ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
僕のスタンド『ゴールド・エクスペリエンス』。その能力は物体に生命を与える能力。
いま、葛城さんの車のダッシュボードに生命を与えた。その結果、ダッシュボードはその姿を変え、幾つもの美しい花を咲かせている。
「こ、これって・・・・・・」
「まさか、本物〜?ただの手品じゃないの〜?」
「なんなら触ってみてください。少なくとも造花じゃあないって事はわかると思いますよ」
言われた葛城さんは花に手を伸ばした。指先が花びらの一枚に触れた瞬間、葛城さんの目が驚きに見開かれる。
「あ、あなた・・・・・・ほんとに何者?」
「だから言ったじゃあないですか。日系イタリア人の中学生ですよ。ただし、人とはちょっとだけ違う能力を持った、ね」
どうやら、僕の『能力』が本物である、という事は認めてもらえたみたいだな。
ここまではいい。後はこの熱が冷めないよう、急がなくては。
「車のダッシュボードの件については、すみません。すぐに元に戻しますので」
僕はそう言うと、指をパチンと鳴らした。途端、ダッシュボードの『花』はまるでビデオの逆再生のようにシュルシュルと蔓に戻って、あっという間に元のダッシュボードに戻る。
花なんか最初から無かったかのように、ね。
「す、すごい・・・・・・すごいよジョルノ君!まさか本当に超能力を使えるなんてッ!!」
「ありがとう、シンジ君。だが重要なのはこんな事じゃあない。もっと重要な事は他にあるんだ」
「重要な、こと・・・?」
「そう。それは、『僕の様な能力を持った人間は、世界中にいる』って事なのさ」
「ええ!?」
「う、嘘でしょっ!?」
うむ。いい具合に食いついてきてくれる。僕は釣りなんかほとんどやった事がないが、まさしく「入れ食い」ってヤツだな、こりゃ。
「とはいっても、僕のような『物に生命を与える能力』をみんなが持っているわけじゃあない。これは僕の『個性』が能力として発現したものなんだ」
僕はシンジ君の前で右手を広げ、指を一本ずつ折りたたみながら話す。
「人にはそれぞれ個性、才能がある。王には王の。料理人には料理人の。それぞれの才能が開花したものが『スタンド能力』だ」
「す、スタ・・・ンド・・・・・・?」
「君や葛城さんには見えないが、この『スタンド』というのは一種の守護精霊みたいなもので、僕が能力を発現するときにそばに現れるんだ。そばに立つ(stand by me)ことから、名付けてスタンド。そう呼ばれている」
まあ、そこは大して重要じゃあないんだ。
「この『スタンド能力』はさっきも言った通り、一人一人の個性が開花したものだ。だから、能力も一人一人で全然違うものが発現する。例えば氷を操ったり、僕とは真逆の『生命を物体に変える』なんて能力もあったりする」
「す、すごいんだね・・・・・・」
「ねぇねぇ♪そのスタンド?能力ってさ、時間を早送りできるヤツとかあんの?私、今日仕事早く終わんないかなぁ〜なんて考える事がしょっちゅうあって・・・」
「似たような『スタンド』を使うヤツは会ったことありますよ」
「うっそマッジぃ!?会いたい!その人、今はどこにいんのよ!」
始末しました、なんて言えないよな。流石に。
「すみませんが葛城さん。話を進めさせてほしい」
「あ、あぁ、そうよね〜!ごめん!」
「とりあえず、僕の様な超能力者の事を『スタンド使い』と言うんですが、ソイツらは世界中にいて、それぞれ別の『能力』を持っている。ここまではいいですか?」
僕の視線に、シンジ君も葛城さんもうんうんと力強く頷いている。どうやらちゃんと、というよりかなり僕の話に惹きつけられているようだ。
扱いやすい人たちで助かった。
「そして問題はここからなんだ。正直言って僕は相当参ってる状況なんだが、というか、僕自身「マジか!」という状況と言うべきか・・・・・・」
「何よぅ!ケチケチしないで教えなさいよ♪」
・・・・・・なんでこの人はこんなにノリノリなんだ?
