ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 ピンポーンと、玄関のチャイムがなる。

 

 僕の目の前の二人はまったく意識していなかっただろうが、その音に二人同時に顔を上げて、手にしたコーヒーカップを同時に机の上のソーサーに置いた。

 

 二人同時に席から立ち上がり、右、左、と歩く足も歩幅も合わせて二人はリビングを出ていく。

 

「「はーい!」」

 

 二人同時に声をあげたな。

 

 そして、きっと同じタイミングで葛城邸のドアを開けたんだろう。玄関の方から、何やら悲鳴が聞こえてくる。

 

「「 こ、これは・・・、日本人は形から入るものだって、無理矢理ミサトさんが・・・」」

 

 ある意味すごいよな。全く違う環境で育ってきた二人の人間が、たったの三日間でここまで息が合った動きをするとは。

 

「ふ、不潔よ!二人ともぉっ!!」

 

「「ご、誤解だよ(わ)!!?」」

 

 おっと。声の感じからすると来客は洞木委員長らしいな。それに、もう少し人数も多い気がする。たぶん、トウジ君とケンスケ君もいるな?

 

「5階も6階もないわーっ!?」

 

「あらぁ?いらっしゃい!」

 

 ちょうどトイレに立っていた葛城さんも合流したんだろう。呑気な声が玄関から聞こえてくる。

 

 ・・・・・・まぁ、トウジ君達からすれば、青天の霹靂、というのか?そんな気分になるのは仕方ないだろうな。

 

 僕は目の前でひたすらオヤツのクッキーを口に詰め込み続けている綾波さんを見ながら、ため息を吐くしかなかった。

 

 

 

 

「そうならそうと、はよ言うてくれたらよかったのに!」

 

 部屋に上がったトウジ君が声を上げる。それに続いて、委員長も恐る恐るといった様子で葛城さんに尋ねた。

 

「そ、それで、ユニゾンは上手く行ってるんですか・・・?」

 

 それに答えたのは、シンジ君のミスによって発生したブザーの音。

 

「ご覧の通りよ。なかなかうまくいかないわねぇ・・・・・・」

 

 この3日間、大した進展を見せないシンジ君とラングレーのユニゾンに、流石の葛城さんもため息を吐く。

 

 ラングレーは限界だったんだろう。その場で地団駄を踏むと、彼女は大声で叫んだ。

 

「当ったり前じゃない!このシンジに合わせてレベル下げるなんて、うまく行くわけないわ!どだい、無理な話なのよッ!!」

 

 そうは言うが、僕(と綾波さんは知らん)から見れば、二人のシンクロレベルは確実に高まってきている。問題はラングレーが、シンジ君がそこそこのレベルまで上がってくると、勝手にダンスの難易度を上げている事だろーか。

 

「じゃあ、やめとく?」

 

 葛城さんが挑戦的な視線をラングレーに投げ掛ける。

 

「・・・・・・他に人、いないんでしょ?」

 

 ラングレーは渋々といった様子で、ため息を吐きながら否定した。

 

 だが、それを覆そうと葛城さんがニヤリと笑う。

 

「レイ、やってみて」

 

 その言葉を聞き、何故か鼻息を荒くしてラングレーの代わりにツイスターゲームのようなシートの上に立とうとする綾波さんの首根っこを、僕は満身の力を込めて抑え込んだ。

 

「葛城さん。その行動に意味はあるんですか?」

 

 僕の言葉には、微かにトゲが混ざっていたハズだ。それを、トウジ君達は感じ取ったようだな。当然、葛城さんも感じた事だろう。

 

「ジョルノ・・・・・・?」

 

「ハッキリ言うぞ?葛城さん。貴女は今、『結果を追い求めすぎている』。貴女の目的はなんだ?使徒を殲滅する事ってのは何となくだが、わかる。だが、それを、こんな他人を当てこするような真似をして、そうまでしてラングレーを貶めたいと思う理由はなんだ?」

 

「う・・・・・・」

 

 葛城さん、詰まったな?という事は、貴女の行動には正当性が無いという事だな?

