ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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40.

 

『きゃあああ!?』

『うっぐッ!?』

 

 使徒に飲み込まれた瞬間、ラングレーが上げた悲鳴。シンジ君の何かに耐えるような声から察するに、エヴァのどこかが損傷したな?

 

「シンジ君!どこをやられた!」

 

『み・・・』

『右足よ!牙で貫かれてるッ!ちゅーかジョバァーナ!パイロットはこのアタシよ!?なんでシンジばっかりに指示してんのよ!』

 

「なんだ、構って欲しかったのかい?」

 

『あんた、バカぁ!?帰ったら一発殴るから覚悟しとく事ねッ!!』

 

 ベネ。そこまで元気なら心配する必要はないな。

 

 さて肝心の使徒だが、エヴァ弐号機を飲み込んだまま、打ち上げられた魚のように身を捩らせているな。

 

 よく見れば、確かにエヴァの足が使徒の口元から出ているのが見て取れる。随分と太く鋭い牙だ。右足のふくらはぎ辺りを貫かれてるようだが、千切れなかったのは奇跡だな。

 

 そこからエヴァのケーブルが伸びている。こっちも千切れなかったのは奇跡だ。

 

「冗談じゃない、飛行甲板がめちゃめちゃじゃないか!!」

 

 艦長が悲鳴を上げるが、とりあえずは放っておいて大丈夫だろう。エヴァが着艦した際にあらかたの作業員は避難しているので、被害が出ているという事もなさそうだ。

 

 そうこうしているうちに使徒は、甲板からゆっくりと海に向かってズリ落ちていく。ケーブルがまるで釣り糸のように伸びていくのが見える。

 

 ザブンッ!と巨大な水飛沫を上げながら、使徒が海中へと戻っていった。

 

「落ちたじゃないか!?」

「ジョルノ!B型装備では水中戦闘は無理よ!」

 

「『水中』なら、な。幸いにして、今はヤツの『口中』ってところか。その隙を突くというわけだが・・・・・・シンジ君!ラングレー!」

 

『何よ!!』

『ジョルノ君?』

 

「Lesson2!『使徒に悟られるな』!」

 

『はぁ!?』

『!!』

 

「僕たちの作戦は依然変わらずに進行中だが、使徒に悟られてはならない!ヤツは今『邪魔な敵を排除してやった』と考えているはずだ!ヤツに悟られないよう、慎重に、口内にある『コア』に近付くんだ!捕えられた獲物が僅かに身じろぎするように、慎重に、自然にゆっくりと!」

 

『わかった!やってみ・・・』

『できるわけないでしょ!?今エヴァの足は牙で貫かれてんのよ!?これ以上中には進めないわ!』

 

 む、そうか。文字通り足止めされてるってわけだな?

 

 だが、ラングレーはともかく、シンジ君は諦めてはいないようだな。

 

「シンジ君、使徒の『コア』に手は届きそうか?」

 

『いや、プログナイフを使っても先っちょが届くかどうかってところだよ!』

 

「そうか。じゃあ、『問題ない』な?」

 

『はあ!?問題大有りに決まってんじゃない!この状況じゃ・・・・・・』

 

『アスカ、ちょっと静かに。うん、『問題ない』よ、ジョルノ君・・・!』

 

 うむ、さすがシンジ君だ。これまでの死線を潜り抜けてきた経験は伊達じゃあないようだな。

 

 それに比べたら・・・・・・、

 

「ラングレー。君は『マンモーニ(ママっ子)』なんだな」

 

『・・・・・・なんですって?』

 

 静かに、怒りを込めてラングレーが聞き返してくる。

 

 イタリア語もわかるのか。確かに優秀じゃあないか、ラングレー。今のが『侮辱』の言葉だと理解したらしいな。

 

「いいかい?僕が『残念だ』と思っているのはな。君の『心の弱さ』なんだ、ラングレー。そりゃあ確かに使徒の口の中にイキナリ突っ込んだり海の中に落ちたんだ。衝撃を受けるのは当然だ。僕だってヤバイと思う」

 

 僕は手にしたマイクに向かって、わざとらしくため息を吐いた。

 

『・・・・・・それで、何がいいたいワケ?』

 

「いや?だが仮にシンジ君なら、あともうちょっとでノドに食らいつけるってエヴァをどーするかな?と思って、な・・・・・・」

 

『アスカ・・・・・・』

 

 シンジ君の静かな、しかし確かに決意の籠もった声が通信を流れる。

 

『ごめんね、かなり痛いとは思うけど・・・』

 

『し、シンジ・・・・・・?』

 

『僕を信じて、任せてくれる?』

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい///』

 

 あ、シンジ君の天然ジゴロが発動したな。エントリープラグ内の様子はわからないが、何が起きているかはわかるぞ。これはもはやシンジ君の才能、『スタンド』と言っても過言じゃあないんじゃないか?

 

 そんなやり取りをした、一瞬だけ空気が緩んだ瞬間だった。

 

「あぁーーーっ!Yak-38改!!」

 

 背後のケンスケ君が、船の甲板を見ながら歓声を上げた。彼が指差した方向を見れば、甲板に青色の、少々小型でありながらシャープな曲線を描く戦闘機が現れた。

 

『おーい、葛城ぃーッ!』

 

「加ぁ持ぃ!!」

 

 お、もしかしてそれで戦闘に参加してくれるのか?葛城さんも心なしか嬉しそうじゃあないか。

 

 だが。

 

『届けもんがあるんで、俺、先に行くわぁ〜』

 

 ・・・・・・は?

