ようこそ原作クラッシャー(モブ)のいる教室へ 作:ゆうき35
【綾小路清隆の場合】
入学式が終わり、それから2週間。オレは完全に友人作りに失敗していた。ホワイトルームであらゆる事を学んだが『友達の作り方』は教わっていない。1人で過ごす時間が多くなったこの時期にクラスのマドンナである櫛田から声をかけられる。
「紹介したい人がいるんだ。今日の放課後時間あるかな?」
「紹介したい人?なぜ、オレに?」
「全然わからない♪」
理由は不明だが、これは渡りに舟だろう。もしかすると女の子という可能性も否定できない。
「義隆〜。連れてきたよ〜」
「あぁ、サンキューな。桔梗」
連れて行かれた先には櫛田と親しげな1人の男子生徒が待っていた。容姿は整っているほうだろう。立ち振る舞いを少し見ただけでも運動能力が高いのも分かる。それに同年代にはない老成された雰囲気を身に纏っているのが印象的だ。何者なんだ。こいつは。
「俺の名前は西園寺義隆。急に呼び出して悪かったな。綾小路清隆くんだよね」
「ああ、何の用だ?」
「単刀直入に言おう。俺と友達になろう」
「なっ…何故オレなんだ?」
「友達になるのに理由なんかいらんだろ?それに綾小路清隆・西園寺義隆。なんか運命感じない?」
「それ、義隆だけだから」
そうか友達になるのに理由やロジックは不要なのか。そんな事にも気づけなかったんだな。クラスとは少し違う櫛田の様子を見ながらオレは初めての友人を得た。
余談だが、この時、櫛田の変化の理由に気づいていれば、あの時の失敗はなかったんだろうか。
【櫛田桔梗の場合】
義隆への初めての感情は嫉妬だ。中学で女生徒の会話でちょくちょく話題に挙がる王子様。それが西園寺義隆だ。
各分野でトップにはなれないが容姿・学業・運動能力全てが高レベルでまとまっており、人当たりもいい。私の上位互換。まさに目の上のたんこぶ(理想)だ。
義隆と交流を持つようになったのは3年生に進級した時に同じクラスになったのが、きっかけ。このご時世に携帯電話をもっていないのに驚いたが、それだけだ。着々と私のポジションに侵食してくるのは恐怖でしかなかった。
その感情に変化が訪れたのは掲示板事件。日々溜め込んだストレスを発散する為に投稿していたクラスメイトへの悪口や文句が見つかった。
「ネットって誰が書いたか分かんないんだろ?証拠もないのに犯人扱いってどうなの?」
きっと彼はインターネットに疎いのであろう。私が非難されるようになっても擁護してくれた。それでも私は耐えられず学級崩壊を引き起こした。
「確かに褒められたやり方ではないな。でも、先に攻撃してきたのはあいつらだろ?誰かが言ってたが『殺してもいいのは殺される覚悟のあるやつだけだ』安全圏にいると勘違いしてたほうにも問題あんだろ。ちなみに…」
「ちなみに?」
「俺ならもっと上手くやる」
「こわっ」
仲良くしていた友人はいなくなった。教師達も早く私達の世代がいなくなってくれるのを願っている。そんな中、変わらず接してくれる義隆の存在にどれだけ救われただろう。
地元から誰も進学しないと思っていた東京都高度育成高等学校。入学式の日に堀北がいる事がわかる。それから1週間後、義隆と再会する。
分かっている。義隆の目にはどの女の子も映っていない。彼から見ると皆んなまだまだ子供なのだろう。だが、裏を返せば意中の女性がいないとも言える。私は運良く3年間の時間を得た。
「ぜっったい振り向かせてみせる」
櫛田桔梗が決意を新たにし(てしまっ)た瞬間だった。
次回も他者視点予定です。