牧師でハッカーで転生者な>>1   作:星茸

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Q.どうして最初はシスター姿だったんですか?
A.追加される外装の分防御力が高いから……なお衝撃を打ち消すためリアクティブアーマーにした模様。


◆真エンドには未だ遠く

 

……さて、どうしてこんなことになっているのだろうか。

 

ビヨンダードから帰還して以降の八神は、寝る間も惜しんで世界各国のネットワークを飛び回りグレイザーと共に爆散した《天眼》の断片データを探し回っていた。

複数のハッキングビットを同時並列処理していくつもの電脳を巡り、脳を酷使しすぎて三日に一度は動けなくなったりしながらも飛び散ったデータのおよそ50%……半分ほどを発見、消去することに成功する。

 

そんな中で発生した、先日のキャッシュ事変。

電脳、現実の両界がデータ変換されキャッシュサーバーへと取り込まれていった大事件……それは、バラバラになった《天眼》がごく僅かな期間とはいえ、ひとところに集められてしまったということでもある。

そうして集められたデータはそれぞれが元の形へ戻ろうと結合し、最も多く集まったそれがキャッシュサーバーの一部すらも利用し新たな《天眼》を再構築してしまったのだ。

その結果発生したのが、キャッシュサーバー跡地に現れた“塔”の正体である。

 

その存在に気付いた八神は思わず頭を抱え、それでも即座に行動を開始した。

起動していない状態であればひとりでも問題は無いだろうが、それでもあの八神和正(クソ親父)が遺したものである以上、警戒しすぎるに越したことはないだろう。

やはり有力な戦力であるネットセイバーの力をあてにしたい気持ちはあるものの《天眼》の存在を公にすることは避けたい都合上、直接手を貸りることはできない。ならば「強力な侵入者への対処」という形で間接的に巻き込み動いてもらう方向で作戦を組む。

その“侵入者”の役を担ってもらうためダーク・ミヤビにアポを取り依頼という形で協力を要請。……なお偶然様子見に訪れていた火野を巻き込んだのは完全なアドリブである。

 

後々の問題を避けるため事前にネット警察には「科学省への抜き打ち防犯訓練」というていで承認を得ておいて、これで準備は整った。

《天眼》へのアクセス権限を持つセレストのナビフレームへ、パルストランスミッションした自身の精神データを収める擬似的なクロスフュージョン状態で科学省のキャッシュサーバー跡地へ向かい、再構築途中の《天眼》へアクセス。その機能を停止させ自己消滅、もしくは物理的に破壊して消去(デリート)させる……というのが大まかな目的であり、途中まではそれなりに上手くいっていた……はずである。

 

 

 

そして今、八神の目の前にそびえ立つのは、不完全ながら起動してしまった仮称:《新・天眼》とその防衛システム。

考えうる限りで最悪のパターンを引いたことに、八神はまたしても頭を抱えることになったのだった。

 

 

 

 

 

防衛システム……ネフィリム、と呼称されたそれの周囲にいくつもの光輪が展開され、その中心から光弾が撃ち出される。……八神曰く、光輪の盾を“面”から“点”へと凝縮し、〈リフレクト〉の反発力をもってレールガンのように打ち出す砲撃、だそうだ。

まるで弾幕のようにばら撒かれるそれを躱し、時に叩き落としながら、彼らはバトルチップを展開した。

 

「〈スプレッドガン〉!」 「〈ネオバリアブル〉!」

 

拡散する弾丸が盾のように展開された光輪を撃ち抜き、その隙間を縫って光彩を纏った斬撃がボディを一閃する。

……その手応えに舌打ちして、ブルースは追撃を避けバックステップで距離を取り直した。

降り立った先で対象の解析を続けていたサーチマンも、スカウターに表示された計測結果を見て僅かに顔を歪めている。

 

「チッ……やはり硬いな」

 

「……それに、ダメージの修復が想定より早い。……先に供給を遮断しなければ」

 

チチ、と視覚表示を切り替え、サーチマンはネフィリム……その背後に繋がった不可視の動力経路を見た。

 

 

 

「……時間が無いから詳細は省くが、“アレ”は俺の探し物だ。表沙汰になる前に始末をつけたかったんだが失敗した結果が現状。あのまま放置するとここ(科学省)を電脳ごと乗っ取られるので、俺としてはさっさとカタをつけたい。OK?」

