牧師でハッカーで転生者な>>1   作:星茸

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◆裏シナリオは突然に

 

「おおおぉぉッ!!!」

 

「ヴァアッ!?!?? ヴ、ヴォォ……」

 

振り下ろされた獣化ロックマンの爪が、炎の防壁ごとフレイムマンを切り裂いた。

数歩よろめき地に伏せた巨体がエフェクトを散らしながら消える……超過ダメージによる強制プラグアウトだ。

 

「フレイムマン! クソッ、やりやがったな……」

 

「オラァッ! 〈トマホークスイング〉ッ!!!」

 

「〈ロールアロー〉!」

 

「げっ、どわぁーーーっ!」

 

そのことに一瞬気を取られたファイアマンを横から襲う猛撃。

吹き飛ばされながらも上手く威力を殺したのか一撃で強制プラグアウトにまでは至らなかったものの、そのダメージは大きくこのまま戦闘続行したとして勝ち目は薄いであろうことは明白であった。

 

 

……奴にちょっと頼まれて科学省に入り込み、ロックマンの足止めをするまでは上手くいっていた。

彼らの意識をこちらに向けるため多少科学省のセキュリティに侵入して扉をロックし閉じ込めたりはした……その過程でプラグインさせたフレイムマンの影響でちょっと空調がバグって気温が上がったりはしたが、おおむね想定通りにコトは運んでいたはずだ。

ただ偶然、その時の科学省にいつもの面子(秋原小組+ディンゴ)が遊びに来ており、状況を知って当然のようにロックマンへ加勢したために均衡は大幅に崩れ、慌ててプラグインしたファイアマンを加えても多勢に無勢なのは変わらずそのまま押し切られてしまったのだった。

 

 

そして今、ファイアマンはロックマンたちに囲まれ詰められていた。

 

『チッ……ファイアマン、プラグアウト──『見つけたぞヒノケン!!!』 ゲッ!? なんでここが 『問答無用! 確保ーッ!』 うおぉっ!?』

 

「ヒノケン様ァ!?」

 

一時撤退、とプラグアウトしようとした瞬間PET越しに聞こえる声。どうやら現実側(オペレーター)も見つかってしまったらしい。

やっぱり安請け合いはするもんじゃなかった、とふたり(オペナビ)がうっすらと後悔し始めた時。

 

突然、電脳空間が震える。

ビリビリと空気を震わせるような衝撃に、はっとナビたちが顔を上げた。

 

「な、なんだ……!?」

 

「今のって……この先から来てる?」

 

視線の先にあるのはキャッシュサーバーへと繋がる道。

つまりはそこで、何かが起きているのだろう。

 

──このプレッシャーを放つだけの何かが、()の向かった先で。

 

「ッ……ヒノケン様!」

 

『分かってる! おいヒートマン、そっちは──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……時は少し遡り。

一足先にキャッシュサーバーへ辿り着いたブルースとサーチマン。そこに現れたのは正体不明のナビとシャドーマンだった。

何のために現れたのか、それを問いただすため交戦を開始した彼らであったが、開幕早々分断されタイマン勝負を強いられる。

 

シャドーマンに張り付かれジリジリと距離が離されていくブルース。

それを支援しようにも横から飛んでくる拘束攻撃混じりの光輪を無視するわけにはいかず、サーチマンはそちらの処理に手を焼かされていた。

飛来する光輪をクレー射撃でもするかのように撃ち落としながら、サーチマンは冷静に戦況を分析する。

 

「(攻撃パターンはセレストと同様。こちら(狙撃手)相手にも徹底して中距離を維持しているあたり、()()()近接は不得手と見える)」

 

対象はこちらと一定の距離を保ちながら光輪を放つばかりで、それ以外に大きな攻撃を行う気配はない。しかし隙を見て撃ち込む攻撃も光輪の盾によりことごとく防がれている。

あのナビフレームの防御力が想定しているものと同質であるなら、一撃の火力が足りていない通常攻撃(〈スコープガン〉)だけでは千日手になるだろう。……かつて行った模擬戦で実際そうなったので。

