ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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8.

 

 僕とシンジ君、それに葛城さんと赤木リツコ博士を乗せて、リフトがゆっくりと上がって行く。

 

『繰り返す、総員第一種戦闘配置。対地迎撃戦用意』

 

「ですって」

 

「これは一大事ね」

 

 なんとも物騒なアナウンスにも関わらず、葛城さんと赤木博士は、まるで午後のティーパーティーでも開いているかのようにのんびりと会話を交わしている。

 

 こーゆーアナウンスを聞くと何かの冗談にしか聞こえないのだが、改めて、ここが軍組織なんだと興味も湧いてきた。

 

「あの、赤木博士?」

 

「あら、何かしら?ジョルノ・ジョバァーナ君?」

 

「いまのアナウンス、戦闘配置がどーとかって言ってましたが、あまり慌ててないですね。何か秘策、でもあるんですかね?」

 

「・・・・・・本当に鋭い子。どうしてそう思うのかしら?」

 

「さっきの『使徒』ですか。アレに核爆弾か何かで攻撃してましたよね。にも関わらず、あの巨人はまだ生きている。それなのに貴女たちは慌てない。なにかある、と考えてもおかしくはないんじゃあないですか?」

 

「質問に質問で返すのは、あまり行儀がよくないわよ?」

 

 そう言ってニヒルに赤木さんは笑った。それに釣られて僕も笑う。

 

「・・・・・・で、初号機はどうなの?」

 

 『ショゴーキ』・・・?

 

「ミサト?今は民間人が・・・・・・」

 

「わかってるわよ。でも、今はそんな事気にしてる場合?戦闘配置の命令が出てんのよ?」

 

 はぁっと赤木さんがため息をつく。

 

 何かよくわからんが、よっぽど重大な秘密らしいな。しかしそれをこの場で話さないといけないとなると、『ショゴーキ』とかいうのが、彼女たちの秘策というヤツか。

 

 シンジ君は興味がないのか、リュックからネルフの冊子を出して読み始めている。

 

「・・・・・・B型装備のまま、現在冷却中」

 

「それほんとに動くのぉ?まだ一度も動いたことないんでしょう?」

 

「起動確率は0.000000001%。O-9システムとは、よく言ったものだわ」

 

「それって、動かない、ってこと?」

 

「それって、欠陥品なのでは?」

 

 僕と葛城さんがまったく同じ指摘を返す。赤木博士の顔がヒクついた。

 

「失礼ね。ゼロではなくってよ・・・」

 

「いや、それは数字の上での話だ。100回に一回とかならまだしも、10億回以上動かしても一回動くかどーかなんて機械は信用できない。もうソレ、廃棄したほうがいーんじゃあないですか?」

 

「アナタね・・・・・・」

 

「ま、まぁね〜。ま、どの道動きませんでした、ではもう済まされないわ」

 

 赤木博士の額に青筋が浮かんだのを見て、葛城さんが急いでフォローに入る。

 

 まあ、確かに葛城さんの言う通りだ。あの巨人に対抗する兵器があるのなら使うしかない。それが例え、全く動かない欠陥品だろーと。

 

 あの核兵器よりも、役に立つなら、だがな。

 

 

 

 

 驚いたな。なんだ、このバカでかいプールは。しかもフツーの水じゃあなくって、なんだか気味の悪い、赤い水で満たされてるぞ。

 

 その上を、簡易のモーターボートで移動する僕たちだったが、そんな驚きもすぐに消える。

 

 僕たちの向かう先。アレがきっと目指すべき場所なんだろーが・・・・・・。

 

「きょ、巨大な、『腕』・・・・・・ッ!?」

 

 赤い水の向こう、壁から巨大な腕が生えている。いや、何か壁のような装置でロックされている、のか?

 

 僕の驚きなど意にも介さず、赤木博士はボートを操縦している。

 

 ま、『まさか』じゃあないだろうな・・・?

 

 嫌な予感が胸をよぎる。

 

 巨人に、巨大な腕・・・・・・。

 

 おいおいおいおいおい。待ってほしい。まさか、コレがこの『世界』の『常識』ってヤツなのか・・・?

 

 アニメじゃあないんだ。そんな事ってあるのか・・・・・・?

 

 嫌な汗を流しっぱなしの僕をよそに、ボートは目的地に到着したようだ。巨大な腕を固定した壁に階段と扉が取り付けられている。簡易な船着場のようだ。

 

 そこに船が到着すると、赤木さんを先頭に、僕たちは順番に船を降りていく。シンジ君はネルフの冊子に夢中になっていて、さっきの『腕』を見ていないらしい。慌てた様子もない。

 

 階段を登って、自動で動く扉を開ける。するとそこは真っ暗な空間だった。葛城さん、僕、シンジ君が順番に入ると、赤木さんが背後で扉を閉めたようだ。

 

「うあっ!あの、真っ暗ですよ・・・?」

 

 シンジ君が戸惑いの声を上げた。その声はやけによく響いた。真っ暗だが、広い空間なのだと予想がついた。

 

「碇シンジ君。アナタに見せたいものがあるの」

 

 ガシャンと、背後で音がした。どうやら赤木さんが照明のスイッチを入れたらしい。途端に部屋中に光が溢れた。

 

 咄嗟のことに目を瞑った僕とシンジ君だったが、目を開けると──、

 

「な、なにィィイイイイイイッッ!?」

 

「顔!?き、巨大ロボット!?」

 

 バカな・・・ッ!