 

『……まあ、いいだろう。後できっちり説明はしてもらう』

 

『それで、オレたちはどうすればいいの?』

 

「アレを停止させるためには直接アクセスして操作するのが手っ取り早い。ただ、権限があるのは俺……というかこのナビフレームだけだから、俺が塔まで行って接触する必要がある。そのためにはあの防衛システム……ネフィリムが邪魔だ」

 

「つまりオレたちであのセレストもどきを倒せばいいってことだな!」

 

「もどきっつーかベースっつーか……でもまあ、そんな感じだな。たとえ倒せなくても俺がアクセスするまで引き付けてくれるだけでもいい」

 

『倒せないこと前提なのか』

 

「実質ギミックボスみたいなもんだしな……セレスト以上の防御力もだが、本体からの供給で耐久されるのも厄介なんだよ……」

 

 

 

視界の先では、視認阻害(〈インビジブル〉)によりほとんどの者には見えないそれが嘲笑うかのようにゆらりと揺れては迫る攻撃を躱していく。……なるほど、たしかに面倒だ。

アレがある限りリソース差ではこちらが圧倒的に不利。それをどうにかしようにも、見えないものを狙って断つのは中々に厳しいものがある。

 

「チィッ、面倒くせぇ! だったらまとめて焼き払ってやる! 〈ヒートウェーブ〉ッ!」

 

手応えがないことに痺れを切らしたヒートマンが〈フレイムソード〉を消し床パネルを叩く。

ごう、と立ち昇った炎がネフィリムを包み、その体表……そしてそこに繋がる不可視の配線を僅かに焼き焦がした。

 

「! そうか、いくら見えなくとも繋がっている事実に変わりは無い。なら、本体ごと巻き込んでやれば……!」

 

『なるほど! じゃあ……ヒノケン、ちょっとヒートマンのPET貸して!』

 

『お、おう? どうすんだ?』

 

『こうするんだよ! 獣化チップ〈グレイガ〉、スロットイン!』

 

PETを介して共有(リンク)されるヒートマンのデータ。そして転送された獣化チップのデータがロックマンの身体を覆っていく。

 

「おおおぉォォオッ!!! 〈ヒートビースト〉ッ!!!」

 

上半身を包むボックス状の装甲。そこから伸びるコードは獣化の影響により刺々しく逆立ち、尾と共にゆらりと揺れる。

全体的に黄色いカラーリングへと変貌したその手足には鋭い爪を携え、ヒートマンの頭部を模したヘルメットからは一対の炎が吹き上がった。

 

ぐ、と踏み込んだロックマンが勢いよく飛び上がり、ネフィリムの頭上を取る。

 

「ヒートマン、合わせろッ!」

 

「お、おうっ!」

 

すう、と大きく息を吸うように上体を逸らしたロックマンに合わせ、ヒートマンがネフィリムの周囲を囲むようにバーナーを配置した。

それに対応するようにネフィリムが腕を振るい、光輪を展開していく……しかし。

 

「させるかよッ! 〈トマホークエアレイド〉ッ!!!」

 

「〈ハートスラッシュ〉、それっ!」

 

「〈サテライトレイ〉ッ!」

 

横から飛んできた攻撃により、展開した端から叩き割られていく光輪の盾。

再展開を図るネフィリムだが、それよりも早く炎はその身へ迫ってきていた。

 

「〈グレイトファイア〉ッ!!!」 「〈ヒートバーン〉!!!」

 

吹き付けられるふたつの炎がネフィリムを焼き、声なき悲鳴を上げるように身悶える。

渦巻く炎は柱のように燃え上がり……やがて弾けるように消えていった。

 

残されたネフィリムの身体は酷く焼け焦げ、所々からダメージエフェクトを散らしている。

そしてその背後に繋がるエネルギーコードもまた、炎に焼かれたことで黒く煤けてその存在が顕になっていた。

 

「見えた……!〈デルタレイエッジ〉!!!」

 

「〈ブンシンギリ〉……ハァッ!」

 

それに素早く反応したのはブルースとシャドーマンだった。

その背面へと一気に踏み込み、全力の斬撃を叩き込む。

食い込む刃へと少しの抵抗を返し、やがてバツン! と音を立て断ち切られるコード。

 

