牧師でハッカーで転生者な>>1   作:星茸

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無印編完と言ったな、あれは嘘だ。(時間軸的にまだ無印期間/Maha弐番開店前のため)


◇追跡!牧師さん

昼時のMaha壱番屋。

ボックス席についているいつもの面子(主人公勢)を背景にカウンター席でもくもくとカレーを食べていた八神が、ふと思い出したように顔を上げ声をかけた。

 

「……あ、そうだ。火野、暇なら付き合え」

 

「あ?」

 

ガタタッ!とボックス席とバックヤードから音が鳴るが、気にせず空になったグラスを差し出し飲み物のおかわりを要求する八神。

火野も一瞬音の方へ視線を向けたが、特にツッコむことなく空いたグラスへラッシーを注ぐ。

 

「ずいぶん急だなお前……まあ、いいけどよ。この後でいいか?」

 

「オッケー、じゃあとりあえずうちに来てくれ」

 

「おう」

 

そのまま会話を終えて自身のやることへと戻っていく二人。

 

……その背後でヒソヒソと話し合いが行われていたことはスルーして、さっさと食べ終わった八神は支払いを済ませて店を出る。

それに少し遅れて、早上がりした火野もマハ・ジャラマと一言二言言葉を交わして外へと向かうのだった。

 

 

 

 

「……やっぱり怪しいわよあの二人!」

 

「そもそもどういう関係なんだぁ?」

 

「前の時は聞けなかったけど、ちゃんと確認しておくべきだと思うわ」

 

「というか何するつもりなんだ……?」

 

ヒソヒソとボックス席の隅に集まり話し合う小学生たち。

見た目だけならワルい大人と穏やか牧師さんという謎の組み合わせは、子供たちの興味を存分に引いているようだった。

 

「よし、じゃあこのままヒノケンを追いかけて……」

 

「私たちも行くわよ!」

 

……前言撤回、子供だけではなく大人の興味も引いたらしい。作戦会議中のボックス席へ身を乗り出し、名乗りを上げるまどいとエレキ伯爵。

 

そしてここに、怪しい二人の正体を探るため異色の混成チームが結成される。

 

ちなみに、マハは厨房のカレー鍋から目を離さず「遅くなるなら連絡するように」と放置を決め込んでいた。

 

 

 

「ところでさっきヒノケンと何話してたのよ」

 

「ああ、“今日は泊まりになるから夕飯はいらない”と」

 

「泊まりになるから!?」

 

「アイツらほんとに何スんだ!?」

 

 

 

 

 

秋原郊外の丘の上に建つ、それほど大きくもない教会。

閑静を通り越して閑古鳥の鳴いているような人気のなさは、秘め事にはもってこいと言えるだろう。

 

迷いなく教会の敷地へと入っていった火野を確認して、気付かれないように間を開けてその後を追う……が。

 

「あれ? 居ない?」

 

「教会の方……は、鍵かかってるわね」

 

「いったいどこに……」

 

見つからないように距離を開けすぎたせいか、姿を見失ってしまった。

それほど遠くにはいってないはず、と周囲を探れば、表からは見えない場所に居住エリアがあることに気付く。

 

「ま、こっちも鍵はかかってるんだけど」

 

「この程度の電子ロックなんぞお茶の子さいさいネ!」

 

そう言って玄関ドアに設置された電子パネルの端子へと躊躇いなくPETのプラグを差し込むWWWコンビ。その後ろで小学生たちは引いていた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

玄関の施錠プログラムへとプラグインされたカラードマンとエレキマン。

電脳空間のパネルへと降り立った瞬間、カラードマンが首を傾げた。

 

「……ん? んん~?」

 

『カラードマン? どうかしたの?』

 

「うーん、なーんか違和感があるんだよねぇ。ねえねえ、エレキマンはどう思う?」

 

「確かに……この空間、電子錠のプログラムにしては……」

 

「“何も無さすぎる”、でしょうか?」

 

背後から聞こえた第三者の声に、二人は跳ねるように飛びずさって身構える。

そこに立っていたのは、いつぞやネットシティで遭遇したシスター型のナビ。

 

「ごきげんよう、皆様方。たいしたおもてなしも出来ませんが、せっかくいらしたのですし……少々お付き合い頂きますね」

 

カーテシーと共に光輪を展開し笑っているそれに、彼らは警戒心を上げて身構えた。

 

 

 

 

 

エリア内を縦横無尽に跳ね回るボールと、その隙間を縫うように落ちる電撃。

それをギリギリで躱しながらセレストは連続で光輪を投げつけるが、大した損害を与えるには至らない。

 

「へっへーん、そんなの効かないもんね! そーれ、〈フレイムタワー〉、〈アクアタワー〉!」

 

お返しとばかりに乱立する炎と水のタワーが迫り、逃げ場を奪っていく。

その後ろでは帯電しチャージしているエレキマンの姿が見えた。このままでは直撃ルート確定だろうか。

 

『突破、炎側! 〈バブルショット〉、スロットイン!』

 

声に従いチップデータを展開した腕を〈フレイムタワー〉のひとつへ向け、放つ。

衝突した泡と炎が打ち消し合いポリゴンと化すのを待たず、その中を〈ダッシュコンドル〉で呼び出したヘルコンドルに乗って突っ切り包囲を脱出した。

 

「逃さん! 〈ライトニングブレス〉!」

 

「くぅ……っ!」

 

逃れた先へと的確に放たれる電撃。

それが当たる直前にヘルコンドルから飛び降りたことで直撃は避けたものの、完全に躱し切る事はできず痺れた身体が床パネルを転がる。

 

『……まずは片方、落とすぞ』

 

