〜命懸けでダンまちの世界を生で見てきます〜   作:赤音友利

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 お待たせしました。

 第5話スタートです!


〜05〜

 

 

 

 ーーーーここは、冒険者から中層と呼ばれる階層....。

 

 ....とあるモンスターは檻の中に入れられて、下層の、ここよりさらに深い階層から運送されていた。しかし何の因果か、この時檻にかかっているはずの鍵は外れていた。

 

 モンスターは、自身を捕らえた冒険者がこの場を離れた隙に、音もなく脱走....。

 

 この事実にまだ誰も気づいていない。それは出られるはずが無いという油断か、それともダンジョンの悪戯か....。モンスターは、上へ、上へと足を進め、周囲のモンスターを喰らい、魔石を吸収する。

 

 その体表は赤黒く染まっていき、また姿を消していった........。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーこの世界に、転生して初めてのダンジョン探索....。初めての魔法行使....。あれから、ダンジョン探索を続けて一ヶ月の月日が経っていた。昨夜、ロキに頼んで、更新したステータスは、以下の通りである。

 

 

 

 

グレイ・リヨス・アールヴ

 

 L v 1

 

 力:SS1087 耐久:B763 器用:SS1021 敏捷:S973 魔力:S988

 

 

 《魔法》

 

[グラシエ]

 ・付与魔法

 ・氷属性

 ・詠唱式 [枷を解け]

 

[ ]

[ ]

 

 《スキル》

 

 [剣舞神才]《ヘブンズ・ギフト》

 ・剣を装備時、早熟する。

 ・発展アビリティ「剣士」の一時発現、補正値はL v に依存。

 ・全アビリティ能力超高補正。

 

 

 

 

 いずれこのオラリオにやって来る白兎を、知っているグレイだからこそ、このステータスの伸びはやはり異常なのだと分かる。本来ステータスとは、各アビリティで”999”と言うのが限界であり、それでさえその分野で才能のあるものだけが、たどり着くことのできる最高値である。のに対して、グレイは”力”と”器用”の2つにおいてその限界を超えている。これは本来ならあり得ないことなのだが、ベル・クラネルと同じ早熟スキルを持つグレイにはアビリティの限界を超える力が備わっていた。

 

「後は、偉業の達成でランクアップできる....か。」

 

 グレイ自身、ランクアップ事態は望んでいるもののグレイに釣り合う偉業というのは上層では難しいものだった。最近では中層にもソロで進出しているグレイだったが、未だ達成できていない。Lv.1でソロによる中層進出....。本来ならこれは偉業であり、監督をしているリヴェリアやベート、団長であるフィンがまず許すはずがない........のだが、グレイは別だった。類稀な神業の如き剣技に加え、変幻自在で強力な付与魔法。遠近を自在に支配するその姿にもはや上層に停まれとは強く言えなかったのである。それでも階数制限はされているが....。

 

「焦ってもしょうがないよなぁ。その時が来るまではいつも通りにだな。」

 

 今日も早朝からダンジョンに向かうグレイだった。ーーーーーー今日がその日だとも知らずに....。

 

 

 グレイは、いつもと変わらず中層である16階層まで降りてきていた。ここが今グレイにソロで許されている階層であった。ではなぜグレイがソロで探索しているのかといえば、同じレベル帯の仲間がついていけないからである。実力もあるが、何よりその成長スピードであった。この成長に関して他の団員がグレイと比べないようにするための苦肉の策としてもグレイは、ソロでの探索を続けていた。

 

「ーーーーー今日はやけに静かだな....。いつもならもっとモンスターが出てきてもおかしく無いのに....。」

 

 静寂。

 

 開けたルームにやってきたグレイは、あまりの違和感に足を止めた。

 

「....絶対におかしい。ここまでモンスターが現れないのは異常だ....。」

 

『”ドンッ”..........”ドンッ”....。』

 

 その時、グレイの耳には聞いた事のない足音が聞こえていた....。

 

 グレイは音のした方に視線を向ける。

 

「........ゴオォォオオオオオオオォォォォオオオッッ!!!」

 

 現れたのは、赤黒い血が脈打つようにして体表を覆い尽くす巨体のモンスター.....。本来は、こんな階層で万が一にも出会うはずがないが、リヴェリアに厳しい教育を受けたグレイは知っている。その姿や見た目は多少、違えど間違いなくこのモンスターは........。

 

「....ブラッドサウルスッ!.........なんでこんな上の階層にッッ!ーーーーしかも恐らく、魔石を喰った”強化種”ッ!!」

 

 忽然と現れた、下層....30階層のモンスター、ブラッドサウルスは捕食する餌を見つけ襲いかかる。

 

「っっ!?」

 

 グレイは思わぬ速度の攻撃に、慌てて地を蹴る。

 

 なんとか避けたグレイが振り返ると、後ろにはダンジョンに大穴を開けて佇んでいるブラッドサウルスがいた。

 

