ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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『レイ、聞こえるか』

 

『はい』

 

『これより、零号機の再起動実験を行う。第一次接続開始』

 

 シンジ君の父親である碇司令の言葉と共に、零号機の再起動実験が始まった。僕とシンジ君は葛城さんと一緒に、その実験の様子を見守っている。

 

 エヴァ零号機が動くとか、そーいった目立つ変化は今のところ起きない。どちらかというとシンクロテストみたいなものだからな。

 

 まずは綾波レイが問題なく零号機とシンクロできるのか。それがこの実験の鍵だった。

 

「綾波、うまくいくといいね・・・」

 

「・・・そうだな」

 

 シンジ君と僕、二人揃って不安げな声を出す。

 

 最近、僕は思う。僕は基本的に『迷う』とか『戸惑う』といった事がない。僕には絶対的な『夢』があり、それに信じて『向かい続ければ』、いつかはたどり着くと確信しているからだ。

 

 それは僕の仲間、僕の元の世界での仲間もそうだった。彼らは強かった。迷いながら、戸惑いながらも、自分から『運命』に立ち向かう強さがあったからだ。

 

 だからこそ、僕も彼らを信じ、鼓舞し続ける事ができた。

 

 だが、この世界の、今の僕の仲間たちはどうだろう。

 

 シンジ君も綾波レイも、僕の考える『強さ』とは違った何かを持って生きている。抗いようのない『運命』を前にしている事は僕の元の世界の仲間たちと同じだと思うが、彼らと違い、シンジ君たちには『諦め』に近い感情が見てとれる。

 

 それしかないから、それに縋るしかない。そんな感情が。

 

 それは『覚悟』とは違うものだ。心の強い人間ではなく、弱い、この世にありふれた人たちが持つ、当たり前のものだ。

 

 厄介なことに、この世界の大人たちは、この少年少女たちに、運命を『乗り越えた』り『立ち向かう』事を教えたりしない。抜き差しならない状況に置いておきながら、まるで『成長できなければ死ね』とでもいうように、死地に送り込んでいく。

 

 それは、僕一人ではどうにもできない事なのかもしれない。シンジ君は強くなりつつある。だが、綾波レイはどうだろう。彼女にもシンジ君と同様の、持っていて当たり前の『弱さ』が見てとれるんだ。

 

 僕の任務は変わらず『シンジ君を救うこと』だ。

 

 だが最近、僕は『シンジ君だけを救うのか?』と、思い悩んでいる。

 

『絶対境界線まで、後2.5、1.7、1.2、1.0、0.8、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、突破。ボーダーライン、クリア』

 

 伊吹さんのアナウンスが、実験の成功を告げる。僕とシンジ君の両方から安堵のため息がもれた。

 

『零号機、起動しました』

 

『了解。引き続き、連動試験に入ります』

 

 綾波レイの声がアナウンスとして響く。

 

 その時だった。

 

「碇。未確認飛行物体が接近中だ。恐らく第五の使徒だな」

 

 冬月副司令の言葉に間髪入れず、碇司令はテスト中断を宣言した。

 

 

 

 

 毎度のことだが、使徒の襲来に合わせてエヴァ初号機の発進準備が急速に進められる。

 

『目標は、塔の沢上空を通過!』

 

『初号機、発進準備に入ります。第1ロックボルト外せ!』

 

「解除確認」

 

 僕の横でシンジ君が発進準備を進めている。流石に三度目ともなれば、その手つきは慣れたものだ。

 

 僕はエントリープラグの壁に寄りかかり、エヴァのカメラから外の様子をなんとなく窺う。

 

 ん?

 

 あの、ゲージのキャットウォークにいるのは綾波レイ、か?

