ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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『アンチェイン・マイハート』

 

 そう口の中で唱えた加持さんの右手から、ジャラリと『鎖』が垂れ下がる。

 

 これが、加持さんの『スタンド』か!

 

「目覚めたてホヤホヤのひよっこスタンド使いがよォ、一丁前にぼくの『タンク!』とやり合うつもりかよォ〜?」

 

 バルカの足元に、戦車や装甲車が集まって隊列を組んだ。その数、ざっと30台。

 

「これだけの数のスタンドを同時に扱うとは・・・・・・ミスタのセックス・ピストルズのようなものか?」

 

 群体型、と呼ぶべきだろうか。小さくはあるが複数体のスタンドを操る能力。射程距離は、おそらくこの狭いシェルター内くらいだろう。

 

 だが、その破壊力。甘く見るべきではない。僕の右腕を吹き飛ばしたのは恐らく戦車の砲撃だろう。それが四方八方から飛んでくるという驚異は、決して無視していいものじゃあない。

 

 僕は隣で銃を構えた加持さんを見遣る。

 

「ここは任せていいんですね?加持さん」

 

「ああ、先に行け。すぐに追いつく」

 

「わかりました。後はよろしく頼みましたよ?」

 

「行かせると、思ってるのか?ジョルノ・ジョバァーナ!」

 

 奴のスタンドが一斉に火を吹いた。突っ込んでくる銃弾、砲弾の数は僕の『スタンド』で捌き切れるものではない!

 

 だが!

 

「行け!ジョルノ君!!」

 

 スタンドの『鎖』を振り回して、加持さんが全ての弾を弾き飛ばしてくれた。

 

 僕はその隙を付いて、バルカに迫る。

 

「ひっ!?」

 

 僕に迫られたバルカが咄嗟に道を開けた。随分と軟弱な精神力だと思いながらも、僕はその横を通り抜けたが、

 

「なぁんてな?」

 

 僕の背後から、バルカの『スタンド』が砲撃を繰り出してきた。

 

「無駄無駄無駄ぁッ!!」

 

 迫る砲弾を全て弾き落とすと、僕はシェルターから外に抜け出した。

 

「加持さん!」

 

「ん?」

 

「グラッツェ!」

 

「・・・はは!」

 

 僕はシンジ君たちを追う。床には彼らの血が道標として点々と残されている。

 

(必ず追いつく。待っていろ、シンジ君!)

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・で、どーするんだい?加持リョウジくん」

 

 バルカは、ニヤけた笑みを湛えながら、加持に向き直る。それに対して、加持は銃を構えたまま動かない。

 

「あ〜あ。失敗したなぁ。ゼーレの爺さんどもに怒られちゃうよ。どう思う?加持リョウジくん?」

 

「そうだな。お前さんに情報を持って帰られるのはマズい。お前さんにはここで退場してもらおうかな」

 

「うんうん。随分と強気だ。生意気だなぁ」

 

 バルカの顔が、ぐにゃりと歪んだ。

 

「決めた!お前はダルマにしてから嬲り殺しにしてやるよ。穴という穴を陵辱したあと、頭蓋骨を吹き飛ばしてクソしてやる!」

 

 バルカの激昂とともに、戦車たちが火を吹いた。同時に、加持の持っていた銃も。

 

 加持の弾は躱され、無数の砲弾は加持に迫る。

 

「ただの銃弾なんかでよぉ!ぼくの命を取れると思ってんのかぁ!?」

 

「思っちゃいないさ。ただな・・・・・・」

 

 加持が再び『鎖』を振り回す。加持に迫っていた弾丸や砲弾が全て叩き落とされた。

 

「お前さんも、俺を甘く見過ぎじゃないかい?」

 

「は!たかが鎖でぼくの攻撃を止めたのは褒めてやるがな!どうやらその鎖、ただブン回すだけの使えねぇ能力のようだな!」

 

「どうかな・・・・・・何事も要は使い様って話だと思うがね」

 

 そう不敵に笑った加持が一歩踏み出す。それを防ぐように放たれた火力が加持に集中したが、それらはまたもや加持の『鎖』のスタンドによって弾き落とされていった。

 

「鎖の使い方が上手いねぇ。それに僕の砲弾を叩き落とすとは、『近距離パワー型』としての強度はあるみてーだね、その『鎖』」

 

「ありがたいことにな。どうする?お前さんの集中放火でも、俺のスタンドを突破できないようだが、このまま背を向けて逃げ出すかい?」

 

「それこそ、まさか、だぜ」

 

 バルカは両手を広げる。その動きに合わせて、バルカの『タンク!』が散開したかと思うと、

 

「クロスファイアって知ってるか?」

 

「ッ!!」

 

 前と左右、三方向からの攻撃が加持を襲った。

 

「う、おおおおおおおおおお・・・!」

 

 加持は巧みに『鎖』を操り、攻撃を捌いていく。しかし一本しかない『鎖』では、十字砲火された攻撃を全て弾くのは至難の業であった。

 

 たまらず加持は一歩後退したが──、

 

「はい、チェック」

 

 バルカの声が、加持の最後を宣言した。

 

 加持の目に、敵のスタンド群の最後方にいた車両が映る。

 

(迫撃砲か!!)

