ミサト「あなたが碇シンジ君ね?」ジョルノ「いえ、違います」【完結】   作:サルオ

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「シンジ君のサルベージ計画の要綱。たったひと月でできるなんてさすが先輩ですね!」

 

「残念ながら原案は私じゃないわ。10年前に実験済みのデータなのよ」

 

 カタカタとキーボードを叩く音が部屋に響く。マヤとリツコは端末に向かいながら、シンジのサルベージ計画要綱の仕上げに入っていた。

 

「同じようなことがあったんですか?エヴァの開発中に・・・」

 

「まだ私がここに入る前の出来事よ。私の母が立ち会ったらしいけれど」

 

「先輩のお母さんて、あのMAGIシステムを開発した赤木ナオコ博士ですよね!・・・その時の実験はどうだったんです?」

 

「失敗よ」

 

「え・・・」

 

「失敗したのよ。そして──」

 

 リツコは静かに、僅かに虚空を睨んだ。

 

「碇司令が変わってしまったのはたぶん、そのときからよ」

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 あれから、どれくらい経っただろう。

 

 僕は、いつまでここにいるのかな。

 

 この海の底のような場所で、僕はずっと漂っているだけだ。

 

 恐怖はない。むしろ、どこか心地良い空間だと僕は思っている。

 

 魚の群れが僕を避けながら通り過ぎていく。

 

 その影の向こうに、いつの間にか誰かが立っていた。

 

「だれ?」

 

 僕はその人に問いかけた。でもその人は、薄く微笑んだままで・・・。

 

「母さん?」

 

 僕のその言葉に、

 

《おいで、シンジ》

 

 その女性は、手を広げて答えてくれた。

 

《大きくなったわね、シンジ。すっかり大人びて》

 

 やっぱり、この人は母さんだ。

 

 エヴァの中で眠っていた、母さん。

 

「母さん。急に居なくなって悲しかったよ。なぜ帰ってこなかったの?」

 

 僕の中で生まれた、懐かしい感情。親に甘えていたかったという、子供のような心が顔を覗かせた。

 

《ここにずっといたわ。ここであなたを待っていたの》

 

 母さんが、ゆっくりと僕に近付いてくる。

 

《あなたがここに来るのはわかってた。もう何も心配いらないわ。これからはずっと、母さんと一緒よ、シンジ》

 

 そう言って、母さんは僕を抱きしめてくれた。

 

 暖かい。ああ、母さんに抱きしめてもらえるのはいつぶりだろう。

 

 でも、と思う。

 

「でも、僕は、戻らなくちゃ。エヴァに乗って、敵と戦わなきゃならない。戦って、勝たなきゃ・・・・・・」

 

《いいえ》

 

 僕の心の奥底に眠っていた義務感。それを母さんは優しく遮った。

 

《あなたは十分がんばったわ。みんなのために十分戦って傷付いてきた。身も心もボロボロのはずよ》

 

 母さんが優しく僕の頬を撫でる。

 

《だから、もう・・・》

 

 優しい母さんの声音が心地良くて、睡魔を誘う。

 

《ずっとここにいていいのよ、シンジ》

 

 僕は母さんの温もりを感じながら、ゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたぞ、シンジ君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は・・・ッ!」

 

 突如として聞こえてきたその声に、僕の脳は一気に覚醒した。

 

 僕が目を開けると、そこには──、

 

「う、わああああああああああ!?」

 

 母さんではない『なにか』が、僕を抱きしめていた。

 

《どうしたの?私と一つになりたいのでしょう?》

 

 まさかこれは、エヴァなのか?この怪物が!?

 

「嫌だ!」

 

《痛みも悲しみも感じない世界へ、永遠の世界へ行きましょう・・・!》

 

「やめろ、離せ!」

 

 僕は必死に暴れるけど、エヴァは僕を掴んで離さない!

 

「お前は母さんじゃない!嫌だ!ここは嫌だ!」

 

 誰か、助けて───ッ!!

 

 僕がそう念じた瞬間、

 

 とても爽やかな、黄金の風が吹いた気がした。

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 

『全探査針、打ち込み終了』

 

『電磁波形、ゼロマイナス3で固定されています』

 

「自我境界パルス、接続完了!」

 

 マヤのその言葉と共に、シンジのサルベージ計画の準備が完了した。初号機のケージ内の様子が第二発令所のメインモニターに大きく映し出され、作業の様子を中継している。

 

「了解」

 

 マヤの報告に頷いたのはリツコ。その横にいるミサトも、画面を心配そうに見つめている。

 

「サルベージ、スタート!」

 

 リツコの号令と共に、発令所内が慌ただしく動き始めた。

 

「了解、第1信号を送ります!」

「エヴァ、信号を受信。拒絶反応無し!」

「続けて、第2、第3信号送信開始!」

「対象カテクシス異常無し!」

「デストルドー、認められません」

 

「了解、対象をステージ2へ移行」

 

 各オペレーターからの報告を受けて、リツコが次の段階へのゴーサインを出した。その横で、ミサトは──、

 

(シンジ君・・・・・・ジョルノ・・・!)

