ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
僕とシンジ君、それに葛城さんと赤木リツコ博士を乗せて、リフトがゆっくりと上がって行く。
『繰り返す、総員第一種戦闘配置。対地迎撃戦用意』
「ですって」
「これは一大事ね」
なんとも物騒なアナウンスにも関わらず、葛城さんと赤木博士は、まるで午後のティーパーティーでも開いているかのようにのんびりと会話を交わしている。
こーゆーアナウンスを聞くと何かの冗談にしか聞こえないのだが、改めて、ここが軍組織なんだと興味も湧いてきた。
「あの、赤木博士?」
「あら、何かしら?ジョルノ・ジョバァーナ君?」
「いまのアナウンス、戦闘配置がどーとかって言ってましたが、あまり慌ててないですね。何か秘策、でもあるんですかね?」
「・・・・・・本当に鋭い子。どうしてそう思うのかしら?」
「さっきの『使徒』ですか。アレに核爆弾か何かで攻撃してましたよね。にも関わらず、あの巨人はまだ生きている。それなのに貴女たちは慌てない。なにかある、と考えてもおかしくはないんじゃあないですか?」
「質問に質問で返すのは、あまり行儀がよくないわよ?」
そう言ってニヒルに赤木さんは笑った。それに釣られて僕も笑う。
「・・・・・・で、初号機はどうなの?」
『ショゴーキ』・・・?
「ミサト?今は民間人が・・・・・・」
「わかってるわよ。でも、今はそんな事気にしてる場合?戦闘配置の命令が出てんのよ?」
はぁっと赤木さんがため息をつく。
何かよくわからんが、よっぽど重大な秘密らしいな。しかしそれをこの場で話さないといけないとなると、『ショゴーキ』とかいうのが、彼女たちの秘策というヤツか。
シンジ君は興味がないのか、リュックからネルフの冊子を出して読み始めている。
「・・・・・・B型装備のまま、現在冷却中」
「それほんとに動くのぉ?まだ一度も動いたことないんでしょう?」
「起動確率は0.000000001%。O-9システムとは、よく言ったものだわ」
「それって、動かない、ってこと?」
「それって、欠陥品なのでは?」
僕と葛城さんがまったく同じ指摘を返す。赤木博士の顔がヒクついた。
「失礼ね。ゼロではなくってよ・・・」
「いや、それは数字の上での話だ。100回に一回とかならまだしも、10億回以上動かしても一回動くかどーかなんて機械は信用できない。もうソレ、廃棄したほうがいーんじゃあないですか?」
「アナタね・・・・・・」
「ま、まぁね〜。ま、どの道動きませんでした、ではもう済まされないわ」
赤木博士の額に青筋が浮かんだのを見て、葛城さんが急いでフォローに入る。
まあ、確かに葛城さんの言う通りだ。あの巨人に対抗する兵器があるのなら使うしかない。それが例え、全く動かない欠陥品だろーと。
あの核兵器よりも、役に立つなら、だがな。
◇
驚いたな。なんだ、このバカでかいプールは。しかもフツーの水じゃあなくって、なんだか気味の悪い、赤い水で満たされてるぞ。
その上を、簡易のモーターボートで移動する僕たちだったが、そんな驚きもすぐに消える。
僕たちの向かう先。アレがきっと目指すべき場所なんだろーが・・・・・・。
「きょ、巨大な、『腕』・・・・・・ッ!?」
赤い水の向こう、壁から巨大な腕が生えている。いや、何か壁のような装置でロックされている、のか?
僕の驚きなど意にも介さず、赤木博士はボートを操縦している。
ま、『まさか』じゃあないだろうな・・・?
嫌な予感が胸をよぎる。
巨人に、巨大な腕・・・・・・。
おいおいおいおいおい。待ってほしい。まさか、コレがこの『世界』の『常識』ってヤツなのか・・・?
アニメじゃあないんだ。そんな事ってあるのか・・・・・・?
嫌な汗を流しっぱなしの僕をよそに、ボートは目的地に到着したようだ。巨大な腕を固定した壁に階段と扉が取り付けられている。簡易な船着場のようだ。
そこに船が到着すると、赤木さんを先頭に、僕たちは順番に船を降りていく。シンジ君はネルフの冊子に夢中になっていて、さっきの『腕』を見ていないらしい。慌てた様子もない。
階段を登って、自動で動く扉を開ける。するとそこは真っ暗な空間だった。葛城さん、僕、シンジ君が順番に入ると、赤木さんが背後で扉を閉めたようだ。
「うあっ!あの、真っ暗ですよ・・・?」
シンジ君が戸惑いの声を上げた。その声はやけによく響いた。真っ暗だが、広い空間なのだと予想がついた。
「碇シンジ君。アナタに見せたいものがあるの」
ガシャンと、背後で音がした。どうやら赤木さんが照明のスイッチを入れたらしい。途端に部屋中に光が溢れた。
咄嗟のことに目を瞑った僕とシンジ君だったが、目を開けると──、
「な、なにィィイイイイイイッッ!?」
「顔!?き、巨大ロボット!?」
バカな・・・ッ!
