「おーい! 熱斗ぉーっ!」
「良かった、お前たちも無事だったか!」
「ライカ、ディンゴ! ……と、八神さん? だ、大丈夫……?」
「…………、………………」
『……“船酔いとダブルパンチでヤバいけど大丈夫”だってよ』
「それ大丈夫じゃないと思うんだけど!?」
連絡船が入港した先で、熱斗とロックマン、トリルと再会した八神たち。
未だ見つからない炎山とメイルの情報を探しながら、彼らはこの村にしばらく滞在することとなる。
……そしてそんな彼らは今、何故か村の料理人パクチーと料理対決をしていた。
「……いや、ほんとになんでだよ」
思わずツッコミを入れる八神。
ちなみにそう言う彼の手元にあるのは料理対決で出されている二種類のカレーではなく、別に作られた野菜と魚介のスープである。
料理対決に負けたディンゴが肉を求めて飛び出していってしばらく。
夜になっても帰ってこないディンゴと姿の見えないトリルを探しに出た熱斗とライカ、そして保護者役の八神は、途中で大きな湖へと行き当たった。
足跡はその湖に向かうところで途切れており……厳密には、湖の近くで酷く踏み荒らされたようにかき消されていたのだが。ここから先の手がかりが途絶えてしまい、どうしたものかと湖のほとりからその水面を眺める三人。
「まさか、ここから湖に入ったわけではないだろうな……」
「肉を探して湖にぃ?」
「まあ、狩りをするために水辺を探すのは間違ってはいないだろうが……さすがに泳いで移動はしないんじゃないか? トリルも連れているようだし、トマホークマンも水中戦は無理だろうし」
PETの通信機能でディンゴに呼びかけてみるが応答はない。電波が届いていないのか、そもそも通信を切っているのか……
やっぱこっちから強制操作できるようにPETに仕込んでおくべきだったか……などと物騒なことを八神が考えている時だった。周囲を確認していたサーチマンが声をかける。
『……ライカ様。対岸に、城のような建造物が』
その言葉に顔を上げれば、微かにではあるが確かに対岸の方に星明かりとは異なる光が灯っている。
今は日が落ちて見えづらいが、おそらくディンゴらがここに来たであろう日中であればはっきりとその建物が見えただろう。
もしかして彼らはそこへ向かったのだろうか。そう考えた八神たちは、とりあえずは確認の為にとその城を目指し歩き出した。
湖の岸辺を回り込むように歩きようやく城の全貌が確認できる距離に入った彼らが、その係留所に付けられた木彫りの小舟にやはりディンゴらはここに来ているのではと確信を持ち始めた頃。
突然、城の一角……尖塔にあたる部分だろうか。そこで起きた爆発が夜の闇を照らす。
一体何がと考える間もなく、湖の方で一瞬揺らいだデータ流の乱れに八神が声を上げた。
「湖だ! 警戒しろ!」
「え、」
「ッ! サーチマン、トランスミッション!」
警告と同時に水面を割って現れたのは2本の魚雷。
迷いなくこちらへと飛んでくるそれらを、咄嗟に実体化させたサーチマンが撃ち落とす。
水中から姿を現したのは潜水艦型のネットナビ。
ダイブマン、と呼ばれたそれはこちらへの攻撃を止める様子はない。オペレーターがいるのでゾアノロイドではないようだが、敵対者であることは間違いないだろう。
その足止めをライカに任せ進む熱斗たちの前に、さらに湖から獣化ウイルスの群れが現れ襲いかかる。
「ロックマン.exe、トランスミッション! 八神さん、ここはオレたちが!」
「了解、気をつけろよ!」
正直なところ水辺で水属性相手の戦闘は避けたかった八神にとって、その申し出は非常にありがたいものだった。そのまま熱斗の横を走り抜け城内へ駆け込んだその背後で、空が禍々しい雲に覆われていく。
幸いと言っていいのか、そこから現れたゾアノダークマンに気付かれることなく八神は無事潜入を果たすのだった。
無駄に長く広い廊下を今出せる全速力で駆ける八神。
その行先、通路の曲がり角の向こうから飛んでくる獣化ウイルス……マリーナ種を元にしたそれらが立ち塞がった。
ヒートマンの苦手とする水属性ウイルスではあるが、こんな状況では敵の選り好みなどさせてもらえるわけもなく。仕方ないと懐からPETを取り出し、構える。
