ニケと指揮官   作:P.K

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カウンターズ所属ニケ『アニス』と指揮官のとある日です。
アニス好感度エピソードを最後まで見られた方はより楽しめるかと思います。

※ちょっとだけえっちかもしれません。



アニスと指揮官

 

 

 

「指揮官様、炭酸水無くなっちゃったよ!このま

まじゃアニス死んじゃう!」

 

いつものように大袈裟に騒ぐのは、私が指揮する特殊別働隊"カウンターズ"に所属するニケ、アニスだ。

彼女はもっぱら炭酸水が好きで、指揮官室の冷蔵庫を開けば彼女が持ち込んだ炭酸水が必ずと言っていいほど入っている。

今日も炭酸水片手にソファーに腰掛けては、炭酸飲料を開封した時の爽快な音を部屋中に響かせていた。

「アニスは本当に炭酸水が好きですねぇ」

「これは人類が生み出した最初で最後の大発明よ。世界中の飲み物が全部炭酸水になればいいのに」

「うわ、シュワシュワのコーヒーとか絶対飲みたくありません」

 

ネオンはうげぇ、という顔で否定している。

…想像するまでもないが、確かに飲みたくはないな。

 

「アニス、そろそろ出掛けないと」

「あっ、そういえばそうですね」

「では指揮官、行って参ります」

「あぁ、気を付けて」

「いってらっしゃ〜い」

 

ラピ、ネオンはエリシオンでの定期メンテナンスの為、アークに向かうこととなっている。

今は15時だから、帰ってくるのは夕方だろうか。

 

「あ、帰りに炭酸水買ってきてよ」

「…いいけど、その代わり帰ってくるまでに部屋を片付けておいて」

「えー!」

「えーじゃない。片付いたかどうか、指揮官から連絡を頂いてからじゃないと買わないから」

「えー!!!」

 

まるで母娘のようだ。

しっかり者で生真面目なラピだが、最近打ち解けられていることを実感する事が多くなった。嬉しい事だ。

 

ちなみに、私の部屋もとい指揮官室は空になった炭酸水のボトルや、脱ぎ捨てられた靴下などが散乱しており、あまり綺麗な状態とは言えない。

だいたいアニスの私有物だ。

 

「ちぇっ、ねぇねぇ指揮官様、片付けたってことにしてラピに連絡入れてくれない?」

「ダメだ」

「えー!意地悪!悪魔!人でなしー!」

「…手伝うから早く終わらせよう」

「! そうこなくっちゃ!さすが指揮官様!」

 

あまり甘やかしてはいけないとラピに釘を刺されているが、どうもアニスには弱い。

そうこなくちゃ、と言いながら雑誌の次のページを捲った彼女を少し小突いてから、ゴミ袋を広げて掃除を始めた。

 

夕方になり、丁度掃除がひと段落した。

ちょっとした模様替えも挟み、いい気分だ。

 

「休憩にしよう」

「ふぅ!疲れた疲れた!」

「ご苦労様、ほら」

 

私はアニスに、ある炭酸水を渡した。

 

「え、まだあったっけ?」

「新作のテスト品だそうだ。味の感想を聞かせてくれと」

「へー!ありがとう!」

 

新フレーバーのマンゴー味だ。

面談の際、ルピーに新作を提案したところ、快く引き受けてくれた。

 

「うわこれ美味しい!」

「それはよかった」

「でも変ね、新作の話なんて聞いてないのに、なんでこれを?」

「まぁ、成り行きだ」

「…へぇ〜?」

 

アニスは携帯を片手に炭酸水を飲み続ける。

流石炭酸水狂なのか、そういった情報は欠かさずチェックしているらしい。

 

新作だが、なるほど確かに美味しい。

王道のレモン味、コーラ味といった鋭い甘みも捨て難いが、こういったフルーティーで柔らかい甘みも悪くない。

 

「アニスは炭酸水だと何が好きだ?いつも無味だが」

「こういうのって高いからあんまり買わないんだけど、強いて言うならレモン?」

「なるほど、色もアニス色だ」

「ふふっ、何よそれ」

 

程なくして飲み終わり、空のボトルを回収する。

それからルピーにはblablaで味の感想を送信した。

すぐに返信があり、上手く行けば商品化するとの事だ。

 

「もうこんな時間かぁ」

「なにか予定でもあるのか?」

「ん〜ん?別に何も」

「そうか」

 

片付けも終わったことだし、そろそろ執務に取り掛かるべきか。

先日の作戦報告書に加え、前哨基地の資源リストの確認、発注リストの整理、工事進捗の確認とやることは山積みだ。

 

発注リストの中に炭酸水が5ケースと記載されているのを見て、犯人の方に目をやる。

犯人は手元の携帯に視線を落としたまま、頬を染めて口を半開きにし、なんとも言えない顔をしていた。

 

