またおまけが生えたりするかはその時のネタ次第です……
時は少し戻り。
科学省、医療ブースのベッドの上に、八神の身体はあった。
コントロールX防衛戦を終えた数日後に連絡の取れなくなった八神は、科学省で待機していたセレストの案内により教会地下の一室で発見された。
その身体にはパルストランスミッションの機材が接続され、精神が電脳内にダイブしたままという姿であったが。
その身体を接続を維持したまま科学省へ運び込み、生命維持のための処置を施してしばらく。
リーガルタワー電脳への突入を前に、光祐一朗は八神のPET……まさか科学省にこれごと置いていっているとは思わなかった……を手に、セレストへと問いかける。
「本当に行くのかい?」
『ええ。八神の反応は間違いなくあのタワー内にあります。回収のためにも、私が行く必要がありますから』
「でも、きみは戦闘型では無いだろう。オペレートもなしに……」
『ふふ、ご安心を。私は“勝てずとも負けない”ネットナビ。それにオペレートなしの単独行動にも慣れていますから。事前の備えもありますしね』
備え……外付けのチップストレージを見せ笑うセレストの意思は変わらないらしい。
無理はしないように、と言葉をかけて、祐一朗は画面から姿を消したセレストを見送った。
◆◆◆◆◆◆
「〈バインドハイロゥ〉ッ……〈スプレッドガン〉!」
迫るウイルスたちを光輪で纏めて押しとどめ、その中心めがけて展開したチップデータをぶっぱなす。
周囲に視線を向ければ、各所でウイルスの群れと交戦するナビたちの姿が見える。
ウイルスの強さはそれほどでもないが、数の多さにどこも苦戦を強いられているようだ。
サンダーマンやジャンクマン、バブルマンなどの増援こそ来てはいるが、それにしても手数が足りていない。
「(ウイルスの数が多い……時間をかければ進めるでしょうが、その時間も惜しいこの時にこれは……)」
この状況では八神を探しに行く余裕もない。
どうしたものか、と攻撃を凌ぎながら考えるセレストの目が、僅かなデータの揺らぎを感知する。
「(あれは、何かがこっちに……)っ、皆様、下がってください!」
警告の声から一拍遅れて、ドォン!!!と音を立てて空間がぶち破られた。
爆風に巻き込まれたウイルスたち……と、避難が遅れたガッツマンたちがコロコロと床パネルを転がっていく。
もうもうと上がる煙状のパーティクルを割って現れたのは、深緑色の巨体。
ガン、とパネルを踏みしめ、ゆっくりと上体を持ち上げるそれが周囲を見渡す。
「ど……ドリームウイルスです……!」
「こんなものまで投入されているのか!」
唖然とするナビたちの中、いち早く立ち直ったサーチマンが〈スコープガン〉を構える。
〈ドリームオーラ〉の薄いポイントを探り、その点を正確に撃ち抜かんと引き金が絞られ……
「わーっ! 待った待った! 撃つのは勘弁!!!」
その影から現れた人影に、そこにいたナビたちのみならずモニター越しのオペレーターたちも目を剥いたのだった。
「『「『や……八神(さん/くん)!?』」』」 「ニンゲンプクかぁ!?」
突如現れたドリームウイルスと連れ立った八神に浮き足立つ中、無言で前に出るナビがひとり。
かつかつと足音を立てながらセレストは八神の前に立ち、その顔を見上げ、
「八神!!!」
「ヴッ」
「……は、腹パン……」
「痛そうでガッツ……」
「というか今の、人相手に振るっていい拳の威力なんでしょうか……」
後ろでこそこそと何か言われているが聞こえないふりをしながら、セレストは腹を押さえうずくまった八神を見下ろす。
「……まあ、五体満足ならいいでしょう。ご無事で何よりです、八神」
「……今のでだいぶダメージ受けてんだけどな……」