供給を絶たれたネフィリムはガクン、と大きく身体を揺らし動きを止め、接続先を失ったコードは注がれるはずだったエネルギーデータを撒き散らしながら暴れ狂う。

 

それでもまだ防衛システムとしての機能は残っているのか、ゆっくりと顔を上げたネフィリムは敵対者達を睥睨する。

またしても展開される光輪に第二ラウンドの様相を感じ取り、ナビたちもまた身構えて。

 

 

 

【───アクセス権限を確認。停止コードを承認しました。まもなく全機能をシャットダウンします──】

 

唐突に聞こえたそんな電子音声とともに、ネフィリムの姿が掻き消えた。

 

 

 

 

 

“塔”の背面、防衛システムに検知されないよう、また戦闘に巻き込まれないように接近し、《新・天眼》へのアクセスを果たした八神は、ようやく通った停止コードに大きく息を吐き出した。

 

「思ったより時間はかかったが、これでなんとか……」

 

このままデータの解体と消去を進めるため、操作を続けようと意識を向けた……その時。

 

──ふわり、と何処からか“風”が吹いた。

 

それに気付いた八神がはっと顔を上げる。

視線の先には何もない……いや、僅かに空間が歪み、ぽつりと黒点のような何かがそこに浮かんでいた。

急速に広がったそれは、やがて巨大な円を描く“(バックドア)”へと姿を変えていく。

 

「な、何……!?」

 

「おい、見ろ! 塔が……!」

 

先程まで防衛システムと対峙していた彼らも異常事態に気付いたのか、にわかにざわつき始める。

声を上げたトマホークマンが指し示した先……《新・天眼》の塔が、その輪郭を僅かに崩していた。

 

ブロックごとに分解されるようにデータエフェクト化されていく塔が、次々に“穴”へと吸い込まれていく。

 

『八神牧師! これは……!』

 

「し、知るか! いったい何が……何処に転送されるってんだ……っどわぁ!?」

 

『八神さん!?』

 

うろたえる八神を嘲笑うように、残った塔の残骸が丸ごと浮き上がり、吸い上げられていく。……接続を解除し損ねた八神もまた、それに引きずられるように“穴”へと引き寄せられていき……

 

──バチィッ!!!

 

瞬間、大きな音を立て閃光が走る。

しばらく反発するかのようにバチバチと火花を散らし光を放つ塔の残骸と“穴”。

やがて一際大きく破裂音が響いたと同時、光の中から何かが勢いよく弾き出された。

それは黒衣に身を包んだ、人型の──

 

「八神ィッ!?」

 

反射的に飛び出したヒートマンが、落下してくるそれ……八神を慌てて受け止める。

……その姿は先程までのセレストのボディフレームに覆われていたものではなく、普段の黒いカソック姿……パルストランスミッションによりデータ化されたそのままのかたちになっていた。

 

勢いを殺しきれずにヒートマンのボディが床パネルを滑る。

それでも無防備に叩きつけられるよりはマシだろう。僅かに呻いた八神を見て、大きく息を吐き出した。

 

「八神、オイ、八神!」

 

「八神さん、ヒートマン! 大丈夫!?」

 

駆けてくるロックマンたちの背後で、最後に残った塔の一片がデータ化され“穴”へと吸い込まれていく。

そうして全てを回収し役目を果たしたらしい“穴”は、見る間に縮小していき、まるで何も無かったかのように消えてしまった。

 

 

 

「……クソッ……フレーム、盗られた……!」

 

それを睨むことしか出来ない八神は動きの鈍る身体でそれだけ吐き捨てるように呟くと、そのまま目を閉ざし……パキン、とエフェクトと共にデータフォルダへと姿を変え、床パネルへと転がったのだった。

 




やりたいことやったもん勝ち()
ヒートビーストが出せたので概ね勝ちです。でももうちょっと出番あっても……いやでも他のクロスもBEAST+でだいたいこんなもんだったしな……うごご……

エクストラターンはまだもうちょっとだけ続くんじゃ……

Q.フォルダ化is何?
A.パルストランスミッション中の安全装置のようなもの。精神データに大きな負荷(主にダメージとか)がかかった際に損傷を防ぐため強制スリープモードに移行させる保護プログラム。フォルダ自体は保護ケース的な感じ。
ちなみにこの後八神フォルダはシャドーマンの手により無事教会まで送り届けられた模様。
「それも依頼の一端故にな」
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