まさか、マジにそうなのか!?ここはッ!下手なアニメでよくあるような、『巨大ロボット』が出てくるような世界なのかァァアア!?
横ではシンジ君が必死に冊子をめくっている。
「探しても載ってないわよ」
そのシンジ君に赤木さんが冷たく言い放った。
「──人の作り出した究極の汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。その初号機。建造は極秘裏で行われた・・・・・・」
赤木さんがどこか自信に溢れた顔で──、
「われわれ人類、最後の切り札よ」
渾身のドヤ顔で、こちらを振り返った。
思わず殴りたいと思った衝動を必死に殺しつつ、僕は目の前の現実を受け入れようと必死だ。
・・・・・・・・・・・・ダメだッッ!理解できない!確かに、さっき見た巨人は僕の常識を超える存在だった。それは認めよう。
「だからってなんでロボットなんだぁーーーッ!?わざわざ人型で戦う必要があるのかァーッ!?」
「ち、ちょっとジョルノ君!さっきからいきなり大声出さないでよ!ビックリするじゃない!」
「こ、これも父の仕事?ですか?」
『そうだ』
混乱する僕らをよそに、室内に知らない男の声が響いた。
声は上から降ってきた。僕とシンジ君が巨大ロボットの上を見上げると、
「な、なんだ?あの胡散くさい男はッ!」
「ぶふぅッ!!」
葛城さんが吹いた。
サングラスに、微妙に揃っているよーで揃っていない無精髭。スーツは一応ピシィッと着こなしているが、人とのコミュニケーションを取ろうという気が微塵も見られない。そもそも、あんな高みからこちらを見下ろしてどーゆーつもりだ?
『久しぶりだな』
「父さん・・・・・・」
「なんだって!?『アレ』がッ!?」
「ブフォッ!?ち、ちょっとジョルノ君、待って・・・・・・」
またしても葛城さんが吹いたが、知ったことじゃあない。
『ふっ、出撃・・・!』
「何がだァァアア!?説明が足らなさすぎるッ!今いったい、僕の前で何が起きてるんだァーッ!!」
「ジョ、ジョルノ君・・・ちょっと落ち着いて・・・・・・」
シンジ君が僕の背中に手を回してポンポンと叩いてくれる。そのおかげで少しは落ち着く事ができたが・・・ここまで取り乱したのはいつ以来だろう?『ボス』のスタンド能力に触れた時に感じたヤバさとはまた違う!会話が全く噛み合わないッ!
「しゅ、出撃・・・?ぶふぅッ!やば・・・・・・なんかツボに入った・・・・・・ッ」
葛城さんは葛城さんで役に立ちそうもない。
「こ、このロボットなのか・・・?まさか、このロボットを動かして戦おうって事なのか!?」
「他に道はないわ」
「ち、ちょっち待ってよ!レイはまだ動かせないでしょう!?パイロットがいないわよ!」
「さっき届いたわ」
・・・・・・ッ!?届いた・・・?
「・・・・・・マジなの?」
「まっ、待ってくれ葛城さん。赤木博士。『届いた』って、いったい、何が・・・・・・?」
「碇シンジ君」
僕の問いかけを無視し、赤木博士はシンジ君に向き直る。
「アナタが乗るのよ」
「え・・・・・・?」
「バカなッ!何を言ってるんだァーッ!!」
僕は思わず赤木博士の肩を掴んだ。
瞬間、ゴリッと。
僕の後頭部に、冷たい金属の感触。
「葛城さん・・・・・・」
「悪いけど、ちょーっと静かにしてくれる?流石に騒ぎすぎよ。ジョルノ・ジョバァーナ君」
「く・・・・・・」
ぐりぐりと、銃口が僕の頭に押しつけられる。『ゴールド・エクスペリエンス』を使えばどうって事のない状況だが、今ここで葛城さんを叩きのめしても意味はない。
僕が大人しくなったからか、葛城さんは赤木博士に話しかける。
「でもリツコ。綾波レイでさえ、エヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったんでしょ!?今来たばかりのこの子にはとても無理よ!」
「座っていればいいわ。それ以上は望みません」
「ま、待て!シンジ君の意見も聞かずに・・・・・・」
「今は使徒撃退が最優先事項です。そのためには誰であれ、エヴァとわずかでもシンクロ可能と思われる人間を乗せるしか、方法はないわ。わかっているはずよ、葛城一尉」
「・・・・・・・・・・・・そうね」
そうね、だと!?
「葛城さん、アナタは・・・ッ!!」
「ジョルノ・ジョバァーナ君!これ以上暴れるなら、アナタにはここから出ていってもらうわ!私の責任だしヒドイとは思うけど、悪く思わないでね」
な、なんなんだ・・・この状況は・・・!
ここまで会話が成り立たない人たちは初めてだ・・・!なぜ、いちばんの当事者であるシンジ君を放って話を進める?
まさか、この事、なのか!?『碇ユイ』が言っていた『助けてほしい』という依頼の意味は・・・!
この『状況』から、シンジ君を救ってほしいと、そういう事なのか・・・・・・ッ!?
つづく