 

 まさか、マジにそうなのか!?ここはッ!下手なアニメでよくあるような、『巨大ロボット』が出てくるような世界なのかァァアア!?

 

 横ではシンジ君が必死に冊子をめくっている。

 

「探しても載ってないわよ」

 

 そのシンジ君に赤木さんが冷たく言い放った。

 

「──人の作り出した究極の汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。その初号機。建造は極秘裏で行われた・・・・・・」

 

 赤木さんがどこか自信に溢れた顔で──、

 

「われわれ人類、最後の切り札よ」

 

 渾身のドヤ顔で、こちらを振り返った。

 

 思わず殴りたいと思った衝動を必死に殺しつつ、僕は目の前の現実を受け入れようと必死だ。

 

 ・・・・・・・・・・・・ダメだッッ!理解できない!確かに、さっき見た巨人は僕の常識を超える存在だった。それは認めよう。

 

「だからってなんでロボットなんだぁーーーッ!?わざわざ人型で戦う必要があるのかァーッ!?」

 

「ち、ちょっとジョルノ君!さっきからいきなり大声出さないでよ!ビックリするじゃない!」

 

「こ、これも父の仕事?ですか?」

 

『そうだ』

 

 混乱する僕らをよそに、室内に知らない男の声が響いた。

 

 声は上から降ってきた。僕とシンジ君が巨大ロボットの上を見上げると、

 

「な、なんだ?あの胡散くさい男はッ!」

 

「ぶふぅッ!!」

 

 葛城さんが吹いた。

 

 サングラスに、微妙に揃っているよーで揃っていない無精髭。スーツは一応ピシィッと着こなしているが、人とのコミュニケーションを取ろうという気が微塵も見られない。そもそも、あんな高みからこちらを見下ろしてどーゆーつもりだ?

 

『久しぶりだな』

 

「父さん・・・・・・」

 

「なんだって!?『アレ』がッ!?」

 

「ブフォッ!?ち、ちょっとジョルノ君、待って・・・・・・」

 

 またしても葛城さんが吹いたが、知ったことじゃあない。

 

『ふっ、出撃・・・!』

 

「何がだァァアア!?説明が足らなさすぎるッ!今いったい、僕の前で何が起きてるんだァーッ!!」

 

「ジョ、ジョルノ君・・・ちょっと落ち着いて・・・・・・」

 

 シンジ君が僕の背中に手を回してポンポンと叩いてくれる。そのおかげで少しは落ち着く事ができたが・・・ここまで取り乱したのはいつ以来だろう?『ボス』のスタンド能力に触れた時に感じたヤバさとはまた違う!会話が全く噛み合わないッ!

 

「しゅ、出撃・・・?ぶふぅッ!やば・・・・・・なんかツボに入った・・・・・・ッ」

 

 葛城さんは葛城さんで役に立ちそうもない。

 

「こ、このロボットなのか・・・?まさか、このロボットを動かして戦おうって事なのか!?」

 

「他に道はないわ」

 

「ち、ちょっち待ってよ!レイはまだ動かせないでしょう!?パイロットがいないわよ!」

 

「さっき届いたわ」

 

 ・・・・・・ッ!?届いた・・・?

 

「・・・・・・マジなの?」

 

「まっ、待ってくれ葛城さん。赤木博士。『届いた』って、いったい、何が・・・・・・?」

 

「碇シンジ君」

 

 僕の問いかけを無視し、赤木博士はシンジ君に向き直る。

 

「アナタが乗るのよ」

 

「え・・・・・・?」

 

「バカなッ!何を言ってるんだァーッ!!」

 

 僕は思わず赤木博士の肩を掴んだ。

 

 瞬間、ゴリッと。

 

 僕の後頭部に、冷たい金属の感触。

 

「葛城さん・・・・・・」

 

「悪いけど、ちょーっと静かにしてくれる?流石に騒ぎすぎよ。ジョルノ・ジョバァーナ君」

 

「く・・・・・・」

 

 ぐりぐりと、銃口が僕の頭に押しつけられる。『ゴールド・エクスペリエンス』を使えばどうって事のない状況だが、今ここで葛城さんを叩きのめしても意味はない。

 

 僕が大人しくなったからか、葛城さんは赤木博士に話しかける。

 

「でもリツコ。綾波レイでさえ、エヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったんでしょ!?今来たばかりのこの子にはとても無理よ!」

 

「座っていればいいわ。それ以上は望みません」

 

「ま、待て!シンジ君の意見も聞かずに・・・・・・」

 

「今は使徒撃退が最優先事項です。そのためには誰であれ、エヴァとわずかでもシンクロ可能と思われる人間を乗せるしか、方法はないわ。わかっているはずよ、葛城一尉」

 

「・・・・・・・・・・・・そうね」

 

 そうね、だと!?

 

「葛城さん、アナタは・・・ッ!!」

 

「ジョルノ・ジョバァーナ君!これ以上暴れるなら、アナタにはここから出ていってもらうわ!私の責任だしヒドイとは思うけど、悪く思わないでね」

 

 な、なんなんだ・・・この状況は・・・!

 

 ここまで会話が成り立たない人たちは初めてだ・・・!なぜ、いちばんの当事者であるシンジ君を放って話を進める?

 

 まさか、この事、なのか!?『碇ユイ』が言っていた『助けてほしい』という依頼の意味は・・・!

 

 この『状況』から、シンジ君を救ってほしいと、そういう事なのか・・・・・・ッ!?

 

 

 

つづく

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