ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 き、気まずい・・・。

 

 非常に気まずい事態になった。

 

 心臓がドドドドドドドドド・・・と早鐘を打っている。

 

 真夏の日差しの暑さも相まって、僕は全身汗びっしょりだった。だが今、僕の身体中を流れているのは冷たい汗だ。

 

 なんとかしなくては・・・今のこの状況を、なんとしてでも打破しなくては・・・ッ!

 

 僕の目の前に広がる光景。

 

 綾波レイの部屋で、『素っ裸の綾波レイを押し倒しておっぱいを揉みしだいている碇シンジ君』という、このカオスな状況をッ!

 

 

──────

 

 

 ガコーン、ガコーンと遠くで工事の音が聞こえる。茹だるような暑さに頭がクラクラしてくる。目の前にはひび割れた道路と、そして、まるで「蜃気楼でも見せられているのか」とでも言いたくなるように同じ形をしたマンションがいくつも立ち並んでいた。

 

 マンションの大半は、老朽化なのか工事途中なのか知らないが、人の手が入っていないような廃墟を思わせた。

 

 ・・・・・・こんなところに、本当に人が住んでいるのか?いたとしたら、それは浮浪者なんじゃないだろーか。

 

「たぶん、ここだと思う、んだけど・・・」

 

 横に立つシンジ君も半信半疑だ。

 

 これだけの暑さの中、汗びっしょりになりながらカードを届けに来てみたら『廃墟でした』。

 

 もしこれで綾波レイがこの場所に住んでいなかったならば、タチの悪いイタズラどころじゃあない。きっと僕は赤木博士に猛抗議に行くだろうな。暴力のオマケ付きで。

 

「人が住んでるようには思えないな。少なくとも、綾波レイみたいな中学生の女の子が一人で住んでいい雰囲気ではない」

 

「うーん。僕もそう思うんだけど、リツコさんのメモにはちゃんとここの住所が載ってるんだよね・・・・・・」

 

「マジか」

 

 僕は制服の裾で汗を拭う。

 

「とにかく、行ってみるしかないようだな」

 

「うん。そうだね」

 

 僕とシンジ君はため息を一つ吐くと、立ち並ぶマンションの一つに足を踏み入れた。

 

「おいおい・・・」

 

 マンションの玄関口は、驚くほどに散らかっていた。管理人室と思われる部屋の窓ガラスは叩き割られていて、外から吹き込んできた落ち葉やらなんやらで散らかっている。それに、コーラかなんかのペットボトルも散乱しているな。これはきっと、イタズラで誰か入ってきてるな。

 

「マジに廃屋じゃあないか。人の住んでいる家をとやかく言うつもりはなかったんだが、葛城さんといい綾波レイといい、もう少し住環境には気を使うべきだな」

 

「あはは・・・でも、綾波の部屋は綺麗かもしれないよ?」

 

 どーだろうな。もしかしたらそーかもしれないし、そーでないかもしれない。人は見た目じゃあないという事を、僕は最近、葛城さんという女性で学んだ。

 

 見た目は美少女と言って差し支えない綾波レイだが、だからといって部屋まで綺麗かどうかなんてのは結局行ってみるまでわかんないものだ。

 

「部屋、何階だい?」

 

「えっとね、4階みたい。402だって」

 

「そうか。この様子じゃエレベーターは期待できそうにないな」

 

 というか、そもそもエレベーターが無い造りになっているっぽいな。

 

「ジョルノ君、あっちに階段があるよ」

 

「やれやれ。このクソ暑い中、わざわざ階段を使う羽目になるとはな。できたらでいいんだが、綾波レイの家に着いたら冷たい麦茶の一つでも要求したくなるよ」

 

 文句を言いながらも、僕とシンジ君は階段を登る。階段に備え付けられていた窓も割れているし、夜に不良でも忍び込んでいるんだろう。コンビニのゴミがそこかしこに散らかっている。

 

「・・・ところで、唐突な質問なんだが、シンジ君。君は確か、ネルフでは『サードチルドレン』と呼ばれていたな?」

 

「・・・・・・え?本当にいきなりな質問だね。そうみたいだけど?」

 

「やはりな。いや、まあ特に深い意味はないんだが」

 

「・・・そういう言い方ってすごく気になるよ。何か気になる事があるの?」

 

 うーん。気になると言えばなるし、どーでもいいと言えばどーでもいいんだが。

 

