ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 やれやれ、だ。

 

 どーにかゼーレ直属のスタンド使い、グレしんを撃破できたのはいいが、これからどーするかな?

 

 僕と加持さんは足元で転がっているグレしんを見下しながら言葉を交わす。

 

「加持さん、奪われた記憶の方はどーですか?」

 

「ああ、その点は問題ない。コイツを蹴り飛ばした瞬間、俺の記憶は戻ってきたよ」

 

「それはよかったです」

 

「とはいえ・・・・・・」

 

 加持さんは眉間に皺を寄せながら、足元のグレしんを睨む。

 

「君と同じような、目には見えない何かしらの力、超能力と言ったほうが良いか。まさかこんな奴らがゼーレの下にいたとは・・・・・・」

 

「厄介ですね。『スタンド使い』がコイツだけならいいが、組織の規模からしてそんな事はないでしょうから」

 

「・・・ほぉ。なるほど、『スタンド使い』と言うのか。確かに君の言う通りだ、ジョルノ君。恐らくコイツ以外にも、ゼーレの子飼いの『スタンド使い』はいるだろうな・・・・・・」

 

 難しい顔をしたまま加持さんは、顎に手を当てて何かを考え込んでいる。僕も同様に、この後のことについて考えを巡らせた。

 

(マズいな。コイツを返り討ちにしたってことで、僕と加持さんの同盟関係はゼーレにバレたと考えていいだろう。この『グレしん』をどーするか?再起不能になるまで蹴りこんでやったが、コイツの始末の仕方は慎重に考えなくてはならない)

 

 僕の背に嫌な汗がツゥーッと流れる。

 

(敵は組織だ。出来ることなら、コイツの存在自体を隠蔽したい。コイツが襲い掛かってきた時点で、僕に対してゼーレが抱いていた疑惑は、グレーから真っ黒に変わっただろう・・・・・・この先も、このレベルの『スタンド使い』を送り込まれ続けたりしたら・・・・・・)

 

「ちょっと待った。ジョルノ君、そんなに考え込まなくて大丈夫だ。コイツの始末は俺がつける」

 

 思考の渦に飲み込まれそうになっていた僕に、「何も問題無い」と語りかけてくる加持さん。何か根拠でもあるんだろーか?

 

 僕は目で加持さんに問い掛ける。それを見た加持さんは不敵に笑った。

 

「ゼーレやネルフではこんなの日常茶飯事さ。ネルフや国連だって一枚岩じゃない。互いに互いの諜報員を相手先に潜り込ませるなんて事はしょっちゅうだし、戦闘になる事だってある。その結果、行方知らずになる奴だってごまんといる。コイツもその一人になったってだけだ。始末も俺がつける」

 

「だが加持さん。コイツは貴方についていた『鈴』だ。その『鈴』が行方不明になれば、貴方への疑惑は大きくなりそうですが・・・・・・」

 

「そんなの今更さ。コイツも言ってなかったか?俺は泳がされているんだ。まぁ確かにゼーレの俺への警戒レベルは上がるだろうがな。だが少なくとも、ジョルノ君。『君へ疑いの目が向く事』はなるべく避けたい」

 

「・・・・・・」

 

 それは、確かに納得できる理由だし、僕としても助かる提案だが。

 

「いいんですか?」

 

「いいも悪いも無い。君と俺は共闘関係にあるんだ。君は『ジョーカー』なんだ。俺の持つ手札の中で、君の存在は一番強い。それを切るのは、ここぞという時にしておきたいのさ」

 

「・・・なるほど。僕らの関係としては丁度いい具合ですね。僕も別に貴方と仲良しこよしになりたいワケじゃあない」

 

 僕は鼻から息をフッと抜くと、体重を左足に預けて肩の力を抜いた。

 

「そーゆー事ならこの場は、加持さん。お願いします」

 

「ああ、任せとけ。こういうのは俺の十八番だ。君は先に葛城のマンションまで帰ってくれ。流石にここの始末は時間がかかる」

 

 なんとも心強い言葉だな。しかし、僕はまだこの場から帰るつもりはない。加持さんから情報を全然抜き取れていないからな。

 

 そう、例えば、空母から加持さんが『持ち出したモノは何なのか』。そういった、この世界の核心に触れる話は、まだ出来ていないからな。

 

 こんな刺客が現れなけれりゃあ、僕としても焦ったりはしなかったんだがな。が、現にゼーレの刺客が襲ってきた以上、情報は早い段階で入手しておきたい。でなきゃあ、僕はゼーレに対して後手後手に回るしかなくなる。

 

 だが目の前の男は、僕の考えを見通した上で、首を横に振った。

 

「今、この場に君が長時間残る方がマズい。君と俺の共闘関係は、なるべく隠密に進めたいからな。色々と聞きたいことがあるだろうが、今は我慢だ」

 

「・・・・・・近いうちに色々と聞かせてもらいますよ?加持さん」

 

