ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
ミサイル。黒い巨人。墜落する飛行機。エトセトラ、エトセトラ。
そーいった一切合切をとりあえず傍に置いて、僕はシンジ君の体を一通りチェックした。怪我がないか確認しないとな。いざとなれば僕の『スタンド』で怪我を治す事もできる。
お、なんだコレ?このポケットの膨らみ。この四角いのはもしかして、携帯電話じゃあないのか?
「なんだ、シンジ君。きみ、携帯電話持ってるじゃあないか」
「え?」
「わざわざ公衆電話なんか使わなくったって、それを使えば葛城さんに繋がったんじゃあないのか?」
「いや、これは、その・・・・・・」
「ちょっと二人とも!!グズグズしないで車に乗って!ここは危険だわ!」
おっと、そうだった。ここが本当に日本なのか、僕の中では結構疑わしくなってきてるんだが、この街がヤバい場所というのは否定できない。
「シンジ君、歩けるかい?」
「は、はい・・・。てか、僕の名前・・・・・・」
「あーっ!!」
ん?なんだ?葛城さんが運転席で悲鳴を上げている。蜘蛛でもいたんだろーか。女性は苦手な人が多いっていうからな。
だが、僕の予想は的外れであったらしい。
「・・・ごっめ〜ん二人とも。この車、二人乗りだったわ」
・・・・・・・・・・・・この街に来てから、何かの強制力なのかわからないが言わないようにしていたセリフを、僕はとうとう口にする羽目になった。
「・・・やれやれ、だな」
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「ごめんねー!狭くて悪いけど、もうちょっちで一旦止まるから」
そう苦笑しながら謝る葛城さんを見ながら、僕とシンジ君は助手席でおしくらまんじゅうしている。
もちろんシートベルトは締められないワケだが、そんな状態でもグネグネと曲がりまくる山道を爆走する葛城さんを、僕は横目で睨んだ。
「そ、そんな目で見ないでよぉジョルノ君!ここが危ないって事くらい、あなたにもわかるでしょぉ!?」
「ええ、まあ・・・」
「あ、あのぉ」
僕と葛城さんの間で、窮屈そうに縮こまっているシンジ君が声をあげる。
「ありがとうございます。助けてもらっちゃって・・・」
「いいのよぉー!シンジ君!元はといえば遅れた私が悪いんだから」
「僕は完全に巻き込まれただけですけどね」
「さっきからジョルノ君がいぢめるぅ!」
「あの、それで、なんですけど・・・」
シンジ君が窮屈そうに葛城さんを指差す。
「あなたが葛城ミサトさん、ですよね?」
「ミサト、でいいわよ!改めてよろしくね!碇シンジ君!」
「あ、はい。それと、そのぉ・・・」
シンジ君は次に、困ったように僕を指差した。
「あなたは、さっき会った人、ですよね?」
「そうだね。君が僕以外に金髪の日系イタリア人に会っていなければ、だけど」
「あら?ジョルノ君てシンジ君の友達なんじゃなかったの?」
・・・・・・まぁ、聞かれるよな。
「ええ。そうですけど?」
「え!?僕たち、さっき会ったばかりですよね!?」
すまん。ありゃウソだった。って言いたいところだが、ここで話をややこしくしても仕方がない。
「いや、それが実はそうじゃあない気がするんだ。さっき歩いている時に思い出したんだが、きみ、『碇シンジ』君じゃあないか?」
「え?え?」
「ほら、実は小さい頃、僕たちは日本で会ってるんだよ?覚えてない?」
「え!えっと、どうだったかな・・・」
「えぇ!?マジか、シンジ君!小さい頃ちょくちょく遊んでたじゃあないか!本当に?本当に覚えてない?」
「え、え、えっと、ごめんなさい・・・」
萎縮してしまってるシンジ君には悪いが、もちろん嘘だ。僕とシンジ君は正真正銘の初対面だ。そもそも僕は日本に来たことがない。赤ん坊の頃に住んではいたらしいがな。
それと、母親が日本人てのは嘘じゃあないが。
だが大丈夫だ。こういった時のとっておきが僕にはある。
「そうか。・・・・・・いや、悪かったよ。覚えてないのも無理はない。なにしろ、小さい頃の僕は髪が黒かったからな・・・」
「あら!ジョルノ君たら髪の毛染めてんの?不良ぉ〜w」
まぁ、不良なのは否定しない。とゆーか、それどころじゃない。「ギャングです」なんて言ったら目ん玉飛び出るだろーな、葛城さんの。
「違いますよ。遺伝なんです。僕の父親が金髪で。ほら、これが少し前の僕の写真」
「あ、本当だ!黒髪・・・!」
「どれどれ・・・?あら!黒髪でもイケメンじゃないジョルノ君!」
僕の写真を見せたら、二人ともすぐに信じてくれた。僕としてみればありがたい事だが、この二人には今後の人生のためにも、もう少し相手を疑う事を覚えてほしい。もっとも、僕が言えた義理じゃあないが。
