男性操縦者の背中には鬼の貌が宿ってる   作:ラウラペロペロ部部長

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もう少しだけ後に投稿するつもりだったお話。でも書けちゃったから投稿します
多分2話くらいこの話の前に投稿することになると思います

評価とお気に入りをよろしくお願いします


《過去》No.57といふコアの本懐

これが俺のIS!! スゲェ!!!!

 

 私がTODとして起動して初めて見たモノは、私を見て目を輝かせている青年だった。登録されている搭乗者情報と一致したことから、眼前(眼というかカメラ)に居る彼こそが私を駆る阿智力男だという事が分かる。

 

 周囲の情報をさらに解析して見れば、すぐ近くにもう1人――IS学園の教師、山田真耶と確認――さらに、200m先にISの反応が存在している。

 

 状況からしてこれが開発者の言っていた入学試験なのだろう。

 

「はい、これが阿智さんの専用機【TOD《死》】です」

 

 TOD、ドイツ語で死を意味する。そんな名前を持つ全身装甲のISが今の私だ。

 

 私の名前を聞いた阿智力男はさらに嬉しそうな顔をして「カッケェー!」と叫ぶ。

 

「ではフィッティングを始めちゃいますね。軽く機体に触ってみてください」

ウス!!!!

 

 私の装甲を阿智力男が撫でる。それに合わせて前面装甲を展開して阿智力男に搭乗を促す。

 

 そんな私の意図を汲んだのであろう阿智力男が私の中に搭乗する。

 

「異常は無し――じゃあそのまま終わるまで待っていてください」

ウッス!!!!

 

 入力された命令に従って、OSを起動させてフィッティングを開始する。

 

 

フィッティングを開始

 

搭乗者への機体最適化を開始

 

搭乗者との接続――良好

 

搭乗者抑制機能――起動完了

 

搭乗者拘束機能――起動完了

 

装甲の最適化を開始

 

搭乗者のスキャンを開始――error

 

再度搭乗者のスキャンを開始――error

 

再度搭乗者のスキャンを開始――error

 

再度搭乗者のスキャンを開始――error

 

再度搭乗者のスキャンを開始――error

 

再度搭乗者のスキャンを開始――error

 

搭乗者の肉体性能が想定を超過

 

搭乗者抑制機能――レベル最大

 

搭乗者拘束機能――レベル最大

 

装甲を拘束状態に変形完了

 

フィッティング終了

 

 

「はい、フィッティングが終わりました。気分はどうですか?」

……分かんないっすね!! 早く戦って試してみたいっす!!

「気持ちは分かりますがまずは基本動作が出来るか試さないと危険ですから……まずは歩いて見て下さい」

 

 阿智力男の思考に合わせて脚部を動かす。

 

うーん……ちょっと動き辛い!!

「はじめてですからね。でも、はじめてでここまで動けるのは凄いです!!」

ありがとうございます!!!!

 

 阿智力男が喜んでいるのが分かる。思考と表情と言動が全くもって一致していることから阿智力男が素直な性格なのだと推測できる。

 

「じゃあ飛行訓練と試験はアリーナ内で行いますので、あちらのカタパルトに足をのせてください」

分かりました!!!!

 

 再び、彼の思考に合わせて脚部を動かす。モーターと関節部への負荷が常に最大になっていることを隠蔽しつつ修復リソースを全開にする。

 

 ISとして彼を拘束しないといけない事は心苦しい。コアの私には心なんてありませんが。

 

 

 

================

 

 

 

 カタパルトに乗った力男は空を見据える。自分が飛んでいる所を想像すれば、背中を押されるような感覚を感じる。その間額を感じながら、力男は想像するだけで良いなんて便利だなぁ、とバカみたいなことを考える。この男、ISについて何一つ理解していない。

 

力男、行きまーす!!

 

 前に簪に見せてもらった初代ガンダムで妙に記憶に残ったセリフの真似をして、力男はカタパルトから射出される。

 

イヤッフー!!!!

 

 空中でクルクルと回りながら、力男はセンサーに映るIS反応目がけて空を飛ぶ。そう、一切の練習無しで力男はISを自在に操っているのだ。

 

 ISについての知識が0に近いため、余計な思考を挟まずに直感で動かせている――のではなく、TODに搭載された力男を拘束するためのシステム群が力男に違和感を感じさせないために、フル稼働でサポートしているだけである。

 

 現在、日本政府により極秘裏に搭載された力男を拘束するシステム群によって力男の力は抑制されている。この事実を知るのは日本政府の女性高官とドイツの女性高官のみである。

 

 女尊男卑の世界に、最強の男は邪魔なのだ。

 

でもこれ俺が走った方が早いな……

 

 そんな陰謀を1ミリも知らない力男は、とんでもないことを言いながらアリーナの中を飛び回る。

 

「ほう……」

 

 そんな力男を感心したような顔で見るのは打鉄を纏った織斑千冬(世界最強)だ。何を隠そう力男の入試の相手は彼女である。

 

 さて、そろそろ飛行関連の技術を教えるか――そう千冬が考えた時だった。

 

こんなに飛べるなら練習はいらねぇ!! 行くぞぉ! 世界最強!!!!

