ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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「全ての『魂の入れ替え』。そして、『生命の強制的な進化』だ」

 

 

 

 僕の言葉を受けて、加持さんが驚愕に目を見開く。僕は構わず説明を続けた。

 

「世界中でも恐らく僕と、僕の親しい仲間しか知らないと思うが、いま目の前にあるこの『矢』には『スタンド』を更に先の段階にまで引き上げる力がある。但し、『矢』は資格のある者を選ぶ。選ばれなかった者は、死ぬか、暴走する」

 

「暴走・・・君が体験したっていうのは、その暴走のことなのか?」

 

「ええ。僕たちはこの『先に進んだスタンド』の事を『鎮魂歌(レクイエム)』と呼んでいるんですが、最初に暴走した『レクイエム』は周辺のあらゆる生き物を眠らせ、魂を入れ替えた。人や動物など無関係に。そして、全ての生き物はその姿を突然に変え始めた」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「その『レクイエム』の暴走はなんとか止めることができたが、あの暴走の範囲が世界中にまで広がっていたら、全ての生物は『進化』させられていたのかもしれない。45億年かけて創られてきた『僕の世界』の生き物の歴史が、ほんの数時間で『別のもの』へ、変わっていっていたかもしれない」

 

 僕の話を聞いた加持さんは、沈黙した。

 

 今、僕から齎された情報を必死に精査しているんだろう。そして、当然気付くハズだ。

 

「コレじゃあないな・・・・・・」

 

 その通りだ。ゼーレの計画は、恐らくこの『矢』を使ったものではない。なぜなら──、

 

「あの狂信者どもは、仮にも『人類の幸福のため』を思って人類補完計画を進めているハズだ。人と動物との魂の入れ替えなんて考えちゃいないだろう。ジョルノ君の『レクイエム』の話は一考に値するが、俺の勘が言ってる。コレじゃあないと」

 

「でしょーね。だからあくまでも『可能性』なんだ。ただ、この話にはゼーレやネルフ、それと共通する点が一つだけある」

 

「それは・・・・・・」

 

「『隕石』によって外宇宙から来た『生命体』。それを身に宿し、もし生き残ることができたのなら・・・・・・」

 

「ッ!まさか、『アダム』の事を言っているのか!?」

 

「少なくとも『人智を超えた力』、得ていてもおかしくないんじゃあないでしょうか?『レクイエム』は一つの可能性だが、それ以上の人智を超えた何かがあれば・・・・・・」

 

「補完計画は成立するかもしれない、ってわけか・・・」

 

 加持さんはビールをぐいぃっと煽ると、椅子の背もたれにどかっと身体を預けた。

 

「だとしたら、俺の届けた『アダム』。それは既に使われた可能性があるな」

 

 ・・・・・・!

 

「なんですって?それはどういう意味です?」

 

「・・・・・・以前、水族館で話したと思うが、この人類補完計画、ゼーレが碇司令を利用しているのか、またはその逆なのか。それはわからないが、俺が『アダム』を持ち出したのは碇司令の密命を受けてだった」

 

「それは、つまり・・・・・・」

 

「ああ、碇司令はゼーレの望む人類補完計画とは別の計画を進めている可能性が高い。そのために、入手した『アダム』を碇司令は使うだろう。もしかしたら、まだかも知れない。だが近いうちに、必ず・・・・・・」

 

 ・・・・・・なるほどな。

 

 一度、整理しよう。

 

 まず目下の問題として、人類と使徒との生存競争がある。まずはコレに勝利し、人類が生き残ることが大前提だ。

 

 その上で、ゼーレ、ならびに碇司令の進めている別々の『人類補完計画』。これの目的は『人類の進化』であるが、それが具体的にどういった物なのかまではわからない。だが、『碇ユイ』が僕に助けを求めたくらいだ。十中八九、碌なものではないのだろう。

 