「いや、ほら。僕ってネルフでアルバイトしてるだろ?それで職員の人とか整備の人とかとも結構話をするんだけどな」

 

「ジョルノ君て本当、ネルフで顔広いよね」

 

 まあ、そうなるように動いていたからな。

 

「それでなんだが、綾波レイの事を『ファーストチルドレン』って呼んでる人が結構いたんだよ」

 

「・・・?それが何か気になるの?」

 

「うん。これは僕の推測なんだが、このファーストとかサードというのは、エヴァンゲリオンに乗れる人数の事を指してるんだよな?」

 

「んーと、たぶん、ね・・・?」

 

 気がつくとシンジ君と僕は2階まで来ていた。暑くても雑談していると、少しは暑さを紛らわしてくれるみたいだな。

 

「そうすると、だな。エヴァンゲリオンには君を含めてファーストからサードまでの三人しか乗れないって事になる。僕はサブパイロットだから、この場合は『一人でエヴァを動かせる』って意味で、だな」

 

「んん・・・?まあ、そうなる、のかな?」

 

「推測だからな。外れてるかもしれないが。とにかく、エヴァンゲリオンを動かせるのが世界で三人しかいないと考えると・・・」

 

「え?なんで世界で三人なの?もっと居るかもしれないじゃないか」

 

 ・・・・・・シンジ君。君、自分の立場を忘れてるんじゃあないか?

 

「君は約1ヶ月前にこの第三新東京市に来たばかりなんだろ?もし他にもエヴァのパイロットが見つかっているなら、君が『三番目』なんてあり得ないじゃあないか。君が恐らく、一番最近に見つかったパイロットなんだから」

 

「・・・・・・あ!そう、なるのかな・・・?」

 

「ネルフは曲がりなりにも国連の組織だ。その国連が見つけられたパイロットが世界でたったの三人なのだとしたら、フツーは物凄く優遇されるハズなんだ。世界を救うための貴重な戦力なんだからな。辛く当たりすぎて、ソッポでも向かれたら目も当てられない」

 

「うーん、言われてみればそうかも・・・?」

 

 シンジ君。かなり呆けた回答だけどな、コレは君も含まれている話なんだぜ?ちょっと頭を働かせれば、君の持つ発言力はネルフよりも『上』だと気づくハズなんだ。

 

 君を含めて世界で三人しか動かせない兵器。しかも、それを動かせなければ世界が滅ぶ。まさに救世主だ。それにソッポを向かれないよう、本来ならネルフは、全力で土下座でもなんでもして君に『お願いする立場』なんだ。

 

 まあ、それは置いておくとしても──。

 

「綾波レイが『最初の』パイロットなのだとしたら、この待遇には疑問が残る」

 

 僕たちは3階を通り過ぎて、4階への階段に足をかける。

 

「普通、こんな、人が住んでいるかわからないよーな建物に貴重なパイロットを住まわせるか?最低でも『最高の待遇』で、ネルフ本部に部屋を用意するのが筋だ。なのに現実は、こんな廃墟に綾波レイは住んでいるという。・・・・・・それがどーにも気になってね」

 

「うーん。言われてみれば確かにそうだけど・・・逆に綾波が物凄く人が嫌い、だとか?」

 

「なるほどな。その線も否めない。まぁどっち道、綾波レイに会ってみればわかる事だがな」

 

「そうだね」

 

 そんな雑談をしていれば、長いと思っていた4階までの階段もあっと言う間だ。僕たちは知らぬ間にかいていた額の汗を拭いながら、綾波レイが住むと言う4階のフロアに到達していた。

 

「402・・・、あった。ここだ」

 

 シンジ君が部屋のナンバープレートを見ながら、綾波レイの部屋を発見する。

 

「『綾波』ってネームプレートはあるな。本気でこんな場所に住んでるのか」

 

「ジョルノ君。ここまで言っておいて、部屋の中身が物凄く可愛らしいヌイグルミとかで溢れてたらどうするつもり?」

 

 シンジ君が笑いながら僕をからかう。まぁ、確かに、その可能性もあるからな。綾波レイが『何か』に対して、めちゃくちゃこだわりのある人間である可能性は否めない。

 

「それなら賭けでもするかい?」

 

「え?」

 

「綾波レイが物凄い凝り性である事にジュース一本。もちろん僕は、そうじゃあない可能性に一本だ」

 

「なんだよソレ!それじゃあ賭けにならないよ!」

 