「ただの突進であの威力か....。まともに受けたら今の俺は一撃で死ぬな....。ただでさえ耐久低いし....俺。」

 

 普段から、モンスターに対して無双しているグレイは攻撃をほとんど受けることがなく、耐久のアビリティの伸びは他のステータスに比べ、とても悪かった。

 

 再び、襲い掛かり今度は鋭利な鉤爪を振り上げる。

 

 グレイは超絶技巧によって絶妙なタイミングで、剣を沿わせて受け流す。

 

 しかし、その爪は重く、疾い。

 

 受け流したはずの衝撃を完全に殺しきれず、余波だけで数メートル吹き飛ばされた。

 

 素早く体制を整え、グレイは目の前の”怪物”を鋭く見据える。

 

 その後も、流水の様に剣をしならせ連撃を加えていくが、こちらの攻撃に圧倒的なステータス差で攻撃に追いつかれ弾かれていく。

 

(このままだと、防戦一方ッ.......!)

 

 どうにかして反撃しないと、話にならない....。それにこんな中層の階層でこいつがさらに上の階層に行く事を許せば、間違いなく多くの死人が生まれる。ここで倒さないわけにはいかないっ....!!

 

 ここで使えば”剣”での戦いではコイツに勝てない事の証明になるが....仕方がない。本来の俺の戦い方はこれだ。

 

 妖精は引金を弾く。

 

「【枷を解け】」

 

「ーーーー【グラシエ】。」

 

 碧色の魔力光がグレイを中心に吹き荒れる。

 

 強い魔力を感知したブラッドサウルスは、餌ではなく、自らの敵としてグレイを認識する。

 

 グレイはすかさず魔法を放つ。

 

「氷槍........展開ッ!」

 

 グレイの魔力に呼応し、周囲には100本の槍がモンスターを包囲する。

 

「一斉射出ッ!!」

 

 放たれるのは、氷槍の鳥籠。

 

 間違いなく、全弾命中。

 

「....ッ!?」

 

「ーーーーーーーーーーーゴオオオオオオォォォオオオッッ!!!」

 

 しかし、目の前の怪物はいまだ倒れない。

 

 ブラッドサウルスは瞬時に身を翻し、自身の尾を鞭のようにしならせる。

 

(クソッ....間に合えッ!)

 

 グレイは、なんとか大剣を滑り込ませる。

 

 弾け飛ぶように壁まで吹き飛ばされる。

 

 背中を強打し、肺から無理やり空気を引きずり出される。肋骨も数本折れているだろう。

 

 追撃を仕掛けようと、鉤爪がグレイの視界を埋め尽くす。

 

 ーーーーーーーーしかし、ここで動けないならばグレイは神にその剣技を認められてはいない。

 

 自身が吹き飛ばされた勢いを利用し、身の丈より大きな剣をまるで果物を切るかのように、巧みに操る。

 

 迫って来る爪を、腕ごと切り飛ばす。

 

「ーーーーゴオォッッ!?」

 

 体制が崩れた身体を流れる流水が渦を巻くかの如く。

 

 ブラッドサウルスは、斬り刻まれる。

 

「!!」

 

 それでも尚、血だらけになりながらも、倒れる事のないブラッドサウルスのポテンシャル(耐久性に関して)は、Lv.4上位相当であった。

 

(これだけ斬っても、倒れない....。剣技では完敗か........。)

 

 ブラッドサウルスは自身を殺し得る存在に、警戒していた。

 

 グレイは、自身の冷気をもう一度纏う。

 

「これをするって事は、実質俺の負けだ....。剣とは違って、これは俺が努力して培ってきた”力”とは”まだ”言えない。与えて貰った....奇跡の”力”だ。」

 

(だから、出来るなら使わずに........なんて意識がどこかであった....。でもそれはやめる。これも俺の力で、誰かを守るためには必要な力だから....。)

 

「まぁどの道、これでお前を殺せなきゃ俺も死ぬけどなッ....!」

 

 纏っていた魔力が更に膨れ上がる。

 

 グレイの、残り全ての魔力が掌に集中していく。

 

 これは一種の自爆技であり、ダンジョンで探索中に偶然起きた現象。

 

 魔力暴走を意図的に引き起こし、強引に手綱を握る事で自身の全魔力と引き換えに、その爆発を相手に狙いを定めて引き起こす。氷属性の付与魔法の影響か、リヴェリアから見ても緻密で精密なコントロールを元々できており、神から貰った”精神耐性”のあるグレイだからこそ為せる荒技。

 

 一般の魔導士であれば、血の気が引く程の魔力暴走を”異常な精神力”と、優れた魔力コントロールで支配する。

 

 グレイは、この技にアイズを倣って名前をつけることにした。

 

 この名の由来は、あらゆる者を永久の氷地獄に封印する、とある地獄の最下層から名付けた。

 

 その名を。

 

『....コキュートス。』

 

 グレイによって、収束していた魔力がブラッドサウルスを飲み込み暴走する。

 

