ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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『ああああ!!もうっ!コイツらなんなのよッ!イライラするぅ!!』

 

「ダメだ・・・・・・斬っても斬っても立ち上がってくる!コアもエントリープラグも破壊しているはずなのに、どうして・・・・・・」

 

「不死身・・・・・・どうすれば?」

 

『ぬぁんてインチキ!!使徒だってコアをぶっ壊せば死んでたっつーのにッ!』

 

 初号機の手にしたマゴロク・E・ソードが陽光を反射して煌めく。と同時に、目の前にいた二体のエヴァ量産機の胴体が飛んだ。その初号機の背後を守るようにして弐号機は、武器をマステマから軽装備であるソニックグレイブに持ち替えてエヴァシリーズと対峙している。

 

 初号機と弐号機はエヴァシリーズとの戦いを繰り広げていた。だがそれは、果ての見えない泥沼の戦い。S²機関という名の無限動力を手にしたエヴァシリーズは、コアを破壊しようともその身を再生し続けた。

 

 決して強くはない。エヴァシリーズそれぞれの戦闘能力は高くはなかった。手にした諸刃の剣を振り回すだけ。だが、その戦闘能力は時間が経つほどに引き上げられ、遂には背中に翼を展開して空から襲い掛かるようになってきていた。不死身のエヴァが高速で空から襲い来る。それだけでシンジとアスカの精神は追い込まれ、彼らの口から弱音が漏れ始めていた。

 

『しゃらくさい!!まとめて原形留めないほどぶっ壊せば・・・・・・』

 

 そう思案するアスカが傍に放っておいた全領域兵器マステマに手を伸ばす。マステマに装填されていた最後のN²兵器。それを用いて量産機どもを吹き飛ばそうとアスカがマステマを持ち上げた時だった。

 

 

 

 

 

   わ

      り。

 

 

 

 

 

 強烈な悪寒と共に、初号機と弐号機の動きが一瞬止まる。

 

「な、なんだ?」

 

 シンジが戸惑いの声を上げた。

 

『ターミナルドグマより正体不明の高エネルギー体が急速接近中!!』

『ATフィールド確認!』

『分析パターン青!』

『まさか、使徒!?』

 

 通信を通して、第二発令所の面々が慌ただしく状況報告を上げていく。

 

『いえ、違うわ!これは・・・!?』

 

 

 

『ヒト!人間です!!』

 

 

 

『ぎゃああああああああああああ・・・!』

 

「伊吹さんッ!?ミサトさん!何があったんですか!?ミサトさん!!」

 

『だ、大丈夫、大丈夫よ!こっちはなんとも無い、けど・・・・・・!?』

 

「碇くん。アスカ」

 

「綾波!?」

 

「来るわ・・・・・・」

 

 レイがシンジとアスカに警告を発する。その言葉を聞き終えた瞬間、初号機と弐号機は思わずといった風に同時に走り出していた。その様はまさに、脱兎の如く。

 

 恐怖。彼らに行動を起こさせたのは、言葉では言い表せられぬ恐怖であった。彼らの脳が全力での退避を選ばせた。それだけの根源的恐怖が、自分たちの足元から迫ってくる。そう感じた二人は咄嗟に避難行動に移っていたのだ。

 

 そして、地面の下から『ソレ』はやってきた。まるで大地をすり抜けるようにして迫り上がってきた、山よりも大きな真っ白い巨体。それはシンジとアスカに背を向けていたが、その体がグニャリと背骨からあり得ざる方向に折れ曲がり、倒れ込むようにして顔を仰向けにこちらに向けてきた。逆さとなった『ソレ』の顔が、初号機と弐号機を捉える。

 

 そこにあったのは暗く穿たれた双眸。耳まで裂けた口。そして何より、シンジがその顔を見間違えるワケがない。

 

「父、さん・・・・・・?」

 

 

 

 

 

『アアアアアァァアアァァアアアアアアア』

 

 

 

 

 

 もはやヒトとは思えないほどの巨体。エヴァですらが、それと比較すれば両手に収まる人形のよう。それだけの巨体の人外が、エヴァンゲリオン初号機と弐号機を見つめて笑みを浮かべた。

 

「うわああああああああああああああ・・・!」

『嫌ァァアアアアアアアアアアアアア・・・!』

 

 あまりの恐怖に、シンジとアスカは同時に悲鳴をあげた。

 

「碇くん!アスカ!」

 

