ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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第六章 奇跡の価値は
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 第八の使徒。

 

 浅間山噴火口内にて発見された「使徒の幼体捕獲」なんていうアホな作戦の任務に当たった弐号機。

 作戦の途中、マグマの中で羽化した使徒に対して、熱膨張を利用した惣流・アスカ・ラングレーの咄嗟の機転により使徒は殲滅するも、マグマの中に沈んでいく弐号機を助けるべく、シンジ君がマグマの中に通常装備のまま飛び込んで救出した。

 

 結果、初号機は中破。

 

 

 

 第九の使徒。

 

 ネルフ本部の電源がすべて落とされるなか、機を見計らったかの様に使徒が襲来。強力な溶解液によりネルフ侵入を試みる使徒に対し、溶解液をその身で受け止めるディフェンス、縦穴の底に落としてしまったパレットライフルを拾うバックアップ、受け取ったライフルによるオフェンスの陣形をラングレーが考案。

 ディフェンスを買って出ると宣言するラングレーを押し留め、シンジ君の強い要望で、シンジ君がラングレーを庇う形でディフェンスを担当。

 

 結果、使徒殲滅に成功するも、その身に受けた溶解液により初号機は中破。

 

 

 

「アスカが傷付くのを黙って見ているなんて、そんなの、僕にはできないよ」

 

「シンジ・・・・・・///」

 

 男らしいセリフをサラッとラングレーに吐くシンジ君の横で、僕と綾波さんは下品ではあるがゲップを出すしかなかった。

 

 あの大喰らいの綾波さんですらが、この状況にはお腹いっぱいらしい。僕と綾波さん、いまシンクロテストしたら結構いい感じの数値が出せるんじゃないだろーか。

 

 そんなカッコいいセリフを事あるごとにラングレーに吐き散らすシンジ君に、僕は一つ、恨み言を言いたくて仕方が無い。

 

「あら?最近よく見かけるわね?」

 

「ええ。どこかの誰かさんが、男気を見せるたびに酷く無茶をするもんですから」

 

 あの二人がイチャつくたびに初号機が壊れているんだからな。

 

 赤木博士が、アルバイトでエヴァの生体部品を作りながら必死で汗水流して働いている僕を意地悪く、実に楽しそうに眺めている。

 

 結局のところ!

 

 シンジ君の無茶に対して、その後始末をするのはこの僕なんだからな・・・ッ!!

 

 

 

 

 

 僕の名前はジョルノ・ジョバァーナ。日系イタリア人。15歳の中学生だ。

 

 好きな食べ物はチョコレートとプリン。甘いものが大好きな、その辺にいるフツーの中学生。

 

 ただ、もはや忘れられつつあるかもしれないが、一応イタリアのギャングのボスでもある。まあ、最近はそんな素振りも全然見せていないから、信じてもらえないかもしれないが。

 

 まあ、信じるか信じないかは貴方次第だ。僕としても、今はどっちでも構わない。この世界でも、知らず知らずのうちに色々とやらされているからな。

 

 エヴァンゲリオン初号機のサブパイロットにして、エヴァの生体部品製造スタッフ(アルバイトだが)。

 

 ついでに碇シンジ君、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイというエヴァンゲリオンパイロットのクラスメートでもあり、同居している綾波さんの世話役兼教育係。

 

 更にこれはついでだが、アルバイト中の僕はネルフ内部の職員の皆さんの間では、そこそこ気の良いあんちゃんで通っている。

 

 さらに言うなら国連の非公開組織ネルフのスパイである加持リョウジの共犯者にして、この世界でも珍しい超能力者、『スタンド使い』。

 

 ・・・・・・もの凄い盛り合わせだな。今、自分で列挙してみたらビックリしたところだ。もはや乾いた笑いすら浮かんでこない。

 

 なぜ、僕がこんなしっちゃかめっちゃかな状況にあるのか?それはひとえに、シンジ君の母親、『碇ユイ』のあるお願いのせいだ。

 

 僕がこの世界、つまり『2001年のイタリア』から『2015年の第三新東京市』に無理やり(かどーかは正直わからないが)異世界転移してきたのは、彼女の不思議な力によってだった。その不思議な力とやらが、碇ユイの『スタンド』によるものなのか、それとも『全く異なる未知の力』によるものなのかは、今のところ、わからない。

 

 わからないが、僕は彼女から受けた依頼である『碇シンジ君を助ける』ために、この世界に来た。とりあえずは、そこだけ覚えてくれればいいと思う。

 

 さて。

 

 いま、僕の目の前に広がっている料理の数々。焼き鳥に手羽の炭火焼き。レモンをかけてカブリと齧り付けば、さぞ美味いんだろうな。その横には卵黄に浸して食べるつくね串があり、その横にはサラダチキンをふんだんに使ったサラダが並んでいる。ご丁寧に、お吸い物として出されたものは鳥の出汁をたっぷり絞り出したものだ。

 

 全部、僕の苦手なトリ肉を使った料理だった。

 

「どうした?ジョルノ君。遠慮なく食べてくれて構わないんだぜ?」

 

 僕の目の前で、長めの髪を襟足で結んだ無精髭の男がニヤニヤしながら僕に語りかける。

 

 この人、わかっててやっているな?僕は恨みがましく目の前の男、加持リョウジを睨んだ。

 

「いや、そうか。ジョルノ君にも苦手なものがあった、ってワケか。こいつぁスマンかったなぁ」

 

 言葉とは裏腹にイタズラっぽく笑う加持さんを、僕は本気で睨み付けていた。

 

 確か、ちょっと前に水族館でゼーレの『スタンド使い』に襲われた際、次に会う時はレストランで、という約束を交わした気がする。とゆーか、交わしたんだ。僕はしっかり覚えてるぞ。

 

 それがなんで、その辺の大衆居酒屋、しかもよりによって僕の苦手な焼き鳥の店に連れてかれてるんだッ!