 

 加持は咄嗟に頭上に向けて『鎖』を振るった。上空から弧を描いて落ちてきた砲弾を、『鎖』が捉えて破壊する。加持の頭上で爆炎が上がった。

 

「んでもって、これがチェックメイト」

 

 右手を高く振り上げていた加持の目に、今度は更に信じられない車体が映った。

 

「パトリオット!?」

 

「僕の最大火力だ。ありがたく受け取って死にな!」

 

 パトリオットの車体から、勢いよく小型のミサイルが撃ち出される!それは迫撃砲の対処に追われていた加持のがら空きの胴体に向かって最高速度で襲い掛かり──、

 

「うぉおああああああああ!?」

 

 加持の胴体に、『命中しなかった』。

 

「なに!?」

 

「危ない!九死に一生を得るってヤツだな!」

 

「マトリックスかよ!テメェ!」

 

 加持は上体をさらに後ろに倒し、イナバウアーの様に仰け反ることでミサイルを躱していた。

 

 加持は左手を地面に付け、その場で勢いよく独楽のように回ると、

 

「ほら!お返しだ!」

 

 右手の『鎖』を思い切り薙ぎ払った。

 

「なにぃ!?」

 

 加持を仕留めるために近付いていた何体かの車両が、『鎖』に弾かれて横転する。

 

「今度はこっちの『チェック』だな!」

 

「どこが、だ!甘いんだよォ!!」

 

 加持の背後で、外れたミサイルが爆風を上げる。その風圧に背中を押されながら、今度は加持が踏み出した。

 

「『タンク!』、それ以上奴を近づけさせるなぁーーーッ!!」

 

「別に近付かなくってもな」

 

 戦闘車両がその矛先を定めた瞬間、加持は左手に持ち替えていた銃を乱射した。

 

「!?しまっ──」

 

「お前さんの能力、防御にはあまり向いてないんじゃないか?」

 

 加持の指摘は的を射ていた。攻撃面ではその能力を最大限に発揮するバルカの『タンク!』であったが、いざ防御に回ると途端に脆く崩れてしまう。

 

 乱射された銃弾を撃ち落とすほどのスピードも精密動作性もない。故にこそ、バルカは自身を守るために、防弾チョッキを着込んでいたのだから。

 

 バルカは咄嗟に横に飛んだ。しかし、飛んできた銃弾のうちの一つがバルカの左腕を撃ち抜いていた。

 

「うぐお!?」

 

「ほら、まだまだ続くぞ?」

 

 加持は今度は『鎖』を振り回し、足元の戦用車両を攻撃していく。振り下ろされた『鎖』によって、戦闘車両が次々に破壊されていった。

 

「クソがッ!」

 

「どうした?もう終わりか?」

 

「終わり、だって?」

 

 左腕を押さえながら、今度はバルカが不敵に笑う。

 

「加持くんよぉ〜、一瞬の隙を付いてぼくの『タンク!』を吹き飛ばしてるようで良い気になってるみたいだが、いいのかい?」

 

「問題ないなぁ。後はお前を仕留めるだけだからな」

 

 会話を続けながらも、加持は攻撃の手を緩めない。振り回した『鎖』を『タンク!』の車両に叩きつけていく。対するバルカは後退しながらも、自身の『スタンド』を操り陣形を整えようとしていた。

 

 バルカの『タンク!』が『鎖』を避けながら加持を取り囲む。

 

「全方位だぜ?突破できるかな?」

 

「できるかどうか、じゃない。やるんだよ」

 

「かぁっこいい!だがもう終わりなんだぜェーッ!?なぜならぁ!!」

 

 バルカが大きく後退する。

 

「これで終わりだからな」

 

 バルカは小さな黒い何かを加持に目掛けて投げつけた。

 

 それは3つのピンを抜かれた手榴弾。

 

「!!?」

 

「『タンク!』一斉攻撃ィィーーーッ!!」

 

 同時に飛んでくる、『タンク!』の攻撃。

 

「う、うおああああああああああ・・・!?」

 

 加持が悲鳴を上げながら仰反る。完全なる判断ミス!加持が自身の死を覚悟したその時だった。

 

 

 

『ゴールド・エクスペリエンス』

 

 

 

 加持の腰に巻いていたベルトが、『生命』を与えられて巨大な蛇と化す。蛇は加持の全身に素早く巻き付くと、スタンドの攻撃をその身で肩代わりして、その命を果たした。

 

(これは・・・ジョルノ君の!?)