『碇、リリスとの融合を果たしたか・・・』

 

 冬月副司令の言葉が通信を流れるが、エヴァパイロット達はそれどころではなかった。目の前にいる存在に底知れぬ恐怖を感じたシンジとアスカは、咄嗟にその場からの逃走を選択する。

 

 しかし、

 

『ッ!?嫌、うそ!?アンビリカルケーブルがッ!!』

 

 弐号機は逃げられない。アンビリカルケーブルが接続限界まで伸びきっている。これ以上の離脱が望めないなか、白い巨人はその手を地面に起き、地を這うように迫ってくる。

 

『ひっ!?いや、いやぁッ!!』

 

「アスカ!!」

 

 恐怖に硬直したシンジの背中が、バチンと叩かれる。見れば叩いたのはレイ。その激励を受けたシンジと初号機は!!

 

「うおああああああああああああ・・・・・・!!」

 

 弐号機に迫っていた巨大な手を、手にした大太刀で以て斬りつけていた!

 

『オオオオオオオオオオォォオオオ』

 

 白い巨人の手のひらが真ん中から切り裂かれる。その傷口から噴き出した血が、初号機と弐号機に降り注いだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ!大丈夫だ!アスカ、戦える!コイツは倒せるよ!」

 

『し、シンジ・・・?』

 

「戦うんだ、アスカ!コイツが父さんなのだとしたら、これが『人類補完計画』なんだ!今ここで、僕たちで父さんを倒して止める・・・止めるしかないッ!!」

 

 バギン!と音を立てて、初号機の顎のジョイントが外れる。初号機はまるで白い巨人を威嚇するように、力強く吼えた。

 

『はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・な、何よ。シンジのくせに、カッコつけて』

 

 通信を流れてきたアスカの声は涙声だ。だが、白い巨人に立ち向かう同い年の少年の姿が、アスカの心に僅かばかりの勇気の火を灯す。

 

「戦うしかない!戦わなければ、生き残れない!立つんだアスカ!立ってッ!!」

 

『〜〜〜ッ!どぉおりゃあああああああああああああ!!!』

 

 地面に尻餅をついていた弐号機が、アスカの咆哮と共に立ち上がる!マステマを構え直したとき、アスカの顔からは恐怖が消えていた。

 

「倒そう!コイツを!一緒に!!」

『ふん!遅れを取るんじゃないわよ!バカシンジ!』

 

 初号機と弐号機は白い巨人に立ち向かう。白い巨人は体勢を立て直してゆっくりと起き上がる。その背後の空には、9体のエヴァシリーズが翼を広げて飛んでいた。

 

 数にして10対2。彼我戦力差は著しい。だがしかし、やるのだ。ここが人類最後の防衛線。

 

「『うぅおおおおおおおおおおおおおお・・・ッ!!』」

 

 二体のエヴァンゲリオンは、咆哮を上げながら敵陣へと突っ込んでいった。

 

 

 

 

 第二発令所の面々は、たったいまここを通り過ぎていった白い巨人の恐怖に包まれながら、完全に静まり返っていた。

 

「ねぇ、私たち、正しいわよね・・・?」

 

「わかるもんか、そんな事・・・」

 

 オペレーターの伊吹マヤと日向マコトが弱音を吐くのを聞いたとき、ミサトは自身に喝を入れるため、頭を大きく振りかぶってコンソールに叩きつけた。ゴヅンッ!という鈍い音が発令所に響き渡る。

 

「しっかりしなさいよ!あんた達ッ!!」

 

 額から血を流しながらも、ミサトは味方を叱咤する。

 

「私たちが弱気でどーすんのよ!あの子達が戦ってる!あんな子供達が、戦ってんのよ!?私たちが先に諦めてどーすんのよ!最後までやるわよ!私たちも、シンジ君たちと一緒に戦うの!」

 

 その言葉を受けたオペレーター陣は、しかし目の前の現実的恐怖に打ちひしがれている。その心に火が灯るには時間がかかりそうだ。ミサトはチッと舌打ちを一つすると、冬月に向き直った。

 

「冬月副司令!あれはなんですか!?碇司令はどうなってるんです!?アレを止めれば、人類補完計画は止まるんですか!?」

 

 ミサトの噛みつきに対して、冬月はゆっくりと首を振った。

 

「わからん」

 

「わからん、て、あんたねぇ!!」

 

