滅尽の守り龍   作:止まらないラージャンBB

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自然から離れた者と自然に寄り添う者

しばらく歩を進めていた滅尽龍は、霧に覆われた湖にたどり着く。

 

(水だ…!)

 

古龍と言えど、飲まず食わずで生きれるほど便利な体ではない。

ましてネルギガンテは他の古龍を喰らうことで、その古龍の体に溜め込まれていた地脈のエネルギーを奪い取る生物。

何かを食べる頻度は普通の生物と同じくらいだった。

 

水を飲んだ事で、ほんの僅かにだが傷が塞がる。

だが、所詮は水だけ。魔獣との激闘で負った全ての傷を癒すには、到底エネルギーが足りない。

 

(肉だ……肉を食わねぇと……!)

 

しばらく岩場で座っていると、近くにアプトノスに似た草食竜が水を飲みに来た。

 

(ちっ、草食竜じゃ貯めてる力が少ねぇ……コイツらを喰っても腹が膨れるだけだ)

 

滅尽龍は草食竜を喰らっても、傷を癒すほどのエネルギーはないと判断。一瞬見るだけでそっぽを向いた。

捕食者の目を向けられた草食竜は怯えるが、すぐにその視線が消えた事で、滅尽龍を不思議そうに見る。

 

しばらく水を飲んでいた草食竜だったが、敏感な聴覚で大型竜の足音を感じ取る。

すぐさま水の中へと逃げる草食竜を見て、滅尽龍は捕食者の襲来を確信する。

 

小さな草木をなぎ倒して湖を見渡す肉食竜。

そいつは蛮顎竜と恐暴竜を足して割ったような見た目をしており、不機嫌そうに辺りを見回し、滅尽龍をその目で捉える。

 

(感覚が正しいなら、奴は生態系でもかなり上の生物……喰えば少しはマシになるだろう)

 

挨拶代わりに吼えて威嚇をする肉食竜を前に、滅尽龍はただ冷静に対象を分析する。

 

(こいつ程度なら、今の俺でも狩れる)

 

力の差を見極めた滅尽龍は大きく吼える。

古龍の威圧も混じったそれは肉食竜の咆哮をかき消し、肉食竜を怯ませる。

滅尽龍はそのまま岩場から飛びかかり、肉食竜に組み付く。

 

すぐさま反撃として噛み付こうとする肉食竜だったが、滅尽龍の掌底で噛み付こうとした頭ごと押し返され、地面に押し付けられる。

悲鳴を上げる肉食竜だが、それもわずかな間だけだった。

肉食竜の頭蓋骨は一瞬で紙人形のように潰され、生を終える。

 

滅尽龍は勝鬨の咆哮を上げ、肉食竜の骸へ食らいつく。

 

(量は少ないが…ないよりはマシか)

 

肉食竜の持っていたエネルギーの少なさに僅かな不満を覚える滅尽龍だが、それでも貴重な回復手段を捨てる訳にはいかない。

滅尽龍は腸を喰らい、大きなあばら骨を口から吐き出し、小さな骨は丸ごと噛み砕く。

ある程度食べると満腹となり、回復に専念するために近くの岩場で休む。

 

食べては休みを繰り返し、傷の大半が癒えた。

そして肉食竜の骸を半分ほど喰らった時、近くの茂みが何かによって掻き分けられる。

 

(…なんだ、あの生き物は)

 

茂みから出てきたのは、見た事もない姿の生き物だった。

辛うじて人型と言えるそいつは、岩場から見ている滅尽龍の存在に気がついていなかった。

傷だらけで何かから逃げるように、こちらの岩場へと走ってくる。

 

「いたぞ、追え!」

 

すると、今度は数が5、6ほどの人間が同じ茂みの辺りから出てくる。

滅尽龍が奴らを睨んでいると、向こうもこちらの存在に気がついた。

 

「な、なんだあの生き物は!」

 

「穢れが……あぁ……!」

 

彼らは滅尽龍の持つナニカを穢れと言い、畏れるように武器を構える。

 

(穢れ…? それにしても……こいつらを見ていると怒りが湧く。これは…古龍としての、本能か……?)

 

滅尽龍もまた、彼らを見て異様な不快感と怒りを抱かされる。

自然そのものを生物に落とし込んでいる古龍という生物の本能が、彼らの存在を絶対に許せなく感じる。

 

(あいつらは、なにか歪めてる)

 

滅尽龍として生を受けてから、彼には自然の力を感じ取ることができるようになった。

ありとあらゆる生物が自然由来のエネルギーを秘めていて、その自然を壊すと言われている人間でさえ、そのエネルギーは多少なりともある。

 

(こいつらは自然の理から外れ、ただ生き延びようとしている)

 

滅尽龍は歪んだまま再生した両翼を広げ、飛びかかる。

体格差の暴力を以て放たれる肉と棘の弾丸は、叫ぶ間も与えずに彼らを骸へと変えた。

 

(人……いや違う。こいつらは、リーダー達や竜人族の方々と比べるのも烏滸がましい)

 

滅尽龍は骸に見向きもせず、再び肉食竜の骸を喰らう。

それを、岩陰から人型のような何かが見つめていた。

 

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