 

 胸元にかけていたクロスのネックレスを握りしめていた。

 

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 

《うぐ・・・・・・誰、だ!ワタシの邪魔をするのは・・・!》

 

「ふぅー・・・・・・。ようやくだ。ようやく君を見つけられてホッと一息、といったところだったが、何やら厄介な輩に絡まれてるみたいじゃあないか。シンジ君」

 

「ジョ、ジョルノ君ッ!!」

 

「君も僕も今は肉体を失った『魂』の状態みたいだが、『コイツ』の『魂』、と言うべきか?随分と無機質な、生物とはまた違った感触だ。これがエヴァの『魂』ってんなら少し気に入らない。少なくとも僕の知ってる『碇ユイ』さんのものとは全くの別物だからな」

 

《キサマ・・・この手を放せ!》

 

「放すと思うのか?やっとシンジ君を見つけたんだ。何やらシンジ君と意味深なおままごとをやっていたみたいだが、こっから先は──」

 

 僕の目の前で、ジョルノ君の横に見たこともない姿の人物が現れる。それは金色の力あるヴィジョンというべきなのか、力強い生命の塊のようでいて、

 

「──僕が相手をしてやる」

 

《グガァァアアアアアアアアアア!!》

 

 目の前の怪物が、ジョルノ君の手を振り払い、怒りの咆哮を上げながらジョルノ君に踊りかかった。だけどジョルノ君は、涼しい顔で敵を睨みつけるだけで、

 

《ヴォォオオオオオアアアオオオオオオッ!!》

 

『無駄無駄無駄無駄無駄ァァアアアア!』

 

 そのジョルノ君のそばに立つ守護精霊が、エヴァの『魂』を迎え撃った。

 

「シンジ君!!」

 

 !!

 

「ここは僕に任せて先に行け!この『先』だ!『碇ユイ』さんは、この『先』で君を待っている!」

 

「・・・!?そんな!ジョルノ君は!?」

 

「僕はコイツと少し遊んでから行く!」

 

「で、でも!」

 

「大丈夫!行くんだ!シンジ君!行けッ!」

 

 僕はジョルノ君の言葉に押されるようにして背後に振り返る。その先に、今まで海の底だと思っていたこの世界に、光が差していた。

 

 僕はその光に向かって、懸命に走り出していた。

 

 

 ◇

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァアアアア!!」

 

《ヴォォオオオオオアアアッ!!》

 

 ちぃ!このスタンド、じゃなかった。エヴァの魂か。ラッシュの速さ比べとはな。まさか僕やシンジ君との戦いの記憶でも持っているのか?

 

 まるで僕の『ゴールド・エクスペリエンス』と同じ軌道で、両者の拳が空中でぶつかり合う!

 

「そーゆーところが、なんとなくだが気に入らないな。あと二つ、お前には気に入らない点があるんだが」

 

 飛んでくるエヴァの拳を掴み取り、思い切り引き寄せた僕とエヴァの立ち位置が勢いよく入れ替わる。これ以上、シンジ君を追わせるわけにはいかないからな。

 

 僕はエヴァの行方を遮るようにして構えた。

 

「一つはお前の見た目だな。『ボスのスタンド』と、どことなくだがお前の姿が似ているのが気に入らない。それと──」

 

 

 

 僕は目の前で肩を怒らせて立つ怪物に向かって言い放った。

 

 

 

「お前も、なのか。『綾波さん』の魂と似た波長を感じる。だとしたら、ネルフってのはどこまでクズなんだ。そーゆーところがまた気に入らないな」

 

 

 

 さて、と。

 

 シンジ君。僕はこの『世界』で、君の過去を色々と見てきた。本当に、君は僕にそっくりな人生を歩んでいたんだな。きっと僕が『あの人』に会っていなかったなら、同じ運命を辿っていたと心から思うよ。

 

 そして、その上で、だ。君にも僕のことを知って欲しい。

 

 この『世界』で僕の過去を見て、君は何を感じ、どう行動するのか。それを僕に示して欲しい。

 

 いろいろと遠回りをしてきたが。

 

「一番の近道は『遠回り』だった。『遠回り』こそが僕らの最短の道だったな」

 

 今ここで、この『魂』の世界で、僕らの道は再び重なり合うッ!!

 

 

 

つづく

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