ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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第二章 悪い奴ほど、よく眠る
15.


 

「なるほどな。確かにそれは悪いことをしたかもしれないな。もっとも、そこまで細かいことに気を配れなかったってのが本音だが」

 

「そうだよね。僕たちだって命懸けだったんだ。人がいるかいないかなんてエヴァの巨体じゃわからないし、そこまで気を配ってらんないよ・・・・・・」

 

 久しぶりに僕の前に姿を現したシンジ君の右頬に、大きな湿布が貼られている。話を聞く限りだが、どうやらエヴァンゲリオンの戦闘中に瓦礫の下敷きになった女の子がいたらしい。

 

 まぁそれ自体はとても心の痛むことだな。うん。本当に心苦しいことだ。悪いことをした。

 

 問題なのは、それがシンジ君の通う学校のクラスメート、その妹だったということだ。

 

 なんでも、そのクラスメートはシンジ君がエヴァのパイロットである事を知ると、校舎裏に呼び出して問答無用で殴りかかってきた、とか。

 

 ・・・・・・今、2015年、なんだよな?昔の漫画じゃああるまいし、今では珍しいんじゃあないか?そんなタイプの喧嘩をふっかけてくる奴なんて。

 

 

 

 

 

 僕の名前はジョルノ・ジョバァーナ。日系イタリア人。15歳の中学生だ。

 

 ただし、肩書きの最後に『ギャングのボス』という役職が付くんだが、そこはまあ気にしないでほしい。

 

 出身はイタリアの『ネアポリス』なんだが、色々あって、今は日本のある組織に収容されており、その面会室でシンジ君とだべっている。

 

 別に僕が何か悪いことをしたってわけじゃあない。むしろ良いことをしたはずなのにな。不思議だ。

 

 そもそも僕がなぜ日本にいるかのという問題だが、僕はある女性、『碇ユイ』さんから依頼を受けて日本に来ている。

 

 その『依頼の仕方』がかなり奇妙だったため、僕はなぜか『2001年のイタリア』から『別世界の2015年の日本』に来ることになった、というわけだ。正確には『来させられた』という方が正しいが。

 

 うん。何を言ってるかわからないだろーな。誰だってそー思う。僕だってそー思う。

 

 ただコレはもう起こってしまった過去の出来事なので、そこの細かい部分には目を瞑ってほしい。とゆーか、その後も色々ありすぎて全部を説明するのはメンドーなんだ。すまん。

 

 結果だけを話すなら、僕は日本にある国連の非公開組織『ネルフ』に無実の罪で捕まっている。そこだけ覚えてくれればいい。

 

「あいてて・・・・・・」

 

 さて、面会室のガラスの向こうに座る、ちょっと気の弱そうな少年は『碇シンジ』君だ。彼と僕はちょっとした戦友みたいなものだ。

 

 この世界(というと今でも混乱するんだが)では、『使徒』と呼ばれる巨人が人類に牙を剥いており、人類は総力を上げて『使徒』の殲滅に臨んでいるらしい。

 

 その『使徒』をやっつけるため、シンジ君と僕は巨大ロボット『エヴァンゲリオン』に乗って、一緒に『使徒』をやっつけた、というわけだ。

 

「シンジ君、あまり痛むならその傷、『治そう』か?」

 

 痛みまで取ることはできないが、万が一に骨にヒビでも入っていたら大変だ。僕の『スタンド』なら、骨のヒビを埋めてやれるくらいの事ならできる。

 

「え?・・・・・・あはは、大丈夫だよ。痛みはあるけど大したことないし」

 

 苦笑しながらヒラヒラと手を振るシンジ君は、僕の申し出をやんわりと断った。

 

「なら良いんだが。しかし、シンジ君は喧嘩なんてした事ないだろーから、かなりビックリしたんじゃあないか?」

 

「うん。正直、最初はなんで殴られたのかもわかんなくて、頭の中が真っ白になったんだ」

 

「だろーな」

 

「でもその鈴原っていうのに付いてきていた相田ってヤツが去り際にさっきの妹の事を教えてきて、それでカチンと来ちゃったんだ」

 

