ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
「ダメです!あと一撃で、全ての装甲が突破されます!」
「あはははは〜・・・マジでどーしろっちゅーのよ。アスカもレイもいない状況で、このレベルの使徒を止められるわけないじゃない。誰かぁ〜?ビール持ってない?」
「現実逃避はやめたまえ、葛城三佐!!ダミープラグは!?」
「ダミープラグ搭載完了!」
「探査針、打ち込み終了!」
「コンタクト、スタート!」
途端、発令所に鳴り響く警告音。
「なに!?」
「パルス消失!ダミーを拒絶!だめです!エヴァ初号機、起動しません!」
「そんな・・・!」
「碇・・・」
「ああ、私を拒絶する気か・・・ダミーを、レイを受け入れないのか」
発令所の巨大なモニターに映し出された、異形の怪物の進撃。それを全く止める事ができず、目の前でついに最後の装甲が打ち破られたネルフの面々は絶望していた。
この状況を招いた要因。それはエヴァンゲリオン各パイロットの不在。それも、その理由はほぼサボタージュに近い。
状況は切羽詰まっている。なのに、我々は、人類は、こんなアホな理由で滅びるのか?
そんな虚無感が去来したスタッフ面々に対し、冬月副司令が檄を飛ばすが、その効果は言わずもがな。全くの効果なしであった。
(あーあ・・・それもこれも全部、碇司令のせいね〜・・・)
心の中で、力無く毒づくミサトであった。碇ゲンドウは見誤ったのだ。怒りに身を任せた碇シンジの行動力を。それを影から支えるジョルノ・ジョバァーナという男の規格外さを。
そして何より、恋愛や親愛を追い求める思春期の少女たちの思い切りの良さを。それらが齎す連鎖反応が導く結果を。
もちろん、コレをミサトの監督不行き届きと言えば、それまでだ。だが、根本的な原因を探るなら、それは碇ゲンドウの軽率な行動の数々に他ならない。
それを責める気力は、残念ながら今のミサトには無かったが。
巨大なモニターに、ジオフロントへ悠々と降りてくる使徒の姿が映し出される。それを止められる手札は、無い。
ここまでか。
発令所のほぼ全員が、諦めかけたその時だった。
「ごっめん!お待たせ!!」
「!!」
待ち望んだ声が、発令所に響いた。
「アスカぁ!!」
「ミサト、弐号機の準備は!?」
「あんたが来るのをずっと待ってたのよ!?準備万端!!」
「Danke!すぐにケージに向かうわ!」
「待ってアスカ!レイと、シンジ君は!?」
「今はジョバァーナが治療中!撃たれたのよ!『ゼーレ』とかいう、よくわかんない連中にね!」
「「!!?」」
アスカのその言葉に、過剰に反応したのは二人。
碇ゲンドウと、冬月コウゾウ。
だがその二人の困惑をよそに、事態は加速度的に進んでいく。
「オッケー!どこのバカかはわからないけれど、その落とし前は後でつけるわ!ジョルノが治療してるって事は、『大丈夫』って事よね!?」
「ええ!だけど、かなりの重症だからすぐには動けない!だからアタシだけ先に来たってワケ!」
「ナイス判断よ、アスカ!まずは弐号機でもって、あのふざけた使徒の足止めをお願い!」
「ラジャー!まっかせといて!」
アスカはミサトの司令を受け取ると一目散に走り出した。これで、ネルフ存亡の危機はまだ回避できる状態となった。
「弐号機出現位置に合わせて、ありったけの武器を出して!なんでもいいから、エヴァ出動に先んじて!早く!」
ミサトの指示に、発令所の空気が熱を帯びていく。まだ諦めない。そのための、チルドレンだからだ。
ネルフ発令所内に、『勝利』の二文字が伝染していく。
だが、
「どうする?碇」
冬月が静かにゲンドウに問う。
「ゼーレが動き出すとは、予想外だぞ」
「・・・・・・冬月」
ゲンドウは低い声で、自身の共犯者の名を呼ぶと、
「少し、頼む」
この場を後にした。
(碇!許容範囲を超えたか・・・!)
