ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
ズンッ!
ズンッ!!
ズンッ!!!
3体のエヴァンゲリオンが大地に降り立つ。海岸の砂浜が衝撃に合わせて、波打つように砂埃を巻き上げた。
その後ろに、エヴァの生命線であるアンビリカルケーブルを搭載した電源装置トレーラーが近付いてくる。僕たちはそのケーブルを受け取り、エヴァの背中に装着した。
エントリープラグ内のエヴァ活動限界のカウントが止まる。
3体のエヴァンゲリオンが、それぞれの得物を手にゆっくりと立ち上がった。
零号機はパレットライフル。
初号機はライフルに加えて、近接戦闘用のナックルを両手に装備している。ナックルの先から指が出せるので、パレットライフルの使用に支障はない。
弐号機の武器は、槍?薙刀?とにかく、長物の近接戦闘用の武器だ。
目の前に現れた使徒を前に、3体のエヴァンゲリオンがそれぞれ構えを取った。
『3人掛かりなんて、卑怯でやだな。趣味じゃない』
趣味とかそーゆー問題じゃない。相手の出方が分からない以上、数で上回っているってのは大きなアドバンテージだ。
『私達に選ぶ余裕なんて無いのよ、生き残るための手段をね・・・・・・』
葛城さんの言う通りだ。僕とシンジ君は初号機の中で静かに頷く。
フォーメーションは弐号機が前衛、初号機と零号機が中距離からサポートの後衛。3体のエヴァがちょうど三角形を描くように陣形を取った。
目の前の使徒は、ヒトデのような腕を振り上げて、何か威嚇しているように見えた。
・・・・・・ちょっぴり可愛いなと思ってしまったのは秘密だ。
『攻撃開始ッ!!』
『んじゃ!アタシから行くわ!援護してね!』
「ええ!?」
ラングレーのいきなりの突撃宣言に、シンジ君の声が裏返った。
『レディファーストよ♪』
ヤバい。この言動、マジで調子に乗ってた時のシンジ君だ。初見の敵に突っ込んでいくなんて愚の骨頂だ。ここは前衛が槍で距離を稼ぎつつ、ATフィールドを中和しながらの様子見がベストな局面だろうに。
「はぁ、仕切るのはいいけど前に出過ぎないでよね・・・」
シンジ君と綾波さんがほぼ同時にパレットライフルの引き金を引く。無数の銃弾が使徒に襲いかかるが、全ての弾が敵のATフィールドによって弾かれてしまった。
『行けるッ!!』
ラングレーは突撃の速度を落とさず、海面に突き出たかつての都市のビル群を飛び移っていく。
『うぁあああああああああああああッ!!』
紫電一閃。空中に飛び上がった弐号機が手にした槍を振り下ろした。
使徒は銃弾に気を取られているのか、全くの無反応。そこを容赦なく、槍の穂先が使徒の身体を両断した。
あっという間の決着。横のシンジ君が思わず「お見事」と口にするほどの鮮やかさだった。
『どう、シンジ?それにファースト!戦いは常に無駄なく美しく、よ!!』
通信を通してラングレーのドヤ顔が送られてくる。物凄く勝ち誇った顔をしているので、なんとなくだがその頭にチョップを食らわせてやりたい。
それに、いくらなんでも使徒を舐めすぎだろう。
「アスカ・・・油断しないで。たぶん、まだ終わってないよ」
シンジ君がラングレーに釘を刺した瞬間だった。
弐号機の前で両断された使徒の身体が、ビュルンッとその身をくねらせながら再生する。
それも、2匹に分裂して。
『ぬわぁんてインチキ!!』
「シンジ君!出るぞ!!」
「了解!綾波ッ!援護を!」
『わかったわ』
状況が、一気に動き出した。
「ラングレー!各個撃破だ!赤いほうをやれ!シンジ君は白いほうだ!」
「わかった!」
『ちょっと!指図すんじゃないわよジョバァーナ!!』
弐号機が海底を蹴り、一気に使徒から距離を取る。その横にパレットライフルを海岸に置いてきた初号機が並んだ。
ご丁寧にも、2体の使徒の胸には急所であるコアが一つずつ姿を現している。2対3だ。まだこちらの方が有利だ!
「いっくぞぉッ!!」
初号機が両手のナックルをガキンッと打ち付ける。初号機が使徒に向けて一歩踏み出した!
『舐めんじゃないわよ!ヤジロベーみたいな格好してッ!』
横の弐号機も再び槍を構える。
その時だった。
「え!?」
『ウソ!?きゃあッ!?』
僕たちの背後から、銃弾が襲いかかった。どうやら、零号機の射線に入ってしまったらしい。弾はATフィールドによって弾かれるが、味方からの誤射にシンジ君とラングレーがショックを受ける。
『なにしてんのよ!ファーストッ!アタシ達を殺す気ッ!?』
『・・・ごめんなさい』
「それよりもアスカ!前!」
『え!?きゃあッ!』
ラングレーが気を逸らした瞬間、目の前の赤い色の使徒がその爪を振るった。間一髪、弐号機は手にした武器でその爪の一撃を弾いた。
『こんっのぉおお!!』
ラングレーが怒りの咆哮を上げて槍を薙いだ。しかしその一撃は空を切り、使徒は弐号機から距離を取った。
「おおおおおッ!!」
シンジ君も初号機を白い使徒に向けて走らせる。一瞬で距離を縮めた初号機が、両の手にスタンドパワーを込めた。
「くらえ・・・ッ!!」
「シンジ君!いくぞ!!」
「「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄・・・・・・ッ!!」」
初号機の拳のラッシュが使徒に襲いかかる!
