ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
ドドドドドドドド・・・と心臓が早鐘を打っているッ!!
目の前の冴えないサラリーマン風の男、『グレしん』とか名乗っていたが、コイツは間違いなくスタンド使い!
しかも極めて厄介なことに、『ゼーレ』の配下のスタンド使いだ!
僕とグレしんの距離は約5メートル。その間で、グレしんの足元に倒れているのは、ついさっき『共闘関係』を結んだ加持さんだ。
互いの距離は近すぎず遠すぎず、絶妙な位置関係だな。
「くひり・・・・・・すげぇ考えてるなぁ、ジョルノ・ジョバァーナくん?安心したぜぇ?スタンドバトルは初めてじゃあないって感じだ」
ムカつく物言いだがその通りだ。スタンドバトルは初めてじゃあない。ことスタンドの絡んだ戦闘については、僕は相応の修羅場を潜ってきたと自負している。
今、僕はヤツの言う通りにすごく考えている。この敵の目的は?とか、スタンドのタイプや射程距離は?とか、その能力は何か?とかな。
そして、僕の中の選択肢として、一つ浮かび上がったのが──、
「『逃げる』ってんなら好きにしなよジョルノ・ジョバァーナ。別に加持リョウジに思い入れなんてそう無いだろう?あんたらの会話は横である程度見てたから、あんたらが『まだ希薄な関係』ってことはわかってるんだ。加持リョウジを見捨てて、この場から『逃げる』のも正しい選択かもなぁ〜」
ちっ・・・読まれていたか。確かに僕としては加持さんを見捨てて逃げるのも選択の一つではあった。
だが、このヤツの口調から察するに、ヤツはこの後、加持さんを始末するつもりだろう。
しかし、なぜ『今』なんだ?ゼーレとかいう組織がネルフの上位機関であるのならば、もっと以前に僕に接触してきてもおかしくはなかったハズだ。それをせずに、まさに今、僕たちに『攻撃』してきたってことは・・・・・・。
「お前の元々の狙いは、僕ではなく『加持さん』だったか」
「ふひり、ご名答〜ってヤツだ。加持リョウジは前からきな臭くってなぁ。優秀だが、なにか腹に持ってそーでなぁ。とりあえず泳がせつつもオラみたいなのが『鈴』としてついて回ってたってワケだ」
『鈴』・・・・・・つまり監視か。
「加持がスパイだってことはオラたちにとっちゃあ重要じゃねぇ。どーせ加持ごときじゃあ情報を得てもどーしよーもねぇからな。だがジョルノ・ジョバァーナ、オメェと接触するなら話は別だ。たった一人で使徒に立ち向かい、『使徒の動きを止められるほどの強力なスタンド使い』と組むってのは看過できねー」
・・・ッ!第4の使徒戦か。やはり情報は伝わっていたようだな。
「ビデオを見させられたが、オメェ、『近距離パワー型』だな?遠くまでは行けないが、凄まじいパワーや能力を持ったスタンド。空中で樹を生やしていたが、アレがお前の能力の片鱗か?」
「随分とおしゃべりなヤツだ。そこまでわかっているなら、僕とやり合うって事を『覚悟』して来ている、ってことでいいんだな?」
僕が一歩踏み出す。距離は4メートル。
「ふひり、『覚悟』ぉ?必要ねーな。オメェごときを殺るのにはよ〜『覚悟』は全く必要ねぇ」
グレしんが一歩下がる。距離は再び5メートル。
「近距離パワー型に近付くなんざ馬鹿のすることだ。オラにはオラの『距離』がある・・・」
距離を取りたいワケか。ヤツのスタンドは遠隔操作型か?そう考えるには早計だが、警戒して近付かなくては。
僕はさらにもう一歩踏み出す。距離が4メートルに。
いや、『ほぼ0メートル』にまで縮んだ。
「なッ!?」
「イヤッホォーイッ!!」
コイツ、自分から距離を縮めただと!?
「ビビってんじゃあねぇぞ!?ジョルノ・ジョバァーナッ!!」
ヤツの足元から、ギャリッと音が聞こえる!まるでタイヤがブレーキを踏んだときのような異音!
「特注の革靴ローラーシューズだぜ!良いだろ!?」
それで加速して僕に近付いたってワケか!グレしんが、両手に持ったビニール袋を叩きつけてくる!中には大量の缶コーヒー!
「無駄無駄無駄ぁッ!!」
それを、『ゴールド・エクスペリエンス』で全て弾き落とす!!
「無駄はオメェだ!ジョバァーナぁぁあああッ!!」
眼前に迫ってきていたはずの敵の姿が、弾き飛ばされる缶コーヒーに紛れて消える!
・・・ッ!下か!!
「うぉしゃあああッ!!」
下から飛んでくるのは蹴り!コイツ、両手で自分の体を支えて、下から蹴りをッ!?カポエラか!?
「うぐぅ!?」
僕は『ゴールド・エクスペリエンス』でとっさにガードした!だが、この蹴りの威力!
