ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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 ドサッと加持さんが倒れる音を聞いた瞬間、僕は急いで振り返り、加持さんの元に駆け出していた!

 

「がは、かは、かひゅ・・・・・・」

 

 マズい、『矢』が喉仏に深く刺さっている。致命傷だ。一刻も早く手当しなければ!

 

「加持さん!」

 

 僕の右手が加持さんに触れる瞬間だった。

 

 僕の右腕の肘から先が、吹き飛んでいた。

 

「な、何ィィイイイイイイッ!?」

 

 傷口から血が噴水のように噴き出してくる。

 

「きゃあああああああああ!?」

 

「ジョルノ君ッ!?」

 

「おおっと動かないで〜!全員が『射程距離』なんだ。間違えて君たちまで殺しちゃったら、目も当てられないからねぇ」

 

 シンジ君たちの正面に立っている男。ネルフの制服を着崩しており、長い銀髪を頭の後ろでまとめている男は、肩をすくめてふざけた調子で喋った。

 

「大人しくしてなよ、ジョルノ・ジョバァーナ。ゼーレからの命令は『ジョルノ・ジョバァーナを連れてこい』だけど、何事にも『ミス』ってやつは存在するんだ。ぼくの手元が狂って、エヴァのパイロット達を殺されたくはないだろ?」

 

「うぐ!貴様!!」

 

 やはり、か!このタイミングで、ゼーレからの新手のスタンド使いだと!?

 

「今の状況がわかっているのか?もう使徒はネルフ本部手前まで攻め込んできているって事を忘れてるんじゃあないだろーな?」

 

「わかってるさ。だから、エヴァパイロットにはこれからエヴァに乗って使徒をやっつけてもらわなくっちゃあならない、だろ?」

 

 目の前の銀髪の男は、再び肩をすくめて、何でもないことのように言った。

 

「だからこそ、だぜ。コイツらには『人質』としての価値がある」

 

「スタンド、すでに繰り出しているのか。貴様・・・!」

 

「貴様なんて、寂しい呼び方はやめてくれよ。ぼくの名前は『バルカ・バナーナ』。君とおんなじイタリア人なんだ。名前の響きも似てるだろ?」

 

「お前のふざけた名前を覚えておく価値があるとでも思っているのか?お前は今この場で始末する!」

 

「そうそう!そう言うと思ってたんだ。だからこそぼくは、こーするのさ」

 

 銀髪の男、バルカはすっと右手を上げた。その瞬間だった。

 

 綾波さんの右足に、無数の『穴』が空いていた!

 

「──!?」

 

「な、綾波さん!!」

 

 痛みで悲鳴もあげられなかった綾波さんが、その場に崩れ落ちる!僕は急いで彼女に近づこうとしたが!!

 

「だから『動くな!』って事なんだぜぇー!?ジョルノ・ジョバァーナ!君が動いた瞬間だ!次は左足を吹っ飛ばす!」

 

「き、貴様ッ!!」

 

「君に『レクイエム』は使わせない」

 

 ッ!!?

 

 な、なんだと?コイツは──!

 

「知らないはずがない。ぼくはそこら辺ちゃあんとゼーレからの訓練を受けてるからねェー。今のお前がレクイエムを使えることも知ってる。そして、その上で『レクイエム』を使わせない戦い方ってのをよォー、ぼくは学んで知ってるのさ」

 

 やはり、だったか!コイツらは、ゼーレは『レクイエム』を知っていた!

 

「大抵の場合、『レクイエム』は無敵の能力になる。だがどんな『レクイエム』を持とーと、それはスタンド使い本人だけが無敵って場合の方が圧倒的に多いんだ。だから・・・」

 

「ジョルノ君!綾波が!血が止まらないよ!!」

 

「・・・・・・たくよぉ。これだから中学生ってのは」

 

 バルカが肩を落として髪をかきあげる。

 

 

 

「紳士的な降伏勧告タイムにクソガキが割り込んでくるんじゃあねぇーーーッ!!」

 

 

 

 ヤツが叫んだ途端、今度はシンジ君の左腕に無数の『穴』が開いた。

 

「──え・・・・・・」

 

 シンジ君は一瞬、息を呑んだあと、

 

「ぎゃあああああああいうッ!?」

 

 凄まじい悲鳴を上げた。

 

「シンジ君ッ!!」

 

「シンジ!?」

 

「さっきからやかましいんだよ、お前ら!5体満足でいたいんなら、アホみたいに口を開けてぼくの言うことだけに従ってろ!ぼくは気が短いんだ!!」

 

 くそ、『やはり』だ。奴はすでに、このシェルター内に自分のスタンドを繰り出している。だが、その姿が全く見えない!

 

 どこか物陰に潜んでいるのか?しかし僕の右腕を吹き飛ばしたパワー。破壊力は遠隔操作型にしては強すぎる気もする。

 

「いろいろ考えているようだがジョバァーナ。動くなよ?何、簡単だよ。僕の要求は『無抵抗のまま僕に付いてこい』。たったそれだけだ。もちろんぼくは、お前を再起不能にしてからお前を連れて行く。死なない程度にダルマにしてな」

 

 バルカが一歩踏み出してくる。くそ、この状況。目の前のコイツは、いざとなればパイロットの誰かを殺すだろう。そういった犠牲を、コイツは躊躇なく出すハズだ。

 

 一対一ならば、僕は絶対に負けない!だが、シンジ君達を人質に取られているこのシェルター内で、僕が奴に勝つには『誰かを犠牲にしなくてはならない』!それは許されない事だ。

 

 一瞬だ。一瞬でいい。奴の隙をついて、シンジ君達がこのシェルター内から脱出することができたなら──、

 

「と、お前は考えている。だろ?」

 

 〜〜〜!!読まれていたか!?

