男性操縦者の背中には鬼の貌が宿ってる 作:ラウラペロペロ部部長
「詳しく……説明してください」
「さっ更識サン!?」
「今、私は冷静さを欠こうとしています」
「ヒエエエエエエエエ!?」
乱れたパジャマで、私はフランシィ先生に詰め寄る。ここが職員室だとか周囲に他の先生が居るとかそんな事を気にする余裕は無い。
「どうして……どうして私と力男が同じ部屋なんですかぁッ!?」
普段の私からは想像も出来ないような大声でフランシィ先生に聞く。我ながらこんな大きな声が出るなんてビックリだ。
でもそれは仕方が無いだろう。だって、だって――
「私、裸見られちゃったんですよ……!?」
「Oh……」
本当に、本当に恥ずかしい。付き合ってまだ1ヶ月くらいの私には耐えられない。せめて半年……あと5ヶ月あれば覚悟くらいは出来ていただろうが、今の全く覚悟が出来ていなかった私には無理だ。
「本当に……せめてこう、事前警告的なのは無かったんですか……!?」
「エ、ソッソレハ……ごめんなさい」
謝られてもどうしようもないんですよぉ!! もう見られちゃったし! ハッキリと見られちゃったしィ! それに、恥ずかしさでパジャマだけ着て出て来ちゃったし……これどんな顔して部屋に戻れば良いのだろうか。そんなの齢16に満たない生娘である私に分かる訳が無いのだ。
「エェット……この場合ってどうすれば良いんでショウ?」
「知りませんよ……教えてくださいよぉ……!」
「ウーン、とりあえず部屋に戻って話し合ってみてハ? 話し合いは大事デス。私の方で色々確認取って部屋は調整しておくのデ!」
分かりましたと答えて職員室を出る。フランシィ先生には今度謝らないとなぁ……と考える私。この後私の裸を確実に見たであろう力男との話し合いがあるからそんな事を考える余裕は今だけだけどね!
我ながらテンションがおかしなことになっている。落ち着こ――無理に決まってるでしょうがぁ……! さっきも言ったけど私は生娘だ。力男のせいで見ることに耐性はあっても見られることに耐性は無い。
そもそも自信のある体って訳でもないし。どうせなら少しくらい力男に付き合って筋トレしておけば良かった。
そりゃあ、平均よりも良いスタイルしている自覚はあるけど……IS学園だと平均くらいだし、お姉ちゃんに比べたら全然だし。そこら辺と比べるとやっぱり自信は無い。
「はぁ……鬱だぁ」
別に同じ部屋になるのが嫌なわけじゃない。なんならそれくらいバッチ来いって感じ。でも裸は違うじゃないですか……違うじゃないですかぁ! ここ1ヶ月間殆ど毎朝朝食作ってあげてたから同棲くらいなんてことは無い。だけど裸は違う、1mmも慣れていない。
そんな訳で私はずぅっと大混乱しているのである。さっきと同じこと考えてる気がする。
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「……部屋に、着いちゃった……着いちゃったよぉ」
覚悟できないままに部屋の前に着いてしまった私は、どうにかして勇気を振り絞ってドアノブを握り、ゆっくりと手前に引く。
「た、ただいま~……」
「ん? おかえり!!」
いつものクソデカ大声で私を迎えてくれた力男を見て、張りつめていた心が解けて行く。でも、やっぱり裸を見られたという事実は確かに存在しているので、それを意識すると顔が熱くなってしまう。
ふと力男の顔を見ると、力男の顔も少し赤くなっていた。そんな力男を見て、未経験の高揚感を感じていることに自覚した。
そうかそうか、つまり私は好きな人の赤面顔に興奮する性癖がある訳だな。私ってばもしかしなくても異性との関わりが力男以外に無さすぎてかなり歪んだ性癖があるのかもしれない。
「えっと……簪?」
「……はっ! えっと……と、とりあえず部屋のルールを決めよう?」
「わ、分かった!」
何をするのにもルールは必要だ。もう裸を見られた事とか忘れて今後再発が無いようにした方が精神衛生上最適で最善な気がする。
「でも、いざ決めるとなると……決めることが無いね」
「あ、ああ!」
とりあえずしっかり脱衣所で着替えるという事と、脱衣所に入る前に中に誰かいないか確認するっていうルールだけは決まったが他は思い浮かばない。なんなら、脱衣所云々も多分半年後には消えてるだろうし。
まぁ、力男の事だから私が見ても良いって言っても否が応でも私の裸を見ようとはしないだろうけど。雨で透けて見えた下着だけで顔を真っ赤にさせていたのだから。
力男の事は知れば知るほどに、私の力男への好きという感情は増していく。
「他に、決めることはある?」
「な、無いな! 無いな、うん!」
「……なんか、動揺してる?」
「うぐぅッ!?」
凄い分かりやすく動揺している力男。私が帰って来た時には普通だったのにこうしてベッドに座って話を始めてから挙動が不審になった。まさか私が近くに居るってだけでこうまでなる訳が無いし。
「どうしたの?」
「い、いやぁ! その! む、胸が……!」
「胸……? あっ」
力男に言われて自分の胸元を見る。慌てて着たために乱れたパジャマの胸元は大きく開いている。力男の角度からなら見えていてもおかしくないだろう。
うん、見えててもおかしくない。
「……もうヤダ私寝る」
「す、すまん!」
せっかくどうにか裸を見られた事を忘れようとしていたのに無事にトドメを刺されてしまった。鏡なんて見てないのに自分の顔が真っ赤なのが分かってしまう。きっと耳まで綺麗に赤く染まっているだろう。
でも、それと同時に動揺して顔を真っ赤にさせていた力男の顔を思い出して……ゾクゾクしてしまう。
「倒錯的……」
布団に包まりながら、そんな事を呟いた。