「僕は今日、正確にはシンジ君と駅前で会う直前まで『イタリア』にいたんだ。それも『2001年のイタリア』に」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」
いや、わかっている。わかってはいたが、そーゆー反応になるよな。
だが説明しないという選択肢はもはや無くなった。僕は僕のできる範囲で説明しなくてはならない。
「さっき葛城さんが話していた『セカンドインパクト』だとか『南極の氷が溶けた』という話だが、すまない。僕はそんな情報、全くもって知らないんだ」
「はぁ!?何言ってんのよ、世界中巻き込んだ事件よ!?知らないはずないじゃない!」
「その通りです。だが僕の世界では南極の氷なんて溶けていないし、東京が海に沈んでもいない。というか、南極の氷が溶けて海面が上昇したのなら、僕の住んでいる『ネアポリス』だって沈んでいてもおかしくはないんだ。あそこは海沿いの街だからね」
「え。えぇ・・・・・・ちょっち待って・・・混乱してきたわ」
「ごめんジョルノ君・・・僕も君が何を言ってるのかわかんないよ・・・・・・」
「そーだろーな。そりゃそうだ。僕だって『何を言ってるのかわからない』と思うが・・・。だが一つだけ確かに言える事は、『僕は違う世界の地球から、君達のいるこの街まで転移してきた』って事なんだ」
シンジ君と葛城さんの目が点になっている。そりゃあそーだろーな。ファンタジーやメルヘンじゃあないんだから。
「疑うのも無理はない。だが僕は、この事象が何者かの『スタンド能力』なんじゃあないか、と思っている」
「・・・あ、そうか!」
「さっきの超能力ね!何かしらの!」
僕は真剣な眼差しで頷いた。
「僕も流石に「時間も空間もすっ飛ばして世界を移動する」。そんなとんでもない能力には会ったこともないが、僕が置かれている状況的にはそう考えるしかない・・・!」
僕の断言に、シンジ君も葛城さんも黙り込んでしまった。だが、どーやら疑っているわけではないようだ。僕の言ったことを整理するために黙りこくってるんだろう。
やがて葛城さんが口を開いた。
「仮によ?ジョルノ君が違う世界から転移?してきたとして、それは誰が、なんの目的でやったことなのかしら・・・・・・?」
「ディ・モールト・ベネ!!すごくいい質問だ葛城さん!」
僕は手を叩いて葛城さんを称賛する。なんだか照れくさそうに頭を掻いているが、とりあえず放っておこう。
僕はシンジ君に向き直った。
「シンジ君。さっき言ったな。君の母親からの依頼があるって」
「う、うん。それ、僕も気になってたんだ。どういうことなの・・・?」
「その前に確認したい。君の母親の名前は『碇ユイ』で間違いないか?」
「・・・ッ!!そ、そう!そうだよジョルノ君!合ってる!」
「グラッツェ。そうなると話は早い。シンジ君。僕はこの世界に来る直前、君のお母さんに会っているんだ。『息子を助けてほしい』というお願いを、僕にするために、ね」
「母さんが!?」
「そう。そして僕はこう、考えている。『君のお母さんはスタンド使いじゃないか』ってね」
「ええ!?」
「ちょーっち、待ってちょうだいジョルノ君。君が会ったのは本当にシンジ君のお母さんなの?」
「?」
何を言ってるんだ?シンジ君のお母さんは『碇ユイ』だろう?写真なんかは手元には無いが、とりあえず同一人物として捉えていいはずだ。
だが僕の予想を裏切る、衝撃の事実をシンジ君が口にした。
「・・・・・・・・・母さんは、もう何年も前に死んでるんだ。僕がもっと小さい頃に・・・・・・」
「・・・・・・なんだって?」
・・・・・・ここまでの流れは良かったはずだ。二人とも面白いくらいに僕の言ったことを信じてくれている。
だがここに来て、『碇ユイ』がもう死んでる、だって・・・・・・?
どういう事だ。僕が会ったのは『碇ユイ』ではないのか?しかし『息子を助けて欲しい』とシンジ君の名前を出してきたのは紛れもなく『碇ユイ』であったはずだ。
くそ。嫌な雰囲気だ。まるで何かの『スタンド攻撃』を受けている様な、釈然としない異様な感覚。
『碇ユイ』。一体何者なんだ・・・・・・?
つづく