ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 くそ。なんて酷い寝覚めだ。頭がガンガンする。完全に二日酔いじゃあないか。

 

 昨日、ワインを一杯だけ煽って早々に寝床についたまではよかったが、結局その後、隣のシンジ君たちの部屋が気になってしまい、僕は眠る事ができなかった。

 

 別に、彼らの情事が気になって、とかじゃあない。そんなもの、僕はこれっぽっちも興味がない。

 

 ただ、昨晩はリビングで綾波さんが大の字で可愛い寝息を立てて寝ていたんだ。そこに、だ。もし万が一、ラングレーの嬌声でも聞こえてきて綾波さんが起き出してしまったらと考えると気が気でなかった。

 

 「大丈夫、だよな・・・・・・?」「・・・・・・もう何も聞こえないよな?」なんて事を考え始めたのが運の尽きだ。情事の声なんて綾波さんの情操教育にとって、悪いなんてものじゃあない。最悪だ。どうにか彼女の安眠が守られるよう気を張っていた僕だったが、結局のところ、それは単なる取り越し苦労になってしまったってワケだ。

 

 たったこれだけの事なのに、僕は眠気覚ましのためにワインを2本も開けてしまったんだ。いつの間にか僕は、リビングの机に突っ伏して寝てしまっていたらしい。

 

 朝になって、綾波さんが起こしてくれなかったら、僕は今日一日、家で頭痛と戦っていた事だろう。

 

 ちなみに綾波さんの朝の挨拶は「朝ご飯、まだ?」だった。別の意味でも頭が痛くなったってワケだ。

 

 

 

 

 今日は第7の使徒へのリベンジマッチ。どうにか身支度を整えて、制服に身を包んだ僕と綾波さんは部屋を出た。

 

 ちょうど同じタイミングで、葛城邸の玄関が開く。出てくるのは当然、ラングレーとシンジ君だ。

 

「Guten Morgen!良い朝ね?」

 

 妙に上機嫌なラングレー。だが、いつも通りのラングレーだった。これは完全に僕の勘なんだが、その様子では一線は越えなかったようだな。隣のシンジ君もいつも通りだ。

 

「昨晩はお楽しみでしたねもがもが・・・・・・」

 

「やめろ綾波さん。一体どこで覚えた?そんなセリフ」

 

 子供の成長ってのは、僕が思ってたよりも早いものらしい。僕は必死に頭痛と闘いながら、背後から綾波さんの口を塞いだ。

 

「ジョバァーナ!!」

 

 ラングレーが僕に指を突きつけながら、大声で呼びかけてくる。勘弁してくれ。君のキンキン声は頭に響くんだ。

 

「あんたには言いたいことがいっぱいあるし、あんたの事はまだまだ気に入らないけど、とりあえずお礼だけは言っておくわ!Danke!」

 

「Gern geschehen・・・」

 

 僕はとりあえずドイツ語で返しておいた。

 

「あら?あんた、なかなかキザな返しをするじゃない。面白いわね」

 

 そいつはよかったな。じゃあしばらく放っておいてくれないか?そっちは一線を越えてないとはいえ、シンジ君と良いところまで行ったんだろ?頼むから放っといてくれ。

 

 ていうか、僕なんかに気を配らずにシンジ君とでもイチャついててくれよ。その方が僕は楽なんだからな。

 

 だが、僕の想定していた事態になる気配は一向にない。むしろいつも通りの二人の距離感に、逆に僕の方がヤキモキする感じだ。

 

 だけどな、僕は見たぞ。シンジ君とラングレーの間でだけでやり取りされるアイコンタクトを。

 

 ハッキリ言わせてもらう。

 

 そーゆーのが一番イライラするんだ!!

