滅尽の守り龍   作:止まらないラージャンBB

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忍び寄る気配

肉食竜の骸を殆ど食べ終えた滅尽龍は、ただ岩場で休んでいた。

一見月を眺めて座っているだけに見えるが、何もしていない訳では無い。古龍特有の地脈探知能力を活かし、他に地脈を扱う生物がいないか探していた。

 

(……やはり、この世界に古龍はいない。地脈を吸い上げているのは俺だけだ)

 

地脈の流れが緩やかなのを感じ、ここがあの生命溢れる地とは全く異なる世界であることを再確認させられる滅尽龍。

 

(……退屈だ)

 

ここには屈強な蒼の火竜も、全てを吹き飛ばし大地を荒らし回る爆鱗竜も、死に場所を見つけた歴戦の古龍もいない。

滅尽龍になる前からそういった“モンスター”と戦ってきた彼にとって、退屈というものは己にとって無縁なものだった。

 

(面倒な何かはいるにはいるが、取るに足らん)

 

滅尽龍は岩陰からこちらを覗く人のような何かを一瞬だけ見て、再び月を眺める。

この前大地に還した者共の仲間は、しばらく来ていない。

 

(きっと俺はハンター、いや人間を侮っているんだろうな)

 

滅尽龍は過去を思い出す。

老山龍のような例外こそあるが、基本的にモンスターは対峙した相手に手加減など欠片もしない。

ハンターだろうが肉食竜だろうが、領域を侵す外敵であるのに変わりは無い。

奴らはいつも、全力を以てこちらに襲いかかってきた。

それはハンターも同じだが、矮小だった頃と滅尽龍となった今を重ねようとすれば、どうしても人間という種の脆弱さを感じてしまう。

 

(…………あいつらは、元気にしているだろうか)

 

滅尽龍はふと、かつて自ら逃がした戦友へと思いを馳せる。

 

(……いや、愚問か。あいつらが寿命以外で死ぬなど、到底考えられない)

 

金髪の大男が豪快に笑い、酒を飲み……寡黙な男が黙々と太刀の刃を研ぐ。

それを、女ハンターと自分の2人で見ていた。

あの頃は、自他共に認める最高の時だった。

もう、あの時へ戻る事も、己が生きているのを友に伝える事もできない。

ふと何かが近づく気配を感じた滅尽龍は、足下を見る。

そこには棘の欠片に近づく人型がいた。

 

(……………おい、それには触るな……いや…もう俺の声は、言葉として聞こえないか)

 

滅尽龍は自身から剥がれ落ちた棘の欠片に近づく人型を咥え、遠ざける。

何度も近づこうとする人型に滅尽龍は唸り声を上げて警告するが、それも意に介さず人型は滅尽龍の近くで寝る。

 

(…………まるで、爺に懐いた餓鬼だな)

 

ハンターになりたての頃、似たような光景を見た滅尽龍はそれと自分の状況を重ね合わせる。

その夜は、月が妖しく輝いていた。

 


 

最近、どこからか気配を感じる。

それは滅尽龍が気配のする方を見ると、途端に遠ざかる。

 

(監視か。……まだ、様子見と言った所か)

 

どうやら相手はかなり冷静な判断を下したようだ。

徹底的にこちらとの接触を避け、極力気取られないようにしている。

尤も、滅尽龍の優れた嗅覚と奴らの発する不快感で存在は筒抜けなのだが……

 

(新大陸で調査をされたモンスターも、こんな風にジロジロと見られていたのだろうか?)

 

滅尽龍はそんな事を考えながら、地脈のエネルギーを僅かにだが吸い取っていく。

傷は完全に癒えたものの、滅尽龍が生きる上で最も必要とする他の古龍がいない以上、地脈から直接エネルギーを得なければならない。

余力のある今のうちに地脈からのエネルギー摂取に慣れなければ、待っているのは衰弱。

 

滅尽龍は、ひっそりと力を蓄えていた。

 


 

ここはとある民達の都の行政区。

数人の有力者が突如現れた謎の龍の報告を聞いていた。

 

「……対象は、あれから未だに行動を起こしていません」

 

「……そうか」

 

「対象の穢れは、日を重ねる毎にますます増えていく一方です。……あまり悠長にしていると、都の地脈にまで影響が及ぶやもしれません」

 

偵察部隊の隊長が報告書を読み上げる。

現場の責任者として迅速な対応を進言する隊長に、議会の数人は唸る。

すると、赤と青の不思議な格好をした女性が手を挙げ、口を開く。

 

「……ここは、思い切って精鋭を出しましょう。計画が大詰めである以上、不安要素は消しておくべきだと思うわ。その間の都の守備は私が代わりにします。……守備を薄くするのは不本意ですが、仕方ないでしょう」

 

女性の案に、周囲は強く頷く事で肯定する。

密かに部隊が編成され、謎の龍の棲む湖へと部隊は闇夜に紛れて向かっていく。

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