ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
『碇ユイ』がすでに他界しているという事実は、僕の精神を結構な大きさで揺さぶってくれた。
もしシンジ君の言うとおりならば、僕は死人から『依頼』を受けた事になる。
あり得るのか?そんなことが。
「・・・・・・考えられるのは三つ。一つは、単純に『碇ユイ』を名乗る別人が僕に接触してきたという事。二つ目は、『碇ユイ』のスタンドが本当に時間も空間も飛び越える事のできる能力であり、『碇ユイが生きているときに僕に接触した』という事。そして、最後の三つ目だが・・・」
僕の言葉に葛城さんがうんうんと頷いている。だが横のシンジ君は、若干顔色が悪い。
自分の母親が得体の知れない能力者であったかもしれないんだ。僕のような日常的に『スタンド使い』と遭遇する機会が多くないのだから、そーなるのも当然だろう。
「『死後に発動したスタンド』であること」
「え・・・・・・」
「うぇえ!?スタンドって、死んだ後でも使えるの!?」
「かなり例外的ではありますが、『スタンド使い』本人が死んだ後、『スタンド』だけが残る場合があります。僕も一度相手にした事がありましたが、アレは厄介でした」
それを聞いたシンジ君が、震える声で僕に聞いた。
「それって・・・怨霊って、こと・・・・・・?」
その言葉に、僕はちょっぴり驚いた。シンジ君、君、結構鋭いじゃあないか。
「ある意味では合っている。だけどシンジ君。僕が出会った『スタンド』がそうであったってだけさ。それに・・・」
僕は息を吸うと、力強く、シンジ君に言った。
「君のお母さんは、決して、危害を加えたいわけじゃあない・・・!彼女の依頼が『君を助けてほしい』なら、僕は彼女に悪意があるとは思えない!『碇ユイ』は息子を想う、フツーの母親だ」
それを聞いたシンジ君の顔が少し柔らかくなった。
誓って言うが、今回はデタラメな嘘なんかじゃあない。僕自身が『彼女』と会って話し、魂で感じた事だ。『碇ユイ』の真意はハッキリしないが、『息子を助けたい』という一点においては、僕は『彼女』を信用していいと思っている。
「・・・・・・ねぇ、ジョルノ君?」
「なんでしょうか?」
「・・・これはちょっち聞き辛いんだけど、シンジ君のお母さんは『危険から守ってほしい』、という意味でアナタにお願いした、のよね?」
「・・・?そうだと認識してますが」
「はぁ〜〜〜・・・・・・。やっぱねぇ。だからジョルノ君は、シンジ君をネルフに連れて行きたくなかったわけかぁ・・・」
葛城さんがハンドルにもたれかかって項垂れた。
「悪いけど、こっちにも事情があるの。シンジ君をネルフに連れて行くのは必須事項。私も碇司令がシンジ君に何をさせたいのかは分からないけど、きっと私たちの機密に関する事だわ」
つまり、あれだ。ここから先、部外者である僕を連れて行くことはできない、と。
「まぁ、そーでしょうね。それに民間人の僕が軍組織になんて入れないでしょうし、よくてシェルターまで送ってくれるってとこですか」
「・・・正直、ジョルノ君の言ってる事を疑ってるわけじゃないのよ?まぁそりゃ、100%信じるかって言われりゃ流石に無理だけど」
「でしょーね」
「ただ、私たちも『人類のために戦っている』。さっきの、『使徒』って言うんだけど黒い巨人を見たでしょ?アレをどうにかするために、私たちもなりふり構ってられないってわけ」
「なるほど。『人類補完計画』ってヤツですか」
「ッ!!?」
「えっ?なに?人類?」
シンジ君は素っ頓狂な声をあげているが、葛城さんの反応を見る限り、ビンゴだ。
「アナタ、どこでそれを・・・・・・」
「『碇ユイ』さん、からですよ。もちろん」
「・・・・・・・・・・・・」
考えてるな。僕も『碇ユイ』からその『人類補完計画』ってのを正確に聞いたわけじゃあないが、ずいぶんとご大層な名前だ。必ず何かあるとは思っていた。
葛城さんがもう何度目になるかわからないため息と共に、頭をがんっとハンドルに落とした。
「ジョルノ君」
「はい」
「アナタを拘束しなくてはならなくなったわ。それでも、アナタはシンジ君を守りたい?」
「はい」
「ネルフ内での行動は、ハッキリ言ってかなり制限をかけさせてもらうわ。それでもいい?」
「はい」
「・・・・・・そ。わかったわ。とりあえずは行きましょう」
葛城さんの言葉と共に貨物列車が止まる。どうやら目的地に着いたみたいだ。
「こっからは徒歩よ。車から降りて」
僕、シンジ君の順に助手席から降りる。葛城さんも運転席から降りると、厳しい視線を向けてきた。
「覚悟はいいわね?ジョルノ君」
「・・・ジョルノ君」
心配そうに僕を見上げるシンジ君に、僕は力強く頷いた。
むしろ僕はシンジ君。君に問いたい。
『覚悟はいいか?』
僕はできてる。
◇
それにしても、アレだな。この葛城さんという女性。
「あ、あら〜?おっかしいわねぇ。そろそろ着いてもいいはずなんだけど」
本当に軍人なのか?ってくらい、格好良いところがないな。
「ここ、さっきも通りましたよ」
ナイスツッコミだ、シンジ君。
ここ、ネルフの施設内に入ってどれだけの時間が経っただろうか?結構、いや、バカでかい施設であることは理解していたが、この中は広すぎる。それは理解できる。
だが、ここは葛城さんの職場なんじゃあないのか。なんで職場で道に迷ってるんだ?この人。
シンジ君は葛城さんの案内を諦めているのか、動く歩道の上でさっき手渡された分厚い冊子を読んでいる。
「それ、面白いのかい?」
「いや、よくわかんない事ばっか書いてある」
「そーなのか?どれどれ・・・」
「ちょおっとジョルノ君!?さりげなく機密事項読もうとしてんじゃないわよ!」
「あ、機密事項なんですね、コレ」
「シンジ君!?一応ネルフの冊子なんだから、部外者に見せちゃダメだかんね!?極秘って書いてあるでしょう!?」
「あ、すいません」
シンジ君は冊子をリュックに仕舞う。
くそ。少しは組織の内情を知れるかと思ったのに。
動く歩道に僕たち三人は流されて、僕たちは地下へ、地下へと降りて行く。たどり着いた先でエレベーターに乗り、地下8-28でエレベーターのドアが開いた。
「うっ、あら、リツコ・・・・・・」
ドアの向こうに、白衣を着た女性が立っていた。髪は染めているのか金髪のショートカット。目つきが鋭く、厳格な医者か、科学者かといったところか?
