ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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新年明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!


67.

 

 僕の頭上で偉そうにふんぞり返っている敵、プッチ神父。

 

 その遥か眼下で、僕はスズメバチの大群を従えて奴を見上げる。

 

 奴が動く気配はない。僕は奴の一挙手一投足に神経を尖らせながら、懐からゆっくりと『矢』を取り出した。

 

 

 

「ゴールド・エクスペリエンス!!」

 

 

 

 僕はその矢を掴み、天高く掲げた。それを、勢いを付けて自身のスタンドに突き立てる。強烈な痛みを伴いながらも、不思議な高揚感と共に、僕のスタンドが『進化』を始める!

 

「見せてもらうぞ。ジョルノ・ジョバァーナ。君が得たと言う、『スタンドの更に先に進んだ力』とやらを!」

 

 僕のスタンドからエネルギーが溢れ出てくる。それは僕のゴールド・エクスペリエンスを『蛹』として成長し──、

 

「その上で!私はソレを手に入れよう!!」

 

 神父の宣言に合わせて、僕のスタンドが光と共に爆発した。

 

「──なっ!?」

 

 一瞬のことだった。

 

 僕を見失ったプッチ神父が、周囲に警戒を張る。

 

 だが、もう無駄なんだ。僕がこの力を表立って使う以上、何をしても無駄なんだ。

 

 それは、予感なんて生優しいものじゃあ決してない。確信に近い感情だった。

 

 神父の目が、徐々に、ゆっくりと頭上に向かって上げられてくる。それは、さっきまで神父の遥か眼下にいた僕の位置とは真逆の方向。

 

 だが、それでいい。なぜなら僕は既に『そこ』に居なかったのだから。

 

 僕は既に、『神父の遥か頭上に』移動していたんだからな!

 

 

 

『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』

 

 

 

 僕の『進化』したスタンドが、僕と共に空中に浮かび上がる。圧倒的なスタンドパワーにより、僕は宙に浮かんで神父を見下ろす。

 

 ドドドドドドドド・・・・・・!!とケージ内の全ての空気が震えているのがわかる。奴の最後のスタンド、確か『メイドインヘブン』とか言ったか。そのスタンドも、並外れた力を備えているのが、対峙している僕にもよくわかる。

 

 だが!それと同等か、それ以上のパワーで以て僕の側で佇んでいる僕の最後のスタンド、『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』。互いのスタンドパワーが空間でぶつかり合い、大気を震わせているのがわかる!

 

「生き残るのは──、」

 

 僕のスタンドが右手をゆっくりと、スゥッと上げる。

 

「はっ!?」

 

 プッチ神父は咄嗟に反応したようだが、遅い。僕からすれば、ハエがあくびをして止まるような遅さだ。

 

 僕のスタンドの指先から溢れ出したスタンドエネルギーが神父に向かって光の速度で襲いかかる。それを神父は、咄嗟の判断で回避できたようだが、

 

「うっ、ぐぉおおおお!?」

 

 右手を、貫かれたようだな。

 

「な、なに!?」

 

 だが悪いな、プッチ神父。僕のスタンドが飛ばしたのは『生命エネルギー』なんだ。飛ばしたエネルギーの行く先は、今、貴様が立っているキャットウォークの破片。

 

 そして『生命エネルギー』を与えられた物質には、『生命が宿る』!

 

 破片は一瞬でサソリに変化すると、神父に向かって襲いかかった。

 

「うぐっあああああああ!?」

 

 皮膚に突き刺さったサソリの尾を、皮膚ごと切り裂くことで神父は難を逃れた。よかったな?毒が回らずに済んで。

 

 だが、僕からしたら、それは既に『見慣れた光景』なんだ。既に過去に、おんなじ光景を目にしていたからな。

 

「はあああっ!!ハァー!ハァー!」

 

 神父の荒い呼吸。そして畏怖するような眼差し。その全てが、僕の過去にあった出来事を彷彿とさせる。

 

「もう一度言わせてもらう。生き残るのは、この世の『真実』だけだ。真実から出た『誠の行動』は・・・・・・決して、滅びはしない・・・・・・。そして、お前の行動が真実から出たものなのか・・・・・・それとも、上っ面だけの邪悪から出たものなのか?それはこれからわかる・・・」

 

 プッチ神父の顔に不思議な表情が浮かぶ。それは恐怖であると共に、今、目の前にしている光景に対する喜びを孕んでいる。

 

