ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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「ふふーん♪」

 

 大気圏から襲ってきた使徒を倒し、後処理を終えて制服に着替えた僕たちは、第二発令所に集まっていた。僕らの前ではパイロットを代表してか、ラングレーが得意満面といった様子で腰に手を当てている。

 

 そんな僕たちを、まるで、普段はどーしようもないのにたまに人助けをして得意げになっている悪ガキどもを見る様な、なんとも困った様な目で見つめてくる葛城さん。

 

 その口には、優しい微笑みが浮かんでいた。

 

「電波システム、回復。南極の碇司令から、通信が入っています」

 

「お繋ぎして」

 

 葛城さんは顔を引き締めると、「SOUND ONLY」と表示された電子パネルに向かって姿勢を正した。

 

「申し訳ありません。私の勝手な判断でエヴァ三体を破損。パイロットにも負傷を負わせてしまいました。責任はすべて私にあります」

 

『構わん。使徒殲滅がエヴァの使命だ。目標殲滅に対し、この程度の被害はむしろ幸運と言える・・・』

 

 どこか緊張した様子の葛城さんだったが、葛城さんの言葉にまず答えたのは冬月副司令だった。

 

『ああ、よくやってくれた、葛城三佐』

 

 それに続いて碇司令も、葛城さんに労いの言葉をかける。

 

「ありがとうございます」

 

『・・・・・・ところで初号機のパイロットはいるか?』

 

「あ、はい・・・」

 

 ん?なんだ?あの髭が自分からシンジ君を名指しにするなんて珍しいな。

 

『話は聞いた。・・・よくやったな、シンジ』

 

 シンジ君が目を見開く。僕も驚いた。あの碇ゲンドウが誰かを、ましてやシンジ君を褒めるところなんて初めて聞いた。

 

 なんか変なものでも食ったのか?それとも、南極の寒さに頭でもやられたんだろーか。

 

『では葛城三佐。後の処理は任せる・・・』

 

「はい」

 

 葛城さんの返事とともに、通信は何事もなかったかのように切れた。

 

 僕は横のシンジ君を見やる。その顔には、どこか嬉しそうな笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

「さあ!約束は守ってもらうわよ!」

 

 そう豪語するラングレーの前には、ガードレール下にでもあるような屋台のラーメン屋。

 

「え・・・・・・アスカ、あんたさっきは寿司がどーのこーのって・・・・・・」

 

「ミサトの財布の中身くらい、分かってるわ。無理しなくていいわよ。ファーストも、ラーメンでも良いって言うしさ!」

 

 腰に手を当てたラングレーが葛城さんにウィンクする。

 

 へぇ。意外だな。ラングレーはこういうところ、きっちり落とし前をつける性格だと思っていたが、案外優しい面があるんじゃあないか。

 

「アスカって本当はすごく優しいんだよね」

 

「ちょっ!?バカ!何言いだすのよ・・・・・・恥ずかしい」

 

 はいはい。いつものピンク色の空間が展開されそうになったのを察知した僕は、僕の横で無表情のままヨダレを垂らしまくっている綾波さんと共に席に着く。

 

「アスカ・・・・・・あんたって子はぁッ!」

 

「うわっぷ!?いきなり抱き付かないでよ!びっくりするじゃない!」

 

 ラングレーに抱きついて、感動の涙を流している葛城さん。

 

 悪いが安心するのはまだ早いぞ、葛城さん。なぜなら僕の横には食欲の権化が腹を鳴らして、獣の様な目つきで座っているんだからな。

 

「わたし、ニンニクラーメン、チャーシュー抜き、野菜マシマシ、特盛で」

 

「アタシはフカヒレチャーシュー!大盛りね!」

 

「じゃあ僕もアスカと同じのを。あ、僕のは普通で」

 

「フカヒレってのは中華料理とかで出てくるサメのヒレ、だったか。僕も興味があるな」

 

 僕たちはそれぞれの注文を屋台のオヤジさんに伝えると、葛城さんを真ん中に座らせてラーメンの出来上がりを待った。

 

 目の前ではオヤジさんが麺を豪快に湯切りしている。最初に出来上がったのは、

 

「へい!フカヒレチャーシューお待ち!」

 

「んん〜良い匂い!これは食欲をそそられるわね!」

 