 

ならばそれを補う手段を取るだけだ、と転送されたバトルチップを展開する。

転送されてきたのは3枚の〈メガキャノン〉。なるほど奴の防御性能を考えるなら、連続攻撃(バルカン系)よりも大きな一撃を撃ち込むこちらの方が効果的だ。

 

「プログラムアドバンス──〈ギガキャノン〉!」

 

両腕でまとめ上げた砲身を向け、集束したエネルギーを撃ち放つ。

真っ直ぐに飛ぶ砲弾が対象を捉え、着弾する──その瞬間、相手の姿がかき消えた。

 

視界の端、すぐ目の前に翻る紺色の何か。

 

「──〈フミコミザン〉」

 

匿名化ノイズの混じった声が静かに響く。

咄嗟に身を引けば、眼前を掠めるように切っ先が通り過ぎていった。

閃く〈ソード〉が僅かに身体を切り裂き、〈ギガキャノン〉の砲身が両断される。

 

同じ姿、同じ戦法。

記憶(メモリー)の中のセレストと差異のない戦法を繰り返されたことで、“あの型式のナビは近接攻撃は不得手である”という先入観を無意識のうちに植え付けられていたのだ。

“奴はこちらへ接近してくることはない”……その思考の隙をついた一撃に一瞬動揺したサーチマン。

 

「ぐっ……!」

 

『サーチマン!』

 

「問題、ありません。ダメージは軽微──」

 

懐にまで入り込まれて、そのダメージがこの程度で済んでいる……その事に違和感を覚え、はっと自身の内部フォルダを確認する。……その中にあったはずの物が無くなっていることに、サーチマンが声を上げた。

 

「ブルース! 奴らの狙いは“例のデータ片”だ!」

 

睨め付ける先、淡い金の刀身を携えた相手の手の中に浮かぶ黒い羽根状のデータ片が、ぐしゃり、と握りつぶされる。

 

 

 

ギィン、と赤いエネルギー刃の〈ソード〉と実体を持った〈ムラマサブレード〉が打ち合わされ、火花状のパーティクルが散る。

もう何度目かの鍔迫り合い。振り払うように薙いだ刃がまた残像しか捉えられていないことに舌打ちをして、ブルースは油断なく構え直した。

 

“狙いはデータ片である”という事が判明して以降、シャドーマンの動きは露骨にこちらの内蔵フォルダを狙ったものに変わっている。

目的を知られ開き直ったのか、それともわざとそう思わせているのか……どちらにせよそう易々と奪われるわけにはいかない。

 

背後から振り下ろされる刃(〈ヤミウチ〉)を前転するように躱して、振り返りざまに一歩踏み込もうと足に力を入れた瞬間。

 

鈍い音と共に、ブルースの背に何かが突き立てられる。

 

目の前には驚いたかのように目を見開いたシャドーマン。もうひとりの方も、サーチマンと対峙しているのが視界の端に映っている。

なら、何が……と思考を回す前に、接続部から何かを吸い上げられる感覚がブルースを襲った。

 

「ッが、ァ……!?」

 

「シャドーマン!」

 

「! 承知──」

 

ノイズ混じりの声に弾かれるようにシャドーマンが動く。

素早くブルースの背後、首筋に突き立てられた何かを断ち切り、その身体を抱えて飛び退る。

視線の先では、断ち切られて水圧で暴れ回るホースのようにのたくる配線のようなそれが、今まで無反応だった“塔”へと吸い込まれていく。……その先端に、黒い羽根のようなデータ片を巻き込んだまま。

 

 

 

データ片を取り込んだ“塔”が、低く唸りを上げる。

内部が組み替えられるように光が幾重にも走り、それが塔の中心、黒いパーツに覆われた球体部分へと収束していく。

 

少しの間続いたそれが収まり、一瞬の静寂。

 

【データ復旧率40%──《天眼(エグリゴリ)》プログラム再起動】

 

