ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 『活動限界まで、後4分44秒!』

 

 通信から伊吹さんの無情な報告が聞こえる。エヴァ内の活動時間を知らせるタイマーが無慈悲に進んでいく。

 

 だが、それ以上に無慈悲だったのは、今シンジ君の目の前で起きている惨状だった。

 

「け、ケンスケ!なんで!なんでぇ!?」

 

 エヴァンゲリオンの左手に両足を押し潰された相田ケンスケ君。その顔は、血の気を失って真っ白になっていた。光のない瞳は虚空を見つめ、生きているかどうかもわからない。

 

「うわあーーーーーーーーーッ!!」

 

 悲鳴と共にシンジ君が左手をどかした。しかし、動いたのは巨人だ。どかした瞬間、周りに土煙が舞い起こり、あっという間にケンスケ君の姿を隠してしまった。

 

 僕はそちらに気を配りながらも、いまだに去っていない脅威へと意識を向ける。

 

「チィッ!」

 

 僕たちが吹き飛ばされた第三新東京市から、光の触腕をたなびかせながら使徒が悠々と浮遊してくる。幸いなことに、今は奴の有効射程範囲の外にいるらしい。

 

 僕は再び、外にいる鈴原トウジ君と妹のサクラちゃん、そして重体のケンスケ君に目をやった。

 

「ジョルノ君!ケンスケが!ケンスケがぁ!!」

 

 くそ!状況は最悪に近い!民間人が外に出ているなんて、警備は一体何をしていたんだ!

 

 だがいくら罵ろうと状況が好転するわけじゃあない!今はどうやってこの場を切り抜けるか、考えねば!

 

 こうしている間にも、エヴァンゲリオンの活動限界は近付いているのだから!

 

 しかし民間人が足元にいる状態で、僕たちは戦ってもいいのか!?それにケンスケ君、彼を助けるには、今すぐに僕がエヴァを降りて、彼の下に行かなくてはならない!もっとも、生きていればの話だが・・・ッ!

 

 エヴァの手元の土煙が晴れる。トウジ君がサクラちゃんを抱きしめて、ケンスケ君が倒れている状況に変わりはない。

 

 だが、シンジ君は運が良かった。

 

「胸が動いている!生きているぞ、シンジ君!」

 

「!!」

 

 それを確認した瞬間だった。ムカつくことにゆっくりと近付いて来ていた使徒が、攻撃を再開してきたのだ。

 

「うぉッ!?」

「うわぁーーーっ!!」

 

 咄嗟に反応したのはシンジ君だった。高速で飛んでくる光の鞭を、その両手で掴み取ったのだ。

 

「ああああああああああああああああ!?」

 

 じゅーっと、触腕を掴んだエヴァの手が焼ける。

 

「シンジ君!」

「じ、ジョルノ君、僕のせいだ!僕のせいでェ・・・!」

 

 くそ、今度は錯乱しているッ!この状況で、僕はシンジ君を一人にしていいものか?

 

『シンジ君のクラスメート!?』

『なんでここに!?』

 

 そうだよな!僕だってそう思ったさ!だが葛城さん、貴女はこの戦場における司令官だ。貴女が慌てふためくのは愚策だ。

 

「葛城さんッ!!」

『ッ!ジョルノ君!?』

「シンジ君が使徒を抑えてくれている!チャンスだ!今のうちに僕を下ろしてくれ!僕ならケンスケ君を助けられる!」

『待ちなさい!今は使徒の殲滅が最優先よ!』

「赤木博士、そうは言うが、この状況はかなり詰んでいる!それに今この状況でケンスケ君を助けなければ、シンジ君はきっと、二度とエヴァには乗れない!」

 

『初号機、活動限界まで後3分28秒!』

 

「葛城さん!!」

 

 一瞬の間、そして──、

 

『エヴァは現行命令でホールド、その間にエントリープラグ排出、急いで!』

 

「グラッツェ!」

 

 ガクン、と軽い衝撃と共に、エントリープラグが外に出されたようだ。エントリープラグ内が暗闇に包まれる。

 