「まぁ、そーゆーワケだから、シンジ君が覚えてないってのもしょーがないさ。どこかで思い出してくれたら、嬉しいけどね」
あり得ないけどな。
「そ、そうなんだ。ごめんね、ジョルノ、君・・・?」
「ああ、ジョルノ・ジョバァーナ。ジョジョって呼んでくれていいよ」
「なぁ〜んか昔あったわね!そんな名前のマンガ!」
人の名前をマンガにしないでほしい。
「わかった。改めて、ありがとう。ジョルノ君」
「どーいたしまして」
「でも、なんでジョルノ君は日本にいるの?しかもこの第三新東京市に?」
「ああ、それは・・・」
「二人とも。とりあえず一旦車停めるから、続きは降りて話したら?ここまで来ればとりあえず大丈夫でしょ!」
そう言うと、葛城さんは車を停めた。どうやら山の中腹辺りに来ていたらしい。窓の外を見れば、先ほどまでいた街がだいぶ遠くに見える。
葛城さんの提案に従って、僕たちは車を降りた。シンジ君はよっぽど車内がキツかったのか、んん〜と伸びをしている。
葛城さんはというと、車から降りると同時に双眼鏡を取り出していた。どうやら街を観察しているようだ。ここにいても街の方から爆音が聞こえてくる。日本の軍隊は、あの巨人をまだ退治できていないらしい。
僕は葛城さんの動きに疑問を感じた。さっきも感じた事だが、動きが妙に洗練されている。野次馬が事件を遠目に観察するのとは違う、何かしらのプロのような動きだ。
「葛城さん。失礼ですが貴女はもしかして、ジャーナリストか何か、なんですか?」
「へ?」
僕の投げかけた質問に、葛城さんの目が点になる。どうやら違ったようだ。
「すみません。葛城さんの動きが、なにか手慣れているような気がして」
「あ、あー・・・。確かに。言われてみれば、そう思われても仕方ないかも、ね」
苦笑しながら葛城さんは、ポケットから札のような物を取り出した。身分証明書のようだ。
それを受け取った僕は、そこに書かれている組織の名前を読み上げる。
「特務機関、ネルフ?」
「そ!国連直属の非公開組織!」
・・・・・・嘘かホントかはわからないが、この人、大丈夫だろーか?非公開ってことは秘密ってことなんじゃあないのか?
「あ!その目!疑ってるわねぇ!?」
「いえ。疑うも何も、非公開の組織なのだとしたら、僕には判断のしようがありませんよ」
「う!そ、それもそうね・・・」
「これって・・・・・・」
伸びを終えたシンジ君が、横から僕の手元を覗き込む。
「父のいるところ、ですね・・・・・・?」
気のせいか?シンジ君の顔が、少し曇ったようだが。何か事情があるのか?
「まねー!シンジ君のお父さんは・・・・・・ってああ!?」
何かを言いかけた葛城さんが、慌てて双眼鏡を目に当てる。何事かと振り返ろうとした僕とシンジ君だったが──、
「二人とも!急いで車に乗って!早くッ!」
いきなり助手席に二人とも押し込められた。
「ちょ!ミサトさ──」
「伏せてッ!!」
運転席に乗り込んできた葛城さんが、僕たち二人の頭を押さえ付ける。
直後に閃光と轟音。そして強い衝撃が僕らを襲った。
車ごと吹っ飛ばされたのだろう。一瞬の浮遊感と共に、上下左右めちゃくちゃに振り回される感覚。そして再び衝撃。
高級車であるはずのアルピーヌルノーが、グシャッと音を立てて天井から大地に落ちた。それでも豪風は収まらず、ひっくり返った車体をガタガタと揺らす。
「うわぁぁああああああああッ!!」
「・・・・・・ッ!!」
一拍遅れてシンジ君が悲鳴をあげる。僕と葛城さんは歯を食いしばって耐えるしかない。
時間にしてみれば恐らく数秒の事だったと思う。長すぎる数秒間だったが、どうやらこれ以上の衝撃は無いようだ。
「いったたたたぁ〜・・・・・・」
ひっくり返った車から、葛城さんが這い出る。僕も車体から這い出ると、シンジ君の腕を引っ張って外に出してやった。
「大丈夫だった?」
「は、はい・・・・・・口の中がシャリシャリしますけど・・・」
「そいつぁ結構」
「さっきの衝撃。ミサイルどころじゃあないですね。核爆弾でも落とされたんですか?」
「・・・シンジ君も大概だけど、ジョルノ君は大物ね。いきなり状況を冷静に分析し始めるんなんて」
「まあ、いくつか修羅場はくぐってるんで」
まぁコレほどに『ヤバい』と思った事はなかなか無いが。この街に来てから慣れてしまったようだ。
「まあいいわ!とりあえず車を起こしましょう!いくわよぉッ!」
葛城さんとシンジ君、それと僕とで倒れた車を起こす。
しかし、しみじみ思う。
巨人や軍隊が闊歩するような世界で、本当に僕の『スタンド』なんかが役に立つのだろうか。
『碇ユイ』。全く面倒な依頼をしてくれたものだ。
つづく