ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
ピンポーンと、玄関のチャイムがなる。
僕の目の前の二人はまったく意識していなかっただろうが、その音に二人同時に顔を上げて、手にしたコーヒーカップを同時に机の上のソーサーに置いた。
二人同時に席から立ち上がり、右、左、と歩く足も歩幅も合わせて二人はリビングを出ていく。
「「はーい!」」
二人同時に声をあげたな。
そして、きっと同じタイミングで葛城邸のドアを開けたんだろう。玄関の方から、何やら悲鳴が聞こえてくる。
「「 こ、これは・・・、日本人は形から入るものだって、無理矢理ミサトさんが・・・」」
ある意味すごいよな。全く違う環境で育ってきた二人の人間が、たったの三日間でここまで息が合った動きをするとは。
「ふ、不潔よ!二人ともぉっ!!」
「「ご、誤解だよ(わ)!!?」」
おっと。声の感じからすると来客は洞木委員長らしいな。それに、もう少し人数も多い気がする。たぶん、トウジ君とケンスケ君もいるな?
「5階も6階もないわーっ!?」
「あらぁ?いらっしゃい!」
ちょうどトイレに立っていた葛城さんも合流したんだろう。呑気な声が玄関から聞こえてくる。
・・・・・・まぁ、トウジ君達からすれば、青天の霹靂、というのか?そんな気分になるのは仕方ないだろうな。
僕は目の前でひたすらオヤツのクッキーを口に詰め込み続けている綾波さんを見ながら、ため息を吐くしかなかった。
◇
「そうならそうと、はよ言うてくれたらよかったのに!」
部屋に上がったトウジ君が声を上げる。それに続いて、委員長も恐る恐るといった様子で葛城さんに尋ねた。
「そ、それで、ユニゾンは上手く行ってるんですか・・・?」
それに答えたのは、シンジ君のミスによって発生したブザーの音。
「ご覧の通りよ。なかなかうまくいかないわねぇ・・・・・・」
この3日間、大した進展を見せないシンジ君とラングレーのユニゾンに、流石の葛城さんもため息を吐く。
ラングレーは限界だったんだろう。その場で地団駄を踏むと、彼女は大声で叫んだ。
「当ったり前じゃない!このシンジに合わせてレベル下げるなんて、うまく行くわけないわ!どだい、無理な話なのよッ!!」
そうは言うが、僕(と綾波さんは知らん)から見れば、二人のシンクロレベルは確実に高まってきている。問題はラングレーが、シンジ君がそこそこのレベルまで上がってくると、勝手にダンスの難易度を上げている事だろーか。
「じゃあ、やめとく?」
葛城さんが挑戦的な視線をラングレーに投げ掛ける。
「・・・・・・他に人、いないんでしょ?」
ラングレーは渋々といった様子で、ため息を吐きながら否定した。
だが、それを覆そうと葛城さんがニヤリと笑う。
「レイ、やってみて」
その言葉を聞き、何故か鼻息を荒くしてラングレーの代わりにツイスターゲームのようなシートの上に立とうとする綾波さんの首根っこを、僕は満身の力を込めて抑え込んだ。
「葛城さん。その行動に意味はあるんですか?」
僕の言葉には、微かにトゲが混ざっていたハズだ。それを、トウジ君達は感じ取ったようだな。当然、葛城さんも感じた事だろう。
「ジョルノ・・・・・・?」
「ハッキリ言うぞ?葛城さん。貴女は今、『結果を追い求めすぎている』。貴女の目的はなんだ?使徒を殲滅する事ってのは何となくだが、わかる。だが、それを、こんな他人を当てこするような真似をして、そうまでしてラングレーを貶めたいと思う理由はなんだ?」
「う・・・・・・」
葛城さん、詰まったな?という事は、貴女の行動には正当性が無いという事だな?