 

「話し合う気がないってんなら別に構いませんよ?僕は家に帰ってカップラーメンでもすするんで」

 

「ちょっ!?待て待て!悪かった、悪かったよ!ちょっとしたイタズラじゃないか」

 

「ちょっとしたイタズラで、相手が深く傷付くこともあるんですよ?加持さん」

 

 席を立とうとした僕の服の袖を、加持さんが慌てて掴んで止める。

 

 とはいえ、ただでさえ、僕は連日のアルバイトで疲れてるんだ。シンジ君とラングレーのピンク色のやり取りを毎日見せつけられて、イライラもピークに達している。

 

 今日は何やらケンスケ君主催の『葛城さん昇進祝いパーティー』とやらをやるとの事なので、綾波さんのお世話をシンジ君に頼んで、僕自身は欠席を願い出たってワケだ。

 

 『この大事なパーティーを欠席なんて!』と騒ぐケンスケ君たちに、わざわざ『デートなんで』と言い訳までしてきてな。

 

 デートの相手が加持さんとはいえ、僕は久々の綾波さん抜きの外食って事で多少なりとも気分が高揚していた。そう、僕としては本当に珍しく、ウキウキとしていたんだ。

 

 それをこんな形で台無しにされちゃあ、僕としても気分を害するに決まっているじゃあないか。

 

「日々のストレスってのは、知らず知らずのうちに溜まってるもんだからな。今日は付き合うよ。まあ軽い懇親会とでも考えて、気軽にやろーぜ」

 

「じゃあこの料理は全部加持さんの方で処理をお願いします。僕は僕で別のものを頼むんで。ちなみに払いは加持さんで構いませんね?」

 

「はははは・・・こりゃよっぽど溜まってたんだな。オーケィ。もちろん中学生に払わせる事なんてしないさ。遠慮なく頼んでくれ」

 

 加持さんはキラリと光る歯をのぞかせて微笑んだ。フツーの女性や、もしくは一部の男性ならイチコロだろーな。

 

 だが生憎と、僕に男色の気はない。

 

「じゃあとりあえず黒霧島のロックで」

 

 僕は迷うことなく酒をオーダーする。焼酎は葛城さんの家にそれこそ腐るほどあるが、彼女、目の届く範囲の酒の位置と量は完璧に把握してるからな。

 

 一度黙って拝借したらカナディアンバックブリーカーを食らったことがある。それ以来、よほどの事がない限り、彼女の酒を拝借するのは止そうと僕は心に決めていた。

 

 そんなどーでもいい事を考えているうちに、可愛らしい女性の店員さんが焼酎のボトルを持ってくる。氷の入ったグラスはもちろん、加持さんの前に置かれた。

 

 それを僕は平然と手に取り、焼酎のボトルから酒を注ぐ。

 

「本当、だいぶ溜まってたんだな・・・」

 

 加持さんの呟きを無視し、僕はとりあえず最初の一杯をグィッと飲み干す。一息ついて、今度はゆっくりと味わうために酒をグラスに注ぐ。

 

「それで・・・・・・」

 

 目の前の加持さんは、そんな僕の様子を面白そうに眺めながら、口火を切った。

 

「何から知りたいんだ?」

 

「何もかも、ですよ」

 

 僕はお通しとして出てきた酢蛸を箸で器用に摘むと、黄色いミソソースを付けて口に放り込んだ。うん。なかなか美味じゃあないか。

 

「貴方が空母『オーバー・ザ・レインボー』から持ち出したもの。それの用途。それ以外にも、貴方が知るネルフとゼーレの情報を、洗いざらい出してもらいます」

 

「・・・・・・俺としては構わない。だが良いのか?君はそれを知った途端、引き返すことはできなくなるぞ?」

 

 加持さんの鋭い目が僕を射抜く。だが、悪いがそんなのは今更なんだ。

 

「僕が『この世界』に呼び出された瞬間から、僕の『覚悟』はできている。僕はシンジ君を助けるために喚ばれたが、はっきり言ってその方法は皆目見当も付かなかった。その手掛かりを、恐らく貴方は握っている。ならば、僕としてはなんの憂いも無い」

 

 僕は一口だけ焼酎を口に運ぶと、苦手な焼き鳥を一串持ち、ガブリと齧り付いた。

 

「これは懇親会じゃあない。これから『この世界を救う』為の会議だ。どうやらシンジ君を救うには、彼だけじゃあなく、この世界全てを救わなくっちゃあならないよーだからな」

 

 睨み返す僕の視線を受け止め、加持さんはニヤつくでもなく真面目に頷き返した。

 

「わかった・・・君の『覚悟』を舐めているわけじゃあなかったんだが、俺も君という味方を得られて警戒していたんだ。共にこの世界を『敵』に回せるだけの『覚悟』が君にあるのか。どうやら、余計なお世話だったみたいだが、な」

 

 加持さんが軽く掲げたグラスと僕のグラスが、静かに音を立ててぶつかり合う。

 

 これから、ここから、僕は『裏切り者』になる。この世界に対する『反逆者』。絶望が手招く世界に立ち向かうための、たった2人の『パーティー』だ。

 

 だが、今更だろう?

 

 かつて僕は組織を裏切り、イタリアの裏社会を支配した『パッショーネ』を乗っ取ったボス、なんだからな。

 

 

 

つづく

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