「ヒートマン.exe、トランスミッション!……バトルチップ〈ドールサンダー〉、スロットイン!」
ヒートマンを実体化させ、素早くPETのスロットにチップを挿入する。
藁束でできたカカシのようなそれの口から電撃が放たれ、正面のウイルスたちを打ち据えた。
薙ぎ払われ
……しかし、初めて入った広い城内。徘徊する獣化ウイルスのこともあり、ただ闇雲に進むだけでは目的の場所へたどり着くことは難しいだろう。下手をすれば先に八神の体力が尽きかねない。
「それにここ、妙に水属性ウイルスが多いんだよな……流石にこの数は厳しいか」
『湖の側でやり合うよりはマシだろうが、あんまり接敵はしたくねぇな。電気属性チップも無限にある訳じゃねえだろ』
「そうだな……」
物陰に隠れ、ウイルスたちをやり過ごす。エネルギー節約のためPETに戻したヒートマンは、行き交うウイルスの種類を見て心底嫌そうに顔を顰めている。
ここに入る前の状況を鑑みればおそらくはディンゴたちも戦闘中なのだろう。できれば早く合流したいところだが……
PET画面に目を落とす。そこに映された簡素なレーダースコープに表示されているのは3つの光点。
青、緑、黄の三色はそれぞれ熱斗、ライカ、ディンゴの持つPETの位置を示しているものだ。
通信の送受信機能を応用した位置情報探知プログラムだが、こういう時には役に立つ。その光点の位置から大まかな方向と距離を割り出し、八神は顔を上げた。
「方向はこっちで合ってる。距離も近いはずだが高さがな……最悪、壁ぶち抜いてお前だけ飛んで行ってもらうことになりそうだ。いいか?」
『おう。その方が手っ取り早いだろうな』
城の外壁でサーカスマンと対峙するトマホークマンが、ちらりと視線を向ける。
湖の方でも戦闘が始まっていることはこちらからでも視認できている。どうやら熱斗たちもこの城へ向かっていたようだ。
だが、彼らは
「〈ハッピークラップ〉!」
「ッ、しまっ……」
そうやって一瞬、相手から意識が逸れたのがいけなかった。
気付いた時には肥大化したサーカスマンの掌がすぐそこにまで迫っている。挟撃のかたちで迫るそれを躱すには判断が遅すぎた。
だったらせめてカウンターを打ち込んでやる、と構えるトマホークマン。その瞬間。
──ドゴォン、と城壁が壊れる音が響いた。
音と衝撃に驚いたのか、サーカスマンの手が一瞬止まる。
「〈センシャホウ〉!」
「フル゛ゥ゛ッ!?」
それに一拍遅れて、サーカスマンの横っ面に大口径の砲弾がめり込んだ。ダメージにより技がキャンセルされたのか掌が消える。
砲弾が飛んできた方を見れば、何階層か下の方で崩れた外壁の上から砲身をこちらへ向けているヒートマンの姿。
「トマホークマン! 無事か!」
「ヒートマン! 悪い、助かった!」
〈センシャホウ〉を解除して飛び上がり、トマホークマンの横に並び立つヒートマン。下に残された八神も、いつでも支援できるようチップを手に油断なく相手を見据えている。
さて仕切り直しと構え直したトマホークマンの背後、ディンゴらのいる屋根の上から光が天へと駆け上っていき……城の入口付近、ゾアノダークマンと対峙していたロックマンの方へ真っ直ぐに飛び込んでいった……
……その後。
トリルとアイリスの支援により、精神が安定したまま獣化したロックマンが獣化ゾアノダークマンを一蹴。協力者の敗北を見たダイブマンとサーカスマンのオペレーターはそそくさとダイブマンに乗り込み水中へと姿を消した。
ディンゴとトリル、そして攫われていたアイリスとも合流できた熱斗たち。
そんな彼らへ、アイリスは「ディメンショナルエリア研究所へ来てほしい」と願い出る。
トリルが造られた施設、そしてこのビヨンダードの異変におけるすべての始まりとも言えるその場所で、はたして何が待っているのだろうか。
準備のため、一度村へと戻る彼らの後ろ。
少女から自身へと向けられる警戒の気配を感じながら、八神はこの先のことを考えるのだった。
城壁は〈ドリルアーム〉でぶち抜いた。
原作本編と変わらないところを全部書くのもなぁ……という悩みどころさん。そういう時スレで誤魔化せた掲示板形式は偉大だった。ビヨンダードでは体調の問題で転生板に接続できないから仕方ないね。
次回、たぶん色々判明する……かも?()