 シンジ君が笑いながらインターホンのスイッチを押す。まぁ、そーだろうな。僕もここまで来て、綾波レイが可愛いもの好きの偏屈者であったなら潔くジュースを奢るさ。その可能性は低いと見たせいで、残念ながら、僕とシンジ君の間で賭けは成立しなかったが。

 

 だが。

 

「あ、あれ?」

 

 シンジ君の押すインターホンが、なんの反応も示さない。

 

「?」

 

「・・・壊れてる、のかな?」

 

 戸惑うシンジ君をよそに、僕は部屋のドアノブにそっと手をかける。

 

「!?」

 

 鍵が、掛かっていない?

 

「悪い、シンジ君」

 

「え?何?」

 

 僕たちの間に、静かに緊張が走る。

 

「僕の思い過ごしかもしれないが、この部屋、鍵が掛かっていない。僕は他の部屋も確認してみる。シンジ君には悪いが、一足先にこの部屋に入って、中を確認してくれないか?」

 

「・・・!それ、って・・・・・・」

 

「綾波レイの安否はわからない。もしかしたら、ただ鍵をかけ忘れてどこかに出かけているのかも・・・だが、綾波レイは『エヴァンゲリオンのパイロット』だ。もしかしたら、何かの事件に巻き込まれている可能性も否定できない」

 

「そ、それって・・・ッ!?」

 

「僕は隣の部屋を見てみる。シンジ君は、この部屋に入って、中を確認してくれ。何かあれば大声で僕を呼ぶこと。いいね?」

 

 シンジ君の瞳が不安で揺れているのがわかる。だけどシンジ君は、強い意志の籠った瞳で僕に頷いてくれた。

 

「ジョルノ君、気を付けて・・・!」

 

「シンジ君もな・・・!」

 

 言うが早いか、僕は隣の401の部屋のドアノブに手をかけた。ゆっくりとノブを回す。鍵は予想通り、掛かっていなかった。

 

(念のため、『スタンド』を出しておくか)

 

 僕は自分の横に『ゴールド・エクスペリエンス』を発現させた。もし、この後、何か不測の事態があっても即座に対応できるようにな。

 

 僕は部屋のドアをゆっくりと開ける。

 

 何か、嫌な予感がする。この予感が、ただの思い過ごしならばいいのだが。

 

 その時だった。

 

「ほわぁぁあああああああっ!?」

 

 隣の部屋から、シンジ君の悲鳴が聞こえてきた。

 

「シンジ君!?」

 

 僕は401の部屋を飛び出すと、急いで隣の402の部屋のドアを開ける。

 

「・・・・・・ッ!?な、なんだ、この部屋は!?」

 

 壁や天井は打ちっぱなしのコンクリート。床も申し訳程度にタイルが敷かれているだけだ。シンジ君の冗談とは真反対の状況に面食らったが、いくらなんでも無機質にすぎる!

 

 こんな、人の生活空間と呼べないような部屋に、綾波レイは住んでいると言うのか!?

 

 だとしたら、何を考えてるんだ!ネルフはッ!!

 

「いや、・・・あの、僕、別に・・・・・・」

 

 部屋の奥から、シンジ君の声が聞こえる。誰かと対峙しているのか?

 

 誰に弁明しているかはわからないが、もしソレが正体不明の『敵』であったのならマズい!

 

「あ!?あああああッ!?」

 

「シンジ君!?」

 

 シンジ君の悲鳴に僕の心が焦りを覚える。僕は勢いに任せて、リビングと思われる部屋に飛び込んだ。

 

 パッと部屋を見渡した感じ、シンジ君の姿はない。

 

「う、あ・・・・・・」

 

 だがシンジ君の呻き声が僕の足元から聞こえた瞬間、僕は『ゴールド・エクスペリエンス』を足元の床に向かって発動する。足元にいる敵を、僕の『スタンド』で再起不能にしてやろうと拳を振り上げて──、

 

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

 その『スタンド』を、咄嗟に止めた僕を褒めてほしい。

 

 僕の足元で広がる光景は。

 

「あ・・・・・・うあぁ・・・・・・・・・」

 

 床にすっ転んでいるシンジ君と──、

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 その下で、シンジ君に胸を揉みしだかれながら、無表情でシンジ君をみつめる、綾波レイの姿だった。

 

 ・・・・・・え?

 

 なんだ?この状況?

 

 

 

つづく

 

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