ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 いつだったか、シンジ君が呟いていたな。確か、そう。最初の使徒とエヴァに乗って戦った時だったか。

 

 あの時のシンジ君は自分に言い聞かせるように、「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ」と繰り返し呟いていた。

 

 だが、今、僕の横でエヴァの操縦桿を握る彼はどうだろうか。

 

「すーーーっ、ふぅーーー・・・」

 

 大きく深呼吸をして、ただ『その時』を待っている。

 

 そんな様子のシンジ君に、僕は思わず声をかけてしまう。

 

「シンジ君。逃げてもいいんだぜ?」

 

 これは僕の本心でもあり、揶揄いでもある言葉だ。それに対してシンジ君は一瞬だけキョトンとしたかと思うと、「まさか」と笑って答えた。

 

「さっきジョルノ君が言ったんじゃないか。『Lesson3、チームを信じろ』って。僕も自分で驚いてるけど・・・・・・うん。逃げるって選択肢は無い、かな」

 

 シンジ君の晴れやかな笑顔が、僕に返ってくる。

 

 本当に、本当に、君は強くなった。

 

 凄く嬉しいよ。シンジ君。

 

 だが、その問題は横に置いておくとして、だ。

 

『目標を最大望遠で確認!』

 

『おいでなすったわね!エヴァ全機!スタート位置!!』

 

 状況はちっとも待ってはくれない。

 

『目標は光学観測による弾道計算しかできないわ。よって、MAGIが距離1万までは誘導します。その後は各自の判断で行動して。あなたたちにすべて任せるわ』

 

 葛城さんの声と共に、地上に配備されたエヴァ3機が地上で、それぞれの位置でクラウチングスタートの構えを取る・・・!

 

『使徒接近!!距離、およそ2万!!』

 

 日向さんがそう言い放った瞬間──、

 

『では、作戦開始ィ!!』

 

 葛城さんの怒号と共に、作戦は動き始めた。

 

「いくよ・・・・・・!」

 

 シンジ君の決意ある声に、零号機の綾波さん、弐号機のラングレーは無言で力強く頷く。

 

 

 

 

 

「スタートッ!!」

 

 

 

 

 

 シンジ君の掛け声と共に、3体の巨人が同時に大地を蹴った!

 

 外部電源を切り離し、行動可能のカウントダウンが始まる!

 

 大地を踏み砕きながら、3体の巨人が第三新東京市を激走する!

 

 残り時間は4分と27秒。初号機は大地を蹴り飛ばし、市街地を抜けて、山を高く飛び越えた!

 

 飛び越えた先、眼下に広がる水田。こんな時だというのに、僕は不覚にも、太陽の光を反射してキラキラと光る水田を美しいと思ってしまった。

 

「うおおおおおおおおおおッ!!」

 

 シンジ君の上げた雄叫びが、僕を現実に引き戻した。水田に着地したエヴァ初号機は、勢いを殺さず落下中の使徒の真下を目指す!

 

 零号機、弐号機も高圧線を飛び越えて、ひたすらに落下を続ける使徒を追う!

 

『目標のATフィールド変質!軌道が変わります!』

 

 青葉さんの報告と共に、徐々に、だが確実に使徒の弾道が曲がっていく!

 

『落下予測地点、修正02』

 

『何よ!計算より速いじゃない!?ダメ、アタシじゃ間に合わないッ!!』

 

 通信を流れるラングレーの悲鳴。それをシンジ君は口元に笑みを浮かべて──、

 

「大丈夫だよ、アスカ!こっちは僕に任せてッ!!」

 

 獣の笑みを浮かべて、さらに加速する!

 

「ミサトさんッ!!」

 

『緊急コース形成!605から675!!』

 

 葛城さんの指示と共に、第三新東京市がその姿を変えていく!

 

 巨大な装甲板が何枚もせり上がり、バンクを形成。そこへ初号機はスピードを落とさず突っ込み、カーブを駆け抜ける!

 

『次っ!1072から1078スタンバイ!』

 

 葛城さんの怒号と共に地面からタワー型のビルがせり上がり、初号機の目の前に階段状に足場を形成した。初号機はその階段を駆け上がり、大きく跳躍。

 

「うおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 シンジ君の雄叫びと同時、着地した初号機の姿が掻き消えたように見えた事だろう。初号機は音の壁を超えてさらに加速!巻き上がるソニックブームが街中を吹き飛ばしながらも、初号機はその速度を緩めない!!

 

『距離!1万2千!』

 

 青葉さんの報告と共に、僕たちは使徒の真下へ!!

 

「フィールド、全開ッ!!」

 

 展開されたATフィールドがヴォッという勢いと共に地面を抉り飛ばし、落下する使徒を迎え撃つ!

 

 薄く張った雲を掻き分け、巨大な目玉のような使徒がその姿を現した。

 

『来ます!距離2千!!』

 

「はああああああああああああ・・・ッ!!」

 

 初号機が天を支えるように両手を空へ掲げる。使徒と、初号機のATフィールドが遂にぶつかり合った!

 

 ガオンッ!!

 

 周りの空気全てを抉り飛ばすような衝撃と轟音。初号機が必死に、初号機を押し潰そうと迫る使徒を押し留める!

 

 その時だった。

 

「え・・・・・・?」

 

「な、何ぃ!?なんだ、コイツは!?」

 

 使徒の目玉の中心、そこから何かがずるりと這い出てくる。それは不恰好な髑髏をあしらった様な仮面をつけた、人型の使徒!

 

 その細長い両手が、初号機に迫る。まるで初号機と手を握ろうと伸ばされるその両手を──!