 

 シンジ君は発進準備に気を取られて気付かない。僕は綾波レイをじっと観察した。

 

 彼女の表情は相変わらず無表情に近いが、どことなく寂しさ?いや、悔しさのようなものが滲み出ている気がする。

 

 碇ゲンドウの期待に応えたい。それが今の自分にはできない悔しさ、というやつか。

 

 零号機の再起動実験に成功したのに、なぜ、自分は出撃できないのか、と。

 

『目標は芦ノ湖上空へ侵入!』

 

『エヴァ初号機、発進準備よろし!』

 

 おっと、そろそろか。

 

「葛城さん」

 

『なぁに?ジョルノ君』

 

「今回は、威力偵察はしないんですか?」

 

 それを聞いた葛城さんが、小声でこちらに教えてくれた。

 

『碇司令が許可を出さなかったのよ・・・税金の無駄遣いをするよりエヴァを出したほうが早いからって』

 

「・・・・・・物凄く無能の発言に聞こえるんですが」

 

『あんまり言わないで。聞こえるから』

 

「聞こえてても構いやしませんよ」

 

『その代わりと言っちゃあなんだけど、今回は使徒の完全な死角にエヴァを出すわ。前回のジョルノ君の作戦みたいに、ATフィールドを中和しながら相手の様子を伺ってみて』

 

「了解。あの真四角なクリスタルがどんな動きをするか、僕たちの方で探ってみますよ。撤退は?」

 

『視野に入れてる。ヤバいと思ったら即申告して』

 

「了解。シンジ君もいいな?」

 

「大丈夫。前みたいなヘマはしないよ」

 

 ベネ。今回の作戦、一番上の無能の判断以外は概ね満足の行く作戦だ。シンジ君にも油断はない。これなら満足にやれそうだ。

 

『発進ッ!』

 

 葛城さんの号令と共に、僕たちは地上に向かって物凄いスピードで上がっていく。

 

 さて、まずはビルの影に隠れながら威力偵察といったところ、か。

 

 そう考えていた矢先──、

 

『目標内部に高エネルギー反応!』

『なんですって!?』

 

 !!

 

 まさか・・・・・・、

 

『円周部を加速、収束していきます!』

『まさか!?』

『ダメ!避けて!』

 

 移動中だぞ!?無理に決まっている!

 

「シンジ君!ATフィールドだ!地上に出たら即座に張るんだ!」

 

「了解!!」

 

 エヴァが地上に出た瞬間だった。僕たちの目の前には巨大なビルが立ち塞がっており、敵の姿は見えない。

 

 だがそのビルが、一瞬にして『溶けた』。

 

「ATフィールド、全開!!」

 

 シンジ君の雄叫びとともに目の前に強固なATフィールドが出現する。

 

「え・・・・・・!?」

「な、何ィィイイイイイイッ!!」

 

 そのATフィールドが、一瞬で弾けた。

 

 敵の攻撃。眩い、力ある光の奔流が僕たちに襲いかかった。

 

「うあああああああああああああ・・・!!」

「ぐぅうあああああっ!?」

 

 ま、マズい!敵の攻撃は、僕たちパイロットの乗っているエントリープラグを的確に狙ってきている!

 

 LCLがあまりの高熱に沸騰する!

 

「が、あ、くそぉ・・・」

 

 シンジ君がなんとか敵の攻撃から逃れようとエヴァの身を捩らせる。だがロックボルトが硬すぎて、エヴァは身動きが取れない!敵の怪光線をなす術なく受けるままだ!

 

 マズい・・・・・・死ぬ!

 

『戻して、早くッ!!・・・あぁッ!!』

 

 葛城さんの悲鳴を最期に、僕とシンジ君を光の奔流が焼き尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』

 

 

 

 

 

「了解。あの真四角なクリスタルがどんな動きをするか、僕たちの方で探ってみますよ。撤退は?」

 

『視野に入れてる。ヤバいと思ったら即申告して』

 

「了解。シンジ君もいいな?」

 

「大丈夫。前みたいなヘマはしないよ」

 

 ベネ。今回の作戦、一番上の無能の判断以外は概ね満足の行く作戦だ。シンジ君にも油断はない。これなら満足にやれそうだ。

 

『発進ッ!』

 

 葛城さんの発進の声を聞いた瞬間、

 

 僕の背中に悪寒が走った。

 

「マズい!このままではッ!!」

 

 僕が葛城さんに発進を中止しようと進言しかけた瞬間、エヴァは地上に向かって物凄いスピードで発進していた。

 

「マズい!!シンジ君、敵の攻撃が来る!拘束具を壊すぞ!」

 

「え!?う、うん!わかった!」

 

『目標内部に高エネルギー反応!』

『なんですって!?』

 

 クソッ!敵はこっちの位置を正確に把握していたのか!ビルの死角になっていたはずなのに、どうやって!?