 僕は、渋々ではあるが加持さんに従うことにした。確かに、焦りすぎても良くはないな。

 

「オーケィ!今度どっかのレストランで夕食でも一緒に行こう。その時に話してやるよ」

 

「期待してます」

 

 僕の向けたアルカイックスマイルに、加持さんも不敵なる笑みを返した。

 

 まぁ、ここは加持さんを信用しておくかな。最悪、グレしんは死体にしてその辺の水槽にばら撒いて魚の餌にする、ってのも考えたんだが。まあ、そーなるとこの水族館、たぶん潰れるだろーからな。

 

 ともかく、グレしんの生殺与奪は加持さんに任せた。僕は早々にこの場から立ち去る事にしよう。

 

 ・・・・・・そういや、僕は水族館に来る前まで、何をしてたんだったか。さっきまで、シンジ君とラングレーの特訓を見ていた気がするんだが。

 

 色々ありすぎて、忘れてしまったな。

 

 

 

 

 何故僕が、水族館に行ったのか、ようやく思い出した。確か、飛び出したラングレーとシンジ君を追いかけてたんだったな。やる気は全然無かったが。

 

 僕は水族館から、徒歩で葛城さんのマンションの玄関口まで戻ってきた。

 

 と、ちょうどそこで、シンジ君とラングレーが向こうの道から歩いてくるのが見えた。随分と長い事、外出してたんだなとなんとなく思うが・・・・・・、

 

 ・・・・・・・・・なんで二人して手を繋いでるんだ?何があった?いや、何をした?シンジ君。

 

 シンジ君達も僕に気付いたようだ。慌てたようにラングレーがシンジ君の手を振り払う。振り払われたシンジ君はキョトンとしていて、何故振り払われたのか分からないといった様子だ。

 

 なんとなく、微笑ましい場面だ。まるで小さな子供が喧嘩して、仲直りして手を繋いで帰ってくる。そんな場面を思い浮かべてしまう。

 

「・・・何ニヤニヤ笑ってんのよ、ジョバァーナ」

 

「いや、何。微笑ましいなと思ってな。笑って悪かったよ」

 

「・・・・・・ふんッ!」

 

 大股で僕に近付いてきたラングレーが絡んできたが、いつもの刺々しい雰囲気は幾分か和らいでいるように見える。

 

 シンジ君、うまく彼女の心のしこりを取れたようだな。

 

 シンジ君も小走りで僕たちに駆け寄ってくる。その顔は、少しだが晴れやかな表情を湛えていた。

 

「ジョルノ君、ありがとう。もしかして、僕たちを探しに・・・?」

 

「ああ、そのために出たつもりだったんだが、完全に二人を見失ってな。今帰ってきたところだ」

 

「そっか。なんかゴメンね・・・」

 

「なにを謝ってんのよ、バカシンジ!アタシ達がコイツに対してなんか悪い事した!?」

 

「え!それは・・・してないけども・・・・・・」

 

「だったら軽々しく謝るな!男のくせに!」

 

「・・・・・・ふふ」

 

 二人のやり取りを見ながら、僕は自然と笑みを溢していた。それをめざとく見つけたラングレーがこちらを睨む。

 

「さっきから何よ。気持ち悪いわね」

 

「いや、すまない。なんだろーな。君の雰囲気が柔らかくなって、ちょっと安心したってところだ」

 

 僕の言葉に、ラングレーはキョトンとした。僕の言葉を飲み込んで、しっかりと落とし込んだんだろう。ラングレーは僕から目を逸らしながら、ポツリと呟いた。

 

「仕方ないじゃない。アタシはエヴァに乗るしかないのよ・・・・・・」

 

 その声音がちょっと弱々しい。だがすぐに思い直したかのように、ラングレーは僕を睨んだ。

 

「あんた、前にアタシのことを『マンモーニ』って言ってくれたわね?」

 

「ん?ああ、そういや言ったな」

 

「・・・・・・あんただけは、絶対に見返す!もちろんミサトやファーストも含めて見返してやるけど、特にあんたは絶対!傷付けられたプライドは、10倍にして返してやるんだから!覚悟してなさい!」

 

 そう宣言すると、ラングレーは一人でスタスタとマンションの玄関口に入っていく。それを僕とシンジ君はなんとなく見つめていた。

 

「どうだった?」

 

「・・・え?」

 

「彼女、少しは君に心を開いてくれてるよーだが」

 

「ああ。そうだね。少しだけでも、開いてくれた、かな?」

 

 シンジ君は困ったように頬をかく。

 

「ただ、僕とアスカは少しだけ、似ている部分があるのかもって思えたから・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「たぶん、仲良くできると思うよ」

 

 シンジ君の笑みが僕に向けられる。

 

 使徒との決戦まで、あと3日。

 

 今回、僕は戦闘に参加できないが、シンジ君の笑顔に、僕は安心した。

 

 きっと勝てる。もう、僕が居なくても。

 

 きっと。

 

 君は、本当に強くなった、からな。

 

 

 

つづく

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