 

「ジョルノ?大丈夫・・・?」

 

 綾波さんの無垢な気遣いが今はありがたい。僕は頭痛に悩む頭を抱えたまま、四人でネルフ本部へと向かった。

 

 

 

 

「目標は、強羅絶対防衛線を突破!」

 

「来たわね!今度は抜かりないわよぉ!」

 

 ネルフの発令所にて、オペレーターの青葉シゲルさんが大声で戦況を伝える。それを聞いた葛城さんはやる気まんまんといった感じだ。発令所の大きなスクリーンには、2体の使徒の融合した姿が大きく映し出されている。

 

 僕は作戦には参加せず、綾波さんと一緒に発令所の後ろの方で待機している。エヴァ初号機にはシンジ君が、弐号機にはラングレーが乗っており、作戦の合図を待っている状態だ。

 

 葛城さんは元気いっぱいに二人のパイロットへと通信を繋げる。

 

「音楽スタートと同時に、ATフィールドを展開!後は作戦通りに。2人とも、いいわね?」

 

『『了解!』』

 

 シンジ君とラングレーの声が重なった。

 

『いいわね?最初からフル稼働、最大戦速で行くわよ!』

 

『わかってるよ。62秒で片をつける!』

 

 シンジ君とラングレーの通信が発令所に木霊する。こうやって第三者の視点で物事を見ていると、このパイロット同士のやり取りってのは結構恥ずかしいものがあるな。

 

 まあ、やる気満々の彼らには全く関係ないことだが。

 

「目標!ゼロ地点に到着します!」

 

「外電源、パージ!発進!!」

 

 葛城さんの号令と共に2機のエヴァンゲリオンからアンビリカルケーブルが外され、ケージから地上に向けて2体のエヴァが一気に地上に運び出されていく。

 

 それと同時に、この6日の間で聞き飽きた音楽が発令所内とエヴァのエントリープラグに流れ始めた。

 

 地上までの運び出される時間は約5秒とちょっと。射出口から飛び上がった2機のエヴァは、空中で一回転すると、その手から棒状の装置を使徒に投げ付けた。使徒を分離するための電磁柵形成装置だ。

 

 それを両手の爪で弾き飛ばした使徒だったが、二つの形成装置によって作られた電磁柵が使徒を無理矢理に2体に分けた。

 

 その機を逃さず、初号機と弐号機はそれぞれの武器を手に使徒に攻撃を加えていく。

 

 エヴァからの攻撃を受けて、使徒もその目から光線を発射して反撃に移る。だが、それを全く同じタイミングでバク転をしながら躱わす初号機と弐号機。

 

 5回バク転をしたところで、彼らを守るべく第三新東京市の防衛システムが働き、2体のエヴァの前に障壁が現れた。

 

 その背後から、再びパレットライフルで反撃する2体のエヴァ。その反撃を空を飛ぶことで躱し、その爪で以て襲いかかる使徒。

 

 シンジ君とラングレーは、それを横っ跳びで躱した。

 

 その動きに合わせるように、葛城さんの指示によって第三新東京市の火力支援が使徒を襲った。それによって使徒の動きが完全に封じられる。

 

 その機を逃してたまるものかと、シンジ君とラングレーの雄叫びが重なった。

 

 2体のエヴァの拳が、踵落としが、二つに分かれた使徒を同時に撃ち据える。

 

 使徒はその攻撃に耐えきれず思わず後退し、その体を一つに融合させた。

 

 だが、そのコアはまだ二つに分かれたままだ。

 

 最大のチャンス。その隙を見逃さず、初号機と弐号機が高く跳び上がる。回転を加え、2体のエヴァが空中で渾身の飛び蹴りを繰り出した。

 

 二人の心がぴったりと重なった一撃が、使徒の未だ融合していないコアに襲いかかる。躱す余裕は使徒にはない。

 

 勝った!!

 

 ネルフの面々の誰もが、勝利を確信した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 融合していたはずの使徒が、その身を二つに分けた。

 

 

 

 

『『───ッ!?』』

 

 シンジ君とラングレーが同時に息を呑む。完全なるトドメの一撃。それを使徒は分身することで完全に回避してみせたのだ。

 

 2機のエヴァの活動時間は残り10秒弱。それなのに、二人の渾身の蹴りは、使徒の分裂によって不発となってしまった。

 

『そ、そんな!?』

『ウソ──!?』

 

 シンジ君とラングレーの絶望の声が発令所に響く。

 

 2体のエヴァによる同時荷重攻撃。使徒を唯一撃破する手段、それがものの見事に外れてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、やっぱり、次善の策ってのは重要だな?葛城さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕のセリフに対し、葛城さんは獣の如き笑みを浮かべる。

 

「あんたってクソ生意気だけど、ホントに心強いわね!」

 

 その言葉が二人のパイロットに届いた瞬間!