 

『んじゃ、よろしく〜葛城一尉〜〜・・・・・・』

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「逃げよったで、あん人・・・・・・」

 

 ・・・・・・まあ、今更戦闘機なんて出てきても、正直、作戦は詰めの段階に入っている。居ても居なくても問題はない。

 

 

 

 そう思考を切り替えようとした瞬間だった。

 

 

 

『うわぁっ!コイツ・・・・・・!』

『何!?急に暴れ出した!?』

 

 

 

 なんだと!?

 

『マズい!引っ張られるよ!』

 

「ケーブルの長さは!?」

 

「残り1200!」

 

 バカな!このタイミングで、使徒が暴れ出しただと?シンジ君たちは上手くやっていたはずだ。何が原因だ!?

 

 そこまで考えて、僕は思い出した。

 

 使徒がこの艦隊に襲い掛かった、その目的は──!!

 

「あの男か!あの男が何かを持っていたって事なのかッ!!」

 

 その目的が艦隊から離れていく。それを感じ取った使徒が暴れ出したんだ。

 

「シンジ君!ラングレー!決して手を離すな!何があってもだ!ここで逃げられたら、使徒に追いつく術はないッ!!」

 

『んな事言ったって、どの道足に牙が突き刺さってんだからどうしようもないわよッ!』

 

 ちぃ!幸か不幸かそのおかげでエヴァは使徒に張り付いていられるってわけか!

 

「どうするんだね!?」

「「『なんとかします!!』」」

 

 葛城さんと僕とシンジ君が同時に声を上げた。

 

『アスカ!歯を食いしばって!』

 

『え!シンジ!?』

 

『いくぞ!・・・・・・はぁッ!!』

 

 シンジ君の裂帛の気合い。それと共に──、

 

『痛ァァアアアアアアアアアア!!?』

 

 ラングレーの悲鳴が通信に響いた。

 

『し、シンジ!なんで右足・・・・・・ッ!?』

『切り落とした!これで動けるよッ!!』

 

「ディ・モールト・ベネ!ナイスだシンジ君!!」

 

 そうだ。シンジ君なら、あとちょっとでノドに食らいつけるエヴァを脱出なんかさせない!たとえ、腕を飛ばされようが脚をもがれようともなッ!

 

 そして、『ぶっ殺す』と心の中で思ったならッ!

 

『うおおおおおおおおおおおッ!!』

 

 通信の向こうで、硬い金属の塊同士がぶつかり合うような音が響いた。

 

『突き刺してやったわ!コアを!シンジが!!』

 

 すでに行動は終わっているんだッ!

 

 しかし、それで終わるほど使徒もヤワではないらしい。

 

『ダメだ!浅い!』

『うっそぉ!?使徒がめちゃくちゃに暴れ出したわ!なんなのよ、コイツぅーッ!』

 

「絶対離しちゃダメよ!アスカ!」

 

「アンビリカルケーブル切断!」

 

 ちぃ!今の動きで千切れたか!

 

「活動時間、あと57秒!」

 

『時間がないよ!アスカ!なんとかしないと・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・なんか、ムカついてきたわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラングレーの静かな怒りが、通信を流れてくる。

 

『ムカっ腹が立ってきたわ・・・・・・なんでクソッタレの『使徒』のために、エリートパイロットのアタシが悲鳴をあげたり脚を切り落としたりしなきゃあなんないのよ・・・?』

 

 その怒りは、最初は種火のように。しかし、徐々にラングレーの中で燃え広がって。

 

『『逆』じゃあないの?どうして・・・・・・ここから無事に帰れるなら「下痢腹抱えて公衆トイレを探してる方がずっと幸せ」って思わなくっちゃあならないのよ・・・・・・』

 

『あ、アスカ・・・・・・?』

 

『エリートパイロットとして華麗な操縦をシンジに見せるのはこのアタシよッ!!怯えて逃げるのは『使徒』!あんたの方だアアアアッ!!』

 

 通信の向こうで、何かが起きた。

 

 途端──、

 

「目標!急浮上!!」

「使徒が!?」

 

 僕たちの目の前で、巨大な使徒が水柱を上げながら海中から飛び出した。全員の視線が空中に飛び出した使徒に向く。

 

 その口を、両脚で無理やりにこじ開け、両手で使徒の体内にあったコアを無理やり引きちぎろうとしている弐号機の姿。

 

 その顔は、四つの目を覆っていたバイザーが開き、ギラギラと光り輝いている。

 

『あんた、ずいぶん好き放題コケにしてくれたじゃない・・・エエッ!?アタシ、コケにされると結構根に持つタイプなのよね・・・・・・!』

 

 弐号機が左手で千切れかけのコアを引っ張りながら、右手を高く振りかざした。

 

 

 

 

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ──ッ!!』

 

 

 

 

 

 次に使徒が海面に叩きつけられる前に。

 

 

 

 使徒のコアは、粉々に粉砕されていた。

 

 

 

つづく

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