「…どうした?」

「…指揮官様、あの炭酸水ってその…」

 

アニスが口篭る。

暫く待っても返答がなく、ごにょごにょと落ち着かない様子だ。

 

「ルピーと面談している時にそういう話になったから、作ってもらった」

「そ、そそそ、そういう話!?そういう話ってどういう話!?」

「何をそんな…新作のアイデアを聞かれたから、新フレーバーの炭酸水はどうかと提案しただけだ」

 

急にわたわたし始めたアニスは、これまた頬を染めながら携帯を見て、またこちらに向き直る。顔は下を向いたままだが。

 

「…わ、私の為に?」

 

少し顔を上げたが、視線を斜め下に向けている。

携帯の画面がちらっと見えた。

blablaのトーク画面で、アイコンの色合い的にルピーだと思われる。

…なるほど。色々勘繰っているようだ。

 

「まぁ、そうだ」

「……あ」

「あ?」

「ありがとう…」

「どういたしまして」

 

胡桃色のフワッとした髪の毛をくるくると指で弄りながら、珍しくアニスが大人しくなっている。

そういえば掃除を終えたことをラピ達に連絡できていない。

blablaを開き、カウンターズのチャットルームを開いた。

 

 

──指揮官が写真を添付

『掃除が終わった』

 

──ネオン

『嘘ではありませんか?ソファーの裏、冷蔵庫の中身、過去の写真ではないことを証明する電子時計の撮影を求めます』

 

──ラピ

『お疲れ様です指揮官』

 

──ネオン

『お疲れ様です師匠』

 

アニスへの信用が無さすぎて、私に労いの言葉が掛けられている。

 

──指揮官

『アニスも大人しく頑張った』

 

──ネオン

『嘘ではありませんか?アニスの裏、アニスの中身、アニスが大人しいことが証明出来る写真の撮影を求めます』

 

 

コミカルな返しに少し笑ってしまった。

まだ大人しくなっているアニスの写真を撮り、blablaに添付する。

 

 

──指揮官が写真を添付

 

──ネオン

『うわぁ本当に大人しそうじゃないですか!』

 

──ラピ

『寝てはいませんよね?』

 

──アニス

『起きてるわよ』

 

 

いつの間にかチャットに参加したアニスは、私の方を見て携帯を構えていた。

パシャ。

 

 

──アニスが写真を添付

『見て!盗撮犯の写真よ!早くみんな通報を!』

 

──ネオン

『きゃー!私たちもいつの間にか、寝顔とかシャワーの後とかリロードの最中を撮られているかも!?』

 

──アニス

『きゃー!』

 

──ラピ

『指揮官、メンテナンスに少々時間がかかる様でして、帰りが遅くなります』

 

──指揮官

『そうか、ご苦労様。帰りに何か食べてくるといい』

 

──ネオン

『わぁ!では、火力を求めて激辛料理を食べに行きましょう!』

 

──ラピ

『…遠慮するわ』

 

──アニス

『えーずるい!結構遅いの?』

 

──ラピ

『分からない。場合によっては20時前まで掛かるかも』

 

 

何かのトラブルなのか、そこそこ遅くなるようだ。

明日も地上での作戦は無いし、何よりメンテナンスは重要だ。時間を気にする事はない旨を伝え、諸々の報告は後日ということでチャットを閉じる。

 

「…2人とも今日遅いんだ」

「そうみたいだな」

 

毛頭そんなつもりは無かったが、改めて言葉でそう聞くと少し緊張してきた。

それはアニスも同じなようで、お互いに視線が合わない。

このところ、二人きりになるとお互いにお互いを意識してしまう。

カウンターズの面々とは、これまで共に行動を共にした中でかなり打ち解けてきたが、その中でもアニスとは特に顕著である。

 

「私達も何か食べるか」

「じゃあ指揮官様の奢りね!私あれ食べたい!」

 

少し調子を取り戻したのか、はたまた照れ隠しからか、いつもの彼女に戻ったようだ。

 

 

夕食も終え、諸々の執務もそろそろ片付いてきた。ラピ、ネオンはやはり遅くなるようで、今日は泊まり込みだそうだ。

順番待ちの間にご飯にも行ったようで、チャットルームには赤黒く煮え立った如何にもな麻婆豆腐の写真が送られていた。

 

「うわ!辛そ〜」

 

アニスはソファーに寝転がりながら、けらけらと笑っている。

凝った肩をほぐすように首を回し、軽く伸びをする。

すると、やっと終わったのかとアニスが冷蔵庫の扉を開け、ビール缶を取り出してアイコンタクトをしてきた。

晩酌をするから付き合え、ということらしい。

なるほど、どおりで宿舎に帰らなかったわけだ。

 

