ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
「どぉりゃああああああ!!許可取ってきたわよ!バカジョルノぉぉおおお!!」
葛城さんが鬼の形相で更衣室のドアを蹴破って入ってきた。
・・・・・・横開きの自動ドアだよな?誰が直すんだ?アレ。
◇
「ネルフ本部から超高火力をぶっ放すぅ!?」
「それが一番確実だと思いますよ?」
ネルフ面々の前で僕とシンジ君が話した『作戦』は、相当ぶっ飛んでいるはずの葛城さんをしてぶっ飛んだ発想だったらしい。
シンジ君が僕の説明に補足を加える。
「僕たちがあの使徒と戦った感じですが、アイツのあのビーム、思ったより範囲が狭い気がしたんです」
「範囲が狭い?アレで?」
「いや、飛距離っていうよりか・・・なんて言えばいいんだろう?使い勝手が悪そうというか・・・・・・」
「たぶん、奴のあのビームには、死角がある」
僕はシンジ君に助け舟を出した。
「それは奴の『真下』。より正確に言えば、奴の外周部よりも内側には、ビームは撃てないんじゃあないですか?」
「・・・!それ、は、確かにそうかも・・・」
葛城さんが顎に手を当てて考え始める。僕はそこに追い討ちをかけるように推測を重ねた。
「奴が撃てない『証拠』がある。奴のビームの威力は僕とシンジ君が身をもって体験しているが、ATフィールドを易々と突破するということは、生半可な装甲ではまるで意味を為さないという事。にも関わらず、奴はこのネルフ本部まで、なぜかドリルで穴を開けて侵入しようとしている」
「それはつまり、使徒のビームは真下に向けて撃てない。それどころか、体を傾けて撃ち出すのも難しい、というわけね?」
赤木博士の指摘に、僕は頷いた。
「もしかしたら、本当のところはできるのかもしれない。だが、奴はそれをやっていない。だとしたら、そこが奴に付け入るチャンスなのかもしれません」
「ミサト」
「賭けてみる価値はありそうね・・・」
葛城さんを初めとしたネルフスタッフの面々が、一様に顎に手を当てて考え始める。
あともう一押し必要か。僕は、もう一つの懸念事項を投げかけてみた。
「もう一つ、気になる事が」
「なぁに?」
「奴のドリル。シールドですか。それにATフィールドは確認されてるんですか?」
「!!?」
ミサトさんの目が驚きに見開かれる。そばで聞いていた日向さんが、急いで端末を叩いて調べ始めた。
「・・・・・・現状は、奴のシールドはATフィールドの範囲内に収まっています。ただ・・・」
日向さんがメガネの位置を直した。
「ネルフ本部に到達する直前。今観測されているATフィールドの範囲内からは、ヤツのシールドは飛び出すと想定されます」
「つまり、難攻不落の空中要塞にできる、たった一つの隙間、という事ね」
葛城さんの言葉に、日向さんは大きく頷き返した。葛城さんが拳をバシッと合わせる。
「いい感じじゃない!その一点を集中して狙い撃てば、もしかしたらATフィールドをぶち抜くほどの高火力は要らないかもしれないわね」
「安心するのは早いわよ、ミサト。もしかしたら使徒のATフィールドの範囲が広がるかもしれない。どの道、超高火力を撃てる兵器は用意しておくべきだわ」
「それは当然よね。よし、ヤシマ作戦の狙撃地点を変更!初号機はネルフ本部直上から奴を狙い撃ちに・・・」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、ミサトさん!」
より成功率の高そうな作戦を前に燃え上がってきた葛城さんに、水を差したのはシンジ君だ。
「な、なによシンジ君。なにか問題でも?」
「あるんだよ、問題が。あの使徒は、僕たちの行動に『敏感』なんだ」
「・・・?どゆこと?」
「つまり、だな。葛城さん」