電子音によるアナウンスと共に“塔”は稼働を始める。

コアが点灯し、ゴウン、ゴウン、と低い音を響かせ塔を囲うようにリングが回り、その中を無数のデータ流が循環する。

 

その様子をただ呆けたように見上げていた彼らの耳に、突如警報音が響いた。

 

【……警告。周囲に異物を検知。防衛プログラム:NEPHILIM(ネフィリム)を起動】

 

ガコン、と中心部を覆うパーツが広がっていく。

その中から現れたのは、紺の外装に覆われたボディに、逆さまに生えた黒い翼をまるでスカートやヴェールのように纏った一体のネットナビ。

 

──ここにいる3人の脳裏には、かつてデューオの試練として立ち塞がった()()の姿が過ぎっただろう。

 

【──排除、開始】

 

ネフィリム、と呼ばれたそれが、ゆっくりと手を掲げる。

瞬間、展開される4つの光輪。

左右と頭上に配置された光輪がその中心にエネルギー光を集束させ、正面に展開された一回り大きな光輪へと注ぎ込み……それを銃身としてひとつの砲撃が撃ち出された。

 

迫る極太のエネルギー砲の前に、舌打ちをひとつして躍り出たひとつの影。

掲げた手の先に展開される5枚の光輪(シールド)が、その暴力的なまでの力の奔流を受け止めた。

 

1枚目、2枚目は砲撃に触れた瞬間にガラスの割れるような音を立て砕け散る。

3枚目はいっときそのエネルギーを押し返さんと耐えるものの、ぱき、ぱきり、と広がるヒビの前にそれは叶わず先の盾と同じ末路を辿った。

 

4枚目にかかる圧力に顔を歪めた彼が、盾を維持する手とは逆の手にひとつのプログラムを展開する。

 

「おい、お前ら! こっちだ、急げ!」

 

そんな彼らにかけられる声。振り返った先にいたのは、ジッポライターを模した装甲を持つ炎のナビ……ヒートマンだ。

何故こんなところに、と問う間もなく、シャドーマンに掴まれその場から引き離される。

 

そのままサーバー内の物陰へと投げ込まれる瞬間に見えたのは、ひび割れた盾へ向け何かを打ち出す(セレスト)の姿──

 

 

 

 

 

キャッシュサーバーへ駆け込んできたロックマンたちが最初に見たのは、サーバー内を埋め尽くすようにもうもうと立ち上る爆煙パーティクル。

その端に、崩れたサーバーブロックに隠れるように倒れ込んだブルースとサーチマン、そして同じように膝をつくシャドーマンと、盾になるように立ち塞がり〈バリア〉を展開していたヒートマンの姿だった。

 

「ブルース、サーチマン! え、ヒートマンと……シャドーマン!? なんで……一体何が、」

 

ぶわり、と電脳内にデータ風が吹き、爆煙パーティクルが押し流されていく。

薄くなっていく煙の奥、最初に見えたのは稼働を始めた“塔”とその前に鎮座するネフィリムの姿。

 

そして、その眼前に立つ、紺の外装を纏うひとつの人影。

ちりちりとダメージパーティクルを放出するその姿は、ヴェールと腰布が吹き飛び、その頭部を覆うヘルメットの半分ほどが失われ、その中身を晒していた。

 

風に揺れる黒髪。大きく息を吐き出し、ネフィリムを睨む赤い瞳。

 

その姿はそう、今はこの場にいないひとりの男と酷似していて──

 

 

 

「………八神、さん?」

 

ぽつりと零した声は、熱斗とロックマンのどちらのものだったか。

 




今明かされる衝撃の真実(知 っ て た)

3話で纏めるのは諦めました。でも5話ぐらいで収めたい……収まってほしい……

なお不意打ち〈フミコミザン〉は本当に先入観を利用した一発芸なので2回目はないし相手によっては一発目でも普通に対応される。実際〈ソード〉の扱いは普通(セレストよりは上手い)なので。
今回はサーチマン(データ系)だったから上手くハマっただけである。
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