ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
最近ハマっている小説に、『金田一耕助』シリーズがあるって言ったよな?
後から知ったんだが、どーもこのシリーズ、実写映像化されていたらしい。僕も全てのシリーズを読み終えていないし、日本の映画とかはほとんど見ないのだが、かの有名な『シーン』だけは印象に残ってる。ある水死体の発見シーンだ。
最初見た時は何かのジョークなのかと思わず笑ってしまったが、今のこの状況においては、はっきり言って笑えない。
「本日午後15時58分15秒、2体に分離した目標甲の攻撃を受けた初号機は、駿河湾沖合い2キロの海上に水没・・・」
オペレーターの伊吹マヤさんが、冷静に、淡々と、此度の使徒戦の結果を報告している。
僕たちネルフのスタッフは、小さな試写室にて戦況報告を映像付きで聞いている。
目の前のスクリーンに映し出されているのは、まさしく『金田一耕助』の映画、『犬神家の一族』の有名なシーンをそのまま再現したのかと思うような光景。
海面から、初号機の二本足だけがニョキッと突き出された映像だ。たしか、小説の被害者の名前は「スケキヨ」とかいう名前だったか。
僕の隣でタオルを肩からかけたシンジ君がはあ、とため息を吐いた。
「同20秒、弐号機は目標乙の攻撃により活動停止。この状況に対するE計画責任者のコメント」
『無様ね』
赤木博士の辛辣なコメントが、僕とシンジ君の心にグサリと刺さる。はっきり言って、ぐうの音も出ない。ここまでの間抜けな醜態を晒したのは、僕に取っても初めての出来事だ。
「もぉッ!!あんた達のせいで、せっかくのデビュー戦が台無しになったじゃない!」
もっとも、ラングレーの言については反撃しなくてはならないがな。どこまで個人の視野に限った話をするんだ、コイツは。
「ちょっと待ってよ、アスカ!僕たちのせいってなんだよ!アスカが一人で十分みたいな言い方したんじゃないか!」
「はぁ〜!?それは使徒とのタイマンの時の話よ!2対2になった時点で先にやられるとか、足手纏い以外のナニモノでもないじゃない!」
「なんだよ!焦って倒そうとするから大変な事になったんだろ!?」
「そうだな。あの時はまだ零号機もいたんだ。それなのに連携も取れずに、ものの数秒でやられたのはラングレーの実力不足なんじゃあないのか?」
「あんですってぇッ!?」
「午後16時3分をもって、ネルフは作戦の遂行を断念!零号機は戦線を離脱!国連第2方面軍に指揮権を譲渡!」
僕たちのやり取りがやかましかったんだろう。伊吹さんの声が苛立ち混じりに少しだけ大きくなった。
「まったく、恥をかかせおって・・・・・・ん?」
僕たちの背後、最後列で報告を聞いていた冬月副司令が、どこか嬉しそうに僕に声をかけてきた。
あれだけネルフ内で好き勝手やった僕に対して、苛立ちや敗北感的なものを日々感じていたんだろう。まるで「ざまぁみろ!」とでも言いたげな、大人げない口調だった。
「同05分、N2爆雷により目標を攻撃・・・」
「また地図を書き直さなきゃならんな。んん?」
だから、なんでさっきから僕だけに執拗に攻撃してくるんだ。本当に大人げのないじーさんだな。僕の犯したミスをこれでもかとネチネチ突っ込みやがって。
・・・・・・いつもこんな気分だったのかな?葛城さんは。そーゆー意味では、僕らの代わりに矢面に立ってくれていた葛城さんには感謝だな。
「構成物質の28%を焼却に成功・・・」
「死んでるんですか?これ」
「足止めにすぎんよ。再度進攻は時間の問題だな」
「まっ!建て直しの時間が稼げただけでも、儲けもんっすよ」
ラングレーの質問に苛立ちながら答えた冬月副司令を、加持リョウジが宥める。
だが、そんな程度では冬月副司令の苛立ちは収まらないようだ。
「いいか君たち、君たちの仕事は何だか分かるか!?」
僕と綾波さんは副司令の方を見ず、シンジ君とラングレーが恐る恐ると言ったふうに答える。
「エヴァの・・・・・・」
「操縦・・・?」
「違う!使徒に勝つことだ!このような醜態をさらすために我々ネルフは存在しているわけではない!そのためには君たちが協力し合って・・・聞いているのかね!?ジョルノ・ジョバァーナ!?」
「もちろん、聞いてますよ。副司令」
僕は振り返らずに、テキトーに手を振って応えた。
「まったく!もういい・・・!」
副司令は顔を顰めながら、試写室を出ていった。
「どーして、みんなすぐに怒るの?」
「大人は恥をかきたくないのさ」
ラングレーの質問に、加持リョウジが実に的確な回答を提示した。
それはそうと・・・・・・、
「あれ?ミサトさんは?」
確かに、葛城さんの姿が見当たらないのは僕も気になっていた。
それに答えたのも、加持リョウジだった。
「後片付け。責任者は責任を取るためにいるからな♪」
・・・・・・なるほどな。僕たちの知らないところで、またもや矢面に立ってくれている、ということか。
これは、今度ビールの差し入れでもしてやらないとな。
◇
僕とシンジ君、それに綾波さんが家に帰ってきたのは、夜の8時を回ったところだった。
僕の横では腹ペコ青娘の腹が、何かの獣でも飼ってるんじゃないかってくらい「グルルル・・・・・・ッ」と唸り声を上げている。くそ、この時間帯で、早めに作れるものって何があるだろーか?
