ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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5.

 

 こいつは、ちょっぴりマズい事になった。

 

「どーゆーこと?ジョルノ君。世間知らずとか、そんなレベルじゃないわよ?」

 

 葛城さんの疑いの目。その視線が無性に痛い。

 

「ジョルノ君・・・・・・」

 

 アルピーヌルノーの助手席で僕とおしくらまんじゅうしているシンジ君も不安げな表情だ。

 

 やらかした。まさかここが、僕の知る日本ではなく、いわゆる『異世界』ってヤツだったとは・・・・・・。

 

 マンガやアニメじゃないんだから。そう言いたくもなるが、もしかしたらそういう能力を持った『スタンド』がいてもおかしくはない。にわかには信じがたいってのが僕の本音だが。

 

 時間は少し遡る・・・・・・。

 

 

 ◇

 

 

 正確な道順は覚えていないが、葛城さんは僕との約束を守ってくれたらしい。目の前には『NERV』と書かれた大きな自動扉がある。

 どーでもいいが、イチジクの葉っぱか?組織のロゴマークとしてはなかなかオシャレだな。

 

 自動扉が開くと、葛城さんは車を進める。どうやら、これは巨大なエレベーターか何かのようだ。

 

「人類を守る大事な仕事、か・・・・・・」

 

「え?」

 

 不意に、シンジ君が車のダッシュボードを見ながら呟いた。その顔はどこか沈んでいる。

 

「いきなりどーしたんだい?シンジ君」

 

「いや、別に・・・・・・」

 

 別に、って顔じゃあないんだがな。何かあるのか?

 

 ガコンッという音がして、車を乗せたエレベーターが動き始める。エレベーター、というより貨物列車かゴンドラみたいな感じだ。

 

「はぁ〜あ〜最悪・・・私が言い始めたこととはいえ、車はベコベコ。一張羅の服はダメになるし、おまけに不良少年まで連れてくるハメになるなんて・・・」

 

「否定はしませんけど、そーゆーの、思ってても口にしない方が魅力的ですよ」

 

 愚痴る葛城さんに笑顔を向ける。

 

「・・・・・・アンタ、悪い男の子ね〜」

 

「実際、不良ってところは否定できませんからね」

 

「やだぁ・・・開き直ってる。手に負えない。リツコの助けがほしいわ・・・・・・」

 

 僕としては扱いやすくて助かるがな。

 

「あの、ミサトさん・・・・・・」

 

「ん?なぁに?シンジ君」

 

 沈んだ表情のまま、シンジ君は葛城さんに話しかけた。

 

「これから、父のところに行く、んですよね?」

 

「ええ。そーなるわね」

 

「・・・・・・父さん・・・・・・」

 

 ふむ。

 

 なにやら訳アリだとは思ったが、やはり父親の存在がシンジ君にとってキーなのは間違いないらしい。

 

「あ!そうだ。お父さんからIDもらってない?」

 

「あ、はい!んしょっと・・・・・・」

 

「おっと。悪いねシンジ君」

 

 シンジ君が自分のリュックを漁る。狭い車内だから、荷物を漁るのも一苦労だ。

 

「大丈夫だよ・・・・・・はい、コレ。どうぞ」

 

 シンジ君はリュックからさっきの父親の手紙と一緒になった紙を取り出すと、葛城さんに渡した。

 

「ありがと。じゃ、コレ読んどいてね」

 

 紙の内容を確認した葛城さんが、なにやら分厚い冊子をシンジ君に手渡した。その表紙には大きく「ようこそNERV江」と書かれていた。

 

「葛城さん・・・」

 

 僕はジト目で葛城さんを睨みつける。だが、ここは譲れないのか、葛城さんは僕の視線を無視した。

 

 手渡されたシンジ君はというと、冊子の表紙を眺めながら何か考え込んでしまっている。

 

 当たり前だ。葛城さんの言う通りなら、ネルフは軍組織なんだ。そんなところから「ようこそ」なんて言われて、フツーの中学生が良い感情を持つはずがない。

 

 シンジ君はしばらく黙っていたが、意を決したように口を開いた。

 

「なんか、するんですか?ジョルノ君の言ってた通り、僕が・・・・・・」

 

 葛城さんは答えない。

 

「そう、ですよね。用もないのに父が僕に手紙をくれるはず、ないですよね」

 

「・・・・・・苦手なのかい?お父さんが」

 

 僕の問いに、シンジ君は黙り込んでしまった。

 

 やはり、な。

 

「そうか。僕も父が苦手だったな」

 

「・・・え?」

 

「父、と言っても母親の再婚相手だから血の繋がりはないんだけどね。ただ、あの男は事あるごとに僕の事を殴ってきたな」

 

「ええ!?」

 

「ちょ、ジョルノ君!まさかあなた、それでグレちゃったわけぇ!?」

 

「いや、僕の恩人が助けてくれたんです。まぁグレたっていうのならその恩人の影響が強いかな」

 

「そ、それはそれでどーかと思うけど」

 

 葛城さんが憐れみを込めた目でこっちを見てくる。だが、

 

「だからこそ、今の僕がいるんです。チンピラにすらなれない父親ごときにビクついたりしないで済むような、そんな僕が」

 

「・・・・・・そっか。強いんだね、ジョルノ君は」

 

「シンジ君。そーじゃあない。『強くなった』んだ。その人に助けられたから」

 

「・・・・・・そう、なんだ」

 

 そう言うと、シンジ君は再び目を伏せてしまった。

 

「・・・・・・シンジ君はどっちかっつーと、私と似てるのかもね」

 

「え?」

 

 葛城さんの言葉に顔を上げたシンジ君。僕も意外だ。目の前の強い女性が、父親にコンプレックスを持っているようには思えなかったからな。

 

