ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 全ての決着まで、残り、3分と58秒ッ!!

 

 その時間を知った瞬間、シンジとアスカは走り出していた!

 

『だぁりゃああああああああああああッ!!』

 

 裂帛の気合いと共に、弐号機が手にしたマステマを思い切り振りかぶる!

 

『シンジ!合わせて!!』

 

「うん!行くよ、綾波!!」

 

「ええ・・・!!」

 

 振り回されたマステマに、初号機の足が乗る!その瞬間、そこには初号機のATフィールドが現れて──ッ!!

 

『どぉっせぇぇええええええええいいッ!』

 

 アスカの咆哮と共に振り抜かれたマステマが、初号機のATフィールドの斥力と重なって強大な推進力となる!

 

 ATフィールドの斥力とマステマの振り抜き。それが生み出した推進力は、エヴァンゲリオンの巨体を容易にリリスの元まで運んだ!

 

「今は・・・やるしかないんだ・・・!!」

 

 宙を翔けながら、初号機が手にした大太刀を鞘に収める。それは正しく、抜刀術の構え!

 

「・・・行くよ!」

 

 初号機が太刀に手をかけ、

 

「このォォーーーッ!!」

 

 鞘から太刀を抜き放つッ!!

 

 それは絶対領域を宿した長大な刃!抜き放った太刀で斬りつけ、さらに勢いそのまま上段に振りかぶり、そして振り下ろす!

 

「オオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 シンジの裂帛の気合いと共に、マゴロク・E・ソードが袈裟斬りに白い巨人を切り裂いた!しかし、巨人の急所には届かない。

 

「くっそ!」

 

『シンジ!離れて!N²弾をぶち込むわ!!』

 

 シンジを乗せた初号機は即座に足元にATフィールドを発動させると、それを足場に空中を駆けて巨人から距離を取った。そこを狙い澄ましたかのように、弐号機の手にしたマステマから最後のN²弾が発射される!

 

『「いっけええええええええええッ!!」』

 

 ジオフロント内を、核に匹敵するほどの爆炎が包み込んだ!その爆炎を、初号機と弐号機はATフィールドで防ぐ。爆炎が晴れるとそこには──、

 

「なんで!?」

 

『うそ!?』

 

 無傷の巨人が立っている!その姿に驚愕したパイロット達だったが、刀で斬られた傷だけが残っている事に違和感を覚えた。

 

『コイツ、もしかして・・・』

 

「ATフィールドに、弱い?」

 

 彼らの推測は当たっていた。拒絶の意志を含んだ赤い光は、生命体の心の壁を崩そうとするアンチATフィールドの真逆。確固とした拒絶の意志のみが、白き巨人に効く唯一の武器!

 

「碇くん」

 

「ああ、行くよ!綾波!!」

 

 初号機が大地に降り立ち、手にした刃に再び拒絶の光が宿る。それを横で目にしたアスカは、マステマを放り捨てて傍に置いておいたソニックグレイブを手に取った。

 

『ふぅん?そんな使い方があるんだ?』

 

 弐号機の中のアスカはそう言葉を漏らすと、手にしたソニックグレイブに手をかざす。

 

『ハァァアアアアアアアア!!!』

 

 その薙刀を覆うように纏われていくATフィールド!それをアスカは、巨人の胸を目掛けて投げ付けた!

 

 投げられた薙刀を合図に、初号機と弐号機が白い巨人目掛けて走り出す。飛んでくる薙刀を、白い巨人はその巨大な腕で弾き飛ばしたが──、

 

『あんたは右!アタシは左!』

 

「了解!!」

 

 左右から迫る巨人の腕に飛び乗って、初号機と弐号機が腕を駆け上がっていく!

 

『プログレッシブナイフ!2本とも使うわ!』

 

 肩のウエポンラックから2本のプログレッシブナイフを取り出した弐号機が、瞬時に巨人の胸を十字に切り裂く!

 

『シンジ!!今ッ!!』

 

「ハァァアアアアアアアアアアアアア・・・!」

 

 巨人の胸にできた傷!そこを目掛けて、シンジが大太刀を振り下ろそうとしたその時だった。

 

「碇くん!量産機が」

 

「ぐっ!?」

 

 空中に浮かび上がっていた『セフィロトの樹』。そこからエヴァ量産機が次々と諸刃の剣で襲い掛かってくる!

 

「くそ!コイツら、邪魔だ!」

 

 振り下ろそうとしていた太刀を翻し、初号機は襲ってきた量産機どもを切り捨てていく。切り捨てた量産機を新たな足場として、初号機は空中を駆け抜ける!