まあ、ものはついで、だ。
「シンジ君。良かったら夕飯は僕の部屋で食べていかないか?今から夕食作るのも大変だろ?」
「え?いいの?」
「どうせ綾波さんにも作ってやらなきゃいけないからな。二人分が三人分になるくらいなら手間は一緒さ」
まぁ、正確には六人分くらい、だろーか。綾波さんがさっきから僕の服の袖を摘んでグイグイと引っ張ってきている。この様子じゃあ、綾波さんの分は三人前ではすまないだろーな。
「ありがとう!じゃあ荷物を置いたらお邪魔するよ!」
そう言うとシンジ君は僕らの隣部屋である葛城家のドアを開けた。
「・・・って、なんだコレ!」
「ん?どーした?シンジ君」
「どうしたもこうしたも、なんなんだよこの大荷物!?」
僕は興味を引かれて、葛城家の中をシンジ君の背中越しに覗いてみた。
・・・・・・おお。ダンボールの山が出来上がっている。いつかの葛城家訪問じゃあないが、これは足の踏み場もないな。
「すごい数の荷物だな」
「一体、誰がこんな・・・・・・!」
「失礼ね。アタシの荷物よ」
ダンボールの山の向こうに、赤みを帯びた金髪がふわりと揺れる。
ラフな格好で出てきたのは、惣流・アスカ・ラングレー。
「な、なんでアスカがここに!?」
「あんたこそ、まだココにいたの?」
・・・ん?どういう意味だ?
「まだっ、て?」
「あんた、今日からお払い箱よ」
「え?」
「ミサトは私と暮らすの。まぁ、どっちが優秀かを考えれば、当然の選択よね♪ほんとは加持さんといっしょの方がいいんだけど」
ラングレーが髪を払いながら、得意満面といった様子で僕たちに目をやる。
「しっかし、どうして日本の部屋って、こう狭いのかしら。荷物が半分も入らないじゃない!」
「んえ?・・・・・・ああ!僕の荷物!」
シンジ君がラングレー越しに、自分の私物を無理やり詰め込まれたダンボールを発見したらしい。シンジ君がお払い箱ってのは多分無いだろーが、ラングレーがこの部屋に住むというのは本当のようだ。
それにかこつけて、シンジ君を部屋から追い出そうとしているのはどーかと思うがな。
「おまけに、日本人てどうしてこう危機感足りないのかしら?よくこんな鍵のない部屋で暮らせるわね。信じられない」
僕たちの目の前で、部屋の襖を開けたり閉めたりしながら、ラングレーがグチをこぼす。
「それはね〜日本人の心情は察しと思いやりだからよ〜」
僕と綾波さんの背後、そこから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「ミサトさん・・・」
「葛城さん?」
「みんな、お帰りなさい。さっそく上手くやってるじゃない?」
葛城さんの謎の言葉に、僕も含めた四人の
「「「「なにがですか?」」」」
「あら!みんな息ピッタリ!これは期待できそぉねぇ〜?」
「「「「???」」」」
葛城さんが、ニヤリと笑う。
・・・・・・また何か、よからぬ事、もとい、とんでもない作戦を考えているな?
「今度の作戦準備!みんな、覚悟しておいてね♪」
テヘッと笑ってペロッと舌を出す葛城さん。
作戦の内容は知らんが葛城さん。その仕草、流石にどうかと思うぞ?
つづく