ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 13枚のモノリスが暗闇に浮かび上がる。黒い無地のモノリス達はその盤面に仄暗く赤く光る文字を浮かべて、それぞれの言葉を暗闇に向かって放り投げ始めた。

 

 ネルフの上位機関、ゼーレの会合である。

 

「エンリコ・プッチがジョルノ・ジョバァーナと接触したか・・・・・・」

 

「左様。アメリカのエヴァンゲリオン四号機、その場にエンリコ・プッチが潜入していたと報告を受けておる」

 

「2人の尋常ならざるスタンド使いの邂逅。これが何を齎すとしても、世界に与える影響は計り知れんだろうな」

 

「だが、我々の『死海文書』にこの出来事は記されていない」

 

「つまり──」

 

 ゼーレの長、キール・ローレンツは言葉を切った。

 

「些事だ」

 

「左様。問題はこの後、アメリカで起こる事自体は『死海文書』に記されているという一点のみ」

 

「スーパーソノレイド。S²機関の消失か」

 

「問題ない。使徒より得たS²機関は失われるとしても、代わりの素体は幾らでも用意できる」

 

「それに、あのジョルノ・ジョバァーナの『スタンド』」

 

「うむ。あれは、我々への『贈り物』かもしれんな」

 

「『生命を生み出す』能力。全く、素晴らしいチカラだ。これならば・・・」

 

「ああ。S²機関の『素材』とするに不足はない」

 

「だが、エンリコ・プッチがヤツからDISCを奪ったら?」

 

「それも問題あるまいよ。奴には我らの『首輪』がある。奴が能力を使えたとしても限定的なものだ。十分、我らで回収は可能」

 

「しかし、奴が今度こそ『天国の時』を発動させたら?」

 

「それが人類を『真の幸福』に導くものであれば」

 

「うむ。我らはそれを受け入れよう」

 

 キールの声に、ゼーレのモノリス達が含み笑いの音を暗闇に奏でる。

 

 それは正しく、『嘲笑』であった。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 ケージの壁を駆け上がる!

 

 敵!確かエンリコ・プッチとか言ったか。奴の能力が、少しずつではあるがわかってきた。

 

 僕の遥か頭上で壁面に足をつけながら後退していくプッチの姿。

 

 それを、僕は壁から『落ちる事なく』走りながら追い続けている。

 

「素晴らしいぞ、ジョルノ・ジョバァーナ。『時』と『場所』は違えども、あの空条徐倫ですら、私の『C-MOON』にここまで迫ってくる事はなかった」

 

「誰の事を言っているのか知らないが、お前の能力のタネは割れた。後はお前を追い詰めるだけなんでな」

 

 そう。コイツの能力。それは『重力の逆転』だ。奴の足元を中心として、重力の向きが変わっているんだ。どうやらプッチ神父の足元が重力の始まり、という事らしい。

 

 奴が壁を登ったり降りたり、水平に立てたりするのはこの為だ。奴にとっては全ての壁面は『地面』と変わりないんだ。だからフツーに歩けるし、立ってもいられる。

 

 逆に奴の足元以外の重力は逆転するらしい。つまり、奴が地面に立ってた場合、僕は『空に向かって落ちる』。水平に立ってた場合は、奴の足の向きとは反対方向、言い換えれば奴の頭上方向の『水平に向かって落ちる』。

 

 要するに、僕と奴は必ず上下逆さまの状態でしか対峙できないって事だ。

 

 物凄い能力だ。

 

 コイツのスタンドの射程距離がどれほどの物なのか想像はできないが、少なくともこの広大なケージ内全ての重力を変化させるくらいの射程はありそうだな。屋内での戦闘でなければ、僕はとっくに空に放り出されて始末されていただろう。ヤバかった。

 

 重力を操る。本当に途轍もない能力だが、とても厄介な事にそれはコイツの『スタンド自身』にも備わっている能力のようだ。

 

 つまり、奴のスタンドの『両手』!あの『両手』で触れられたものは、『重力を裏返される』らしい!

 

 さっき僕が右足に食らった攻撃の効果がまさしくソレだ。更に言うなら、ケージのキャットウォークをひっくり返したのもその能力に依るものだろう。

 

 

 

 

 

 だが、そこまで分かればコイツは僕の敵じゃあない!

 

 

 

 

 

 エンリコ・プッチが壁から壁へと飛び移る。それに合わせて『重力の変化』も起きるわけだが──、

 

「無駄だ」

 

 僕も神父の動きに合わせて移動する。奇妙な感覚だが、壁から壁へと飛び移っても、僕は壁面から落下しない。奴とは『反対の重力の向きに合わせて立っているから』だ。

 

 そして僕には、『コレ』がある!

 

『ゴールド・エクスペリエンス!』

 

 手にしていた瓦礫の破片を壁面に向けて放り投げる。破片にはすでに生命が与えられており、みるみるうちに巨木へと成長!壁に根を張った!

 

 僕はその木の枝に捕まり、枝を登っていく事で奴との距離を縮めた。プッチ神父は未だ僕から『距離をとり続けようとしている』!

 

 距離を詰められる事を嫌がるように、僕の元へと突進してくる敵スタンド!

 

『引ッコンデロ!』

 

「お前がな・・・!」

 

 僕は目の前に『ゴールド・エクスペリエンス』を出現させた。

 

『ウシャーーーーーーーーーーーッ!!』

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ!!」

 

 奴の繰り出してくる拳は素早い・・・だが、僕のゴールド・エクスペリエンスの方が、素早さは上だ!

