男性操縦者の背中には鬼の貌が宿ってる 作:ラウラペロペロ部部長
「いやぁ、桜ってやっぱ綺麗だァ!!!!」
「うん、綺麗だね」
桜の木の下にレジャーシートを敷いて、頭上に咲く桜の花を眺める。ハラハラと落ちてくる桜の花びらが春を感じさせてくれる。
相変わらず力男の声は大きいけど、その声にはしっかりと感動が感じられる。花より団子な本音とは違って、力男はしっかり花を楽しめるらしい。
「それでね、えっと……」
「ん? どうした簪!」
「お、お弁当! 作って、来たの……」
「マジで!? もしかして俺の分も……!?」
「あるに決まってる……」
おー! と歓声を上げる力男に、思わず笑いがこぼれてしまう。あまりにも率直に感情が出過ぎだと思う……そんなところも好きなんだけど。
持っていたお弁当の包みを外して、並べる。まさかお正月に親戚で集まる時以外にこの重箱を使う事になるとは思わなかった……やっぱり力男は1食に食べる量が異常だ。結婚したら食費とか大変なことに――
っていやいやいや! なに考えてるの私! 結婚って……まだ付き合えるとも限らないのに。
私みたいな――いや、自分を卑下するのは止める。今はこのデートを全力で楽しむんだ! よし、じゃあまずは私の料理を食べる力男の顔をオカズにお弁当を食べよう。
「はい、どうぞ」
「やったぁ!! 全部俺が好きなのばっかだ!!」
キラキラとした目で私の作ったお弁当を見てはしゃぐ力男。嬉しさのあまり若干日本語がおかしくなっているのが……なんというか後輩感あって良い。可愛いとカッコいいとエロいが合わさった力男がやっぱり最強なんだよなぁ。
「食べていい!?」
「うん、良いよ」
「やった!! いただきます!!!!!!」
私の渡した割りばしを勢いよく割って重箱を手に取ってパクパクと食べ始める。そう、”パクパク”とだ。この体の大きさと食事量で一口が小さいの本当にズルい。
「うん、美味い!! 簪って料理上手いんだな!!」
「……ありがとう」
本当に純粋に美味しい美味しいと食べてくれるので今朝の苦労が一瞬で報われる。これから毎日朝昼晩のご飯を作ってあげたいくらいだ。
……作るか。デートが終わったらお母様に連絡しよう。
それにしても本当に美味しそうに食べてくれる。食べてる時の顔がもう美味しそうだし、一品食べ終わるごとにキッチリ飲み込んでから美味しいと言ってくれる。
ちょっとイケメンが過ぎると思うんだよね……もう兵器だよこんなの。私のハートはズタボロのハチの巣だよぉ……。うぅ、さっきからずっとキュンキュンしてる。
襲い来る褒め殺しと胸キュンを自分の分の弁当と共に味わいながら、合間合間で桜を見て気分を落ち着ける。さっきも言ったけど本当に今、私は幸せだ。
「ごちそうさまでした!!! いやぁ、メッチャ美味しかったぜ簪!!!! 毎朝作ってもらいたいくらいだ!!!!」
「んぶっ!? ゲホッゲホッ!!」
「か、簪!!!!????」
そ……そんなのプロポーズじゃん!!!!
いや、力男にそんな気が無いのは分かってはいる。分かってはいるけど……ドキドキするに決まっている。落ち着け、落ち着いて橘さんと神とブレンの変顔を思い出すんだ……よし、落ち着いてきた。
「ご、ごめん……ちょっと咽ちゃって」
「そうか! 良かった!!!!」
「ふふっ……ありがとう」
「お、おう!!!!」
やっぱり力男は優しいなぁ……好き、だなぁ。私も年上の先輩なんだから頑張らなきゃいけない。
自分の分のお弁当を食べ終わり、重箱を片付けて一息つく。ふと力男の方を見ると、桜に見惚れているのかボォーッと上の方を見ている。こうして黙っている所を見ると本当にイケメンだ。よく顔と体がアンマッチだと力男は言われているが、私はそうは思わないと声を大にして言いたい。恥ずかしくて言えないけど。
……流石に、こうも長く桜に見惚れられていると一緒に来ている異性としては気に入らない。ので、ほんの少しちょっかいをかけることにした。周りに落ちている桜の花びらを集めて、両手いっぱいに持つ。そして、力男に向かって上から落ちるように投げつける。
「うおっ――」
「……?」
急に視界に現れた桜の花びらにビックリしたのであろう。バッっとこちらを見た力男の動きがピタっと止まる。まさか怒らせてしまったのかと少し不安になったが、顔を見れば怒ってるかどうかくらいは分かるのでその不安は消えた。
ほんのちょっと私の事を見つめていた力男は、ハッっと意識を取り戻して雑談を始めた。その様子に、どこか焦りがある気がしたけれど、ハッキリとは分からないのでとりあえず彼との雑談に付き合う。
やっぱり力男との雑談は楽しい。これが価値観の合うという事なのだろうか。
うん、何度でも思うが。私はやっぱり力男が好きで、好きで……大好きだ。
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お花見デートの後、力男は自宅で悶々としていた。その珍しい様子に(簪の協力者である)彼の母親がニヤニヤしながら「どうしたのか」と聞く。
それに対して、珍しく彼は困惑したように答えた。
簪が綺麗で、可愛くて……たくさんの桜の花びらの中にいる彼女に見惚れてしまった。そう照れくさそうに言う彼を見て、彼の母親は明日からコイツの朝飯を作りに来たいと連絡して来た簪にOKを出した。
無論、翌朝になって力男が大いにテンパったのは言うまでも無い事だ。