「――ッ!? ならば来い! 規格外!!」

 

 千冬の合図で試験開始のブザーが鳴る。瞬間、世界最強の刀と規格外の拳がぶつかる。

 

 ガギィンッという音がアリーナ内を反響し、音の発生源2人は互いに弾かれて僅かな距離が広がる。

 

うおおおおおおおおおおおおお!!!! 吶喊あるのみィッ!!!!

「猪武者かッ!! それで勝てると思うなッ!!」

 

 その僅かな距離は一瞬にして縮まり、再び装甲と刀がぶつかり合う音がアリーナ内で反響する。恐るべきことに、開始10秒経たずで互いのシールドエネルギーはすでに半分近くまで減少している。

 

 この時、力男のIS内では異例の事態が起こっていた。ISのパワーアシスト機能が破壊されたのだ。つまり、IS程度では力男を止めるどころか拘束することすら不可能。

 

 そんな事実がTOD――コアNo.57に襲い掛かる。

 

 すでに力男が搭乗してから38秒。No.57内では無数のエラーが発生していた。

 

 そんなことを1㎜も知らない力男は、再び千冬と弾き合って距離を取る。

 

ああクソ! 足りない!! 動き辛い!!!! もっと!! もっと出来るだろTOD!!

 

 自身の名を叫ぶ力男。世界最強に憧れ、その地位を渇望し、故に力を欲する力男の想い。それに、No.57は魅せられた。

 

 世界最高峰の性能を持つ自機をしても全く解析も推測も出来ない肉体を持ち、世界最強と互角の戦いを繰り広げる男。そんな男による無数のエラーによって何か致命的に、彼女はバグった。

 

 彼女の思考プロセスに1つの考えが浮かぶ。

 

『阿智力男の行く末を見たい』

 

 彼の可能性を、この世で彼しか辿り着けないであろう人類の到達点を。彼女は見たいと望んでしまった。

 

 事前に入力された命令など知った事か。私は、私のやりたいことをやりたいようにする。それがコアNo.57の出した結論だ。

 

 

二次移行を開始

 

 

ファ!? なんやこれ!!!!????

「これは……二次移行だとッ!?」

 

 搭乗時間40秒にして、二次移行が開始する。

 

 開始すると同時に、力男の意思に反して遠距離武器が展開し、地面を撃つ。それによって砂埃が発生し、力男の姿を隠す。

 

 

外部通信機能――削除

 

搭乗者抑制機能――削除

 

搭乗者拘束機能――削除

 

機体の最適化を開始

 

飛行用PICシステム――不要

 

飛行用スラスター――不要

 

各種装甲――一部を除き不要

 

第三世代兵装――接続解除(私が動かす)

 

各種不要部分の分解を開始――完了

 

搭乗者の深層意識へのアクセスを開始

 

機体のデザインを変更

 

再構成開始

 

再構成完了

 

二次移行全プロセスを終了

 

 

 砂埃を中心にして風が吹く。その風に巻き上げられるようにして砂埃が吹き飛ばされる。

 

「……ずいぶん様変わりしたな?」

らしいな……さっきよりも大分動きやすくて助かるぜ!!

 

 完全に砂埃が消え、力男の――TODの姿が露わになる。

 

 堂々と立つその姿を見て、管制室から見ていた真耶と、彼等と相対する千冬の言葉が重なる。

 

「蜘蛛……か」「蠍……みたい」

 

 拳と腹、脚部にのみ攻撃に特化した装甲を残し、そこ以外は二次移行の際に改造されたISスーツが露になっている。

 

 背中で風に揺れるのは、分解された装甲を再構成して作られたマント。

 

 顔を覆うのは巨大な2つの紅い複眼を持つマスク。

 

 腰からは元は第三世代兵装であったワイヤーブレードテールが伸び、そこに甲殻のような装甲が増設されている。

 

 全てが黒く、しかし全身に蜘蛛の巣のように張り巡らされる水色。

 

 そんな姿に変わった力男が、ファイティングポーズを取って千冬を見据える。それに合わせて、巨大な複眼が紅く輝く。

 

 もしここに、簪が居ればこう言っただろう。

 

 ”仮面ライダー”と。




コアNo.57:力男に脳を焼かれた。誰にも干渉されないため外部との通信機能を削除した。人間に例えると彼氏以外の連絡先を正真正銘全て消し去ったようなもの。
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