 

「父さんッ!!」

 

『シんじィィイイイイイイいいいッ!!』

 

 迫る巨人の両手を足場にして、初号機が天高く舞い上がった。巨人の遥か頭上で身を翻した初号機は、再び大太刀を上段に構える。

 

「うおおおおおおおおおおおおお・・・ッ!」

 

 その刃が、とうとう巨人の面を叩き割る!初号機は大太刀を離すと巨人の鎖骨に左手でしがみついた。目の前にはアスカが切り開いた十字の傷がある!

 

「カヲル君を、返せッ!!」

 

 初号機の右手が抜き手の形を取る。その右手にATフィールドを纏わせて、初号機は右手を十字傷の真ん中に思い切り突き立てた。

 

『ぐぎゃアアアアアああオオおおおおお!?』

 

「アスカ!!」

 

『わかってるっちゅーのッ!!』

 

 シンジが右手を巨人から引き抜くのと、弐号機が落ちてきたマゴロク・E・ソードをキャッチして駆け上がってくるのが同時だった。引き抜かれた十字傷に、弐号機がATフィールドを纏った大太刀を思い切り突き立てる!

 

 絶叫。神の成り損ないである白い巨人は、明らかに急所を貫かれて苦しんでいた。

 

 初号機と弐号機が巨人から飛び降りる!初号機の右手には、救出されたカヲルの姿があった!

 

「アスカ!カヲル君を!」

 

『はあ!?アタシの弐号機に乗せようってわけ!?』

 

「頼むよ!」

 

「アスカ、こっちはもう人が乗れるスペースが無いわ。お願い」

 

『ふん、貸し一つよ!』

 

 アスカは言うが早いか、弐号機の背中からエントリープラグを排出した。シンジはそのプラグに近付き、プラグの扉が開くのを見ると、優しく、しかし急いだ手つきでカヲルをエントリープラグに押し込んだ。

 

『気絶してんのね。変なノイズが入らないから、まぁいいわ!結果的にはこれでよかったのかも!』

 

「アスカ、もうひと押しだ!父さんはここで止める!」

 

『オッケー!・・・・・・て、アレはなに!?』

 

「!!」

 

 驚愕する二人の前に、天から降りてきた物があった。それは使徒殲滅のために使用されて、今や月面に突き刺さっていたはずのロンギヌスの槍であった。

 

『チャぁ〜〜〜ンス・・・!』

「だね!」

 

 その槍を受け止めて、手にした初号機が構えると、その後ろに弐号機が立った。

 

『「ハァァアアアアアアアアアアアアアッ!」』

 

 初号機の槍投げのフォーム。槍を思い切り振りかぶった瞬間を狙い、弐号機が槍の石突に向けて回し蹴りを放つ!ユニゾンを経て得たシンジとアスカのシンクロ率は伊達では無い。初号機の投擲に弐号機の蹴りのパワーを上乗せしたロンギヌスの槍が、音速を遥かに超えて巨人の胸を穿ったッ!!

 

『グがあああアアアアア・・・ッ!?』

 

『ぃよぉっし!!シンちゃん、アスカ!ナイスよ!!』

 

『碇、お前の負けだ・・・私もお前も、希望と言う名の劇薬に溺れすぎた。子供達の勝利だ。ユイ君との再会は諦めよう』

 

 通信を通してミサトと冬月の声が届けられた。急所を貫かれた白い巨人。その姿はみるみる内に崩れ去っていき──、

 

 

 

 

 

『まダ・・・まだ!死ねン!!』

 

 

 

 

 

 溶けた肉体から幾つもの触手が伸びたかと思うと、空中を飛んでいた量産機を次々に捕らえていく!捕らえた量産機は、ゲンドウの傷口に充てられると、次から次へと『捕食』されていった!

 

『うえ!?何あれ!?』

 

「まさか!エヴァを食ってる!?」

 

 量産機を取り込んだことにより、ゲンドウの肉体の崩壊が安定した。崩れ始めていた肉体が、逆再生されたように瞬時に元に戻る。

 

『グオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 さらにゲンドウはその口を大きく開けて、上空に展開されていた『セフィロトの樹』をも飲み込んだ。途端、ゲンドウの全身から眩い光が放出された。

 

『儀式に必要なエヴァ量産機と『セフィロトの樹』を取り込んだか!?』

 

 冬月の驚きの声に反して、ゲンドウは努めて冷静に、たった一言こう呟いた。

 

 

 

 

 

オー・ファーザー(おお、神よ)

 

 

 

 

 

 ゲンドウの背中に肉質的な翼が生えていく。その翼の背後の空間が、光を捻じ曲げながら圧縮されていく。

 

「な、なんだ?アレ」

 

 シンジとレイ、アスカはその不思議な現象を前に呆気に取られていた。しかし、それは致命的な油断。

 

 圧縮された空間が再び元に戻る。その反動が生み出した衝撃!ジオフロント内を凄まじい衝撃が襲い、暴風が吹き荒れる!