「ま、待って!ジョルノ君!」

 

 暗闇の中、一人置いていかれる幼子のような声を上げたのはシンジ君。

 

「ぼ、僕ひとりじゃあ無理だよ!どうすればいい!?どうすればいいか教えてよ!?」

 

 シンジ君・・・・・・。

 

 いいだろう。何度だって教えてやる。

 

 僕は暗闇の中、拳を突き出した。ドンと、拳がシンジ君の背中を叩く感触があった。

 

「シンジ君。『覚悟』とは、暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことだ!」

 

「ジョルノ、君?」

 

「いいか、『覚悟』はただ決めるだけじゃあない。決めて、突き進み、『続ける』事だ!それが一番重要なんだ!君が選んだ『運命』を、突き進み続ける事が『覚悟』なんだ!」

 

「・・・・・・!ジョルノ君」

 

「大丈夫だ、どんな選択だろうと僕は君を信じている。必ず戻るッ!それまで君は、使徒の足止めと、可能ならこの場から逃げ出してくれッ!」

 

 それだけ言うと、僕はエントリープラグを飛び出した。

 

 

 

 

 地面に降り立った僕は急いでケンスケ君のもとへと駆け寄った。

 

「ジョルノ!!ケンスケが!」

「ジョルノさん!!」

 

 トウジ君とサクラちゃんの悲鳴。そして、背後で、エントリープラグが再挿入された音が聞こえる。

 

「退いてくれ!まだ間に合う!『ゴールド・エクスペリエンス』!」

 

 僕のスタンドが、虚ろな瞳のままのケンスケ君の足を地面の土ごと殴っていく。生命のエネルギーが流れ込み、失われた足と血液がみるみる内に再生されていく。

 

「な、なんやこれ!?」

 

 トウジ君が驚くが、構っている暇はない!僕は急いでケンスケ君の首に手を伸ばし、脈と呼吸を確認する。

 

「大丈夫だ!よかった!間に合った!」

 

 通信を通してシンジ君が安堵の息を漏らしたのがわかる。僕はケンスケ君を肩に担ぎあげると、トウジ君とサクラちゃんに言った。

 

「急いで!ここからシェルターまで走るぞ!」

「あ、ああ!了解や!」

 

『初号機、活動限界まで後2分48秒!』

 

 くそ、時間がない!

 

「シンジ君!すぐに逃げるんだ、動けなくなる前に!」

 

『〜〜〜ッ!うおああああああッ!!』

 

 シンジ君の咆哮と共に、寝転がったままのエヴァが使徒を蹴り飛ばす。再び吹き飛ばされた使徒。

 

 よし!上手く隙を作り出したな!

 

 僕たちも近くにあった階段を駆け降りて、急いでエヴァから距離を取る。確定ではないが、これくらい距離を取ればまだエヴァは動けるはずだ!

 

 なのに──!

 

『ごめん、ジョルノ君・・・やっぱりダメなんだ。僕は、今、ここで逃げたら、ずっと逃げ続けなくちゃならない気がする・・・!だから!』

 

 そう言うと、エヴァは肩のパイロンから大型のナイフを取り出した。ナイフの刃が高速で震えて、ヴヴヴヴヴヴ・・・という耳障りな音が周囲に響く。

 

『逃げない!今、ここで、コイツを倒す!』

 

『なんでェ!?』

『残り2分27秒!!』

 

 

 

 

 

「なら、僕を手に乗せてくれ!シンジ君!」

 

 

 

 

 

『え・・・!?』

 

「時間がない!早く!トウジ君、彼は任せた!」

「な、なんやて!?おい、ジョルノ!!」

 

 僕はエヴァに向かって走り出した。

 

 全く、君ってやつは本当に馬鹿な奴だ。今の君の発言、ただの罪悪感から出たものだろう?

 

 だが、『信じる』と言ってしまったからな。だったら僕はそれを、全力でサポートし『続ける』だけだ!

 

 それが、僕の『覚悟』だ!

