『生命の在り方を変える』。これはすなわち、『神の儀式の再現』だ」

 

 キールの声が届く。だが!奴が何を言っているのかはまったくわからない!

 

「『人類補完計画』の擬似的な再現。それは、このプール25メートル四方に限った再現ではあるが、本来ヒトの身では成すことのできない、あり得ざる神の儀式の再現なのだ」

 

 キール・ローレンツは手にした『矢』をプールに投げ込んだ。ぽちゃんと音を立てたそれは、プールの中に沈んでいったかと思うと、発光し、そのカタチを見る見るうちに変えていく!

 

 それは・・・!

 

「『ロンギヌスコピー』。本来我らの知識、技術では決して再現できない神が与えし遺物。それを我らは『レクイエム』の力を以て、限定的ではあるが再現したのだ。・・・・・・ジョルノ・ジョバァーナ。お前は、どうやって全人類をLCL化させると思う?」

 

「な、なに・・・!」

 

「『アンチATフィールド』の発生。それこそが、全生命の持つATフィールド、心の壁を取り払い、LCLへと還ることのできる唯一の手段。本来はアダムとリリス、生命の実と知恵の実を宿したエヴァを必要とした儀式。それを我らは、13体のスタンドとレクイエムで再現する事に成功したのだ。この意味がわかるか?」

 

 アンチATフィールド?ロンギヌスコピー?はっきり言って、何を言っているのかまるでわからない。

 

 だが、僕の魂が叫んでいる!『危険』だと!!

 

『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム!!』

 

「無駄だ」

 

 僕の『スタンド』に、13体の『ピルグリム』が殺到して動きを封じる!本来、どんな能力だろうと、僕の『レクイエム』には辿り着けないはずなのに!

 

 まさか、この【ルール・ザ・ワールド】は!

 

「神の御業である『アンチATフィールド』を防ぐ術はない。『レクイエム』とはいえ、たかが一人のスタンド使いごときがどうする事もできはしまい。お前は、いや、お前の能力は『生命を生み出す能力』。知恵の実を宿しながら生命を操る能力は、我らの限定的な儀式の贄に相応しい・・・」

 

 キールが、槍を投げる構えを見せる。その老体からは信じられないほどの速度で槍が投げつけられ──、

 

「うっぐ、あああああああああああ・・・!!」

 

 槍が、『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』を貫いた!途端、槍が生き物のようにうねって『スタンド』に絡みついていく!そして僕の『スタンド』を飲み込んだ槍は、まるで何かの『樹』のような姿を象った。

 

「やはり命の胎芽たる『生命の樹』と成ったか」

 

 そして、その『樹』はLCLのプールへとゆっくり沈んでいく。

 

「ま、待て・・・・・・!」

 

「そのプールは、今までの儀式の贄となった者たちの成れの果て、だ。光栄に思うがいい。貴様もその一端に加われるのだ」

 

「待てッ!ゼーレッ!!」

 

 パシャン、と、僕の足元から音がする。目を向けて見れば、僕のズボンからオレンジ色の液体が流れ出ている。

 

 僕を、アンチATフィールドとやらでLCLへと還元するつもりか!?

 

「受け入れろ。ジョルノ・ジョバァーナ」

 

「う、うおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・!」

 

 マズい!僕の、意識が、消える!溶けていく!

 

 薄れていく意識の中で、誰かの声が聞こえた気がする。

 

 僕の元に、誰かが近付いてくる。

 

 誰、だ?逆光で、よくわからない。

 

 僕は消えてしまった腕をその人物に必死に伸ばして。

 

 

 

 

 

 パシャン、と音を立てて、この世から消え去った。

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

「遂に我らが真の儀式に備える供物が整った」

 

「あとは碇ゲンドウ。奴が発動させた補完計画。エヴァシリーズを用いて儀式を行うか否か」

 

「エヴァンゲリオン初号機、そして弐号機の抵抗。虚しきものだが、無視はできまい」

 

「左様。どちらか一方は、神の儀式に必要だ」

 

「願わくば初号機による遂行を望むが、今の碇ゲンドウに事を成せるか」

 

「それこそは『神のみぞ知る』。だが、我らの準備は整った・・・・・・では」

 

『エヴァシリーズを、本来の姿に』

 

『我ら人類に福音を齎す真の姿に。等しき死と祈りをもって人々を真の姿に』

 

 ゼーレが人類補完計画を言祝ぐ中で、

 

「それは魂の安らぎでもある。では儀式を始めよう」

 

 小さな、本当に小さな波が、大量の十字架が浮かぶLCLのプールを揺らしていた。

 

 

 

つづく

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