ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
まぁ、この行動は妥当、と言ったところだろう。
「初号機の連動回路、カットされました」
「射出信号は?」
「プラグ側からロックされています。受信しません」
僕はあの後、現場に急行してきたネルフ職員たちの手によって、両手に手錠をくらって拘束されている。そして、そのままネルフの発令所に連れられてきたってワケだ。
まぁ、行方不明の人間がいきなり現場に姿を見せて、そのままエヴァと戦闘を繰り広げるとかいう意味不明な行動をしたワケだからな。拘束されて、トップである碇司令の下まで連れてこられるってのは、ネルフとしては妥当な行動だ。
「しかしシンジ君、ああしなければ、君がやられていたぞ!?」
『そんなの関係ないよ』
そしてシンジ君の取った行動。これもまた、一人の人間として至極真っ当な行動だろう。
「だがそれも事実だ!』
『そんなこと言って、これ以上僕を怒らせないでよ・・・』
シンジ君による初号機の乗っ取り。当たり前だな。ダミーとはいえ初号機を乗っ取られた上、暴走状態とはいえ自分の手で友達を殺されそうになったんだ。
シンジ君の抱く怒りは、至極真っ当なものだ。
発令所の巨大なモニターには、ケージに収められた初号機の姿が映っている。初号機を一応拘束はしているものの、ひとたび初号機が暴れ出したらあんなチャチな拘束具、ひとたまりもないだろう。
『初号機に残されている後185秒、これだけあれば、本部の半分は壊せるよ!』
だがシンジ君。まだ足りないな。君は心の底からこのゲス野郎どもに怒りを覚えているとは思うんだが、まだ足りない。
『ぶっ壊す』と心の中で思ったのなら、その時すでに行動は終わっているんだ。
「今の彼なら、やりかねませんね・・・」
「シンジくん、話を聞いて!碇司令の判断がなければ、みんな死んでいたかもしれないのよ!?」
『そんなの関係ないって言ってるでしょう!!』
瞬間、初号機が拘束具を破壊して、ケージの壁が半壊した。発令所の空気がざわつくが知った事じゃあないな。
そうだ。やっちまえ、シンジ君。
『父さんは、あいつは、トウジを殺そうとしたんだ!この僕の手で!・・・父さん!そこにいるんだろ!何か言えよ!答えろよッ!』
壁が半壊した事により、ケージ内のキャットウォークや電灯などがガラガラと崩れ落ちる。それと共に、初号機の体が怒りに震え、握った拳を壁に叩き付け始めた。
『なんで!なんで!なんでなんだよ!父さんは何も分かってないんだ!信じた僕が馬鹿だったんだ!父さんも、大切な人を失えばいいんだ!そしたら分かるよ!』
「LCL圧縮濃度を限界まで上げろ」
シンジ君の言葉を無視し、聞こえてくる碇司令の声は、実に淡々としていた。聞いてるこっちが不快になるくらいに、な。
「子供の駄々に付き合っているヒマはない」
どの口が、と本気で思う。今この場にいる面々の中で、1番の子供はあんただ。碇司令の『人類補完計画』がどういった内容かは分からないが、どういった目的なのかは既に『聞いて』知っているんだからな。
はっきり言わせてもらおうか。
あんたはただの『マザコン』だ。
『まだ直結回路が残っ・・・がはっ!?』
画面の向こうで初号機の動きが止まる。どうやらシンジ君の儚いレジスタンスは、終わりを迎えちまったみたいだな。
だがレジスタンス自体はまだ続いているぞ?
「初号機を再収容。パイロットはエントリープラグから排除し、独房にて監察。以後の処置については追って知らせる。以上だ」
碇司令は一息にそう言うと、この場を後にしようとした。
だから──、
「碇司令」
僕の方から声を掛けてやった。
「あんたに言っておきたい事があるんですが」
僕の、相手を明らかに舐めくさった口調に、オペレーターの皆さんが息を呑む。
「・・・・・・口を慎め、小僧。貴様の話など聞く価値もない」
「『碇ユイ』さんに会いましたよ」
「まだそんな下らない話を・・・」
「というか、『ついさっきまで一緒だった』んですが」
「!!?」
お。碇司令だけでなく、横の冬月副司令も驚愕の表情を見せたな。
「・・・・・・どういう事だ」
「言葉通りの意味ですよ。まぁ信じるかどうかはあんた次第ですが」
「待て。冷静になれ、碇。信じるのか?」
横の冬月副司令が碇司令の肩に手を置く。話を振られた碇司令の方も、どうしたらいいか悩んでいるようだな。
まぁ、僕には関係ない事だがな。
「そうそう。一個だけ、あんたに伝言を頼まれています」
「なにッ?なんだ、ユイはお前になんと──」
「『今のあなたには会いたくない』、だそうです」
「─────」
よほどショックだったんだろう。碇司令は言葉を失った。
いいザマだ。
そう僕がほくそ笑んだ瞬間、
(殺気ッ!?)