「すまないが、私にわかるのは碇が地下のリリスと融合した、という事だけだ。そこまでは我々、私と碇の想定通りだったが、イレギュラーが発生しているようだな」

 

「イレギュラー?」

 

「ああ。碇はリリスとの融合に際して綾波レイを使うはずだった。だが、綾波レイは君たちの作戦により手元から無くなり、融合は不完全なものとなったのだろう。加えて・・・・・・」

 

 すっと、冬月はメインモニターを指差す。

 

「見たまえ。溶けだしている」

 

「え!?」

 

 その言葉にミサトは最後のモニターに振り返った。モニターに映し出された白い巨人は、冬月の言う通り、確かにその体が溶け始めていた。

 

「不完全な融合、どころではない。あれはリリスとの融合に失敗している。恐らくはアダムの心、渚カヲルごと取り込んだのだろう。碇の奴め。功を焦って余計な異物まで取り込んだか」

 

「まさか、あの中に渚くんが!?」

 

「恐らくは、だがな。だが、アダムの心はリリスとの融合を拒んでいる。あの使徒の少年がそこまで考えていたのかはわからんが、あの状態を見る限り、長続きはせん。リリスとの融合が解けるのは時間の問題だろう」

 

「じゃあ、奴が自滅するまでの時間を稼げれば、奴を倒すことができるってわけですね!?」

 

「わからん。わからんが、その可能性は高い。だが、後はゼーレがどう動くかだ。ここからは時間との勝負。最後に立っていたものが、人類補完計画の勝者というワケだ」

 

 そこまで聞いたミサトはコンソールに向き直ると、マイクを使ってチルドレンに呼びかけた。

 

「シンちゃん!レイ!アスカ!聞こえた!?奴は放っておいても自滅するわ!後は時間を稼いでちょうだい!そうすれば、私たちの勝ちよ!」

 

 そう叫んだミサトの目に、モニターの映像が飛び込んでくる。そこに映し出されていたのは──。

 

「なに?あれは・・・!?」

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 初号機が迫る巨人の右手を躱し、すれ違いざまに太刀を振り抜いた。巨人の手を切り落とすことは叶わなかったが、それでも確実にダメージは入っている!

 

『なめんじゃあ、ないわよぉぉおお!!』

 

 弐号機の手にしたソニックグレイブが、その傷口をさらに広げていく。戦局は今の所、シンジ達に有利に傾いていた。

 

『みんな!空を見て!エヴァシリーズが!!』

 

 ミサトの声に、シンジとレイ、アスカが空を見上げる。そこに展開されていたのは。

 

「なんだ、あれ?」

 

『何かの紋様?』

 

「・・・・・・樹?」

 

 エヴァシリーズが上空に描き出していたのは、かつてエデンの園の中心にあったとされる、『セフィロトの樹』であった。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

「今こそ中心の樹の復活を。我らが僕エヴァシリーズは、皆、この時のために」

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

『エヴァシリーズ、S²機関解放!』

『次元測定値が反転!マイナスを示しています!観測不能!数値化できません!』

 

『アンチATフィールドか・・・?』

 

『全ての現象が15年前と酷似している。ひょっとして、これって・・・・・・』

 

『サードインパクトの前兆よ!シンジ君!アスカ!空のアイツらを止めて!』

 

 ミサトの悲鳴が通信に響く。だが、初号機たちの遥か上空にいるエヴァシリーズを止めるのは、シンジ達には不可能だった。

 

『アタシがやる!最後の一発!!喰らいなさいッ!!』

 

 マステマを構えた弐号機が前に出る。最後のN²兵器をアスカが使用しようとした時だった。

 

 空に描かれた『中心の樹』が光を放つ。それは真下に居た白い巨人をも飲み込んで、巨大な爆発を引き起こした。

 

『「ッ!?ATフィールド、全開!!」』

 

 シンジとアスカは咄嗟にATフィールドによる防御を試みる。しかしあまりの衝撃の強さに、二体のエヴァンゲリオンは遥か遠くに吹き飛ばされてしまった。

 

『直撃です!第一マルボルジェ融解!』

『第二波が本部周辺を掘削中!ジオフロント外郭が露呈していきます!!』

 

『まだ物理的な衝撃波よ!アブソーバーを最大にして!』

 

『戦自主力大隊消滅ッ!!』

 

『ついに来たか。サードインパクト!!』

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

「悠久の時を示す、赤き土の禊をもって、まずはジオフロントを、真の姿に」

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 ジオフロントの外郭が削られていく。そこから現れたのは、かつてこの星に堕ちてきた、『黒き月』の姿だった。