共犯者である冬月は悪態を吐きたくなる自分を、必死に宥めていた。
◇
『ゴールド・エクスペリエンス!!』
僕は今、必死になりながら綾波さんとシンジ君の傷を塞いでいる。小さいとは言え、装甲車の銃撃を受けた傷跡はただならぬ状態だった。リニアシューターでネルフ本部まで戻っては来れたが、二人は重傷だ。決して予断を許さない。
綾波さんの右足の傷が全て塞がった。だが、痛みは残る。それが治るまでは、綾波さんを動かすわけにはいかない。
「じ、ジョルノ君・・・」
「大丈夫だ。二人とも、傷自体はすでに僕の『スタンド』で塞いだ。痛みが引いたら走るぞ、二人とも。ラングレー一人では少し心許ない」
「わかってる。アスカ一人に戦わせておけない。僕も一緒に戦うんだ」
よし、シンジ君の精神的コンディションは万全のようだな。残るは綾波さんだが、
「碇くんは、どうやってエヴァに乗るの?パイロットの記録、消されてしまったのでしょう?」
「それはもちろん」
僕とシンジ君の顔に、悪い笑みが浮かんだ。
「「無理やり、さ」」
◇
「どおりゃああああああああああ・・・!!」
ジオフロントに展開された弐号機。それの手にしたパレットライフルが火を吹く。
極大の銃弾は、第14の使徒に向かって飛んでいく。既にATフィールドは中和され、全ての弾丸が使徒に命中するが・・・、
「くっそ!硬い!!」
全て使徒の甲皮によって弾かれた。
アスカは手にしていたパレットライフルを放り捨てると、そばに置いておいたバズーカ砲を手にとって攻撃を再開した。
しかし、その攻撃が効いている様子はない。それどころか──、
「な、何あれ!?」
『まさか、ATフィールド!?しかもあんなに分厚いのを何枚も重ねて・・・・・・』
「ATフィールドは中和してるハズなのにぃッ!!」
『使徒のATフィールドが強すぎる!中和しきれてないんだわ!』
「だったら直接ぅ・・・ッ!!」
アスカは弐号機の武器を手近にあったスマッシュホークに持ち替えると、地面に屈んだ。弐号機の太ももがギリギリと弓のように引き絞られ、
「オラァッ!!」
裂帛の気合いと共に、地面が爆ぜる。弐号機の脚力は、アスカを瞬時に使徒の目前まで運んだ。
「くらえええええッ!!」
弐号機の手にした大斧が振り下ろされる。それを阻んだのは、またしても使徒の持つ強固なATフィールド。
「ちぃ!?」
アスカの舌打ち。それは攻撃を止められた事に起因して発したものではない。
「な!押し返、されてッ!?」
使徒のATフィールドは大斧を受け止めたまま、まるで巨大な盾のバッシュのように弐号機を弾き飛ばした。
「くうッ!」
弐号機が地面に着地すると同時、使徒もまたジオフロントの大地に降り立った。
「うおおおおおおおおおお・・・!!」
アスカは雄叫びを上げながら、使徒に向かって突進した。しかし、頭上に微かな気配。
「!?」
アスカは己の直感に従って、弐号機を真横に跳ばした。瞬間、弐号機のいた場所に使徒のATフィールドが、まるで巨大な鉄槌のように振り下ろされる。
ジオフロントの大地が震えた。
「な、なに!コイツ、ATフィールドで攻撃してきた!?」
アスカの驚愕を嘲笑うかのように、
「!?」
使徒の目が光った。弐号機が、巨大な光線に飲み込まれる。
「きゃあああああああああ・・・・・・!」
吹き飛ばされていく弐号機が、十字状の爆炎に飲み込まれた。
『アスカァァアア!!』
ミサトの悲鳴が通信に響き渡った。
「なるほど、ね。やっとわかったわ・・・ATフィールドの使い方・・・・・・」
爆炎が晴れればそこには、無傷の弐号機が大地に立っていた。
「良いお手本を見せてくれて、Danke。お陰でアタシはまた一つ強くなったわ」
弐号機が右手を思い切り振り下ろす。途端、使徒の巨大なATフィールドに勝るとも劣らないアスカのATフィールドが、使徒を思い切り叩き付けて吹き飛ばしていた。
『え・・・・・・ええ!?アスカ、何よ今の!?』
「ATフィールドは攻撃に転用できる・・・それは第10の使徒の時には既にわかっていた。けれど、その実際の使い方ってのがわかんなかったわ。でも・・・・・・」
アスカの頬が、ぎりりと持ち上がる。それは獲物を見つけた肉食獣の笑みであった。
「要は気合いよ。ATフィールドは今までも出せてたんだから、一回覚えれば簡単。後はできて当然と思う事ね。空気を吸って吐くことのように。HBの鉛筆をベキッ!とへし折る事と同じように・・・・・・」
弐号機の右足が一歩を踏み出す。左足に体重を預け、上半身はだらりと力を抜きながらも、その眼光は敵を睨みつけている。
ドォォーーン!と、アスカの鼓動が大きく脈打った。
「大切なのは『認識』する事よ、ミサト。ATフィールドを操るという事は、できて当然と思う精神力なのよ」
『な、何よそのポーズ!ちょっとカッコいいじゃない!!』
ドドドドドドドド・・・・・・とジオフロント内の空気がうねりを上げていく!立ち上がってきた使徒と弐号機が、真正面から対峙した!
「やっつけてあげるわ、使徒」
つづく