 

 エヴァ2体の付近にアンビリカルケーブル接続用の兵装ビルが姿を現した!

 

『やっぱり!ジョルノ君はスーパーマンだよッ!!』

 

『チィッ!認めたくないけど、今回はしょーがないわね!』

 

 2体のエヴァは即座にアンビリカルケーブルをエヴァに接続し──!

 

『『無駄ぁッ!!』』

 

 着地した瞬間に2体のエヴァが、使徒への距離を一瞬で詰めて、同時に蹴り飛ばす!

 

 蹴り飛ばされた使徒は、互いの背中をぶつけるようにして一箇所に集められ──、

 

『シンジ?行くわよ?』

 

『うん!合わせて!アスカ!』

 

 その眼前で、2体のエヴァは拳を振りかざすッ!!

 

 

 

 

 

『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーッ!!』

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァーーーッ!!』

 

 

 

 

 

 2体のエヴァによる拳のラッシュが!

 

 2体に別れた使徒を襲う!!

 

 拳のラッシュに挟まれた使徒は身動きも取れず、ただひたすらにそのラッシュを身に受けるしかない状態だ!

 

『別に・・・分身したって問題ないんだ!』

 

『アタシとシンジの拳のタイミングが合わさるまで、殴り続ければいいってワケねッ!』

 

「あと、どれくらい耐えられるかしらねぇ?ちなみにアンビリカルケーブルがある限り、エヴァの稼働時間は無限よぉ?」

 

 三者三様の勝利の確信。それ以上に、この6日間で互いのシンクロ率を高めたシンジ君とラングレーの拳が、一切のブレなく使徒のコアに叩き込まれてゆく!

 

 攻撃を受け続ける使徒のコアのヒビまでもが全く同じタイミングでひび割れていき──、

 

 

 

 

 

『『うおりゃあああああああああッ!!』』

 

 

 

 

 

 二人の息のあった拳が、今度こそ使徒のコアを同時に貫いた!

 

 2体に分裂した使徒が断末魔のように、十字架状の爆炎を第三新東京市に上げる!

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・という爆音と共に、ネルフの発令所が大きく揺れた。スクリーンには爆発の炎だけが映し出され、発令所内を強烈な光が照らす。

 

 爆煙が晴れれば、そこには──、

 

『アスカ・・・・・・大丈夫?』

 

『ちょ!ちょっと!アタシの弐号機に何してんのよ!?別にそんな事してもらわなくったって平気だったのに!!』

 

 弐号機を庇うように抱きしめている、初号機の姿が映し出されていた。

 

『そ、そんなぁ!僕はアスカが心配だっただけで・・・』

 

『うぅ・・・!うるさいうるさいうるさい!!なに公衆の面前で堂々と抱きついてきてんのよ!エッチ!チカン!ヘンタイ!!信じらんない!!』

 

『なんだよ!そっちこそ昨日の夜は・・・!』

 

『ぎゃー!?ぎゃあー!?いやぁあああ!?あんた何口走ってんの!?』

 

 発令所内に、乾いた笑いが広がってゆく。

 

 まぁ、彼ら二人の関係が公になろうが、僕の知った事じゃないが。

 

「また恥をかかせおって・・・・・・」

 

 前回とは異なり、完全に恥をかかせられた老人が呟く。その言葉を耳にした僕の溜飲も、いくらか下がろうってもんだ。

 

 ちなみに、その日の夕方のニュースでは、弐号機を抱きしめる初号機の姿がバッチリとテレビに映し出されていたらしい。

 

 誰にとってかはともかく、まぁ、良かったんじゃあないか?とにかく無事に終わって。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 第7の使徒が撃破されたのと、ほぼ同時刻。

 

 アメリカ合衆国。フロリダ州マイアミにある巨大な刑務所に、場面は移る。

 

 刑務所の名前は『州立グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所』。島を丸ごと監獄に見立てた、超巨大刑務所だ。全体の敷地面積は120平方キロメートル。

 

 刑務所管理内ジェイルに収監されているのは男囚708名。女囚523名で、そのうちの452名は18歳以下の未成年だ。

 

 表向きは囚人に対しての更生のため「自由と平等」を重んじる姿勢をとっているが、この刑務所の警備は『最高厳重警備(マキシマム・セキュリティ)』とされており、至る所にガンポイントが設置され、許可なく立ち入れば警告無しに射殺される。