 

「だからさぁ、ぼくはこーするのさ」

 

 バギンという何かが壊れる音が響いた。音の発生源を見た僕は目を見開いた。

 

 シェルターからの脱出。リニアシューターへのその唯一の扉の鍵が、まるで銃弾でも撃ち込まれたみたいに破壊されていた。

 

「これで、この部屋からは誰も出られない。まぁお前や、ぼくのよーなスタンド使いならドアを破壊して出られるだろーけどな。だが、非力な中学生の一般人には無理だ」

 

 くそ!どーする!?どうすればいい!?僕たちの入ってきたドアから逃すか?だが奴に背中を見せた瞬間、パイロットの誰かは殺される。

 

 せめて、僕のスタンドに壁をぶち抜くだけの破壊力があれば・・・・・・!

 

「さぁて、ジョルノ・ジョバァーナ君。君を再起不能にさせてもらうよ。他のガキ達は黙ってみてな。人がダルマになるところなんて中々見られるものじゃないからな。これも勉強だと思って──」

 

 

 

 

 

 タンッ!

 

 

 

 

 

 軽い、とても軽い銃声が、部屋に響き渡った。

 

「か、かはぁ!?」

 

 その銃弾は、バルカの左胸に命中している。

 

 奴の動きが、止まったッ!!

 

「走れ、みんな!走るんだァーーーッ!!」

 

 僕の合図と共に、綾波さんを担いだシンジ君とラングレーが、バルカの横を通り抜けてリニアシューターのドアに走っていく!

 

「が、がふ!?ちくしょーめ!誰が!?」

 

「ごふ、ぐ・・・・・・」

 

 撃ったのは、加持さんか!

 

「い、行け・・・・・・アスカ!」

 

「わかってるっちゅーの!!どおりゃあああああああああああああッッ!!」

 

 加持さんの声に応え、ラングレーがドアに向けて渾身の蹴りを放った!

 

 ドガァン!!と大きな音を立ててドアが蹴り破られる!ベネ!流石に軍隊出身は伊達ではないってワケだ!

 

「こんのクソガキどもがァァアア!!」

 

 吠えるバルカに向けて、僕は胸に付いていたテントウムシのブローチを投げ付けた!ソイツは空中でその姿を蛇に変えると、勢いそのままにバルカに襲い掛かった!

 

「鬱陶しいぞ!ジョルノ・ジョバァーナァ!!」

 

 途端、蛇が無数の小さな『銃弾』に撃ち抜かれていた。

 

 ・・・わかったぞ!いま、チラリとだが見えた!コイツのスタンドは!

 

「はッ!?」

 

 バルカが背後を振り向いて驚く。すでにシンジ君達の姿は無かった。

 

 蛇に気を取られた一瞬の隙を付いて、シンジ君達はこの場から脱出できたようだな!

 

 人質を失ったバルカの目が怒りに血走る。その目は僕の背後で死に体の加持さんに向かうと、

 

「『タンク!!』」

 

 八つ当たりのように、加持さんを蜂の巣に変えた!

 

「無駄ァーーーッ!!」

 

 僕は蜂の巣に変えられた加持さんに飛び掛かると、

 

『ゴールド・エクスペリエンス!!』

 

 その傷を、一瞬で治した。

 

「ごっふぅ、うが、ごほ!死ぬかと思ったよ、ジョルノ君」

 

「ベネ!それだけ喋れれば十分だな!」

 

 僕はもう一つのブローチを胸元から引きちぎると、『生命』を与えて僕の右手に変えた。

 

「こんの、どちくしょー共がぁぁ!!」

 

「それはこっちのセリフだな。綾波さんとシンジ君を傷付けておいて、まさか生きて帰れるなんて思っちゃあいないよな?」

 

 僕と加持さんがすくっと立ち上がる。目の前には左胸を押さえたままのバルカの姿。

 

「防弾チョッキか、面倒だな」

 

「ジョルノ君、少しいいか?」

 

 僕の横で、加持さんが静かに僕に耳打ちする。

 

「ここは俺に任せて、先に行け。シンジ君や綾波レイが傷を負っている状況じゃ、使徒に苦戦するのは目に見えている。君も行くんだ」

 

「だが加持さん、相手は『スタンド使い』だ。あなたが諜報員として優秀なのは知っているが、一人でスタンド使いを相手取るのは無理だろう」

 

「その『スタンド使い』ってヤツなんだがな・・・・・・」

 

 加持さんは、僕と同じように目線を下へと下げた。敵の繰り出していた、『スタンド』を見つめるように。

 

「俺もおそらく、『スタンド使い』になっている。奴の『スタンド』が、俺にも見えている」

 

「!!」

 

「そして、俺の中からさっきから浮かび上がってくるイメージがある。これが多分、俺の『スタンド』だ」

 

 僕たちの前に現れる、無数の戦車や装甲車といった軍用車体のラジコンのようなもの。コイツらがバルカの『スタンド』で間違いないだろう。

 

 それに対して、加持さんが静かに『スタンド』の名前を口にした。

 

 

 

『アンチェイン・マイハート』

 

 

 

つづく

 

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