ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】 作:サルオ
(わかる・・・・・・感じる。このATフィールドの暖かさ。これは、きっと・・・・・・)
弐号機の拳のラッシュが、目の前の使徒に叩き込まれていく。使徒は重厚なATフィールドでそれを防いでいるが、その絶対領域の障壁に、少しずつヒビが入っていく。
(今はまだ、ママの声は聞こえない。でもこの温もりは、きっとママのものだわ・・・)
ヒビが入っていた使徒のATフィールドが、バリィンと音を立てて割れた。
(ありがとう、ママ。ここに居たのね?いつもアタシを、守ってくれていたのね。今は、それがとても嬉しい・・・・・・)
使徒はたまらず後退しようとしたが、その顔を無理やり弐号機に掴まれて動きを封じられた。
(ママ、また、会いに来るから。その時まで、待っていてね。今度こそアタシ、ママを見つけるから・・・・・・)
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァアアッ!!」
ATフィールドを纏った拳が、使徒をめった打ちにしていく。甲皮が割れ、頭部にヒビが入り、その体躯がボロボロと崩れ落ちていく。
『やった!やったわ!アスカ!そのまま仕留めちゃって!!』
興奮したミサトの声が通信を流れる。
「言われ!なく、てもォォオオオ!!」
弐号機の拳のラッシュが、使徒のコアに集中する。使徒は咄嗟にコアを強力な外皮で覆い被せたが、その上に容赦なく叩き込まれていく弐号機の拳!
「これで、おしま、いいィィイイイイ!!」
弐号機の拳が、コアを守っていた外皮を貫いた瞬間、
ばさり、と。
使徒の体が、まるで黒い布のようにバラけた。
「ッ!?な、何!?」
目の前で形状を変化させた使徒に警戒したアスカは、咄嗟に使徒から距離を取った。
「なにコイツ!?気持ち悪い!ウネウネしてクラゲみたい!」
『使徒の形状が変わった!?コアは!?』
「チィッ!あの胸の真ん中にある奴でしょーねッ。まんまと騙されたってわけ、か」
アスカは弐号機をさらに後退させて、腰に拳をためて構えた。まずは様子見、弐号機のATフィールドで一当てしてから──、
「!!?」
そう考えていた矢先に飛んでくるのは使徒のATフィールド。ただし、『四方八方から飛んでくる、巨大な鉄槌の連撃』であった。
「〜〜〜ッ!?」
アスカは弐号機のATフィールドで応戦する。だが、多勢に無勢。使徒のATフィールドの数は、アスカの張れるATフィールドの数を大きく上回っていた。
「こ、こん、のおッ!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ・・・・・・!!」
拳にATフィールドを纏って全ての攻撃を叩き落とすしかない。そう判断し、そう行動したアスカの一連の動きにミスは無かった。
だが、致命的であった。
使徒の棚引いていた触腕のいくつかが、しなって唸り、弐号機に迫る!それを迎撃する余裕は、弐号機にはない!
「うあ・・・・・・ッ!?」
ズバシュウッ!!
咄嗟に後退して距離を取ったアスカの右肩に走る、鋭い痛み。
肩口から吹き飛んだ弐号機の右腕が宙高く舞い、地底湖に音を立てて着水した。
弐号機の肩の傷から、大量の出血。
「ひ・・・あああああ・・・・・・うああああああああああああ!!?」
アスカの悲鳴が、ジオフロントに響いた。
◇
初号機のケージ。その上部にある管制室に、碇ゲンドウの姿はあった。
『ダミープラグ拒絶!ダメです!反応ありません!』
警告音が鳴り響くなか、ゲンドウの顔に焦りの色が表れる。
「続けろ!もう一度108からやり直せ!・・・・・・くそ!」
ゲンドウは苛立ち、気がつけば拳をコンソールに叩き付けていた。
「なぜだ!なぜレイを、ダミープラグを!私を・・・拒絶するのだ!!」
(何を考えている、ユイ!!)