僕がシンジ君の後を引き継ぐ。
「奴は僕たちの行動を把握する事ができる、高い索敵能力を持っている、という事だ。思い出して欲しい。僕とシンジ君がエヴァで出撃したとき、奴は僕たちの出現場所を察知して攻撃の準備をしていただろう?」
「・・・・・・あ」
「僕たちが出撃したのは地下からで、オマケに葛城さんがビルの死角に出してくれるよう手配してくれていた。にも関わらず、奴は僕たちの出現する場所を正確に把握していて、ビルの反対側からエヴァに向けて正確に攻撃を仕掛けてきている」
僕は体重を右足に預け、少しだけ体勢を崩した。
「奴の恐ろしいところは攻撃力じゃあない。その正確無比な『索敵能力』なんだ。一定の範囲内に入ってきた敵対物をほぼ自動的に正確に攻撃できる能力。それこそが奴の真の恐ろしさだ」
僕は体を傾けながら、右手の人差し指を天井に向ける。
「使徒のシールド。それは奴にとっての唯一の弱点だ。そこは否定できない。だが、あれだけの索敵能力を持った敵が、自身の唯一の弱点を把握していないだろーか?僕はそうは思えない。奴の弱点を狙った瞬間、恐らく奴は何かしらのアクションを起こすハズだ。それは例えば『回避行動に移る』とか、な」
僕は右手の人差し指を上げたまま、もう一本、左手の人差し指を上げた。
「ここで問題が発生する。仮にだ。仮に僕たちの撃つ超高火力の一撃が外れた場合、『僕たちは次弾を撃っていいのか』という問題だ」
「・・・・・・あ!」
赤木博士が声を上げる。気付いたようだな。赤木博士がコンソールに向かい、何かのデータを高速で打ち込み始める。
「な、何よ?リツコ、どーしちゃったの?」
「・・・・・・ダメね、一発が限界だわ」
赤木博士がため息と共にこちらに振り返った。
「アナタの出した作戦が一番、使徒撃破の確率が高い。だけど、撃てるのは一発。それ以上は、ジオフロントの天井が持たないわ」
「あっ!!」
赤木博士の指摘に、ミサトさんが大きな声を上げた。
「そうだ。ここ、ジオフロントは地下空洞だ。そしてその上にある第三新東京市は、22層の防壁によって支えられている。そこに超高火力の一撃を叩き込んで、果たして天井の地盤は耐えられるのか?赤木博士の答えだと、一発だけなら大丈夫なようだな」
「けれどもし外したら、第二射は撃てない。撃てば天井が崩落して、第三新東京市は崩れ落ちるわ。その下にある、ネルフ本部はぺしゃんこね」
「ど、どーするの?それじゃあやっぱ、地上から狙い撃ったほうが確実・・・?」
「いいえ、MAGIは使徒撃破の確実性ならネルフ本部から撃った方が良いと回答しているわ」
「どの道、一発勝負、ってわけね・・・・・・」
再び沈黙が辺りを満たす。それを破ったのは、またしてもシンジ君だった。
「だから、この作戦は『二人がかり』でやるんです」
「二人?」
葛城さんの疑問の視線。それに怯む事なく、シンジ君は強く頷いた。
「エヴァンゲリオン初号機、それと、零号機の二機で、アイツをやっつけます・・・!」
◇
「で、あんたは着替え終わってるよーだけど、シンジ君とレイは?」
鼻息荒く、葛城さんが僕を睨みつける。
「さきに着替えて、二人して赤木博士のところに行きましたよ。その様子だと、随分と絞られたようですね?」
「あんた、ホントいい度胸してるわね・・・!お察しの通りよ!碇司令と冬月副司令からたぁ〜っぷり嫌味を言われたわ!「反対する理由はない」とか最終的には言ってたけど、本音は反対したいんでしょーよッ!あんたが立案したんだからあんたが行きなさいよねッ!?」
「僕は碇司令に嫌われてますからね。あの人、私情を優先しそうですし」
「くぅ〜〜ッ!否定できないから悔しい!・・・・・・ほら!着替えたんならさっさと行くわよ!」
「はいはい」
僕は苦笑しながら、肩を怒らす葛城さんの後に続いた。