「お、重い!?」
「素人じゃねぇんだ!オラをあんまり舐めてんじゃあねぇぞぉーーーッ!?」
あまりの蹴りの威力に、攻撃を防いだ僕の身体が一瞬宙に浮く!
「うおおおおお!?」
僕は放たれた蹴りを腕で弾き、反動を使って距離を取る!
だが、
「逃がさねぇ!!」
グレしんは落ちて散らばってた缶コーヒーをいくつか掴み、僕の足元に投げる。宙に浮いていた、僕の足元に!
「くそッ!」
僕の足が缶コーヒーを踏み付け、それに足を取られる!体勢を崩した僕に迫るグレしん!
だが、こっちだって素人じゃあないんだ!
僕は空中で体勢を立て直し、両腕を床に着けて全身の体重を預ける!
「むッ!?」
「お返しだッ!!」
迫り来るグレしんを、今度は僕が『スタンド』の両足で蹴り上げる!
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーッ!」
「おあ!?」
蹴り飛ばしてやったグレしんが、床に手をついて倒れ込む。僕はとっさに起き上がり──、
『ゴールド・エクスペリエンス!!』
スタンドで、拳のラッシュを叩き込む!
だが、
「トロいぜ!ジョルノ・ジョバァーナぁッ!!」
グレしんは床に背中と両手を付けると、ブレイクダンスのように回転し、その身体を持ち上げた!僕の『スタンドの』拳を躱しながら、まるで逆立ちのような姿勢から、独楽のように回転しながら蹴りを放ってくる!
「ぐふッ!?」
その蹴りが、僕の腹にメリ込んだ。
吹き飛ばされる勢いをなんとか殺し、両者の間に再び『5メートル』の距離が開いた。
「はぁ!はぁ!はぁ!貴様、ただのスタンド使いじゃあない!その身体能力・・・・・・ッ!」
「近距離パワー型じゃなきゃ近接戦闘ができねぇーなんて誰が決めたんだぁ?スタンド能力が遠隔操作なら、自分で自分を鍛えて戦える様になれば良いだけじゃあねぇか?お?」
グレしんがスーツの襟を正しながら、スッと立ち上がる。
「あとよぉ?勘違いしてるようだが、これは『スタンド戦』だぜぇ〜?殴ったり蹴ったりは二の次。オメェのスタンド、拳で殴りかかってきたってことは、手で触る事で発動するタイプのスタンドかぁ?」
「・・・ッ!」
コイツ、スタンド戦の経験値が高い!いくつもの修羅場を潜っているのは間違いない。対峙してきたスタンドのタイプも豊富のようだ。僕の能力はわからなくとも、似た様なタイプのスタンドとは戦ってきたんだろう。
「なら、その両手にだけ気をつけてればいいってことだなぁ」
床に散らばった缶コーヒーを足で退けながら、グレしんが距離を縮めてくる。
距離が4メートルに縮み、今度は僕が一歩下がってまた5メートル。
「中学生だからよぉ〜ブルッちまったのかぁ〜?しょうがねぇよなぁ?ジョルノ・ジョバァーナ君?」
「くっ」
コイツ、強い・・・・・・!今まで会ってきたスタンド使いとはまた別の、僕の未体験なタイプの戦闘スタイルだ。まさかスタンドではなく、自分自身の技術で攻めてくるタイプのスタンド使いがいるとは・・・・・・ッ!
だが、お陰で『呼び込めた』な。
『ゴールド・エクスペリエンス!!』
「・・・!?な、なにッ!?」
既に殴っていたからな。お前が投げつけてくれた、床に散らばっている『缶コーヒー』をな!
「こ、れは、毒ヘビ!?なんでこんなにたくさんッ!?」
缶コーヒーに生命を与えてヘビに変えておいた。お前はヘビの巣窟に足を踏み入れたって事だな。
おっとヘビの目の前で、あまり素早く動かない方がいいぞ?噛み付かれるからな、条件反射で。
「し、しまっ────!!」
ヘビの大群が、一斉にグレしんに飛び掛かる。
「うおおおおおおおおおおおおおおッ!?」
グレしんの断末魔が響き。
「・・・・・・な!?」
なにィィイイイイイイイイッッ!?
「あぶねーなぁ?ジョルノ・ジョバァーナ。『既に』だったか。既に能力を発動していたってワケかよぉ。抜け目ねぇなぁ」
な、何が、起きて・・・・・・ッ!
「だがスタンド戦は『早いもの勝ち』だ。オラのほうが『既に』能力を発動してたってわけだ」
ま、マズい!!このままでは、やられ──!
「『フェアグラウンド・アトラクション』。まぁ、安心しなよ。まだ『三分の一』だ。死にゃしない。・・・・・・後は、お前の態度次第では生かしておいてやってもいい」
な、何をされたんだ・・・?ヤツの方が先に能力を発動させていた、だと?アイツは遠隔操作型じゃあなかったのか?いや、そもそも、ヤツの能力はなんだ?
くそ、『レクイエム』が発動しない!バカな!なぜ──ッ!?
つづく