 これは、少し切り込んでみるか。

 

 そう考えた矢先だった。今まで暗いトンネル内を走っていた貨物列車の窓の向こうの景色がいきなり明るくなった。

 

 どうやら広い場所に出たらし、い・・・って。

 

「な、なんだ・・・ここは・・・ッ!?」

 

「すごい!本当にジオフロントだ!」

 

 目の前に広がる光景に、僕は息を呑んだ。

 

 この貨物列車は、確か下に向かって進んでいたハズだ。なら、いま僕たちが向かっているのは地下のはず。

 

 だが今、僕たちの眼下には広大な空間が広がっており、湖や森まである。ふと気になって上を見上げれば、天井には無数のビル群が突き出しており、アレは、採光窓か?そこからは太陽の光が降り注いでいる。

 

 僕は完全に言葉を失っていた。

 

「そう、これが私たちの秘密基地、ネルフ本部。世界再建の要、人類の砦となるところよ」

 

「ま、まさか東京都の地下にこんな空間があったなんて・・・・・・いや、東京都って言っても広いから、こんな空間があっても不思議ではない、か?」

 

「んん?『東京都』?何を言ってるのよジョルノ君」

 

「え?」

 

「ここは第三新東京市。東京都なんて、セカンドインパクトのおりに海の底に沈んじゃったじゃない?」

 

 ・・・・・・なんだって?

 

 いま、なんて言った?海に沈んだ?いや、そもそもセカンドインパクトってなんだ?

 

「葛城さん、すみません。東京都、ではないんですよね?」

 

「はぁ?なに言ってんのよ。いったいいつの話してるの?東京都が沈んだのはもう15年も前の話じゃない」

 

「じゅ、15年!?」

 

 ・・・・・・お、おかしい・・・これは明らかにおかしい・・・・・・!15年前といったら僕らが生まれて間もない頃だ。だが、生まれてこのかた東京が沈んだなんて話聞いたこともない。

 

「ちょっと待ってくれ、葛城さん。それは、マジ、なのか・・・?ジョーダンとかそーゆーのではなく・・・」

 

「えぇ?冗談な訳ないでしょ?授業で習わなかったの?セカンドインパクト発生のおりに、南極の氷が溶けて海面が上昇して・・・」

 

「南極の氷が溶けた!?」

 

 しまった!思わず声を・・・・・・。

 

 ヤバい。葛城さんが驚いている。『僕が驚いている事』に驚いている。横のシンジ君も一緒だ。

 

 マズい、この状況、どーやら彼らと僕の常識にはかなりの食い違いがあるらしい。このまま会話を続けるのはかなりマズい・・・!

 

 だが、僕はどうしても、もう一つだけ確認したい事があった。それは──、

 

「葛城さん」

 

「・・・なに?」

 

「今は、西暦何年ですか?」

 

「・・・・・・2015年よ?」

 

 ・・・これで確定した。

 

 ここは、僕の知る『日本』ではなかった。ここは、いやこの『世界』は、僕の生きていた時代とは違う『全く別の世界の日本』だ。彼らの言っている事は、恐らくこの世界の常識なのだろう。

 

 だが僕がさっきまで居たのは『2001年のイタリア』だ。東京が沈んでなんかいないし、南極の氷が溶けたなんて世界的な大事件も起きていない。15年前というのだから、本当に南極が溶けたとしたら起きたのは2000年。僕も知ってなくてはおかしい。一瞬『ここは未来の世界なのか』とも思ったが、それでは辻褄が合わない。

 

 となれば、考えられるのは一つ。馬鹿馬鹿しいと笑い飛ばしたいところだが、導かれる答えはここが全くの『異世界』だという事。

 

 車内の空気がゴゴゴゴとうねりをあげて重くなっていく。

 

 

 ◇

 

 

「どーゆーこと?ジョルノ君。世間知らずとか、そんなレベルじゃないわよ?」

 

 これは完全な僕のミスだ。もー少し慎重に探っていれば出るハズのなかったボロだ。

 

 だが、出してしまったものはしょーがない。今更下手な言い訳はできないだろう。かと言って黙り込んでしまうのも良くない。葛城さんへの印象は最悪だし、シンジ君にも疑いの芽が生まれてしまった。

 

 どーする。どー話せば、この二人の疑いは晴れる?

 

 ・・・・・・・・・・・・ダメだ。思い浮かばない。

 

 僕は諦めた。

 

 本当のことを話すしかない。

 

 信じるかどうかは、ある意味賭けだが。

 

「シンジ君」

 

「な、なに?」

 

「君は、『超能力』って見たことあるかい?」

 

「・・・え?」

 

「・・・・・・はぁ?」

 

 二人の視線が痛い。だが、ここは突き進むしかない。

 

「これから二人に話す事は荒唐無稽と思われるかもしれない。だがいい加減、僕も今の状況を整理したいところなんだ。ここをハッキリとさせない限り、僕たちは前には進めない」

 

 僕は二人の目をしっかりと見て、そして、叫んだ。

 

『ゴールド・エクスペリエンス!!』

 

「うわ!?」

 

「な、なに!?いきなり叫んで・・・・・・え?」

 

 車のダッシュボードが『解けていく』。それは蔓となり、葉っぱを生やして、綺麗なたくさんの『花』を咲かせた。

 

「え!え!えぇ!?」

 

「ちょ、ちょっと!何よコレ!?どうなってんの!?」

 

「これが僕の超能力。『スタンド』と呼ばれる、僕だけの能力だ」

 

 ファーストインプレッションは上々。

 

 僕の状況は変わらずに苦しい。苦しいが。

 

 やるしかない。

 

 

 

つづく

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