エヴァのケージ横に併設された兵装倉庫。赤木博士のところでは、すでにシンジ君と綾波レイが作戦の説明を受けていたようだ。
「来たわね、ジョルノ君」
僕はぺこりと頭を下げる。
「遅くなりました。それで、これが例の?」
「ええ。『初号機用の盾』よ。急造仕様だけどもとは
「十分ですね。それと、頼んでおいた『アレ』は?」
「アナタ達も変な要求してくれるわよね。大丈夫。初号機専用の『ナックル』も急造だけど装備してあるわ」
「ありがとうございます。なにせ、手に火傷を負ったもので」
「ご愁傷様」
赤木博士が薄く微笑んでポケットに両手をしまった。
「さて、シンジ君。ジョルノ君。レイ。これから本作戦における、各担当を伝達します」
葛城さんが作戦部長として、凛とした態度で僕たち三人のパイロットに向き合った。
「シンジ君。ジョルノ君」
「はい」
「アナタ達は初号機で『囮』を担当」
「了解」
「レイは零号機で、砲手を担当」
「はい」
「これはシンジ君とジョルノ君が、両手に火傷を負ったから仕方ないわ。レイにはまだフィードバックの誤差があるけれど、それを補うため、地上で敵の足止め、意識の撹乱を担うのが初号機の役目。この囮役も、シンクロ率の高いシンジ君達の方が適任だわ。難しいミッションだけど、頑張って!」
僕を含めた三人が、力強く頷いた。
「・・・時間よ。みんな、準備して」
そう言い残すと、葛城さんと赤木博士はこの場を離れていった。僕らもそろそろ、持ち場につかなくてはな。
「綾波」
ふと、シンジ君が綾波レイに声を掛ける。
「なに?」
「僕たちで、使徒の足止めはするから。最後の一撃は、綾波に託したよ」
「・・・・・・ええ。わかった」
「はは。緊張してるの?リラックスしていこうよ。ヘマしたら、死んじゃうかもしれないんだし」
それはひょっとしてジョークで言っているのか?だとしたらかなり、いや全然笑えないジョーダンだぞ?シンジ君。
ほら。綾波レイも困っているじゃあないか。
「・・・・・・あなたは」
「ん?」
聞き取れるかどうかというようなか細い声。それは、綾波レイが心から絞り出したような、微かな感情と共に言葉に乗った。
「あなたは死なないわ。わたしが守るもの・・・」
・・・・・・驚いた。今の綾波レイの表情、本当に微かだが、決意のようなものが込められていた。
それと、なんとも言えない、優しい感情も。
「うん!頼りにしてるよ、綾波!」
それが嬉しかったんだろう。シンジ君の声も弾む。
僕も、せっかくだ。何か綾波レイに聞いておこうかな。
「なぁ、綾波さん」
「なに?ジョルノ・・・ジョバァーナ・・・・・・」
「君はなぜ、エヴァに乗るんだい?」
何気ない質問だった。
ただ、彼女にとっては、とても大きな意味を持つ質問だったらしい。彼女の目が大きく開いて、ぱちぱちと瞬きをした。
「・・・・・・絆、だから」
「絆?」
「そう。絆・・・・・・」
「それは、誰との絆なんだ?」
「・・・・・・みんな、との」
綾波レイは、倉庫の天井を見上げる。もしかしたらその先にある、夜空を見上げているのかもしれない。
「わたしには、他になにもないもの・・・・・・」
「そうか?」
僕のあまりにも軽い答えに、面食らったんだろーか?綾波レイが僕を不思議そうに見つめる。
「ジョルノ・ジョバァーナ・・・・・・変な人」
「ふふ。そうかもしれないな」
僕は手元の時計を見る。
時間だ。
「綾波。また後でね」
シンジ君の言葉に、綾波レイはまた瞬きをした。
「また・・・、後で・・・・・・」
そう互いに告げると、僕たちはそれぞれのエヴァに向かって歩き出す。
さて。
「シンジ君」
僕は右の拳を。
「オッケー。ジョルノ君」
シンジ君は左の拳を。
互いにコツンとぶつけ合う。
それじゃあ、行ってみよーか。
つづく