ダメージがそれなりに引いた頃、現状の説明を受けた八神。電脳内に拉致られて経過した期間を聞いて大声を出したのはご愛嬌である。
「……なるほど、あとはタワーのエネルギーコアを破壊すればいいわけだ」
『それで、八神くんはどうする? 一度パルスアウトするかい?』
「いえ、ディメンショナルエリアが展開されている状況で戻っても八神は役に立ちません。このままこちらの指揮をしていただく方が有意義かと」
「辛辣……でも事実なんで、俺もこのまま攻勢に加わります。
『……わかった、気をつけて』
ウインドウが消え、改めて前線に向き直る。
情報共有の間にも戦っていたナビたちの奮闘、そして空間越えの衝撃で先程よりは減ったとはいえ、まだ油断のならない数が残っている。
「さて……PETがないからチップでのサポートは出来ん。だが火力は周りにいくらでもある。……行けるな」
「当然。貴方も油断なされぬよう」
「言ってろ。……ドリームウイルス、〈ドリームビット〉展開! 攻勢支援!」
号令とともに解き放たれた小型ウイルスがそれぞれの方向へと飛び出し、タワーを防衛するウイルスたちへと襲いかかる。
周囲は突然の援軍に驚いたようだが、敵では無いことを認識するとそれらを利用するような立ち回りを始めた。
「……あれは……ガッツマン! 右三歩、前一歩……ああいや思ったより一歩でけぇな、半歩減らした正面を思いっきりぶん殴れ!」
「ぬ、ぬおおお!? 〈メガガッツパーンチ〉!!! ……ガス? なんか当たった?」
ガッツマンの拳が何も無い空間を殴ると同時、僅かにその眼前がブレる。
それに気付いたセレストが、何を言われるでもなく内部システムを起動した。
「サーチマン、同座標に3カウント後射撃! 3、2、1!」
「シュート!」
「……よし、開いた!」
サーチマンの弾丸がその揺らぎを撃ち抜き、空間に小さな“穴”が開く。
それをセレストの光輪が囲い、穴を広げながら座標を固定した。
「……“
「そのまま行け! ウイルスは多少無視して構わん!」
「ボクたちが抑えるですよ!」
「おさえるっぴゅ!」
迫るウイルスたちはアクアマンの〈スイドウカン〉から放たれた水流に押し流され、アイスマンの〈ブリザード〉で凍らされ動きを止める。
一も二もなく穴に飛び込むナビたちと、それを支援するため残るものたち。
それぞれが各々の役割を果たすため死力を尽くし、そして……
◇◇◇◇◇◇
未だ襲撃の跡が色濃く残る科学省の屋上、がたつく路面を車椅子で進みながら、八神は現実の空を見上げた。
随分と長く動かせなかったせいで若干筋力の落ちた身体を車椅子の座面に預け、空を走る流星群をぼんやりと見つめる。
「(とりあえず、これでネビュラの件は一通り解決。あとはデューオの試練を上手いこと凌げれば……これが一番難易度高ぇんだよなぁ……)」
視線をずらせば、いやでも目に付く巨大な彗星……その正体である“それ”のことを考えひとり頭を抱える八神。
どう関わるにしてもあちら側からの接触待ちなのがどうしようもない。なるようになれ、と言うにはあまりにも分が悪い。
「は~~~……ほんっっっっとうに、何とかなればいいなぁ……」
全てを投げ出した八神の手の中、ひとつのデータチップが淡い星明かりの下鈍く光る。
……そのデータの奥底。無数のプロテクトに覆われた
牧師さんの(体感では)短くて(現実時間的には)長い一日(どころでは無い)
ちなみに前話は牧師さんの(精神負荷的に)長くて(実際の時間は)短い一日(も経ってない)でした
Q,ところで電脳共感覚の不調はどうした?
A,アレは肉体側のストッパーが原因なので精神だけのパルストランスミッション状態だと割と平気(戻ったあとに来ることはある)
最後のフラグはドリームウイルス(のPET)に残っていたやつ。慌てて丁寧に封印して隔離しました。とりあえず現状は無害です。