「ん?」

 

「僕だって『覚悟』を持ってエヴァに乗ってるんだ!って。そんなに僕の事が気に入らないならお前が乗ってみろよ!って・・・・・・」

 

「言っちゃったのか」

 

「うん、言っちゃった・・・・・・」

 

「まぁ、それはしょーがないな。それで?」

 

「また殴りかかられた」

 

 ふぅと、僕はため息をついた。そりゃあシンジ君の気持ちはよく分かる。なにせ僕も一緒にエヴァに乗ったんだ。その妹さんの怪我は半分は僕の責任でもあるわけだからな。

 

 だがシンジ君。そりゃあ火に油を注ぐ、だったか?そんな行為だ。相手にも事情があるし、何より相手は理論ではなく感情で動いてたんだ。そりゃあ殴られもするさ。

 

「それでもう一発食らったってワケか」

 

「違うよ」

 

「うん?」

 

「一発返したんだ。カウンター気味に。そしたらソイツ、ひっくり返ってノビちゃって・・・」

 

 ・・・・・・ふ、くく。

 

「それで今度は先生に呼び出されて怒られるしミサトさんからも小言を言われるし、大変だったんだよ」

 

「あーははははははは!マジかシンジ君!君がケンカで相手を気絶させたって!?そりゃあ凄いじゃあないか!あははははは!」

 

「笑い事じゃあないよ!この2週間大変だったんだから!いきなりミサトさんの家に連れてかれたと思ったら家事は全部押し付けられるし、エヴァには一人で乗らされて訓練させられるし、もうへとへとだよ!ジョルノ君は何してたのさ!」

 

 おっと、怒りの矛先がこっちに向いたな。

 

「そりゃあ僕は囚人だから、な。大人しく牢獄で雑誌読んだり音楽聴いたり、ジュース飲んだりしてたよ。まぁ風呂が3日に一度、てのはちょっとキツかったがな」

 

「・・・・・・僕もそっちの生活の方がよっぽどいいよ」

 

 ジトーっという目でシンジ君が僕を睨んでくる。だが僕だって何気に大変だったんだ。やる事はいっぱいあったからな。

 

 ・・・・・・本当だぞ?

 

「シンジ君。そろそろ面会時間は終わりよ」

 

「あ、ミサトさん」

 

「ボンジョルノ!葛城さん、いい朝ですね」

 

「そ、そうね〜・・・」

 

 おいおい、葛城さん。あからさまに目線を逸らすなんて失礼じゃあないか。連れないな。

 

「ところで葛城さん、昨日差し入れた『ビール』いかがでしたか?」

 

「あ〜!アレね!めっちゃめちゃ美味かったわ!もうお風呂上がりに5本も開けちゃって・・・・・・って」

 

 そこまで言って、葛城さんが再び僕から目を逸らした。ついでに言えばシンジ君からも目を逸らしている。よほど気まずいんだろーな。

 

「え、ミサトさん昨日のビール、ジョルノ君からもらったんですか?どうやって?」

 

「そ、それはぁ〜・・・えっと」

 

「いや、シンジ君。葛城さんも忙しいみたいだ。面会時間も終わりらしいし、今日はこれで失礼するよ」

 

「え?あ、うん。わかったよ・・・」

 

 どこか釈然としない表情で面会室を出ていくシンジ君。そしてその後、なんとも言えない複雑な表情を向けてきた葛城さん。それを見送った僕は、面会室のドアの前で立っている警備員の肩を叩く。

 

「悪いね、時間延ばしてもらって。これ」

 

 そう言って僕は、警備員の手元に一万円札をそっと差し出す。ごく自然な動作で、それを受け取る警備員。

 

「まったく。末恐ろしいガキだな」

 

「どうも」

 

 警備員がドアを開けてくれる。僕はんん〜と伸びをするとそのドアを潜った。もちろん手錠なんかはされていない。

 

 僕のこれまでの2週間、何をしていたかって?シンジ君。

 

 なに大したことじゃあない。ほんのちょっぴり仲良くなっただけさ。

 

 ネルフの職員の大半と、ね。

 

 

 

つづく




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