だが。
「え・・・・・・」
目の前から、使徒が一瞬で消えていた。
「はっ!?後ろだ!シンジ君!!」
「え!?うわぁ!?」
いつの間にか拳のラッシュを掻い潜って背後に回り込んだ使徒が、両腕で背後から初号機の腰にしがみついた!
ぐあっと、持ち上げられる初号機・・・!
「く、くそぉ!!」
シンジ君ががむしゃらに初号機の肘を背後に振り抜く。突き出された肘鉄の一撃は、ちょうど使徒の顔面を捉えた!初号機の咄嗟の反撃に、使徒のしがみついていた腕の力が緩む!
「シンジ君!振り解け!逃すな!」
「わかってるッ!!」
初号機が使徒の腕から逃れると、逆に使徒の腕を右腕で絡め取り、固定した!
「これならッ!!」
「逃げられないなッ!!」
初号機の左の拳にスタンドパワーを集中させる!ATフィールドを中和し、使徒のコアにダメージを与えることのできる力が左拳に宿る!
「「無駄無駄無駄ァッ!!」」
僅か三発。たったそれだけの攻撃で、使徒のコアは呆気なくバキィンッと音を立てて破壊された。
「よぉし!」
「ディモールト・ベネだ!シンジ君!!」
シンジ君は掴んだ使徒の腕を両腕で掴み直し、使徒を振り回して海面に叩き付け、沈めた。これで一匹は仕留めたな。
「アスカ!今行くッ!!」
『はぁ!?こんな敵、アタシ一人で十分よ!!』
「援護だ、ラングレー!不測の事態に備えて援護に向かう!」
『ふん!物は言い様ね!!』
確かにな!だが、それで使徒を確実に仕留められるんなら安いものだろう!
弐号機と赤い使徒が攻防を繰り広げる攻撃圏内に、初号機は足を踏み入れた。傍から見ていてもわかるが、この使徒の運動性はかなり高い。ラングレーの繰り出す鋭い一撃を、紙一重で交わして反撃を繰り出す様は、一流のボクサーを彷彿とさせる。
だが、まぁ、2対1なら!
その機動力も殺されるがな!
「アスカ!いくよ!!」
『ふん、足手纏いにならないようにね!』
『碇くんッ!ジョルノッ!!』
突然響いた、綾波さんの悲鳴。
それとともに、何かが腰にしがみつく感触。
その何かは、決して離さないという意志を感じさせるほどに強力で。
「え・・・・・・」
「な、なにィィイイイイイイイイッ!!?」
しがみついているのは、コアを破壊したはずの白い使徒!!
「ば、バカなぁッ!?確かにコアを打ち砕いたはずだ!なぜ生きている!」
「ぐ、ぐふッ!?こ、この力!強すぎる!さっきとは違う!なんで!?振り解けない!」
ぐぐぐっと、初号機の巨体が持ち上げられる!
「こ、この体勢・・・・・・ヤバい!マズいぞ、シンジ君!これを振り解かなくては・・・・・・がぁッ!?」
ギシギシと、初号機の背骨が悲鳴を上げる!
さ、鯖折り!?
いや、違う!そんな生やさしいものじゃあない!!
『レイ!援護をッ!!』
『ッ!!』
葛城さんの指示に従い、零号機がパレットライフルを白い使徒に向かって乱射する。しかし、その銃弾を受け止めたのは使徒では無く──、
「ぐああああああああああああああッ!?」
盾にされた、初号機だった。ATフィールドが逆に中和され、初号機の身体を銃弾が撃ち貫いていく!
『し、しま・・・・・・っ!』
「来るな綾波さん!!離れろ!コイツと、距離を・・・・・・ッ!!」
そう僕が叫び終わらないうちに、使徒が初号機を抱えたまま、跳んだ!!
「うわぁーーーーーッ!!?」
「こ、これは!バックドロップ──ッ!?」
僕とシンジ君が叫び終わる前に、初号機が頭から海底に叩きつけられる。強い衝撃が僕らを襲った。
僕の目の前が真っ暗になっていく。どうやら、今の一撃で思い切り脳を揺さぶられたらしい。
そして、悔しい事に僕の能力『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』が発動しない。これはつまり、今の一撃やこの後の展開において、僕の命が危険に晒されない事を示している。
つまり、舐められたワケだ。
放っておいても問題のない敵だと、使徒が、僕らを。
エヴァンゲリオンを、舐めた、というワケだ。
強い屈辱感と、どうしようもない脱力感が僕らを襲う。
僕とシンジ君は強く歯を食いしばりながら、暗闇へと意識を落としていった。
つづく