ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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「さて、まず貴方が空母から持ち去った物についてだが」

 

 乾杯を終えた僕らの会議は、僕が口火を切ることで始まった。

 

「先に僕の見解を述べさせてもらう。あれは『使徒』が求めているもので、それとは別に、それと同等のものが、恐らく第三新東京市にもある。この考え方は間違っているだろうか?」

 

「いいや。概ね合っている、と俺も思う」

 

「・・・・・・随分と、曖昧な答え方ですね」

 

「すまないがまだ俺も自信がないんだ。なにせ物証が手元にない」

 

 僕の苦言を真摯に受け止めながら、加持さんはコップに注いだビールに口をつけた。

 

 ゴクリと彼の喉が鳴り、彼の口の中が潤った事を示している。加持さんはペロリと唇を軽く舐めると、再び口を開いた。

 

「とりあえず、君の見解は俺の見解と一致する、と言っておこう。俺が今回、空母から持ち出したもの。それは『胎児の状態にまで退化させた第一の使徒』だ。名前は『アダム』」

 

「アダム・・・・・・」

 

 確か、旧約聖書に出てくる最初の男の名前、だったか。随分と大仰な名前をつけているんだな。

 

 だが、まあ。

 

「名前なんてどうでもいいが、要はソイツが使徒の求めているモノ、という事で良いんだろーか?」

 

「それはほぼ100%、間違いはないだろう。そしてこれは君の憶測と同様、俺の憶測もそうだが、恐らくネルフ本部の地下、そこにも『アダム』に匹敵する何かがあるはずだ」

 

「それは何です?」

 

「まだわからない。俺もまだ、直接この目で見たわけではないからな」

 

「随分と慎重なんですね」

 

「ま、自分の目で確かめないと、気が済まない質だから」

 

 だが、と加持さんは続けた。

 

「少し、この『世界』の人類の歴史について話しておこう。長くなると思うが、いいかい?」

 

「・・・・・・それが必要な事、ならば・・・・・・」

 

「すまないね」

 

 どうやら長い話になりそうだ。僕はグラスに酒を注ぐと、加持さんの言葉に耳を傾け始めた。

 

 

 

 

 ・・・・・・どう、反応すればいいのだろうか。

 

 規模が、次元が、完全に僕の想定外の話だった。まさか人類の歴史、いや、この星の生命の誕生の話までもつれ込むとは。

 

 『世界を救う』どころじゃあない。いや、ある意味では正しいのかもしれないが、それにしたって話のスケールが規格外だ。

 

「第一の使徒『アダム』。そして、第二の使徒『リリス』・・・・・・」

 

 僕は加持さんの話の中で特に重要だと思われるキーワードを口にした。

 

 隕石に乗って、地球に最初にやってきたのが『アダム』。その後、同じく隕石に乗って地球に来たと思われる『リリス』。

 

 使徒は『アダム』より生まれ、『アダム』と再び融合する事で人類を抹消する。その方法こそが『サードインパクト』。

 

 そして、人類は『リリス』から生まれた生命体の一つ、つまり『リリスの使徒』である、と。

 

 つまりこれは、種の生存競争というわけだ。

 

 『アダム』と『リリス』の使徒同士が、地球の霊長として生き残る為の戦い。どちらが生き残るのかは、第三新東京市を人類が守れるか否かで決まる。

 

 いや、第三新東京市の地下深くにいる、『何か』を守れるかどうか、か。

 

「信じられないかい?」

 

 話し終えた加持さんがビールを一口、乾いた口の中を湿らせるように含んだ。

 

「すぐには信じられませんね。少なくとも、『リリス』なんて使徒、ネルフ内部を探っていた僕も、今まで見た事も聞いた事もない」

 

「だが委員会、いや、ゼーレは『リリス』をどこかで見つけたはずなんだ。第三新東京市に最初に現れた使徒が『3番目』だと言われている以上、必ずどこかでアダムの次に現れた『第2の使徒』として認識されていなきゃ辻褄が合わない。それに──」

 

 そこで加持さんは言葉を切り、胸ポケットからタバコを取り出して火を付けた。

 

「ゼーレの持つ『死海文書』。アレは恐らくだが、リリス発見と同時に手に入れたものじゃないかと、俺は推測している」

 

「確か、人類の歴史と未来が全て記載されている謎の文書、でしたね?」

 

「ああ。ネルフとゼーレがその古文書に則って計画を立てたなら、表に出てこないだけで『リリス』は存在した、と言えるだろう」

 

 もっとも、どこにいるのか。そもそも生きているのかすらわからないが、と加持さんは続けた。

 

 まぁ、それはどうでもいい。いるかいないか分からない使徒の事なんて、今考えても仕方ない。

 

 問題は使徒との生存競争に勝ち残る事。そして、恐らくその後に発動するであろう事。

 

「ゼーレは『死海文書』で人類の未来を知った。それは、どういった物だったんですか?」

 

「すまない。流石にそこまでは探れなかった。だが、委員会やゼーレの動きからわかることもある。つまり、彼らは『人類補完計画』と呼ばれる何かをしようとしている、って事だ」

 

「その何かは、当然わからない、と」

 

「だが君が『碇ユイ』に会った事により、その計画の目的だけはわかった。『人類全てを一つ上の段階に進化させる』。もっとも、それがどういったモノなのかは全く見当もつかないが、ね」

 

 加持さんがビールを再び口に含む。僕もグラスをくいっと軽く煽った。

 