 その全てを無視して、僕は宣告する。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()プッチ神父・・・・・・」

 

 その言葉を聞いた瞬間、プッチ神父の表情はある一つの感情に集約された。

 

 すなわち、至上の喜びだった。

 

「素晴らしい・・・・・・」

 

 プッチ神父の震える口から言葉が漏れる。

 

「素晴らしい・・・・・・素晴らしいぞ!ジョルノ・ジョバァーナッ!!コレか!貴様が得たというスタンドの先とは、コレほどのものなのかッ!!」

 

 神父は両手を広げ、僕を神の御使いのように賛美し讃える。

 

「これほどの天啓があろうか!私の得た『天国の時』!それとは全く違う形で『力』を得たスタンド!群体による邪悪な魂たちの生贄無しに、個としてこれだけの『力』を得たスタンドがあったとは・・・・・・!認めよう!お前が得た『力』は、お前の父親であるDIOが目指した世界の更に先にあった!!」

 

 プッチ神父は、まるで讃美歌でも歌い出しそうなほどに興奮していた。

 

 だが、僕がソレに付き合ってやる道理はないな。

 

 僕は空中を『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』と共にスッと移動する。奴との距離を縮め、奴にこの世の終わりをプレゼントするために。

 

 だが、それを目にしたプッチ神父の行動は──、

 

「DIO!!お前の最後の息子はッ!!」

 

 キャットウォークから、身を投げるというもの。

 

「なにッ!?」

 

 僕が驚きに目を見開いた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 奴の姿が、忽然と消えた。

 

 

 

 

 

「な!?馬鹿な!」

 

 僕は驚愕すると同時に動き出していた。キャットウォークの遥か眼下に置いてきたスズメバチの大群。それを指揮し、僕の周りに集めて警戒させる。

 

 全方向からの攻撃に、対応できるように。

 

 だが、

 

「!!?」

 

 そのスズメバチの大群が、ほぼ同時に、一切の時間差もなく、全て叩き潰された。

 

「な、なん、だと・・・・・・!?」

 

 そして、同時に僕が抱いた違和感。それは、僕の首から発せられていた。

 

 僕は咄嗟に首元を押さえる。だが、押さえ切れない。

 

 

 

 大量の血液が、僕の首から噴出していた!

 

 

 

「な、何ィィイイイイイイイイ!!?」

 

「ジョルノ・ジョバァーナ・・・・・・」

 

 僕の背後から、まるで諭すような、優しい声音の神父の声が聞こえる。

 

「君は、選択を誤った・・・・・・」

 

 その言葉と共に、僕の意識は闇に落ちていき────、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コレガ・・・・・・』

 

 プッチ神父の目に映る、信じがたい光景。

 

 今起こった全ての事象が、徐々に、しかし確かに巻き戻っていく。

 

 その光景を、プッチ神父は驚愕と共に、ただ観察している。

 

『レクイエム、ダ・・・・・・!』

 

 ジョルノ・ジョバァーナの意識はない。既に首の頸動脈を断ち切ってやったのだ。致命傷だ。ジョルノ・ジョバァーナがここから助かる道はない。

 

 しかし、

 

『オマエガ見テイルモノハ、確カニ『真実』ダ。確カニオマエガ実際ニ『起コス動キ』ヲ見テイル・・・シカシ・・・』

 

 ジョルノのスタンド『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』は、機械的な言葉でもって現状を否定する。

 

『実際ニ『起コル真実』に到達スルコトハ決シテナイ!ワタシノ前に立ツモノハドンナ能力ヲ持トート、絶対ニ!行クコトハナイ・・・コレガ、『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』!!コノコトハワタシを操ルジョルノ・ジョバァーナさえも知ルコトハナイ!』

 

 

 

 

 

 

「───な!?馬鹿な!」

 

 僕は驚愕すると同時に動き出していた。キャットウォークの遥か眼下に置いてきたスズメバチの大群。それを指揮し、僕の周りに集めて警戒させる。

 

 全方向からの攻撃に、対応できるように。

 

 だが、

 

「!!?」

 

 そのスズメバチの大群が、ほぼ同時に、一切の時間差もなく、全て叩き潰された。

 

「な、なん、だと・・・・・・!?」

 

 僕は周囲に警戒を向ける。

 

 だが、恐れていた追撃が来る事は無かった。

 

「な、なんだ・・・!?何が起こっている・・・?」

 

「ジョルノ・ジョバァーナ。理解した。完璧に」

 

「ッ!?」

 

 僕の背後、ケージの壁に張り付くように、プッチ神父は佇んでいた。その表情には、どこか晴れやかなものが浮かんでいて。

 

「理解した。君は『無敵』だ。私の『メイドインヘブン』がどれだけ時を加速して、私がその中でどれだけ素早く動こうとも、君を『始末する』のは無理だと理解したよ。いや、本当に『無敵』の能力だ。痛感した・・・・・・」

 

 ・・・・・・?