 

『きゃあああああああ・・・ッ!』

 

「うわああああああああ・・・・・・!」

 

 暴風にさらされた2体のエヴァは必死で地面にしがみつく!その様を、ゲンドウは冷徹に見下ろしていた。

 

『神に抗うことは許されず、生贄はただ捧げられる瞬間を待つのみだ』

 

「・・・ははは。だってさ、アスカ」

 

『Scheiße!!しゃらくさい、だぁれが神様よ!あんたのパパ、頭のネジが飛んでんじゃないの!?』

 

「だよね、僕もそう思うよ。・・・綾波は?」

 

「今の碇司令は、わたしの知っている碇司令じゃないもの。わからないわ」

 

「そうか。じゃあ・・・・・・」

 

 

 

 

 

『「「遠慮なく!ぶちのめす!!」」』

 

 

 

 

 

 初号機と弐号機がATフィールドを拳に纏う。

 

『無駄なことだぞ。シンジ。レイ。弐号機パイロット。お前たちのATフィールドでは、私の『オー・ファーザー』を破ることはできない!』

 

「やってみなきゃわからないよッ!!」

 

 初号機と弐号機がゲンドウ目掛けて一歩を踏み出す。その足下にATフィールドが展開され、2体のエヴァがATフィールドを足場として空中を駆け上がっていく!

 

「合わせて!綾波、アスカ!!」

 

「ええ・・・!」

 

『負けてらんないのよ!あんたなんかにぃィィイイイイイイイイ!!』

 

「「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄・・・・・・!!」」

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ・・・・・・!!』

 

 2体のエヴァの拳のラッシュ!相対すはゲンドウのスタンド『オー・ファーザー』の空間圧縮。二人の拳が圧縮空間に吸い込まれていくが──、

 

『!?』

 

 その空間が、二人の纏ったATフィールドによって無理やりに弾かれる!シンジの目の前には防御など考えていなかった碇ゲンドウの顔面があり!

 

 2体のエヴァの全力の拳が、ゲンドウの顔に叩き込まれていく!!

 

『ぐ!があはッ!?なんだと!これは・・・・・・』

 

『「ハァァアアアアアアアアアアアアア!!」』

 

『私の想定を、超えてきたか!?』

 

 全力の拳のラッシュが、ゲンドウの顔を滅多打ちにしていく!

 

 

 

 だが、それでも。

 

 

 

『神を滅することは叶わない!!』

 

 ゲンドウの一喝とともに、初号機と弐号機はゲンドウの掌に囚われてしまった!

 

『神への叛逆、叶うとでも思ったのか?』

 

 初号機と弐号機はゲンドウの掌の中で必死に抗っていたが、その腕から逃れることはできない!

 

 

 

 だが、だからこそ、だった。

 

 

 シンジはゲンドウに囚われたまま、その口角を上げてニヤリと笑った。

 

「敵わない。確かに、父さんは強いや。僕が思っていた以上だった。力では敵わない。ましてや暴力と恐怖による決着はできないと、僕は理解したよ」

 

 ゲンドウは手にした初号機を怪訝そうに眺める。

 

『なら、どうする?』

 

「父さんと、話がしたい」

 

『私と?馬鹿な』

 

「そうだね。父さんならそう言うだろうと思ったよ。そこまでの絶対的な力を持って尚、逃げたいんだろうからね、僕から」

 

『──ッ!』

 

 その侮辱の言葉に、ゲンドウの中で沸々と怒りが湧き上がってくる。

 

「父さん、決着を付けよう。それは戦いの事ではない。僕と父さんの、歪な親子関係に。魂の決着を付けるんだ。父さんが何をしたいのか?僕にはわからない。だが、僕は納得したい。父さんがやりたい事を全てやった上で、僕の納得のいく形で決着を付けてやる・・・」

 

『お前ごときが、私を止めると?』

 

「力では止められないさ。でも、魂ならば、僕は父さんを止められる。その確信がある。だから──ッ」

 

 囚われたままの初号機が、両手を広げる。

 

「好きにしろよ。父さん。母さんとの再会に、初号機が必要なのはわかっている。初号機を取り込みたいんだ、父さんは。ここには綾波もいるしね」

 

「わたしを囮に使うの?碇くん」

 

「・・・ごめん、綾波。でもきっと、父さんは怖がっているんだ。自分の立てた完璧な理論を実現させたい。それが父さんの考えている事だと思う。その上で・・・」

 

 シンジは、レイに謝りながらも決意のこもった視線をゲンドウに向けた。

 

「全部ひっくり返してやる。父さんの狙いを完璧に達成させた上で、それを乗り越える。それが僕の『覚悟』だ」

 

『・・・ぷっ!あっははははははは!なにそれ、シンジ!?最高じゃない!それって碇司令に完全なる敗北をプレゼントするって事!?』

 