 

「シンジ君!いくぞッ!!」

「うおおおッ!!」

 

 

 

「「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァーーーッ!!」」

 

 

《GUSYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!》

 

 

 

 初号機と使徒の拳のラッシュが、ATフィールドを挟んで叩き込まれる!

 

「こいつ、速い!!」

「うぐッ、うう!!お、重い!止められない!!」

 

『弐号機!フィールド全開!!』

 

『やってるわよ!』

 

 綾波さんとラングレーが駆け寄ってくるが、マズい!この重さ・・・・・・殴りながらではとても耐えきれない!

 

「くぅ!シンジ君!ここは・・・・・・」

 

「大丈夫!ジョルノ君!僕はあの二人を信じてるッ!」

 

 シンジ君は歯を食いしばると、

 

「うおああああああああッ!!」

 

 使徒の両手を、思い切り掴んだ。

 

 途端、使徒の両手が一瞬にしてその形状を変える!そう、まるで槍のように!

 

 初号機の掴んだ両手が、槍に刺し貫かれて突き破られた!

 

「うおおおおおおおおおおおお!?」

 

「うっぐううう!だ、大丈夫だよ、ジョルノ君・・・『覚悟の上』だ!こうなるかもって思っていた・・・ッ」

 

 初号機が、槍と化した使徒の両手を強く握る。初号機の腕の筋肉が弾け、両腕から血が噴き出す。

 

 だが決して、初号機はその槍を手放さない!

 

「アスカッ!綾波ぃッ!!」

 

『ええ・・・!』

『わかってるっちゅーのぉぉおおおお!!』

 

 二体のエヴァがATフィールドを展開しながら、使徒に激突した。零号機と弐号機が装備したプログレッシブナイフを振りかざし、敵のATフィールドを切り裂こうと刃を振るった!

 

 だが──、

 

「え!?」

「バカな!?」

『そんな・・・!』

『ウソでしょ!?キャアッ!!』

 

 ズズンッと、使徒の巨体が更なる重さを伴って僕たちに襲い掛かった!零号機と弐号機も咄嗟にナイフを捨てて、使徒の巨体を受け止めにかかる。

 

 3体のエヴァに重くのしかかる超重量!大地にビシビシと亀裂を生じさせながら、僕たちは使徒に押し潰されていく・・・!

 

「だ、ダメ、だ・・・・・・」

『お、重すぎる・・・・・・!』

『こ、こんちく、しょうめぇえ・・・・・・』

 

 3人のパイロットの苦悶の声。通信を通して発令所側でも息を呑んでいるのがわかる。

 

 

 

 

 

「ここを動くな!!シンジ君!綾波さんとラングレーもその位置だッ!そこがいい!!君たちのATフィールドで、初号機のATフィールドを押し潰せ!!」

 

 

 

 

「え!?そ、それって!」

 

「『Lesson3』だ!君たち二人のATフィールドで、シンジ君のATフィールドを押し潰すんだ・・・ただし『水鉄砲』の要領だ!『上』に向けて、シンジ君のATフィールドを弾き飛ばすんだ!!」

 

『ジョル、ノ・・・・・・?』

『ジョバァーナ・・・あんたの言いたいこと、何となく分かったわ・・・・・・!けど、本当にできんの!?』

 

「ATフィールドの攻撃への転用は、目の前の使徒が既に見せてくれていたからな!だからこその『Lesson3』だ!シンジ君!」

 

「うん!アスカ!綾波!」

『わかったわ・・・!』

『オッケェ!あんた達、信じてるからねッ!!』

 

 

 

『『「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお・・・・・・・・・ッ!!!」』』

 

 

 

『う、ウソ!初号機のATフィールドが!?』

『レイとアスカのATフィールドに挟まれて、圧縮されていく!このままじゃ、暴発するわッ!』

 

 

 

 通信から聞こえる葛城さんと赤木博士の悲鳴。それが合図になった。

 

 

 

「今だッ!」

 

「アスカッ!綾波ィ!」

 

『ATフィールド、解放・・・ッ!』

 

『ぶっ飛べえええええええええええッ!!』

 

 

 

 極限にまで圧縮されたATフィールドが、キンッと甲高い音を立てて空を割る。

 

 使徒の目玉のような巨体がエヴァンゲリオン3体に覆い被さる。

 

 だが、その中心から空を穿つ様に突き抜けた赤い光弾が、流星の如き残光を残して空を駆け上っていった・・・・・・。

 

 

 

 

 

『・・・・・・や、やった、の・・・?』

 

 通信から流れる、葛城さんの不安そうな声。

 

 

 

 だが、悪いな。葛城さん。

 

 

 

『ッ!?パターン青!目標健在!』

 

『ウッソでしょ!?』

 

 発令所の悲鳴と同時、僕たち3体のエヴァが吹き飛ばされ、大地に激突した。

 

 巨大な使徒の遺骸の下から這いずるように現れるのは、上半身は人型、下半身が蛇のような、第10の使徒本体の姿。腰には大きなリングを纏い、その軌道上を使徒のコアがぐるぐると回っている。

 

『エヴァ各機、活動限界まで残り30秒!』

 

『そんな・・・・・・ッ!!』

 

 完全に計算が狂った・・・まさか、さっきのアレで、死んでないとはな。

 

 3体のエヴァが、大地に手をついてヨロヨロと立ち上がる。それを悠然と丘の上から見下ろす使徒。

 

 

 

 正直に言わせてもらう。

 

 

 

 ここまでのピンチは、初めてかも、な。

 

 

 

つづく

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