 

「こんなやり方をして、ラングレーがシンジ君とのユニゾンを完成してくれるのか?僕はそうは思わない。ハッキリと言わせてもらうが葛城さん。貴女のやろうとしている事は、貴女が求めた結果から最も遠ざかった結果をもたらすぞ?」

 

 僕の言葉に、今まで静かにしていたシンジ君も続く。

 

「僕も、やりたくありません。ミサトさん」

 

「え?うぇ!?シンちゃん?」

 

「ミサトさんが何をしたいのか、僕はわかるつもりです。でも、こんな当てこするようなやり方、僕は嫌いです・・・」

 

 シンジ君の確かな拒絶。それは、まさしくシンジ君とラングレーのユニゾンを確かなものにするために必要な発言だった。

 

 ただ、それぞれの想いと、状況がもたらす結果は違うこともある。

 

「・・・・・・あんたら如きに気を遣われるなんて、アタシもヤキが回ったもんね・・・・・・もうイヤ!!やってらんないわッ!!」

 

 ラングレーが叫ぶ。それは、たぶんこの特訓の初日からラングレーが抱き続けてきた想い。その想いの爆発であった。

 

 ラングレーは僕とシンジ君を強く睨みつけたあと、引き戸を叩き付けるようにして開き、部屋を飛び出した。

 

「シンジ君!」

 

「わかってるッ!」

 

 飛び出したラングレーを、シンジ君がすぐに追う。

 

「ジョバァーナくん!!」

 

「うぉっ!?・・・・・・え?僕も追いかけるのか?」

 

「当たり前でしょ!女の子を泣かしたのよ!責任取りなさいよ!」

 

 マジか。いや、追いかけるのはいいが、ここで僕が出ていっても、ラングレーは納得しないと思うんだが。

 

 というか、天然ジゴロのシンジ君が行けば解決すると思うが・・・・・・。

 

「はやくッッ!!」

 

「うぉ!?わ、わかった。わかったって・・・」

 

 僕は仕方なく重い腰を上げて、部屋から出て行く。背後から「鬼の目ぇにも涙や・・・」というトウジ君の呟きが聞こえた気がした。

 

 

 

 

 さて、マンションの玄関口まで来たはいいが、どうしたもんかな。

 

 僕がのんびりと辺りを見回していた時だった。

 

「よっ!」

 

 何故か、加持リョウジと遭遇してしまった。

 

「・・・・・・いいんですか?貴方の担当の女の子が泣きながら出ていったハズですが。追いかけなくて大丈夫ですか?」

 

「あぁ、アスカなら見たよ。ただその後、シンジ君も追いかけてきてくれたからな。俺が追うまでもないさ。それより・・・・・・」

 

 加持リョウジが、ポケットに両手を突っ込んだまま近付いてくる。

 

「ちょっと、デート、しないかい?」

 

「拒否します」

 

「ちょっと行ったところに綺麗な水族館があるんだ。そこで俺の話を聞いてくれよ。ほんの少しでいいからさ」

 

「耳が遠くなってるんですか?僕は『拒否する』と言ってるんだ。三度目は言わせないでくださいよ」

 

 僕はそう言って、加持リョウジから離れようとした。

 

「ネルフと、その上位機関である、ゼーレ」

 

 だが、僕の聞いた事のない単語を彼が口にした瞬間、僕の足は止まった。

 

「・・・・・・なんだって?ゼーレ?」

 

「君は優秀で、特別な力を持っている。だが、何もかもを知っているわけじゃない。ギブアンドテイクだ。互いに互いを利用したがってる存在だろう?俺らはさ」

 

「・・・・・・・・・」

 

「少しでいい。俺の身の上話に、ほんのちょっと付き合ってくれればな。君は俺になんでも聞いてくれて構わない。どうだ?美味しい話だと思うがな」

 

 ・・・・・・なるほど、ね。つまり僕は何も言わなくていいと。コイツから勝手に情報だけ持ってけと、そう言ってるのか。

 

 まぁ、罠の匂いがプンプンしてるが、コイツはどちらかというと、僕の持ってる『能力』に目をつけたワケか。それも『スタンド』とかだけでなく、僕の性格とか行動力とかが、目の前の男は欲しいってことだな。

 

 面白い。なら僕は逆に、あんたが僕にとって『使える人間なのか』。そこを判断させてもらおうじゃあないか。

 

「こっちに俺の車がある。ついてきてくれ」

 

 僕が交渉のテーブルに乗ったと判断したんだろう。目の前の男は無防備に僕に背中を晒した。

 

 僕は無言で加持リョウジについていく。

 

 さて、少しは楽しい話だといいが、な。

 

 

 

つづく

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