 

 シンジとレイ、アスカはその外郭のギリギリのところまで吹き飛ばされていた。

 

「あ、アスカ!大丈夫!?」

 

『アタシは平気・・・だけど、アンビリカルケーブルが切れた。あと5分も保たないわ』

 

 初号機が弐号機を助け起こす。先ほどの爆発の中心地からは、白い巨人がこちらを見つめて佇んでいる。そして、その上空には、『中心の樹』を描き出すエヴァシリーズの姿。

 

 その現実離れした光景は、この世の終わりの風景に相応しい。

 

 その現実を前にして、シンジ達の心が折れそうになった。

 

『しン、ジンじィィイイイイイイイ・・・』

 

 白い巨人が、シンジを手招く。その光景に恐怖を覚えなかったといえば嘘になる。

 

 だが!

 

「まだ、戦える!」

 

 初号機はマゴロク・E・ソードを構え直した!

 

 その時だった。

 

(シンジ君。綾波さん、惣流・アスカ・ラングレーも。聞こえるかい?)

 

 シンジ達の心に、直接響く声があった。

 

「この声、カヲル君!?」

 

(よかった。ぼくの声、君たちに届いているね)

 

 カヲルの声を遮るように、再び白い巨人が天を仰いで叫ぶ。

 

『ユぅぅウウウウイイイイイイいいいいいい』

 

(君のお父上は流石だね。ここまで事態が悪化しても、ずっと『アイ』を叫び続けている。まるでケモノのように、ね)

 

「カヲル君!今どこにいるの!?」

 

(ぼくは君たちの見ている巨人の中にいる。ぼくがリリスに取り込まれる事で逆に儀式を失敗させようと試みたんだが、どうやらそこまで上手くいかなかったようだね)

 

「そんな!カヲル君があの中に!?」

 

(聞いてくれ、シンジ君。もうすぐ、この巨人は自ら朽ち果てて消え去るだろう。だがゼーレの老人どもは、それよりも早く儀式を完了させようとしている。儀式の依代になるのはエヴァンゲリオン初号機か弐号機、もしくは、奴らが用意した別の生贄だ。それに、月に放り捨てられたロンギヌスの槍も、戻ろうとしている。感じるんだ。槍の鼓動を・・・)

 

 ふぅ、とカヲルは諦めたように息を吐く。

 

(全ての儀式のピースが揃おうとしている。このままでは人類補完計画が発動してしまう。それよりも前に、君たちにはこの巨人にトドメを刺してほしいんだ)

 

「トドメを、って」

 

(ぼくは今、リリスの心臓にいる。胸の真ん中だ。そこをぼくごと撃ち抜けば、この巨人は崩れ去るだろう)

 

「そんな、ダメだよ!カヲル君!君が犠牲になるなんてダメだ!!」

 

(いいんだ。ぼくはすでに君たちの幸せな時間を見届けることができた。これもジョジョのおかげ、なのかな。ぼくに悔いはない。ぼくごと、リリスを消し去るんだ。全ての儀式が終わってしまうまえに・・・・・・)

 

「できないよ!そんな事ッ!!」

 

(大丈夫。ぼくは死なない。また新しい世界に行くだけだ。君が幸せになれるなら、この世界でなら。ぼくはそれを見届けるだけで、十分なんだ)

 

 

 

 

 

 

『舐め腐ってんじゃあないわよ?渚カヲル』

 

 

 

 

 

 

「あなたは死なないわ。私たちが守るもの」

 

 

 

 

 

「そうだよ。言ったろ?見捨てない。カヲル君も助け出して、この世界を救う。幸せになるなら、僕ら全員で、だ。カヲル君だけどこか行くなんて、僕は許さない」

 

 

 

 

 

 アスカ、レイ、シンジが、己の心の炎を燃やす。

 

 初号機と、弐号機がそれぞれ武器を構える。

 

『残された時間は、あと4分15秒ってとこかしら』

 

「それだけあれば、カップラーメンが作れるわ」

 

「うん。そうだよ。行こう、みんな!!」

 

 かくして、少年少女は立ち向かう。神話の終わり、その黙示録に終止符を打つ為に立ち上がる。

 

 ここまで続いてきた福音の物語は、遂に最終局面へと至る。

 

 全ての決着まで、残り、3分と58秒。

 

 

 

つづく

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