 

 エヴァンゲリオンが身を捩り、どうにか両腕の拘束具を切り離すことはできた。だが──、

 

『ダメ!避けて!』

 

 その他の拘束具が外れる前に、僕たちは地上に運び出されてしまった。

 

「シンジ君!ATフィールドを!」

「フィールド!全開!!」

 

 目の前のビルが溶け落ちると同時、光の奔流が僕たちに襲い掛かる。

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーッ!」

 

 ATフィールドが持ち堪えてくれた一瞬。その一瞬を使って、両腕でエヴァの拘束具を破壊していく。

 

 ATフィールドにヒビが入る!叩き割られる!

 

 バリィンッとATフィールドが破られたのと、エヴァが拘束具を破壊したのが同時だった。エヴァはすんでのところで横っ跳びに敵の攻撃を躱した。

 

『ナイス!シンちゃん、ジョルノ!』

 

 だが、敵の攻撃は終わらなかった。僕たちに向けて放っていたビームが、僕たちを追尾するように『横に薙ぎ払われた』!

 

「うあああッ!?」

「くそ!?」

 

 エヴァは転げ回って逃げることしかできない。とにかく、あの攻撃に当たるのはマズい!

 

 薙ぎ払われたビームによって、第三新東京市が火の海と化していく。兵装ビルのほとんどが敵の攻撃によって爆炎に飲み込まれていく。

 

「走るぞシンジ君!」

「わ、わかった!」

 

 エヴァがなんとか立ち上がり、第三新東京市を全力で逃げ回る!

 

『アンビリカルケーブル切断!』

『内部電源に切り替わります!』

 

 途端、エントリープラグ内にエヴァの残り稼働時間が表示された。

 

『シンジ君!残り4分48秒!』

「わかってます!」

 

 第三新東京市を爆走しながら、僕たちは逃げ回る。目の前の一際高いビルの影に僕たちが入り込んだ瞬間だった。

 

『ッ!?目標の攻撃がとまりました!』

 

 ベネ!ちょうど今、僕たちは奴の死角だ。

 

「葛城さん!奴の攻撃は何秒だ!?」

『・・・!約、20秒よ!』

「次の攻撃の予兆は!?」

『まだ無いわ!』

「グラッツェ!」

「ジョルノ君!行こう!」

 

 エヴァ初号機がビルの物陰から飛び出す。

 

『初号機!プログナイフを装備!』

 

 敵との距離はそこまで離れていない。右手に装備したナイフでヤツを切り裂こうと振り上げた瞬間──、

 

『目標内部に再び高エネルギー反応!!』

 

 くそ!早い!!

 

 目の前の使徒から再び光の奔流が襲い掛かってくる。

 

「ミサトさん!」

 

『!?』

 

「「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーーッ!!」」

 

 僕とシンジ君が力を合わせ、両拳にスタンドパワーを纏いながら、極太のビームに向けてラッシュを放つ!

 

 だが、やはり無謀と言うべきか。スタンドパワーで覆われた拳でもビームを弾き返す事ができない。

 

「う、うああ・・・」

「だ、ダメか・・・」

 

 両手のスタンドパワーが吹き飛ばされ、僕たちの両手がジュウーーーッと音を立てて焼かれた。

 

「うわぁーーーーーッ!?」

「ぐうう!!」

 

 勢いに勝てず、僕たちのエヴァは後ろに倒れていく。ビームは僕たちの上を通り過ぎていったが、すぐに追撃してくるだろう。

 

 

 

 

 

「だが、うまくいったな!葛城さん!」

 

 

 

 

 

 エヴァの倒れ込んだ先。そこは。

 

「脱出口だ!これが僕たちの『逃走経路』だ!!」

 

 第三新東京市の道路がバシャッと音を立てて開くと同時、エヴァはその穴の中に落ちていく。

 

 脱出口の出入り口にビームが当たって爆発を起こす。その火花を浴びながら、僕たちは命からがら、戦場から離脱した。

 

 くそ。またしても違うタイプの使徒、か。近距離での戦闘が得意な僕たちと相性の悪いタイプだ。

 

 これは、本格的に作戦を練らないと、だな。

 

 

 

つづく

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