 

 僕はエヴァから差し出された左手に飛び乗った。エントリープラグに入る時間はない。ならばこのまま、生身でやれるだけのことをやる!

 

「シンジ君!僕を使徒に投げろッ!!」

『ええ!?』

「早く!大丈夫だ!僕を信じろ!」

『!!』

 

 エヴァの左手が僕を優しく包み込む。そして大きく振りかぶると、僕をぶうんっと使徒に向けて投げ飛ばした。

 

 ベネ!いい放物線だ!勢いが強すぎず弱すぎず、いい角度で僕は立ち上がってきた使徒の頭に向かって飛んでいく。

 

「やれやれ、まさか怪獣と生身でやる羽目になるとはな。だが、『ケンスケ君は助ける』!『シンジ君も助ける』!そして『使徒もやっつける』!3つもやらなくっちゃあならないのが、ボスの辛いところだな」

 

 僕は手に持っていた小石を使徒に投げつけた。

 

「『ゴールド・エクスペリエンス』はいま!発現する!!」

 

 石は瞬く間に大きな樹木へと成長した。薄く根が使徒の頭に絡みつき、樹木が固定される。僕はその枝に、かろうじてしがみついた。

 

『わあああああーーーーーーーーーッ!!』

 

 僕を投げ飛ばしたエヴァが、雄叫びを上げて使徒に迫り来る!

 

 僕は素早く樹木から滑り降りると、使徒の頭に着地した。使徒は目の前のエヴァを迎撃するために、光の触腕を振りかぶっているところだ。

 

 だがな、

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァーーッ!!」

 

 貧弱な僕の『スタンド』の拳を、何発も使徒の頭に浴びせ続ける!

 

 僕の『スタンド』のパワーはそれほど高くない。ダイヤモンドなんて壊せないし、純粋なパワーだけでは、あの牢獄の扉だって壊すことはできなかっただろう。僕の『スタンド』の能力は『物に生命を与える』というものだからな。

 

 だが、もし仮に、『生命ある者に生命を与える』とどうなるか。

 

 それは──、

 

『ッ!?使徒の動きが!』

『遅くなった!?』

 

 『感覚だけが暴走』しちまうのさ!身体の動きは、それについていけない!故に身体の自由が利かなくなるってことさ!

 

「いまだ!シンジ君ッ!!」

 

『活動限界まで、後57秒!』

 

 

 

『うわぁぁあああーーーーーーッ!!!』

 

 

 

 身体の感覚が鈍った使徒はエヴァを迎撃できない。なす術もなく、エヴァの握ったナイフが使徒のコアへと刺し込まれた!

 

「シンジ君!!」

 

『うん!やろう!』

 

 

 

 

『「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーッ!!!」』

 

 

 

 

 僕のスタンドとシンジ君のエヴァ、両方からの拳のラッシュだ!活動限界ギリギリまで、拳を叩き込んでやる!

 

 『ゴールド・エクスペリエンス』から生命エネルギーを流し続けられる使徒は、身動き一つ取れないでいる!コアに刺さったナイフには、エヴァがこれでもかと拳を叩き込んでいる!!

 

 やがて──、

 

『エヴァ初号機!活動停止!!』

『目標は完全に沈黙しました!』

 

 通信の向こうで湧き上がる歓声。

 

 僕は使徒の上でふぅーーーっと大きく息を吐き出した。流石に、こんなアクロバットをやったのは人生で初めてだ。正直死ぬかと思った。

 

 今回の使徒、上手く僕の能力が効いてくれたからいいが、途中まではマジに焦ったな。触腕で絡みつかれた時が一番やばかった。

 

『ジョルノ君・・・・・・その、大丈夫?』

 

 シンジ君が心配した様に聞いてくる。正直言って、今回はお説教をかましてやらなければならないだろうな。

 

 だが、ひとまずは。

 

「よくやったな、シンジ君。良い『覚悟』だった」

 

 僕とエヴァ。その間を、爽やかな風が通り抜けていった。

 

 

 

つづく

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