「わたしが先に頼んだのに・・・・・・」

 

 ラングレーの前に差し出されたラーメンを恨みがましそうに睨み付ける綾波さん。まぁ、ラーメンなんてすぐできるんだ。もう少しの我慢だ、と僕は綾波さんの肩を優しく叩いた。

 

 やがて僕たちの目の前に、それぞれの注文の品がドンと置かれていく。

 

「綾波さん、まずは『頂きます』だぞ?」

 

「頂きます」

 

 言い終わるや否や、割り箸を目にも止まらぬスピードで割った綾波さんが、なぜかラーメンのどんぶりに顔を突っ込んだ。

 

 ・・・・・・箸の意味がないな、これじゃあ。

 

 まぁ今日は朝からずっとネルフで待機していたんだ。僕もかなり腹が減っている。僕も割り箸を割って、目の前のフカヒレラーメンをすすった。

 

 お。これ、結構イケるな。かなり好みの味だ。

 

「ねぇ、ミサトさん・・・」

 

 シンジ君がラーメンを前にしながら、少し嬉しそうに葛城さんに語りかける。

 

「なぁに?」

 

「さっき、父さんの言葉を聞いて、誉められることが嬉しいって、初めて分かったような気がする。それに、分かったんだ。僕は、父さんのさっきの言葉を聞きたくて、エヴァに乗ってるのかもしれないって・・・」

 

 その話、か。まあシンジ君の場合、確かに、あの父親から褒めてもらうってのはなかなか味わえない、貴重な体験だろーからな。

 

 僕はどうだっただろう。義理の父親に、何かで褒められたことはあっただろーか。・・・無いな。確か、たぶん。

 

「あんた、そんな事でエヴァに乗ってるの?」

 

 ラングレーの質問に、シンジ君は苦笑しながら首を振った。

 

「それだけじゃないよ。・・・・・・でも、父さんに褒めてもらえた事って、無かったからさ」

 

「ふーん・・・・・・まあ、気持ちはわからないでもないわね」

 

 そういうラングレーの顔は、どこか寂しげだ。なんだろう。何かあったんだろーか?

 

「アスカのことは、僕が褒めてあげるよ」

 

 そういってラングレーの頭を優しく撫でるシンジ君。ラングレーはラーメンをすすりながらも、その顔は嬉しそうにほころんだ。

 

 ていうか、本当シンジ君、天然ジゴロの才能が高いな。もうそのままラングレーを嫁にでも貰ってやればいいのにな。まぁ、トウジ君の妹のサクラちゃんが見たら血涙を流しそうだが。

 

 ・・・・・・刺されるなよ?シンジ君。

 

「あんた達ぃ?あんまり保護者の目の前でいちゃつくんじゃないわよぉ?」

 

「おかわり」

 

「え!?レイ、もう食べ終わったの!?」

 

 騒々しくも微笑ましい、僕たちエヴァのパイロットの夕食の団欒。こういうのも、たまにはいいんじゃあないかな。

 

 葛城さんを含めた5人が、横一列に並んで共にラーメンをすする。こんなフツーの日常が、何よりもかけがえのない物だということを僕は知っている。

 

 そういう生活を守るため、僕はギャングのボスになったんだからな。

 

「それにしてもジョルノ。あんたってば土壇場での機転、てゆーの?そういうの良く毎回思い付くわね」

 

「そうですかね?」

 

「そーよ。今日の戦闘だって、まさかATフィールドをあんな使い方するとは思ってなかったもの。他の3人も、よくジョルノの言いたいことをすぐに理解できたわね?」

 

「まあ、なんつーの?『女の勘』ってやつ?」

 

「ジョルノが何をもぐもぐ、するかもぐ、だいたいわかる、わ・・・・・・ごくん」

 

「レイは食べながらしゃべらないよーにね。シンちゃんもそーなの?」

 

 シンジ君はラーメンをすすり終えると、目をぱちくりさせて葛城さんに向き直った。

 

「僕とジョルノ君は、一緒に乗ってるから。なんていうか、わかるんです。ジョルノ君がやろうとしてる事が・・・・・・」

 

「まっ!以心伝心てわけね?・・・・・・これもエヴァに二人乗りしている影響なのかしら?」

 

「どーでもいいが葛城さん、早く食べないとラーメン伸びるぞ?」

 