 その威力だけ見れば、あの”妖精女王”を連想させる。

 

 一瞬であった。

 

 ブラッドサウルスの身体は、暴走した氷の魔力によって、内側から細胞レベルで凍結していく。

 

 そして出来上がった氷山の一角........、視線の先で形成された光景にモンスターを逃してしまった冒険者たちはダンジョンの陰で文字通り凍っていた。

 

「どうにか....なったかな?」

 

 普通なら精神疲労《マインドダウン》で気絶しても不思議ではないのだが、グレイには、神から特典で得た”精神耐性”がある。どういう訳かこの耐性はマインドにも関係しているのか、気絶を免れているのはこれのおかげもあった。

 

 グレイは、氷山と化した怪物に大剣を振り上げる。

 

 流星を連想させるような美しい剣の一振りでもって、氷山を切り裂いた。

 

 ブラッドサウルスの肉体は全て灰と化す。

 

 魔石を回収したグレイは、ダンジョンの柱に座り込む。

 

「........ッ。流石に魔力使いすぎた。全然身体が動かないや....。」

 

 するとダンジョンの陰から、多くの冒険者を引き連れた一団がこちらへ向かって来た。

 

「えっと.......どういったご用でしょうか?あいにく今は身体が動かなくて。」

 

 一団の代表らしき女性が前に出て来る。

 

「そのままで構わない。........いやむしろ私たちが君を送り届けなければならない。この度は危険な目に遭わせてしまい誠にすまなかった!」

 

 女性が頭を下げると、背後にいる人達も一斉に頭を下げていた。

 

「え....どうして貴方方が謝るのですか?」

 

「........実はな。」

 

 グレイは女性の冒険者から説明を聞いた。

 

 どうやら彼女達は、近頃開催されるという怪物祭《モンスターフィリア》で使われるモンスターの捕獲をしていたらしく、その道中でこのブラッドサウルスを檻から逃してしまい、下層から中層まで上がってしまった事に遅れて気づき、慌てて追ってきた様だった。

 

「本当にすまない....。そして感謝する。このまま更に上の階層へ行ってしまえば大勢の犠牲者を出してしまうところだった....。」

 

 君はLv.2なのだろう。強化種のブラッドサウルスをよく仕留めてくれた。後日、ガネーシャ様と共に謝罪とお礼をさせて頂きたい。どこのファミリアなのか聞いてもいいか?女性がグレイに聞くと。

 

「えっと........、Lv.1です。それと俺の所属ファミリアは、ロキファミリアですね。」

 

 そう答えると、相手の女性は二つの意味で驚愕していた。

 

(なッ........ブラッドサウルスの強化種だぞ!?それをLv.1が倒すなんてあり得ない....。Lv.2ですら怪しいと言うのに....。それに、ロキファミリアか....。あの仲間思いのファミリアの事だ。何を吹っかけられるかわかったものでは無い....。しかし今回の落ち度は完全にこちら側にある。最悪の事態も考えなくてはならんな........。)

 

「いずれにしろ、本当に迷惑をかけた。遅れてすまないな。私の名前は、シャクティ・ヴァルマ。ガネーシャファミリアの団長を務めている。この度は本当に感謝する。」

 

「ロキファミリアのグレイです。なんとか食い止められて良かったです。」

 

 互いに軽く挨拶を終えた後、シャクティは団員に指示を出しグレイをロキファミリアのホームまで送り届けた。その時、混乱を避ける為シャクティのみがロキファミリアのホームまで同行するが、それでも都市の一大派閥であるガネーシャファミリアが突然訪問してきたのを見て、門番は少し慌ただしくなっていた。

 

「シャクティじゃないか。ウチの新入りを連れてどうしたんだい?」

 

 騒ぎを聞きつけたフィンが門まで向かってきていた。

 

「あぁ、実はな....。」

 

 事の顛末を話すと、話の重要性に気付いたフィンはまた後日改めてと言う事になり、シャクティは帰っていった。

 

「さて、グレイ。言いたい事は色々あるけど、それはリヴェリア辺りに言われるだろうから、ここでは控えておく。」

 

 後に起こるであろうことを想像してグレイは青ざめる。

 

「だから僕個人として、君にこの言葉を贈ろう。”君は間違いなく偉業を成した。本当によくやったね。”」

 

 フィンに肩を借りながら、グレイは無事ホームに帰還したのだった。

 

 

 

 

 ーーーーーその後しばらくして、グレイの体調もある程度回復した頃リヴェリアから鬼の形相で搾られたグレイは、この世では、怒らせてはいけない存在がいる事を、自覚した。

 

 

 

 

 

 





 
 今回もここまで読んでくださった皆様。ありがとうございます!

 毎日更新が目標ですが、色々考えていると時間があっという間に過ぎてしまって....。

 これからも引き続き更新していくので、気になってくれた方々、どうかこれからもよろしくお願いします!
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