 

 ゴシャアと音を立てて、奴の両手に触れる事なく、僕のスタンドの両拳がC-MOONの両腕に叩き込まれる!

 

『グ、オ!?』

 

「無駄ァァアアアアッ!!」

 

 ゴールド・エクスペリエンスの放った蹴りが、敵スタンドの腹に突き刺さる!勢いを殺せず、敵スタンドは本体へと向かって吹っ飛んで行った!

 

 その本体の方も、今食らったダメージでガクッと膝を付いたようだな!

 

 両手から能力が発動するタイプの近距離パワー型スタンド。そんな奴らとの戦いは、正直言って慣れっこなんでな。例え話になるが、ブチャラティと初めて会った時はマジに殺されるかもとヒヤヒヤしたものだ。

 

 だが、解る!コイツは、プッチ神父は!別に戦闘が得意な訳ではない!スタンドの操縦技術が、僕が会ってきたスタンド使い達と比べても圧倒的に未熟なのが解る!

 

 当然、僕の尊敬するブチャラティに、及ぶべくもない!

 

 加えて、コイツのスタンド。一見『近距離パワー型』のスタンドだと誤解しそうになるが、コイツは『遠隔操作型』のスタンドだ。破壊力はスタンドの『重力で裏返される』能力で補っているが、スタンド自身のスペックはそこまで高くない。

 

 

 

 つまり、僕の敵じゃあないって事だ!

 

 

 

 僕は再び奴とは真反対の壁面に立ち、スタンドで壁を殴り始める。

 

 まあ実際のところ、僕『一人だけ』じゃあ、ちょっと心許ないからな。

 

「プッチ神父。お前のスタンドだが、複数の『敵』に遭遇した事はあるのか?」

 

 殴られた壁面が僕のスタンドの攻撃でボロボロとこぼれ落ちて行く。その破片は──、

 

「き、貴様ァ・・・ッ!?」

 

「オオスズメバチ・・・日本に生息している猛毒の蜂だ!」

 

 数十匹のオオスズメバチとなって、距離を取っていたエンリコ・プッチ神父目掛けて一斉に襲い掛かった!空を飛べれば、重力の逆転の影響も少ないだろうからな!

 

『C-MOON!!』

 

 プッチ神父がスズメバチを迎撃するが、多勢に無勢だ。神父はスタンドでハチに対処しながらも、更に後退していく。

 

 僕に追い立てられているとも気づかずにな。

 

「はっ!?」

 

「ベネ。ようやく射程距離まで近づけたな。・・・・・・で?あんたは後ろのハチと、僕。どっちの相手をするんだ?」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・と空気がうねりを上げていく。

 

「『C-MOON!!』」

 

 そうか。

 

 僕が相手でいいんだな?

 

「うーん・・・・・・」

 

 本当ならもう少し右を向いてくれている方が、角度的に好みなんだがな。

 

 まぁ、しょーがない。

 

 

 

 

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄・・・・・・ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 ドグシャアッ!と音を立てて、ゴールド・エクスペリエンスの拳が奴の顔面に叩き込まれていく。

 

 完全に捉えた!

 

 

 

 

 

 そう感じ取った瞬間、目の前から神父の姿が消える。

 

 

 

 

 

「な、なにッ!?」

 

 僕を目掛けて、オオスズメバチの大群が押し寄せてくる。僕の作り出した生命だ。襲ってくる事は無かったが──、

 

「神父は!?アイツは何処へ行ったんだ!?」

 

 僕は周囲を見回す。その瞬間──、

 

「なにィィイイイイイイ!?」

 

 僕の足元の重力が、『元に戻って』いた。

 

 ま、マズい!!僕はケージの壁面に立っていた。その重力がいきなり失われた僕は!!

 

「うぉぉおおおおおおおおおお!!?」

 

 ケージの壁面から遥か眼下の地面に向かって墜落していく!!

 

『ゴールド・エクスペリエンス!!』

 

 僕は胸元にあったテントウムシのブローチをちぎって壁面に投げる。途端、壁面に根を張り巨木へと成長するブローチ。僕はその枝に掴まる事で落下を防いだ。

 

(バカな・・・!ヤツは一体、どこへ・・・!?)

 

「神の御命において退ける!想像以上だ!ジョルノ・ジョバァーナ!!あの『空条承太郎』ですらが『時を止めて』私の能力に対処したというのに!お前はそれを超えて、今、私の目の前に立っている!」

 

 僕の頭上、先ほど破壊されたキャットウォークの端に、ヤツは立っていた!

 

「なんだって?ジョータロー?」

 

 どこかで聞いた事のある名前だが、今はそれどころじゃあない。ヤツの側に立つスタンド。その姿が『変わっている』!

 

「『神の試練』を続けよう、ジョルノ・ジョバァーナ・・・・・・お前には計り知れない事だろうが、最後にひとつ言っておく。『時は加速』する・・・・・・」

 

 ・・・・・・・・・なるほどな。

 

 つまり、相手もまだ本気じゃあなかったって事だな?

 

 僕は胸元のポケットに大切にしまっている『矢』を握り締める!

 

 いいぜ。なら、ここからは第3ラウンドだッ!

 

 

 

つづく

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