その言葉と共に送られたバトルチップ3()()を確認し、八神の狙いを把握したセレストはそのまま床パネルを叩いてデータを展開した。

 

「〈クサムラライン〉、〈バッドスパイス〉……!」

 

ぶわ、と緑の光がセレストの正面方向へと広がり、そこからわさわさと草が茂っていく。

その合間からぴょこぴょこと覗いたチャマッシュたちが、ぼふ、ぼふん!と次々に胞子を解き放つ。

 

「なっ……クソッ、この程度……!」

 

「はわー、へろへろ~……」

 

『しっかり、カラードマン! そんなのクサムラごと燃やしちゃいなさい!』

 

「おっけーまどい~、〈フレイムタ わ゙ぁ゙ーーーーーーーッ!!?!?」

 

「ぬおわーーーーっ!!?」

 

『カラードマーーーーン!!?』

 

『NOーーーーッ! エレキマンも巻き添えにーーーーーっ!!!』

 

カラードマンが〈フレイムタワー〉を発動しようと腕を振るった瞬間、カチ、という音と共に立ち上った炎が彼ごと周囲を飲み込んだ。

 

「ふふ……クサムラでは〈カキゲンキン〉、ですよ。燃え広がったら大変ですからね」

 

「ぷしゅ〜……」

 

〈カキゲンキン〉の中心、かつクサムラパネルを焼き払うためにそこに立っていたカラードマンは、ダメージ超過による強制ログアウトのエフェクトを散らし消えていく。

チャマッシュの胞子を避けるためクサムラから距離をとっていたエレキマンも少なくないダメージを負っているが、まだやれるとでも言うかのようにバチバチと帯電し相手を睨みつけていた。

 

『おのれ謎シスター! ココからはカラードマンの弔い合戦ダ! エレキマン、GO!!!』

 

「承知!」

 

『ちょっと、まだ死んでないわよ!』

 

連続して放たれる電撃。

その全ては躱しきることはできず、避けられないダメージを〈サンクチュアリ〉で展開したホーリーパネルで凌ぐものの、ジリジリと追い詰められていることに変わりはない。

 

「トドメだ! 〈落雷〉!!!」

 

『ッ、バトルチップ───!』

 

瞬間、電脳内に最大級の雷が落ちた。

閃光に目が眩み、ビリビリと空間が震え音を奪う。

それらが収まり、視覚と聴覚が戻ってくる中。

 

「……ダメ、ですよ……攻撃は、ちゃんと相手を見ないと、ね?」

 

落雷地点の中心。焼け焦げたセレストがふらり、と横にずれて、その背後に置かれていたものが姿を現す。

 

それは素朴な石造りで、つるりとした坊主頭が愛らしい──

 

「なぁっ……!?」

 

『OH! 〈オジゾウサン〉!? マズい、エレキマン!』

 

「ふふ……天罰からは、逃げられませんよ?」

 

雷に巻き込まれ焦げた〈オジゾウサン〉が、カッ!と目を見開いた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「普通に不法侵入はよくないと思う」

 

それから、現行犯で押さえた二人を正座で反省させて淡々と説教したり、いつの間にか教会内に招き入れられていた小学生たちにも無闇な尾行はよくないと注意をしたりして。

 

……ちなみに、まどいとエレキ伯爵がプラグインした電子錠のパネルはダミーであり、実際の鍵はアナログ式だけだったと聞いた二人が無駄骨にショックを受けていたのは別の話。

 

 

 

「改めて聞くんですけど、二人ってどういう関係なんですか!?」

 

ずい、と身を乗り出すように核心へとメイルが突っ込んできた。その後ろにいる彼らも興味しんしん、といった様子でこちらを見ている。

問われた二人……八神と火野はきょとんと思わず顔を見合せて、互いを指差しながら。

 

「「……昔馴染みの腐れ縁?」」

 

端的に、そう答えたのだった。

 

 

『……厳密には“小中9年間同級で最近再会した仲”ですね。まあ、学生時代の方は私が八神のナビになる前の話ですが』

 

『へぇー……ところでセレスト』

 

『はい、なんでしょう?』

 

『どうしてキミは、ヒートマンを撫でくりまわしてるの……?』

 

その問いには答えることなくニコ……と笑いながら、セレストはヒートマンの顎下(?)を擽る手を止めない。

 

……ヒートマンは撫でテクに抵抗できない猫のように伸びていた。

 

 

 

 

 

「……なあ、八神。お前の目、そんな色だったか? 昔はもっと蒼かった気が……」

 

「ん? ……ああ、まあ歳食ったら色ぐらい変わるだろ。色々あったしなぁ」

 

「そういうモン……か?」

 

そういうもんだろ、と火野を見上げる八神は、紫眼を細めて笑っている。




Q,結局何する予定だったの?
A,教会組の戦闘訓練。

勘違いされる昔馴染み二人とセレストにこねられるヒートマンが書きたかった特に理由の無いギャグ回です(確信)
あとはここまでちゃんとした戦闘がほぼなかった(だいたい制限付き)八神&セレストが全力だとどこまでやれるかのメモ的な。だからって二対一はやりすぎでは???

基本的にガンメタ+誘導+初見殺しの小手先タイプ。
耐えて弱点を暴いて罠に嵌めるのが基本戦術……というかこれ以外の勝ち筋が無さすぎる。
明確な弱点があったり単純で嵌めやすい相手は得意、適応力が高かったり純粋な実力差がありすぎる相手は苦手、というイメージ。
性能的な天敵はブルース、同率シャドーマン。早い、強い、近いの三点セットはマジで無理、との事。

ちなみに使っていたチップは対火属性用だったので八神が裏でヒーヒー言ってたのは秘密。カラードマンがいてよかった。
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