 

 なに、を?何を言ってるんだ?僕とコイツは、まだ何もしちゃあいない。正面から『ぶつかっていない』んだ。それなのに、何を理解したというのだ?

 

「君の得た『力』に、私のスタンドでは太刀打ちできないという事だよ、ジョルノ・ジョバァーナ・・・・・・君の得た『無敵さ』は、この世のあらゆる事を無に帰す。まさしく、君の言う通りなのだ。『無駄』なのだ、全てが・・・・・・」

 

 そう優しく僕に語りかけるプッチ神父の顔が、途端、邪悪に歪む。

 

 

 

「だが、それは私の『負け』を意味しない!」

 

 

 

 プッチ神父の姿が掻き消える。僕は神父の行方を目で追ったが、速い!速すぎて、一瞬で見失ってしまった!

 

「ジョルノ・ジョバァーナ!君に対する全ての『能力』は、君の前には無力だ!しかし!」

 

 神父の声が聞こえる。だが姿は見えない!僕の周囲を凄いスピードで移動しているのだろう!声は聞こえども姿まで捉え切る事はできない!

 

「だが!『君自身』はどーなのだ!?私の能力は神が与えし『世界を加速する力』!君に向けられたものではない!加速する時の中で、永遠に近い時の『加速』の中で!君は、いつまで耐えられるのだ!?」

 

 神父の言葉を聞いた瞬間、あちこちで異変が起き始めた。ケージ内のあらゆる物質が、キャットウォークが、ケージの壁が、エヴァンゲリオン四号機が!グズグズとどんどん『朽ちていく』!

 

「な、なんだ・・・・・・これは!?」

 

「『時は加速する』!全ての魂を次の世界へと連れていくために!命ある者以外の全ては朽ちていく!君を連れて行こう!『一巡した宇宙の先』へ!」

 

「な、なにを言っているんだ・・・?お前は!何を言っている!?」

 

「古い『世界』は必要ない!私の能力は『ゼーレ』によって制限されているが、半径約3キロメートル!この範囲での『宇宙の一巡』であれば、『時の加速』は十分に可能だ!」

 

 くそ!奴の姿を捉え切れない!レクイエムで攻撃しようにも、奴の場所が特定できなければ攻撃のしようがない!

 

 奴の言動でわかった。奴は『僕を攻撃しない』!その上で、奴は何かを仕掛けようとしている!

 

 それが何なのか!僕にはわからない!!

 

「約3キロメートル!その範囲は隔絶された世界だ!私の『能力』によってこの世界から半径3キロメートルの空間がこの世から姿を消すだろう!私たちは永久の時の彼方に向かうのだ・・・!君の能力は『無意識の力』だ!それは無敵でもあると同時に、『君の意思では発動できない』という弱点の露呈でもある!」

 

「!?」

 

「永遠に戦い続けよう!ジョルノ・ジョバァーナ!根比べだ!貴様の精神が勝るのか!?それとも私の神への信仰が勝るのか!果てなき戦いを繰り広げよう!『永遠に加速し続ける世界の中』で、貴様の心が折れ、貴様が自ら『矢』を差し出した時こそ、『真の天国の時』だ!」

 

 僕の周囲が、世界が、崩れていく・・・・・・ッ!

 

「これは私と貴様との、『精神の戦い』だッ!!」

 

 何が起きているのか、何をされているのか全くわからない!だが、僕の周囲が異常な速度で『朽ちて』いって───、

 

 

 

 

 

 眩い光が、僕たちを包み込んだ・・・・・・。

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

「消滅!?」

 

 ネルフ本部、碇ゲンドウの執務室にて、冬月は驚愕の報告を受けていた。

 

「確かに第二支部が消滅したんだな!?」

 

『はい、全て確認しました・・・消滅です』

 

 この日。

 

 ネルフアメリカ第二支部は、この世界から姿を消した。

 

 

 

つづく

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