 つまり僕たちがやらなければならないことは、使徒の殲滅をしつつ、人類補完計画の具体的な内容を知る事。その上で、その計画を叩き潰す事だ。

 

 僕は今の考えを視線だけで加持さんに問うた。加持さんも力強く頷いている。

 

「加持さんは、人類補完計画の全貌を」

 

「ジョルノ君は、使徒の殲滅を」

 

 役割分担は決まった。その上で、だ。

 

「加持さん。仮の話になるが、僕が途中で『アダム』を殺害する事は許可してもらえるか?」

 

「出来ればお願いしたい・・・と言いたいんだが、『アダム』の利用価値がわからない以上、使徒殲滅前に手を出すのは悪手だと俺は思う。もし『アダム』が使徒殲滅の切り札だとしたら、目も当てられない」

 

「・・・・・・本当に厄介ですね・・・・・・」

 

 僕は心の中で舌打ちをする。だが、当面の方向性が見えただけでも良しとしよう。

 

「・・・それじゃあ加持さん。今日はご馳走様でした。また定期的に連絡を取り合う。そんなところでいいですか?」

 

「ああ。もちろんだ。・・・・・・死ぬなよ」

 

「貴方こそ、無茶はしないでくださいよ」

 

 僕はニヤリと笑って、机の上の『矢』を回収し、席を立った。

 

 

 

 

 夜の帰り道。街の明かりがちらほらと辺りを照らす中、僕の背中には冷たい汗が流れていた。

 

 加持さんにスタンドの話をしたのはあくまでオマケだ。本当に、参考程度に僕の持っている情報を開示したに過ぎない。

 

 だが、僕の方では大きな収穫があった。それも、嫌な意味での、収穫が。

 

 この世界には、スタンド使いが確実に存在している。それは先日の水族館で嫌というほど痛感した。

 

 そして、ゼーレという巨大な組織に対して、スタンド使いが1人しかいないとは考えにくい。

 

 ここまではいい。問題はこの先だ。

 

 加持さんはレクイエムの話をした直後に「レクイエムではない」と即座に否定した。それは恐らく、「『レクイエム』程度で起こせるような規模の計画ではない」と、加持さんが直感したんだろう。

 

 つまり人類補完計画は、『レクイエム』よりもさらに強いエネルギーを必要とするものだ、と。

 

 今ここで、考え過ぎても仕方ない。わかってはいるんだが、どうしても拭いきれない嫌な予感があった。

 

 もし仮に、ゼーレがスタンド使いで実験を行っていたら?

 

 もしも奴らが、『レクイエム』の存在に気付いていたら?

 

 そして、もし『レクイエム』の発現程度では役に立たないと、すでに奴らの中で実証されていたら?

 

 僕の『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』は、奴らに通用するのか・・・・・・?

 

 僕自身も、『レクイエム』を使いこなせているとは言えない。切り札ではある事は否めないが、その『レクイエム』がもしもゼーレに通用しなかったら?

 

 スタンドには相性がある。先日の『グレしん』とかいうスタンド使いは、能力に頼らず自身の技術によって襲いかかってきた。だが脆弱なスタンドだったかと言えばとんでもない。ヤツの能力は、場合によっては無敵の能力でもあったと僕は感じている。

 

 そしてなにより、僕の『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』は発動しなかった。できなかった、と言ってもいいだろう。

 

 ヤツの能力は『僕から三分の一ずつ奪う』というものだった。あの能力は、僕の『レクイエム』にとって物凄く相性が悪かったと言わざるを得ない。

 

 もし、あの『グレしん』がただの下っ端だったなら。

 

 ゼーレに属する『スタンド使い』が、ヤツよりも強力、かつ、『レクイエムを敵が持っている前提での訓練』を受けていたなら・・・・・・。

 

 今日は、夜風がやけに冷たい。この常夏の国と化した日本で、夜風が冷たいなどと。

 

 この冷たさが、僕の汗が冷えたことによるものだという事を、切に願う。

 

 

 

つづく

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