自身の最愛の妻、碇ユイ。その魂が宿った初号機を、焦りと緊張で見守るゲンドウ。
そのゲンドウに返ってきた答えは──、
「な、なんだと・・・・・・!?」
管制室の全てのモニターに映る「碇シンジ」の姿。
これが、これが妻の求めるものだというのか。
ゲンドウの胸中に、ドス黒い感情が生まれてくる。
臓腑が煮えくり返る。
怒りで、どうにかなりそうだ。
それだというのに。
『お、シンジ君。初号機のところ、見てみろ。すでにエントリープラグの準備ができているみたいだぞ?』
『本当だ!ラッキーだったね!急ごう!アスカを助けなきゃ・・・!』
まるで能天気で間抜けとでも言うべき、自身の血を分けた実の子の声。
それが、悍ましいほどに耳障りだった。
「待て」
怒りを噛み殺し、ゲンドウはシンジとジョルノに声をかけた。二人は初号機の直上にある管制室を見上げる。いつかの景色の焼き直しのように、ゲンドウが上、二人が下、という構図が出来上がった。
『ッ!父さん!』
『おっと、碇司令か。そういや居たな、そんなのが』
ジョルノ・ジョバァーナの言にゲンドウの怒りの沸点が一気に上がる。それを必死に抑えて、ゲンドウは震える声で実の息子に問うた。
「なぜ、ここにいる」
『僕は・・・!』
シンジが、こちらを見上げて、毅然とした視線でゲンドウを射抜いた。
『エヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジだからです!』
その言葉に、その態度に、ゲンドウのドス黒い感情がどんどんと強くなっていく。
確かにこの状況。いま初号機を動かせるのは、自身の息子を置いて他にない。
だが、
「もうエヴァになど乗らない。そう言っていなかったか?自分の言葉に責任を持てない者の台詞ほど、くだらないものはない・・・」
怒りに震える唇からようやく漏れた問い。それをシンジは──、
『父さんの意見なんか関係ないんだ。僕は自分の意志で、乗るべきときにエヴァに乗る。それはこれ以上の悲しみを生み出さないためだ。あんな奴らの為に、誰かの涙はもう見たくない。みんなに笑顔でいて欲しいんだ。だから・・・・・・』
シンジは一呼吸溜めて、言い放った。
『見ててください。僕の、戦い』
そのたった一言が、ゲンドウの胸中をドス黒い殺気で満たし、同時に、シンジの初号機搭乗を決断させた。
──やれるものならやってみろ。
ゲンドウの子供の如き、癇癪の爆発であった。
◇
弐号機が右肩を抑えてうずくまる。それを悠々とした面持ちで見下す第14の使徒。
それに対し、アスカは怒りの眼差しを向けていた。
「くぅう・・・こん!ちくしょォォオオオ!」
『アスカ!?』
弐号機が無謀にも突貫を仕掛ける。それを迎え撃つように、使徒の触腕が再び棚引いた瞬間だった。
「待って」
ジオフロントのリフトを使い、上がってきたのは左腕を負傷した零号機。
その右手には、N²爆雷が握られていた。
「な!?ファースト!」
「逃げて、アスカ」
レイが爆雷を抱えて使徒に向けて走り出す!
『自爆する気!?』
リツコの悲鳴が流れる。零号機は手にしたN²爆雷を、使徒に向けて突き出した!
しかし、それを阻むのは使徒の強力なATフィールド!
「く・・・ううう・・・!!」
レイが必死にATフィールドを破ろうと抵抗する。しかし、零号機のATフィールドを全開にしても、使徒のATフィールドを破るには至らない。
「だめ・・・・・・わたしの、ATフィールドだけじゃあ・・・!」
「レイッ!!」
N²爆雷を握る零号機の右手に、負傷した弐号機の左手が重なった。
「行くわよ!合わせなさいよね!レイ!」
「アスカ・・・・・・!わかったわ」
「「はあああああーーーっ!!!!」」
二体のエヴァのATフィールドがシンクロし、巨大なドリルとなって、使徒のATフィールドを穿つ。しかし、それを黙って見ているだけの使徒でもなかった。10を超える触腕のそれぞれが、再び刃物の強度を持って棚引き始める。
『アスカ!レイ!敵の攻撃が来るわ!避けて!!』
「だめ。今この場で、使徒は倒さなきゃ」
「アタシたちを信じなさいよ、ミサトォォ!!」
二体のエヴァが吼える!使徒の触腕ごと、巨大化したATフィールドのドリルが巻き込んでいく!触腕を取り込まれた使徒は逃げることができない!
「「はああああああああああああッ!!」」
そして、とうとう、ATフィールドのドリルは使徒の身体を貫いていた!
不協和音のような使徒の叫び声が響き渡る。
「今よ!レイ!」
「これで、さようなら」
零号機が使徒の抉られてできた傷口に、N²爆雷を押し込んだ。
爆炎が、ジオフロントを包み込んだ。
つづく