 僕は葛城さんのラーメンの心配をしてやるが、何故か葛城さんは真面目な顔をして黙り込んでしまった。

 

「ビールは帰るまで我慢してくださいよ?」

 

「ちっがうわよ!ただ、そうね・・・・・・そろそろ話しておくべきかしら・・・・・・」

 

「・・・・・・?なんの話だ?」

 

 葛城さんは僕の問いに答えるまえにラーメンをゾゾゾッと一気にすすると、

 

「ジョルノ」

 

 至極真剣な眼差しで、僕に向き直った。

 

「あんたに、パイロット昇格の話が出てきてるわ。サブじゃない、一人のエヴァンゲリオンのパイロットとして、ね」

 

 食事をしていた全員の手が止まる。ラングレーなんかは「嘘でしょ!?なんでこいつが!?」みたいな顔をしているな。

 

 一瞬の静寂。口火を切るのは僕だ。

 

「・・・・・・エヴァは、まだ他にあるんですか?」

 

「あるわ」

 

「ネルフ本部に?」

 

「いいえ」

 

 葛城さんの答えを聞いた瞬間、嫌な予感がした。これは、もしかしたら──、

 

「日本じゃない。アメリカよ」

 

 ゼーレが動き始めたのかもしれない。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

「ジョルノ・ジョバァーナをアメリカ第二支部に、ですか」

 

 加持リョウジはネルフ本部の広すぎる執務室で、碇ゲンドウを前にしながらもため息を吐いた。

 

「そうだ」

 

「そのお供を、私にやれ、と」

 

「そうだ」

 

「貴方からの仕事はまだ残っていますが・・・」

 

「ゼーレから直々の指示だ。断る理由はない」

 

 正確には「断れる」、だろう。加持は胸の中で小さく悪態ついた。

 

「わかりましたよ・・・・・・しかし、なぜジョルノ・ジョバァーナをアメリカに?使徒の狙いは明らかにこの第三新東京です。エヴァをこちらに輸送した方が都合が良いのでは?」

 

「この期に及んでもまだ、ヴァチカン条約は効力を失っていない。ゼーレも無下にはできんだろう」

 

「政治、ですか」

 

「そういう事だ」

 

 加持は再びため息をついた。嫌な予感が止まらない。ゼーレ直々の命令。ジョルノ・ジョバァーナの指名。これは明らかに、ジョルノをネルフから排除しようという動きだ。

 

 そして目の前のネルフ総司令は、ジョルノを守ろうとはしていない。碇ゲンドウにとってジョルノは碇ユイとの再会のための鍵を握る人物ではあるが、ゼーレの命令に逆らってまで守る人物ではない、という事だろう。

 

 また、ジョルノの配属先がアメリカであるという点も、ゲンドウの決断を後押しした要因だった。ゼーレの本拠地はユーロ。この事から、ゼーレのジョルノへの直接的な接触の可能性は低いと見たゲンドウは、自分にとっての厄介払いをゼーレへと委ねたのだ。

 

 その思惑が、見え透いている。加持は思い切り舌打ちをしたいところであったが、強く手を握る事でそれを耐えた。

 

(すまない、ジョルノ君。俺には俺のやるべき事がある・・・)

 

「アメリカにジョルノ君を連れて行ったあとは?とんぼ返りして貴方からの仕事を進めたいのですが、構いませんね?」

 

「もちろんだ。よろしく頼む」

 

 机の上で腕を組んだゲンドウが、隠した口元を歪める。

 

「安心したまえ。エヴァンゲリオン四号機は、S²機関内蔵のテスト機だ。ジョルノ・ジョバァーナはそのテストパイロット。危険はない」

 

(どの口が・・・・・・!)

 

 加持リョウジは努めて平静に、笑顔をゲンドウに返した。

 

 今の加持には、そうする事しかできなかった。

 

 

 

To Be Continued…




いつも読んでいただき、ありがとうございます!
これにて第六章も終了です。

更新速度もかなり遅くなってしまい、申し訳ありませんでした!ただ個人的にはサハクィエルを大暴れさせられたので、ベネです笑

次章はとうとうジョルノが単身アメリカに渡ります。作者もどーなる事か、すごくドキドキしております!

それでは、みなさん。また会う日まで。
アリーヴェデルチ!
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