 

 そんな刑務所内でも特に厳重な警備を敷かれているのがここ、『厳正懲罰隔離房棟』。

 

 そこに、ゼーレの刺客である『渚カヲル』の姿があった。

 

「本来ならば、いくらアナタのような『国連事務次官』とはいえ面会は禁止されているのですが・・・・・・」

 

 渚カヲルに付き添う警備員が、額の汗を拭いながら警告する。

 

「会話はすべて録音されます。また、囚人との接触や物の受け渡しなどは一切許可できません。牢獄の扉からは最低2メートル離れていただき、5分間の会話のみが許可されます。よろしいですね?」

 

「ああ。構わないよ。僕の用事はすぐに済むからね」

 

 渚カヲルは数ある扉のうちの一つの前に立ち、さして気負うような素振りも見せず、実に軽い口調で、中の『囚人』に声をかけた。

 

「やぁ。調子はどうだい?・・・・・・あ、まずは初めまして、かな?すまないね、こういう事に慣れてなくってさ」

 

 渚カヲルはその顔に意図の読み取れぬ笑みを浮かべながら、中の囚人に声をかけた。牢獄の扉の向こうからは、ジャラジャラという鎖の音に紛れて、何かの祈りのような言葉が聞こえてくるだけ。渚カヲルの言葉に対し、何かを返そうという意思は全く見られない。

 

 しかしそれでも、渚カヲルは満足そうに笑い、その目を薄く細めた。

 

「君の出番だ。今度こそ、『天国への階段』を登っていってほしい。それが国連の、いや、ゼーレの総意だよ?」

 

 ジャラジャラという鎖の音と、何かの祈りの言葉だけが渚カヲルに帰ってきた。どうやら『話す事は何もない』と言いたいらしい。

 

「そうかい。それは残念だ。・・・・・・ところで、ジョルノ・ジョバァーナって知ってるかい?」

 

「!!」

 

 中の囚人の雰囲気が、その一言で確かに変わった。

 

「ジョルノ・ジョバァーナ・・・・・・」

 

「彼は、もうすぐこの大陸にやってくる。もし君がまだ『天国を望む』なら──」

 

 渚カヲルの口角が上がる。

 

「『彼』との邂逅が、恐らく最後の鍵となるはずだよ」

 

 その言葉を受けた瞬間、牢獄の中の囚人の雰囲気が明らかに変わった。

 

「神よ。感謝します。深淵なる目的のわたしとDIOの砦が、再びこの世に召しますよう、祝福してください」

 

 男の祈りの声がハッキリと聞き取れる。それを聞いた渚カヲルは満足気に頷いた。

 

「当然、首輪は付けたままだ。だけど・・・」

 

「問題ない。最後のDIOの息子が、わたしを押し上げるだろう。その時こそが、新たなる『天国の時』・・・・・・」

 

「そうだね。君が望む『人類の幸福』を今度こそ実現させて欲しい」

 

 そう言いつつも、渚カヲルの胸中には「それでも人類補完計画を覆すことはできない」という確信があった。

 

 だが、わずかな可能性。目の前の扉の向こうの男が、『人類補完計画』を上回る結果をもたらすかもしれない。

 

 どちらでも良いのだ、渚カヲルにとっては。

 

 渚カヲルは踵を返すと、その場を静かに立ち去った。

 

「父と子と聖霊の御名によりて──」

 

 監獄の囚人、『エンリコ・プッチ』は神に祈りを捧げる。

 

「アーメン」

 

 

 

To Be Continued…

 

 

 

 

 




 ここまで読んで頂き、ありがとうございました!これにて第五章は終了になります!

 いつも暖かい感想の数々、本当に心を鼓舞してくれます。改めてお礼申し上げます。

 今回はエヴァンゲリオンLASの頂点たるユニゾン回でしたが、いかがだったでしょうか?作者は砂糖と血反吐を吐きながら書いていましたが・・・・・・笑

 さて、次章より、この物語はオリジナルの展開が始まります。作者自身もどうなる事か、正直読めない(いつも即興で書いてるので)ですが、この物語も終局に向けて動き出します。

 もしよろしければ、ぜひ今後ともご笑覧くださいませ!

 それではみなさま、次にお会いする時まで!
 アリーヴェデルチ!!
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