「こんなやり方をして、ラングレーがシンジ君とのユニゾンを完成してくれるのか?僕はそうは思わない。ハッキリと言わせてもらうが葛城さん。貴女のやろうとしている事は、貴女が求めた結果から最も遠ざかった結果をもたらすぞ?」
僕の言葉に、今まで静かにしていたシンジ君も続く。
「僕も、やりたくありません。ミサトさん」
「え?うぇ!?シンちゃん?」
「ミサトさんが何をしたいのか、僕はわかるつもりです。でも、こんな当てこするようなやり方、僕は嫌いです・・・」
シンジ君の確かな拒絶。それは、まさしくシンジ君とラングレーのユニゾンを確かなものにするために必要な発言だった。
ただ、それぞれの想いと、状況がもたらす結果は違うこともある。
「・・・・・・あんたら如きに気を遣われるなんて、アタシもヤキが回ったもんね・・・・・・もうイヤ!!やってらんないわッ!!」
ラングレーが叫ぶ。それは、たぶんこの特訓の初日からラングレーが抱き続けてきた想い。その想いの爆発であった。
ラングレーは僕とシンジ君を強く睨みつけたあと、引き戸を叩き付けるようにして開き、部屋を飛び出した。
「シンジ君!」
「わかってるッ!」
飛び出したラングレーを、シンジ君がすぐに追う。
「ジョバァーナくん!!」
「うぉっ!?・・・・・・え?僕も追いかけるのか?」
「当たり前でしょ!女の子を泣かしたのよ!責任取りなさいよ!」
マジか。いや、追いかけるのはいいが、ここで僕が出ていっても、ラングレーは納得しないと思うんだが。
というか、天然ジゴロのシンジ君が行けば解決すると思うが・・・・・・。
「はやくッッ!!」
「うぉ!?わ、わかった。わかったって・・・」
僕は仕方なく重い腰を上げて、部屋から出て行く。背後から「鬼の目ぇにも涙や・・・」というトウジ君の呟きが聞こえた気がした。
◇
さて、マンションの玄関口まで来たはいいが、どうしたもんかな。
僕がのんびりと辺りを見回していた時だった。
「よっ!」
何故か、加持リョウジと遭遇してしまった。
「・・・・・・いいんですか?貴方の担当の女の子が泣きながら出ていったハズですが。追いかけなくて大丈夫ですか?」
「あぁ、アスカなら見たよ。ただその後、シンジ君も追いかけてきてくれたからな。俺が追うまでもないさ。それより・・・・・・」
加持リョウジが、ポケットに両手を突っ込んだまま近付いてくる。
「ちょっと、デート、しないかい?」
「拒否します」
「ちょっと行ったところに綺麗な水族館があるんだ。そこで俺の話を聞いてくれよ。ほんの少しでいいからさ」
「耳が遠くなってるんですか?僕は『拒否する』と言ってるんだ。三度目は言わせないでくださいよ」
僕はそう言って、加持リョウジから離れようとした。
「ネルフと、その上位機関である、ゼーレ」
だが、僕の聞いた事のない単語を彼が口にした瞬間、僕の足は止まった。
「・・・・・・なんだって?ゼーレ?」
「君は優秀で、特別な力を持っている。だが、何もかもを知っているわけじゃない。ギブアンドテイクだ。互いに互いを利用したがってる存在だろう?俺らはさ」
「・・・・・・・・・」
「少しでいい。俺の身の上話に、ほんのちょっと付き合ってくれればな。君は俺になんでも聞いてくれて構わない。どうだ?美味しい話だと思うがな」
・・・・・・なるほど、ね。つまり僕は何も言わなくていいと。コイツから勝手に情報だけ持ってけと、そう言ってるのか。
まぁ、罠の匂いがプンプンしてるが、コイツはどちらかというと、僕の持ってる『能力』に目をつけたワケか。それも『スタンド』とかだけでなく、僕の性格とか行動力とかが、目の前の男は欲しいってことだな。
面白い。なら僕は逆に、あんたが僕にとって『使える人間なのか』。そこを判断させてもらおうじゃあないか。
「こっちに俺の車がある。ついてきてくれ」
僕が交渉のテーブルに乗ったと判断したんだろう。目の前の男は無防備に僕に背中を晒した。
僕は無言で加持リョウジについていく。
さて、少しは楽しい話だといいが、な。
つづく