 アスカの心底おかしいといった笑い声に、シンジも苦笑する。この土壇場で少年少女が笑い合う。それは本来、あり得ない行動だった。

 

『どうせなら碇司令、ここにアダムの心とやらもいるわよ?こっちの弐号機も一緒に取り込んじゃったらどう?そのほうが、より完璧な人類補完計画ってやつになるんじゃない!?』

 

『ちょっと待ってくれセカンドチルドレン。ぼくは今目を覚ましたばかりなんだが、君は何を言ってるんだい?』

 

『説明は不要!シンジがやるっつってんのよ。だったらアタシも信じるわ!バカシンジ!勝てんのね!?』

 

「あぁ、必ず勝つよ」

 

『なら良し!』

 

 シンジの断言を聞いたゲンドウは、怒りの頂点を迎えていた。今すぐにその口を黙らせてやろうと掌に力を込めた瞬間、

 

『あんた達ぃ?なんか私達を無視して勝手に話を進めてるけど、それって人類補完計画が発動するってことでしょお?責任、誰が取ると思ってんのよ?』

 

 この場に似つかわしくない緊張感のない間延びしたミサトの声が、戦場に流れた。

 

「ミサトさん、ごめん。でも、信じて。僕は絶対に父さんの補完計画を叩き潰す。そうできると信じてる」

 

『・・・・・・やれんのね?』

 

「やれる!」

 

『上等!!なら女に二言はないわ!好きにしなさい!!』

 

 通信を通して、発令所が一瞬ざわついたのが伝わる。それを押し留めたのは、さらに間延びした声の加持リョウジの声だった。

 

『いやはや、参ったね。いつの間にか話が明後日の方向に飛んでるじゃないか。こんだけ碇司令を総スカンでコケにして、後が怖いったらないぜ』

 

『あんた帰ってくるの遅過ぎ。どーせ失敗したのなら早く戻ってきなさいよ』

 

『リッちゃんの傷の手当てがあったからな、勘弁してくれよ』

 

『迷惑かけたわね、ミサト。でも、ふふふ。なかなか愉快な事になってるのね?』

 

 加持に続いてリツコの朗らかな声が。それに続くように、冬月のため息が聞こえてくる。

 

『やれやれ。ここまでコケにされたら引くに引けんな?碇』

 

 ・・・・・・なんだ、コレは?なんなのだ?この状況は。

 

 自分は神と等しき存在となった。そのハズなのに、今、この滅びの局面を迎えている瞬間に、コイツらの間延びした空気はなんだ?

 

 ゲンドウは怒りを忘れて思わず混乱していた。それでも、自分のやるべき事は変わらない。それだけは変わらないのだ。だが、しかし・・・・・・。

 

「今更怖がるなよ、父さん。それとも、ここで負けを認めるのかい?」

 

『〜〜〜ッ!!舐めるな・・・』

 

 ゲンドウは手にした初号機と弐号機を、まとめて自分の口の中に放り込んだ。飲み込まれたエヴァ達が喉を通り過ぎて、腹に落ちる。その瞬間、ゲンドウの体はさらに発光し、まるで太陽のような輝きを放っていた。

 

『ロンギヌスの槍は、あそこか』

 

 ゲンドウは飛び去ったロンギヌスの槍に視線を移す。すでに槍は大気圏を突破していたが、ゲンドウの姿が空間の反動と共に消える。

 

 ゲンドウの飛び去った先、地球を見下ろす宇宙空間にて、ゲンドウは楊枝のように小さなロンギヌスを手中に収めた。両手で祈るように槍を握りしめたゲンドウの眼下で、黒き月がゆっくりとゲンドウの足元まで浮かび上がってくる。

 

 ゲンドウの体はさらに巨大化し、黒き月を愛おしそうに見つめながら両手で覆った。

 

『アンチATフィールド!臨界点突破!』

 

『ダメです!このままでは個体生命の形が維持できません!!』

 

『覚悟決めなさい!あんた達!!本番はここからよ!シンちゃんが見せてくれたの!『暗闇に進むべき道』を!『あえて人類補完計画を受け入れる』道を!私たちは、その『覚悟』の道を行くわよ!!』

 

 ゲンドウの耳に、ミサト達の声が聞こえてきたが、どうでもいい。儀式はすでに始まったのだ。あとは全ての魂を、この身に宿すだけ。

 

 そして。

 

 地球全体が無数の光の十字架に包まれていく。数々の悲鳴とともに美しく輝く緑色の十字架が、数え切れないほどの数で地球を埋め尽くして行く。そこに溢れ出した赤い光を黒き月の自転が巻き上げる。その光の流れをゲンドウが手の平で吸収していく。

 

 こうして──、

 

 ──地球に存在した全ての魂は、ゲンドウと一つになった。

 

 

 

つづく

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