 

 目の前には、バルカの投げつけた手榴弾が空中に留まっている。次の瞬間にでも、爆発するだろう。

 

(そうか・・・彼は俺に、勇気を与えてくれてるんだな)

 

 加持の顔に笑みが広がる。

 

(なら、俺は!!)

 

 加持の目の前で、手榴弾が光を放った。

 

「直撃!勝ったぁぁあああ!!」

 

 爆炎がシェルター内を覆い尽くす。バルカは既に開いていたリニアシューター行きの出口から脱出すると、『スタンド』を解除してジョルノ達の後を追い始めようとした。

 

 

 

 じゃらり、と右足に何かが絡まってくるまでは。

 

 

 

「・・・・・・は?」

 

 

 

 自身の足首に目を向ければ、この短時間で何度も見た、傷ひとつなくピカピカに輝いている『鎖』が飛び込んできた。

 

「な、なんで・・・・・・」

 

「ふぅーーーッ!やれやれ。参ったね、どうも。こんな鉄火場は久しぶりだ。大真面目に死ぬかと思った」

 

 爆煙を潜り抜けてきたのは加持リョウジ。

 

「『鎖』を巻きつけて防御!なんて行けるかなと思ったら、全然そんな事なかったな。おかげでお気に入りのワイシャツがぼろぼろだ」

 

 全身から血を流した加持リョウジが、姿を現した。

 

(ぜ、全然防げてね〜!防げてないのに、コイツは・・・・・・ッ!)

 

「なんで立って歩いてきてんだ!オメェはよぉーーーッ!!?」

 

「怯む、と思うのかい?これしきの事で、な」

 

 加持の右手から繋がった鎖が、再びジャラリと音を立てる。

 

「死ぬのは怖くない。今の俺は、『真実に立ち向かうため』に戦っている。あともうちょっとなんだ。セカンドインパクトの『真実』まで。だからな?」

 

 加持がゆっくりと鎖を巻き取っていく。その度に一歩ずつ近付いてくる傷だらけの加持に、その凄味に、バルカの心が恐れをなした。

 

「『タンク!』コイツを始末しろォォオオオ!!」

 

「悪いが、もう、俺の『勝ち』だ」

 

 バルカが『スタンド』を展開し、加持が勝利宣言を告げた瞬間だった。

 

「げぇッ!!?」

 

 

 

 バルカ・バナーナの全身が、『バラバラに砕けた』!

 

 

 

「なに、なにィィイイイイイイ!?な、何が起こって・・・」

 

「『アンチェイン・マイハート』は縛られない鎖だ。縛る代わりに相手をバラバラにして、鎖に引っ付けるスタンド。死にゃあしない。俺の鎖がくっ付いている限りはな」

 

 加持は鎖を振るい、バラバラになったバルカの体を思い切り地面に叩きつけた。

 

「ぐえ!?」

 

「本当はこのまま鎖を小さくすると、バラバラになった対象も小さくできるんだ。ポケットに仕舞えるくらいにな。まあ鎖が一本なんで、そんなに多くの荷物をポケットに入れられないのが難点だが・・・」

 

 加持は懐からタバコを取り出して火をつける。

 

「お前の死体一つくらいなら、持ち運ぶのは簡単だなぁ」

 

「や、やめろ!!テメェ!・・・あぶ!?」

 

 地面に叩きつけられたバルカの苦鳴。それを無視して、加持はタバコの煙を美味そうに吐き出した。

 

「お前さん、確かイタリア人とか言っていたよな。じゃあ俺も、わかりやすくイタリア語で会話してやろう」

 

 ブワッと、鎖が宙高く舞い上がった。

 

 

 

 

 

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ・・・・・・ッ!!!」

 

 

 

 

 

 地面に何度も叩きつけられたバルカと鎖が、ジャラジャラッ!と音を立てて加持のポケットの中に収まる。

 

「アリーヴェデルチ!(さよならだ)」

 

 バンッとポケットを叩き、ふらつく体を爪先立ちで耐えた加持は、ネクタイを緩めながらタバコを咥えて敵にウィンクを送った。

 

 そして、そのまま加持はその場に膝を付いた。

 

「あ〜〜〜・・・流石に無茶しすぎたか。こりゃあ、すぐにジョルノ君達を追っかけるのは無理そうだな」

 

 加持はタバコを思い切り吸い込むと、その場に座り込んで──、

 

「痛みはあるが、大丈夫だな。致命傷じゃない。後でこの傷はジョルノ君に治してもらうとして・・・・・・」

 

 吸い込んだ煙を勢いよく吐き出した。

 

「それじゃあ、今度は君達の番だぜ?シンジ君」

 

 

 

つづく




『アンチェイン・マイハート』は、ルックスもイケメンなマウンテン・ティムのスタンド『オー!ロンサム・ミー』をモデルにしています。バラバラになるのが自分か、他者か、の違いですね。ポケットに仕舞えるのは追加効果です
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