「到着予定時刻を12分もオーバー。あんまり遅いから迎えに来たわ。葛城一尉。人手もなければ、時間も無いのよ」
「ごめんっ!」
毅然とした女性とは対照的に、めちゃくちゃフレンドリーに謝る葛城さん。顔の目の前で手を合わせて困ったように「見逃して」とジェスチャーする彼女を見た白衣の女性は、「ふぅ」とため息をついた。
うん。やっぱり葛城さんには問題があるんだな。どーも目の前の女性から「いつもの事だから仕方ない」といった諦めの感情が見て取れる。
「その子が例の男の子ね。・・・・・・そっちの金髪の少年は?」
「あ、それはぁ、えっと〜・・・」
「葛城一尉。まさか民間人を入れたの?ここに?」
「ごめん!成り行き上、仕方なかったのよ!爆心地近くでシンジ君と一緒に居たし、見捨てられなくってぇ・・・」
「言い訳は結構よ。すぐに保安部から人を呼ぶわ。悪いけど君、これから・・・」
「ちょちょちょ!ちょっと待ってリツコ!」
慌てた葛城さんは、リツコと呼ばれた女性を廊下の隅に連れて行った。
「あの子、ヤバいのよ!結構な爆弾よ・・・!」
「爆弾?どういう意味かしら?」
「『人類補完計画』を知ってる。しかも『碇ユイ』さんから依頼を受けたって・・・・・・」
「ッ!!?」
どーでもいいが、葛城さん。話の内容がこっちまで筒抜けだ。内緒話ならもう少し小声の方がいいぞ。
「まさか、有り得ないわね」
「でも二つのキーワードを知ってるのは無視できないでしょーが」
「・・・・・・それは、まあ、そうね。それで?ミサト。あの子を貴女はどうするつもりなのかしら?」
「とりあえず今は時間が無いわ。使徒もそろそろ動き始めるだろうし、とりあえずは私に同伴させる」
「・・・・・・アナタ、降格処分じゃすまないかもしれないわよ?」
「それは言わないでぇ・・・・・・」
「あのぉ〜、ミサトさん?その人は?」
シンジ君が良いタイミングで二人に声をかけた。それを聞いた二人は振り返って咳払いを一つすると、白衣の女性が言った、
「技術局第一課・E計画担当責任者・赤木リツコ。よろしくね」
女性、赤木さんはポケットに手を入れたまま自己紹介をしてきた。
「赤木さんですね。僕は碇シンジです」
「リツコ、でいいわよ。大丈夫。知ってるわ。それで、そっちの子は?」
「ジョルノ・ジョバァーナです。よろしく。ところで貴女、もしかして左腕を怪我していませんか?」
僕は白衣のポケットに入れたままの左腕を指差した。赤木さんは少しだけ驚いた様子だ。どーもさっきから微妙に腕を庇っている気がすると思ったが、あたりだったか。
「なかなか鋭く見てるのね。さっき作業中にちょっとね。あまり深い傷では無いけれど」
「そうですか」
僕はそう言うと、『ゴールド・エクスペリエンス』を発動させる。他の人間には見えないだろーが、僕の『スタンド』が赤木さんの左腕にチョンと触れた。
違和感があったのだろう。赤木さんは目を見開いてポケットから左腕を抜くと、傷の具合を確かめるようにさすった。その目が、さらに驚きで見開かれる。
「アナタ、何をしたの?」
「さてね。ただの鋭いだけの中学生ってわけじゃあないって事です」
「なになに?リツコどうしたの?」
「・・・傷の痛みがなくなったわ。アナタが治したのね?」
おっと、赤木さんは理解が早くて助かる。
「科学者として、アナタに興味が湧いたわ」
「どーも」
この女性にも、とりあえず僕の存在はアピールできたようだ。少なくともしばらくは、拘束されずに済みそうだな。
つづく