「かんぱ〜い!」

「乾杯」

 

ごくごく、と開けたばかりのビールを流し込む。

アークで出回る酒は、お世辞にも美味いとは言えないものが大半であるが、喉越しと爽快感で言えばそこまで悪いものでもない。

何より、度数が高いせいか酔いやすいのだ。

少しでも辛い出来事を忘れられるように、逃げられるように、楽しくなれるように、皮肉にもアークに似合った酒である。

 

「ぷはぁーっ!!あ〜沁みる〜〜」

 

おじさんか、とは敢えて突っ込まないことにする。

それにしても気持ちよく飲むものだ。

普段から飲酒はしていないが、最近はつられて飲む機会が増えた。

仲が深まった時に二人で飲んだのが最初で、今では月に数回のペースで飲み交わす仲だ。

 

紅蓮とも飲み交わすことが多いせいか、最近アルコールに強くなってきた実感もある。

 

しかし。

 

「指揮官様〜〜??聞いてる〜〜〜???」

「聞いてる聞いてる」

「絶対聞いてないじゃん!ね〜ぇ〜!ねぇってば〜〜もっと構ってよ〜〜」

 

飲み始めてから1時間くらい経っただろうか。

テーブルには空になったビール缶が数缶立ち並び、向かいにいたはずの彼女はいつの間にか隣に来て座り、ベッタリと身体をくっつけては私を揺さぶっている。

 

アニスは特別お酒に強いという訳でもなく、加えて酒癖は結構悪い。基本的に絡み酒だ。

普段からよく口が回る彼女だが、酒が入るといつにも増してよく喋る。

…かと思えば眠ったように静かになったり、稀にだが泣き出したりすることもある。

飲んだ試しは無いが、ニケ用の酒とはそこまで強いものなのだろうか?

 

めんどくさい事この上ないものだが、しかしそれが愛らしくもあるのが彼女だ。

ただ困るのが…

 

「んぅ? ふふん、いぇ〜い!」

 

ちらりと目をやり、すぐに視線を戻す。

目が合った際に何故かピースサインを決められた。

目をやったのは、左腕にこれでもかと押し付けられる豊満な彼女のそれだ。こぼれ落ちないよう押さえつける服が余計にそれの存在感を引き立たせている。テトラのCEOはなんということをしてくれたのか。

腕は体の反対側までまわされ、頭は左肩に寄りかかるようにしている。

酒が入っているせいなのは分かるが、スキンシップが激しすぎるのだ。

 

「こら!指揮官様!」

「いや、すまない」

 

流石に視線でバレたか、少し怒ってしまったようだ……いや前言撤回する。声色がふわふわしていて全く怒気を含んでいない。

 

「…えっち〜」

 

…と、頬を指でつんつんしてくる。

何も言い返せないのでされるがままだ。

 

───チュッ。

 

不意にアニスが、私の頬にキスをした。

 

「おいアニス…」

「えへ、指揮官様好き〜ちゅっちゅっちゅ〜!」

 

何とも愛らしい顔でにへら、と笑っていた。

これは、流石に…

 

「アニス」

「なに?」

「これはダメだ」

「…そ、そんなに嫌だった?」

「アニス」

「な、なによ、別に…」

 

愛らし過ぎるだろう。

泣きそうになっている彼女の唇に、キスをした。

一瞬にして驚きの表情へと変わっていく。

 

「…へ、へ?あ、えと、あの」

「こういうのは向かい合ってするものだ」

「なにそれ、えっ、えぇ!?」

 

自分でも何を言っているのか分からない。

酔っているんだろうか。

…そういうことにしておこう。

 

「すまない、酔っているみたいだ」

「…あ、わた、わたしだって」

「え?」

 

───んっ

 

また、アニスの顔が視界を覆う。

今度は長いキスだった。

目を閉じ、自然に互いの身体に腕がまわる。

 

どちらとも息をすることすら忘れ、酸欠寸前であ互いの唇が離れた。

 

「…へへ、またしちゃったね」

 

はにかんだ顔で、とろんとした目をこちらに向けている。反則だ。

鼓動がうるさく鳴り響く。もう色々と、我慢できそうになくなってきていた。

 

…また、どちらともなく顔を寄せた。

 

 

 

 

 

 

後日、指揮官室へ向かったラピとネオンが、ビール缶が散乱して昨日より散らかっている光景を見てげんなりしたのは別のお話。

 

 

 




お読み頂きありがとうございます。
アニス、個人的にめちゃくちゃ好きなキャラクターです。かなりの人気を博していますがその理由がよく分かります。
真面目なのかふざけているのか、どことなく影のある部分や仲間想いな部分、重いストーリーの中で光るムードメーカーとしての安心感。ユーモラスで魅力的なキャラクターですね。

がるるる、わんわんわん。
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