それを感じると同時に、パンッと乾いた音が発令所に響いた。
「ぐ、お・・・・・・!?」
な、なんだと!?このヒゲ親父!マジか?
あろうことか、この男!発砲しやがった!この大衆の面前で!
「きゃああああああああ!?」
「碇!?何をしている!!」
「ジョルノ君!!?」
くそ!右胸を撃ち抜かれた!撃ち抜かれた肺から血が喉をせり上がってきて、僕の口からゴボッと血が溢れ出す!
「ジョルノ・ジョバァーナ」
僕は急いで『スタンド』を使って傷を塞ぐ。だが、その僕に上階からあの男は!
「貴様にはいい加減、愛想が尽きた。貴様の身柄は委員会に預けよう。分からないとでも思ったのか?お前に不思議な力がある事は、こと此処に及んでは明らかだ。その能力、もっと有効な方法で活用させてやろう」
なんて言葉を投げかけてきやがった!
・・・・・・ふ、ふふ。くくくくくくく。なに?今、アイツはなんて言った?愛想が尽きただって?
マズい、本当にマズい。ダメだ。呆れを通り越して一種の感動を覚えているぞ、今の僕は。
小物、そして子供だと思ってはいたが、この男!僕の想定以上に想定以下だ!なんなんだ、コイツは!これほどとは!こんな心の底から馬鹿みたいだと思った人間には生まれて初めて出会った!
いいだろう。いい加減、僕の我慢も限界だ。コイツにはここで退場してもらおうか!
僕は両手に掛けられていた手錠を、『スタンド』を使って破壊した。カランと音を立てて手錠が床に転がる。
それを見た碇ゲンドウが再び拳銃を構えた。
「やめんか!二人とも!!」
冬月副司令が叫んでいるが、もうここまで来たら僕もあの男も止まれないな。
発令所の空気がぴんっと張り詰める。誰一人動こうとしない。僕たちの動向を、固唾を飲んで見守っているだけだ。
その均衡を崩したのは、僕が踏み出した一歩であり、
「ジョルノ!やめて!!」
背後から聞こえてきた、綾波さんの叫びだった。
背後に振り返ればそこには、驚きと困惑に染められた表情をした、綾波さんとラングレーがプラグスーツのまま立っていた。
「うそ・・・まさか、撃ったの?碇司令が、あんたを?」
僕は無言のまま、ラングレー、綾波さんと視線を移した後、再び上階で拳銃を構えたままの髭面に視線を戻した。
「命拾いしましたね」
「お前がな」
「碇ッ!!いい加減にしろ!」
冬月副司令が碇司令から拳銃をもぎ取る。僕を睨みつけながら拳銃を取り上げられる様は、まるで小さな子供が不貞腐れたままオモチャを取り上げられたようにも見える。
もういい。こんなヤツに付き合ってやる時間がもったいない。それよりも、今はきっと気を失ったであろうシンジ君が心配だ。
僕は碇司令に背を向けると、綾波さんとラングレーに近付いて言った。
「ありがとう、綾波さん。僕を止めてくれて。ラングレーも悪かったな」
「ジョルノ・・・・・・」
「ジョバァーナ、あんた・・・・・・」
僕は綾波さんの頭をポンポンと優しく撫でる。
潮時だな。完全に。
これ以上、ネルフに居ても仕方ない。きっと、シンジ君も同じように感じているだろう。
ここを離れよう。『人類補完計画』も何もかも、知った事じゃあない。
『シンジ君を助ける』という依頼は、依然継続中だ。だがそこに、ネルフという組織はもはや必要無くなった。
シンジ君と共に、ネルフを出よう。それでいい。
僕は両手をポケットに突っ込んで、歩き始める。綾波さんの横を無言で通り過ぎ、そのまま発令所を後にした。
二度と会えないかもしれない人達に対して、別れの言葉が必要だとは、僕は最後まで思わなかった。
To Be Continued…
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!これにて第八章は終了です。
ジョルノの帰還、如何だったでしょうか?作者自身としてはとても満足しているものの、「お前、戻ってくるんかーい!」とツッコミを入れてしまいました笑ジョルノの行動は私の想像を越えてきましたね。
さて、完全にプロットが破壊されたところで(元々あって無きようなもんだったのですが)、ストーリーはたぶん、エヴァンゲリオンの世界線を辿って、最強の使徒との対決に進みそうです。
加持さんが男を見せられるか、作者としても楽しみです!
それでは、次回お会いするまで、アリーヴェ・デルチ!!