 人類の進化。確かに、途方もない話だ。本来なら何千年、何万年とかけて行われるはずの種の進化。それを、恐らくだが人工的に行おうとする計画。ハッキリ言って、馬鹿げたホラ話だと笑いたくなるところだ。

 

 だが。

 

 

 

 

 

 僕は、『似たような現象を知っている』。

 

 

 

 

 

「加持さん」

 

「なんだい?」

 

「『アダム』と『リリス』は『隕石』に乗ってこの星にやってきた。これは、確定事項として捉えていいんですね?」

 

「すまんが確定じゃない。が、俺の得た情報が確かなら、その通りだと思うが・・・」

 

「ありがとうございます。それともう二つ」

 

「なんだ?」

 

「『胎児と化したアダム』は、誰に渡したんですか?それと、『どのように使われる』かまではご存じですか?」

 

 それを聞いた加持さんの目が、すうっと細くなる。彼にとって、この情報を他者に漏らすことは自身の生死に関わるほどの重大な秘密なのだろう。それゆえに、情報の開示を躊躇している、のだと思う。

 

 だったら、先に答えを言ってやるまでだが。

 

「渡す相手なんて1人しかいない。相手は碇司令。ただし、その用途まではわからない。そんなところですか」

 

 加持さんの眉毛がぴくりと揺れる。どうやら当たりらしいな。

 

「しかし、恐らく『人類補完計画』に関係する鍵、その一つではある。そんなところじゃあないですか?」

 

「・・・・・・悪いがノーコメントだ。君を信頼してはいるが、全てのカードを今この場でオープンにできるわけじゃない。君のせいじゃない。今も俺に付いているであろう『鈴』を警戒してのことだ。悪く思わないでくれ」

 

「問題ありません。僕は僕で勝手に喋らせてもらいますから」

 

 そう言って、僕は椅子に体重を預け、足を組んだ。

 

 

 

「加持さん。貴方は、『殺人ウィルス』をご存知だろうか?」

 

 

 

「・・・・・・すまない。いきなりなんの話だ?」

 

「大した事ではないのかもしれない。もしかしたら、僕の推測が間違っている可能性もある。だが、『可能性』だ。僕は今から『可能性』の話をさせてもらう」

 

 僕は組んだ足の上に左手を軽く置き、グラスを傾けながら加持さんと向かい合った。

 

「グリーンランドのケープヨーク、という場所がある。もっとも、『この世界では』すでに海底に沈んでいるかもしれないが・・・・・・」

 

 加持さんは黙って、僕の目を見つめている。空気が少しずつ、重くなっていくのを僕は感じていた。

 

「そこは数万年前、『隕石』が落ちてきたことにより巨大なクレーターができた場所らしい。比較的近年、そのクレーター内で鉱物資源調査をしていた作業員11名。内2名が、原因不明の病気に感染し死亡した事がある」

 

 僕はカランとグラスを鳴らし、酒を一口、飲んだ。

 

「2人は全身に水疱のような腫瘍ができ、48時間以内にトマトソースの様になって死亡したという」

 

「・・・・・・ジョルノ君?なんの話だ?」

 

「2人の作業員には共通点があった。そのクレーター内で何かしらの要因で、たまたま傷を負った。たったそれだけだが、その共通点こそが重要だった」

 

 僕はグラスを机に置くと、そのまま頬杖をついて加持さんに向かい合う。

 

「重要なのはここからだ。そのクレーターを作り出した『隕石』。その隕石の中には数万年前のウィルスが閉じ込められて『眠って』おり、それが傷口から血液に入り感染したとしか考えられないそうだ・・・・・・そして、そのウィルスによって作業員2名は亡くなった」

 

「未知のウィルスによる感染症、か。だが、それが何か俺たちの話に関係あるのか?」

 

「仮に、だが・・・・・・そのウィルスに感染し、もし生き残った場合、加持さん。何が起こると思いますか?」

 

 加持さんの目が見開かれる。どうやら、僕の言いたいことが彼にも少し見えてきたらしい。

 

「ウィルスはまるで『ご褒美』のように、その克服者にある物を授ける。それが、僕たちが使う『スタンド能力』だ」

 

「!!」

 

「もちろん、これはただの一例に過ぎない。生まれながらの『スタンド使い』も当然存在するし、後天的に何か別の理由で目覚める者もいるのだが、人工的に『スタンド使い』を生み出せるものとして、この『ウィルス』に注目し、それを宿した『ある物』を作り出した者がいた・・・・・・」

 

 僕は胸ポケットから、『ソレ』を取り出し、バンッと音を立てて机に置いた。

 

 僕が手を退けるとそこには、一つの小さな『矢』が置かれていた。

 

「この矢こそが、人類を一つ上の次元に進化させる『可能性』!その一つだ!」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・と、空気が静かにうねりを上げていく。

 

「『スタンド』・・・それの発現こそが、人類の進化だと、君は言うのか?」

 

「いいや。これは『始まり』に過ぎない。この『矢』を作り出した者は、ある時、新たな『可能性』に気付いた・・・・・・もし、『発現したスタンドをさらに矢で貫いたならどうなるのか』と」

 

「・・・・・・!?」

 

「その『可能性の結果』を、僕は知っている。ごくごく限定的であったが、僕はその『結果』を味わった事がある・・・・・・」

 

「な、何が・・・?何が起こったんだ?」

 

 

 

「全ての『魂の入れ替え』。そして、『生命の強制的な進化』だ」

 

 

 

つづく

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